66 / 171
第二章 毒娘、王都デビューする
56:被害者なので後始末とかは全部丸投げします
しおりを挟む筋肉ダルマを倒し、ふぅと一息。
そして周りを見回す。
どうやら八人とも倒したらしい。
ポロリンとネルトは……うん、大丈夫だね。良かった。
駆け寄ってくる二人に軽く手を上げる。
「ピーゾンさん! 大丈夫ですか!」
「うん、そっちも大丈夫そうだね」
「ん」
【唯一絶対】の二人と固有職狩りの六人。計八人による襲撃。
冷静に考えるとかなり厳しかったんじゃないかと。
私の麻痺が二人に効いたから良かったけど、効かない可能性だってあった。
ポロリンの<魅惑の視線>が効かない可能性だってあった。
そうなればポロリンとネルト二人だけじゃ無理。負けが濃厚だった。
筋肉ダルマとギャル男にしたって、もっと連携されていたり能力の使い方があんなに下手じゃなければ私だって負けていたかもしれない。
指パッチンだってもっと別のやり方あっただろうし、筋肉ダルマだって体術の達人だったらもっとオーラを有効に使えただろう。
少なくとも私たち以外の固有職が狙われたら一溜まりもない。
そうなれば帝国に拉致られていたんだろう。ヤツらの口ぶりだと。
これはただの事件と済ませる案件じゃないでしょう。国的にも。
つまりだ。
あんの変質者は何やってんだって話だよ!
この非常時に! あのおっさん、私たちの監視が仕事じゃないのか!?
ネルトの危険性だって伝えたでしょ!? これで帝国に拉致られたらどうする!?
なんでどうでもいい時に部屋に侵入して、こういう時に来ないのか! あの変質者!
と、心の中で悪態を吐きつつ、無事に倒せて良かったという安堵感もある。
さて、冷静に次の行動を考えないと。
「とりあえず私、麻痺ってないのを麻痺らせておくから、悪いけどポロリン、南門の衛兵さん連れてきてくれる? 襲撃してきた【唯一絶対】の二人と帝国スパイが六人、麻痺ってるから運んで捕らえてくれって」
「うん、了解! すぐ行って来ますね!」
「ネルト、<ホークアイ>をすぐに発動。様子見してる仲間がいたら厄介だから」
「ん。――<ホークアイ>」
可愛く走っていくポロリンを見ながら一息。
私はギャル男とかを麻痺らせつつ、ネルトの声を聞いた。
「……ん? アローク?」
はあ? おっさん? 居ないと思ったら居たって事?
「んー、誰か捕まえてる、っぽい」
聞けば、<ホークアイ>の俯瞰範囲ギリギリの所……多分300mくらい離れた所で、おっさんが誰かを糸でグルグル巻きにしていると。
その″誰か″の装備を見るに、おそらくここに居る固有職狩りと同じっぽい。
やっぱ監視か伝令か、ここの六人で全部ってわけじゃなかったって事か。
で、おっさんはそいつを捕らえたと。
……まぁそれはそれで仕事したと言えるんだけどさ。
……こっちの手助けが優先じゃないの?
……職管理局、固有職担当員とは思えないんですけど?
その後、おっさんはそいつを引きずって私たちの所にやって来た。
「よお、大丈夫かー」と気安く。てめえこのやろう……。
おっさん曰く、一応見張ってはいたらしい。
その上で周囲の警戒もして斥候を見つけたと自分の有能さを説いていたが、こっちは結構ピンチに陥っていたわけだから、そんな「俺、仕事してっから」的な顔されてもウザイだけなんだよね。
もう放置する事にした。
それからポロリンが衛兵さんを連れて来た。
私からも説明し、同時におっさんからも衛兵さんに説明する。
以前におっさんが山賊(偽)を衛兵に突き出しているはずだからね。話が早い。
衛兵さんが持ってきた荷車に筋肉ダルマたちとおっさんが捕らえた斥候も乗せて、そのまま帰った。
「お前ら気を付けて帰れよー、もう変なのに絡まれんじゃねーぞ」
「管理局は未然に防ごうとは動かないわけ?」
「こっちが動く以前にお前ら目立ち過ぎだからな? 自覚ねーのか?」
……そう言われて何も言えなくなった。
おっさんに論破されるとは……ちくせう。
南門で分かれ、その足でトンボ返りとなった冒険者ギルドでも一応説明しておいた。
相手が【唯一絶対】って大手クランだからね。ギルドに報告しないわけにはいかない。
小声で話したんだけど受付嬢さんの狼狽えっぷりがヤバかった。
大事にしたくなかったんで、報告だけしてすたこらさっさです。
あー、もう今日は疲れたなー。
「せっかくだし共同風呂行ってみる? 時間あるし」
「あー、初日からピーゾンさん言ってましたね」
「きょーどーぶろ?」
ネルトは風呂という存在すら知らないらしい。それを説明しつつ南東区方面へ足を運ぶ。
この世界にお風呂っていうのはかなり少ないんだよね。
我がファストン村にもなかったし、一般家庭にもないのが普通。
生活魔法の<洗浄>がある時点で風呂の価値観は変わるんだろう。水で拭けばいいじゃんと。
ともかくそんな調子で共同風呂にやって来た。
見た目は宿屋。決して銭湯ではない。
中途半端な時間だがちらほらと客足もあり、他の客に倣う感じで私たちも入った。
私はネルトと共に女風呂。
中は大きな浴場が二つあるだけだったが、久しぶりの銭湯気分に私は大満足だ。
ネルトは何も知らないので洗い方からお風呂の使い方から教える感じ。
結構なカルチャーショックだったらしいが、ネルトも最後の方にはくつろいでいた。
ポカポカで共同風呂を出ると、そこには一人佇むポロリンが。
なぜか泣きそうになっている。
「待たせちゃった? どしたの?」
「…………なんか、ボク、入っちゃダメだって……」
聞けば私たちと別れて男湯に突入したが、そこで摘み出されたらしい。
自分は男だと言い張ったが認めて貰えなかったと。
それからトボトボと通りに出て、ひたすら私たちを待っていたと……。
おう……その可能性を考えておくべきだったか……。
「なんて言うか……ドンマイ」
「ん。ドンマイ」
「…………うん」
うつむくポロリンの両肩に私とネルトの手がポンと置かれた。
踏んだり蹴ったりの日になっちゃったね、ポロリンは。
「よし! なんか美味しいものでも食べて帰ろうか。宿の夕食じゃなくてもいいでしょ」
「ん!」
「はぁ……そうですね、精神的に疲れたから甘いのと野菜たっぷりシチューみたいな……」
「肉!」
ネルトの反応は非常に良い。
ポロリンは相変わらず嗜好が女の子なんだよなぁ。
「うむうむ、んじゃ良さげな店を探しましょうか」
「「おお!」」
こうなりゃやけ食いだね。
11
あなたにおすすめの小説
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?
八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ
『壽命 懸(じゅみょう かける)』
しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。
だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。
異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?
政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~
巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!?
////////////////////////////////////////////////////
悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。
しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。
琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇!
※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……?
※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。
※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。
隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。
【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい
寿明結未
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。
ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。
ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。
時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。
だから――。
「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」
異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ!
============
小説家になろうにも上げています。
一気に更新させて頂きました。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる