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第三章 毒娘、色々と出会う
61:護衛ですけど護衛対象のクセが強すぎます
しおりを挟む「ワタクシ、ストライド公爵家が長子、サフィー・フォン・ストライドと申しますわ!」
「んまぁ! Dランクパーティーですの!? せめてBランクくらいでないとワタクシの護衛は務まりませんわよ!?」
「んまぁ! 十歳! ワタクシより年下ではありませんの! これではどちらが護衛なのか分かりませんわ!」
「んまぁ! んまぁ! んまぁ!」
いいねぇ、この金髪ドリル。
なんかもう全く怒る気になれないと言うか、これぞ私が想像していたお貴族様って感じでさ。
やっと出会えたレアな生物を見ているような。
いや、向こうからしたら私たちが珍妙なんだろうけど。
どうやら第1班はこの六人らしい。
改めて紹介した所でサフィーさんが突っかかって来たわけだが、そこにリーダーであるリーナが止めに入る。
第七王女vs公爵令嬢――ファイッ!
「サフィー様、ピーゾン様たちはわざわざ護衛を受けて下さったのです。わたくし達はこれから戦いの場に赴く身。ご不安は分かりますがピーゾン様たちもプロの冒険者の方々です。信頼いたしましょう」
「んまぁ、ダンデリーナ様! さすがは主席にして第七王女、なんとも優等生なご意見ですわね! 貴女様は護衛に守られていればよろしいですわ! 今回の演習、一番の討伐数を挙げるのはワタクシでしてよ!」
「サフィー様、この度の演習は競い合うものではございません。わたくし達は同じ班員として一致団結し――」
すげえ。私いま超貴重な体験してるわー。いい見世物見てるわー。
と、そんな事を考えている場合じゃない。さっさと出発しなければ。
空気を察したのか、それともいつもの事なのか、結局ディオとマックスが「まあまあ」と宥めて私たちは九人で歩き始めた。
これだけの生徒数で魔物の討伐演習をするとなると、近場の森がごった返して魔物の取り合いになる為、クラスごとに離れるそうだ。
王都の付近はDクラスやEクラスといった成績の悪い生徒たちが向かう。
王都に近い方が魔物も弱いし、万が一の時に逃げるのも楽だろうからね。
私たちSクラスは一番遠く、だいたい街道を一時間ほど歩いた先から森に入る。
その中でも第1班は主席のリーナと次席のサフィーさんが居る為、一番遠いらしい。
サフィーさん次席なのか。さすが公爵令嬢。
「さっさと行きますわよ! ワタクシは一番の戦果を挙げなければならないのですから!」
主席であるリーナへの対抗心だろうか、サフィーさんは戦果に拘っている。
一番先頭をずんずん歩くサフィーさんのすぐ後ろに取り巻きのシャボンとトトゥリア。
その後ろにディオとマックス。最後尾にリーナと私たちが話しながら進む。
「じゃあ私たちは本当に護衛だけなんだね。戦いはリーナたちに任せて大丈夫なの?」
「はい。わたくし達も戦闘訓練での模擬戦の他、王都のダンジョンでの演習も行っています。都外の魔物は初めてですが、戦えないことはないでしょう」
「六人が連携できれば、ね」
一応本人に確認したがリムリラさんと言っている事は同じだ。全員戦闘経験あり。
しかしダンジョン外での戦闘経験はない。
これから森に入っての狩りになるけど、歩きなれていない森の中でふいに襲ってくる魔物との戦闘は、なかなかダンジョンと同じというわけにはいかないだろう。
やっぱり役割分担というか、パーティーとして機能するかどうかが鍵だと思う。能力がどうであれ。
だと言うのにサフィーさんは単独戦闘しそうな勢いなわけだ。
これでちゃんとパーティー戦闘出来るかと言われると疑問が残る。
「サフィー様はいつもああしてわたくしを気にかけて下さっているのです。普段も集団訓練で組むことはございますし、今回も頼りにしております」
……ん? あ、あれー? なんか思ってた反応と違うぞー?
これはあれか?
