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第三章 毒娘、色々と出会う
62:冒険者の依頼にハプニングはつきものです
しおりを挟むその後も森の奥へと少しずつ探索範囲を広げる。
さすがはSクラスの第1班と言うべきか、やっぱ第二学年でこの班が一番優秀なのだろうと感じさせる戦いぶりだった。
ゴブリン相手ばかりだが危な気ない。
「うわぁ……」「気持ち悪い……」
倒した魔物は討伐証明部位を剥ぎ取る。冒険者ならば当然の行為だが、彼らは学生。
ただ今回は討伐演習であり、それを証明する為に証明部位の提出が求められているらしい。
ついでに魔石も提出すればポイント化され評価につながると。
ダンジョンの魔物であれば死体は消え、魔石もドロップしやすい。
しかし地表の魔物の場合、死体の胸部を開き、魔石の有無を調べる必要がある。
ましてや地表のゴブリンなど魔石を持っていること自体が稀だ。
初めて地表の魔物を倒し、嫌々死体から剥ぎ取ろうと頑張ったがハズレ……。
それは学生である彼らには辛い体験だろう。
ゴブリンの耳ですら剥ぎ取りを嫌厭するシャボンとトトゥリア。
胸部を開くとなると男子であるディオとマックスも嫌悪感を示した。
男の意地なのか、女子たちの手前やらないわけにはいかないのか、頑張ってはいるが。
率先して行うのは第七王女殿下のリーナ。やっぱすごいなこの娘。
そしてリーナに対抗心を燃やすサフィーさん。この娘も根性の塊だわ。
王都東門付近の森にはゴブリンが多い。
そしてスライムや牙ネズミ、Eランクのワイルドコッコやブラックウルフも出るらしい。
特にブラックウルフとかは危険だからあんまり奥に行きたくないんだよね。
この子たちは確かに学生としたら優秀なんだろうけど、冒険者的にはEランクとかだと思う。
はっきり言ってEランクに上がった時のポロリンより下だ。
まぁポロリンは最序盤に猛特訓したからFランクの時点でアレだったんだけど。
しかし……
「まだまだ行きますわよ! 時間は有限っ! 出来るだけ進みますわっ!」
と、先頭のサフィーさんがノリノリなんだよねぇ。
これに「やれやれ」と付いて行く者、ここまで順調だから行けると思っている者、そしてリーナは王族としての使命感なのか率先して魔物を討伐している。
「あんま奥行くと強いの出るよー」と一応注意するけど焼石に水だ。
こりゃ護衛の出番も近い。私はポロリンとネルトに警戒態勢を告げた。
すでにだいぶ森の奥まで来ているだろう。
王都南の森でオークキングが集落を形成していたように、魔物の生態系は突如として一変する。
もはや浅層で見ていた牙ネズミなどほとんど居ない。ゴブリンはどこにでも居るようだけど。
そして案の定と言うべきか、嫌なヤツがネルトの<グリッド>に引っかかる。
「ん! 前から狼四体。速い」
「げっ、ブラックウルフが前から四体くるよ!」
わざわざサフィーさんに索敵させる時間も惜しいと、私は全員に知らせた。
ブラックウルフ四体はEランク相当だが、多分生徒たちだけだったらギリギリ。
ウルフと戦った経験がない事も踏まえれば、高確率で怪我人が出る。
ネルトの<グリッド>の索敵範囲は最大50mほど。
そのギリギリで見つけたとしても、もし狼が走ってこちらに向かっているなら、50mの距離なんてあってないようなものだ。
鼻も良いはずだし、あっという間にこちらに来るだろう。
それを聞いた生徒たちに驚きと緊張が走る。
「んなっ!?」「ブラックウルフ!?」「マジかよ!」
「皆様、防御隊形で固まりましょう! 前衛は押さえる事を第一に!」
『はいっ!』
さすが王女様。リーダーのリーナは冷静に指示を出した。
生徒たちは足を止めて固まり、武器を前方に構える。
私たちもすでに臨戦モード。生徒には悪いけどいつでも参戦するつもりだ。
それからすぐにブラックウルフたちは現れた。
『ガウガウッ!!』
「来ましたわっ!」
「速いっ! 当たって足を止め…………えっ?」
前方から迫って来たブラックウルフたちは目の前の私たちに目もくれず、横を抜けて行った。
「は?」
「な、何だったん――」
「ん! 前からイノシシ」
「ちょっ! 前方から今度はファングボアだって!」
「ファ、ファングボア!? Dランクじゃ――」
そう言っている間にドスドスと激しい足音が聞こえる。巨体がまっすぐ向かってきているのだ。
生徒たちからすればブラックウルフ四体以上にファングボア一体の方が危険。
すぐに再度、防御隊形を組む。
……が、同じようにファングボアは私たちの真横をただ通り抜けて行った。
「な、何なんですの……?」
「わたくし達の事など目にも入らないようでした……」
「リーナ、すぐに帰還するよ。何か普通じゃないし、さっきの狼とイノシシが向かった先は街道方面。あれが街道まで出ちゃうと危険だよ」
「そうですね、分かりました。皆様、すぐに――」
と、そこまでリーナが言いかけたところで森の奥から聞こえる咆哮。
「グルルウウウオオオ!!!」
メキメキと木々をなぎ倒す音も聞こえる。
何かがこっちに向かっている。
狼もイノシシもこいつから逃げていたのか!?