サフィーさんはリーナに対抗心を燃やしているけど、リーナはサフィーさんが「心配してくれている」「忠告してくれている」「鼓舞してくれている」って思ってる感じ?
リーナが生真面目な思考回路で肩透かししている?
サフィーさん、報われないライバルポジション?
なんかちょっとサフィーさんを応援したくなってきたわ。
「ただわたくし達も拙いところがございます。ピーゾン様たちから見て間違いがあればアドバイスなど頂ければ幸いです」
「それはもちろん構わないんだけど……みんな固有職なんだよね? お互いの能力とか把握できてるの? と言うか私たちが能力の分からない固有職相手にアドバイスするってのも不安なんだけど」
「皆、職の名前は公表しておりません。お見せ出来ないスキルなどもそれぞれ持っているはずです。ただし最低限の戦い方は教え合っております」
やっぱ学校でも固有職の情報は公開しないもんなんだね。
担当教諭のみが知ってるとか、そういう感じなのかな?
「例えばわたくしでしたら短剣での前衛。軽装で敏捷を活かした戦い方になります。ディオ様とマックス様も前衛。サフィー様は中衛からの遊撃、シャボン様とトトゥリア様は後衛です」
なるほど六人パーティーとすればバランスは良いね。そういう班分けにしてるのかな。
「斥候は居る?」
「サフィー様ですね。それもあって接敵までは先頭をお願いしております。しかし申し訳ありませんがどのようなスキルで索敵などを行っているかは……」
「了解。じゃあサフィーさんに聞いてみるよ」
リーナにそう言うと、後ろのポロリンとネルトに振り返る。
「ネルト、どんな感じ?」
「んー、200m先にゴブリン五体」
「了解、ネルトは私と前線に行こうか。ポロリンは殿で護衛頼むね」
「了解」「ん」かっくん
そして私とネルトは先頭を行くサフィーに並ぶ。
「んまぁ、どうしましたの? 護衛は後方で大人しく見守るものですわよ?」
「ちょっと聞きたいんだけどさ、サフィーさんはこの班の斥候役なんでしょ? ダンジョンとかで魔物見つけるのとかどうやってたの?」
「んまぁ! ダンデリーナ様ですわね! 本当にお喋りですこと! ……まぁよろしいですわ。職は明かせませんがワタクシの察知能力は優秀でしてよ! 貴女方、ダンジョンは何階まで行かれましたの?」
何階……オーフェンダンジョンはすぐに出たし、あとは山賊(偽)の住処だけどあそこも全一階だったんだよなぁ。
「一階だね」
「んまぁ! ワタクシ達の演習でも三階まで行きましたわよ!? 本当に護衛大丈夫ですの!?」
ダンジョン基準で見られるとつらいんですよねぇ。
斥候がパーティーに入るまで避けてたから。罠怖いし。
「ダンジョンでもワタクシの察知能力で罠も魔物も未然に防いでましたわ! 今回の演習でももちろん大活躍! 逸早く魔物を察知し、逸早く倒しますわ! そしてワタクシがナンバーワンになりますわ! もうダンデリーナ様に後塵を拝することはございませんわよ! オ~~~ッホッホッホ!」
取り巻き二人が「お~」と拍手している。
なんかもう負けが見えてる選挙候補者みたいでつらい。
諦めちゃいなよ。とっくに試合終了だよ。
「なるほど。で、サフィーさん、前方に魔物居るのは分かる?」
「……えっ……ど、どこにもおりませんわよ? 察知も働かないですし、ワタクシ目も良いですがどこにも……」
「もう少し歩くとゴブリンが五体出て来るから注意しててね。だよね、ネルト」
「ん」かっくん
「ほ、本当ですの? 全然そんな感じが……」
ふむ、どうやら範囲はネルトより狭いらしい。私の<気配察知>と同じような感じかも。
<危険察知>とかそれ系のスキルかな。
それでもダンジョンで罠が発見できるだけ素晴らしいけどね。
「…………あっ! ほ、本当に居ましたわ! 皆さん! 前方にゴブリン五体! 戦闘準備ですわっ!」
「分かりました、サフィー様! 標準戦闘隊形に移行して下さい! そのまま近づき接敵します! サフィー様は周囲の警戒を!」
『はいっ!』
おー、どうなる事かと思ったけどちゃんとしてるなぁ。
サフィーさんも戦闘となるとリーナに突っかかったりしないらしい。
本当は自分一人で片付けたいんだろうけどね。真面目に警戒している。
ネルトに索敵で負けたのがショックだったのかもしれない。
……まぁネルトの<ホークアイ>は反則だと思うよ。
戦闘は思いの外順調だった。固有職とは思えないオーソドックスな戦闘。
使ったスキル……というかアーツも唯一マックスの<スラッシュ>くらい。
他はまだ見せないのか、見せられないのか。
しかしマックスが<剣術>スキルを最低Lv2は持ってるのを確認できた。Lv2で<スラッシュ>覚えるはずだからね。
とは言え、私から見れば未熟な冒険者パーティーと言えるようなもので、このままだと怪我するかもしれないから一応アドバイスしておく。
アドバイスするのも仕事だって言われてるし、王族とか公爵令嬢に怪我させたら私たちの責任になりそうで怖い。
「もうちょっと前衛の間隔を開けるように意識しないと、シャボンさんの風魔法とトトゥリアさんの弓矢の邪魔になっちゃうよ。前衛の位置取りはリーナが指示して、サフィーさんはそれに不備がないか一歩下がって見たほうが良いよ」
「そうですね。アドバイスありがとうございます」
「んまぁ! ワタクシに指示とは口が過ぎますわよ!」
リーナとサフィーさん、両極端なんだよなぁ。
まぁ口出すなと言われても出すけどね。
場合によっちゃ手も出すけどね。
それから森へと入る。
視界が悪くなるので六人は密集隊形。先頭は相変わらずサフィーさんだ。
私たちも森だとネルトの<ホークアイ>が使えないので、私の<気配察知>でウサミミをピコらせる。
ネルトは<グリッド>で前方空間の索敵に切り替えた。
こちらの索敵方法が変わったので、一応斥候役のサフィーさんにも伝えておく。
あまりこっちの索敵を信頼されても困るからね。
「サフィーさん、森の中だとさっきみたいに遠くの索敵は出来なくなるから承知しておいてね。出来なくなるわけじゃないけど範囲は狭くなるから。サフィーさんも索敵しといてね」
「元より頼るつもりはありませんわ! 索敵はワタクシの仕事でしてよ!」
あっそ。ならいいんだけどさ。
まぁサフィーさんはサフィーさんで索敵してもらうとして、私は私で<気配察知>しておこう。
と、ウサミミをピコらせていると、何やらサフィーさんの視線を感じる。
おい、索敵しろよ。
「そ、そのお可愛らしいウサギと黒猫はどちらで買われましたの?」
なんやかんや言って、どうもサフィーさんも気になるらしい。
もしかして君もファンシー予備軍かな? 公爵令嬢が同志になるとか胸熱なんだが?
「これ中央区のファンシーショップ・マリリンってお店でね。店主のマリリンさんが【上級魔装技師】でさ、性能いいし値段も安くしてもらったんだよ」
「じょ、【上級魔装技師】!? それ魔装具ですの!?」
「そうそう、私たち三人とも装備はほとんどソコだよ」
生徒六人ともギョッとした目で見てきた。聞き耳立てるんじゃないよ。
警戒しろ。ここ森だぞ。
しかしまさか魔装具とは思っていなかったらしく、リーナまでもが食いつく。
「ピーゾン様、そのマリリン様という【上級魔装技師】の方は……」
「えーと『四天商』とか『幻想魔装』とか言われてるらしいんだけど……」
「んまっ! まさか『幻想魔装』のゴンザレスですの!?」
「ゴンザレス様と言えば、王都最高の魔装技師です。なんとあの方の作品を装備されているとは……そうですか、あの方のお店が……」
……そんな有名人だったのかゴン……いや、マリリンさん。
まさか王族と公爵令嬢が驚くほどとは。
サフィーが「これは一度下見に……しかしあの恰好は……」などとブツブツ言っている。
おい、いい加減索敵しろよ。
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