生徒たちを退避させないと――!
「みんな下がって! ポロリンはみんなを守って! ネルトはグリッドだけしたら下がって! いつでも逃げ出せるようにね!」
「了解!」
「ん! 来る! 大きい……とかげ?」
なんじゃそりゃ! 私はネルトを下がらせ、自分は一番前に出る。
イノシシが逃げるほどの相手……私が押さえるしかないでしょう!
ウサミミをピコらせつつ、背中の魔剣を抜いた。
「えっ、黒い刀身……魔剣!?」
「魔剣の大剣!? いや大鉈!?」
「んまぁ! ピーゾンさん、貴女……!」
「いいから下がって! もう来るよ!」
私の魔剣が注目されるが、それどころじゃないでしょう。
私の事より自分の身の危険を案じてほしい。
メキメキバキバキ音がする。もう近い。これ相当大物じゃないか?
魔剣をいつものように右肩に乗せ、前方を見据える。
もうこいつ以外が現れてもみんなに任せるしかないね。
ウサミミの<気配察知>がガンガン警報を鳴らしている。
ポケットからスタミナ回復剤を取り出しカリッと口に入れた。
そしてそれは私の前に姿を見せた。
「グルルウウウオオオ!!!」
逃げない私に対して歓喜の咆哮を上げる。餌か、私は!
現れたのは灰色の岩を纏ったような巨大なサンショウウオのようなトカゲ。
10……いや尻尾まで入れたら20mくらいある。
その尻尾が左右にブンブン振られるだけで木々が倒された。
まずは最速で突っ込む! 狙うは顔面! 手足は短いから警戒する必要なし!
――ガンッ!
かったい!? この岩みたいの全部鱗か!?
魔剣で何とか削れるレベルだけど、こりゃしんどいぞ!
やっぱ私の魔剣、攻撃力低いのかもしんない。
「うわああっ!!!」「きゃああっ!!!」
うるさいわ外野っ! こいつの興味がそっちに行ったらどうすんだ!
私じゃこれ力ずくで押さえるとか無理だよ!
「み、皆さん、落ち着いて下がって下さいっ! ピーゾンさんが抑えてるうちにっ!」
ナイスポロリン! ナイスセクシー!
でも行っちゃう前にこいつの事教えて!
「ポロリン! こいつ何か分かる!?」
「ご、ごめんっ! 分かりませんっ!」
「ピーゾン様! おそらくロックリザードです! 地竜と呼ばれる亜竜の一体です! 突進と尻尾、そして長い舌が攻撃方法のはずです!」
「オッケイ! さすが主席!」
トカゲなのか竜なのか……ようはワイバーンみたいな亜竜と同じって事だね!
舌の攻撃だけ警戒して後は位置取りを間違えなければ戦えるってわけだ!
そこまで情報もらえれば十分。
あとはポロリンとネルトを護衛にして、生徒さんたちには避難してもらおう。
「みんな下がって! こいつは私がやるよ!」
「無茶ですわ!」
「危険です! わたくしも――」
「いいから! ポロリン、ネルト! 早くみんな連れて避難!」
腰の抜けているシャボンとトトゥリアは、ディオとマックスが男らしく支えている。
そのまま後方に下がるのをネルトが先導しているようだ。やるじゃねえか腹ペコ野郎。
しかしリーナとサフィーさんが逃げようとしない。
それをポロリンが手を引いて無理やりに下がらせていた。やるじゃねえかセクシー野郎。
わーわー言いながらも足音でみんなが離れるのを確認。
もう視線はトカゲから離さない。
左手をピストルのように突き出し、トカゲの顔面に照準を合わせる。
地竜だか亜竜だか知らないが、図体ばかりデカくても――私が勝つに決まってるでしょ!
「食らいなさい――<毒弾>ッ!」
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