ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

文字の大きさ
77 / 171
第三章 毒娘、色々と出会う

67:王女様のジョブとスキルが変テコすぎて困ります

しおりを挟む


 今、リーナの部屋には様々な食材が並んでいる。厨房から持って来てもらったものだ。
 まな板と料理用の包丁もある。
 とりあえず川魚があるので、それを捌いてみる。

 ……ポロリンが。

 えっ、おまえ食堂の娘だろって? 転生者だろって? 経験ありませんけど何か?


「じゃあ<タンポポ乗せ>やってみて」

「これに、ですか? わ、分かりました。<タンポポ乗せ>……ダメですね」


 ほう、刺身じゃダメと。でも【サシミタンポポ】だしなぁ。
 魔物の肉もあったので、同じようにポロリンに刺身っぽく捌いてもらったがダメだった。

 という事は根本的に何かが違う……刺身ではない? 人? 方法? ……あっ。


「リーナ、<解体>スキルって魔物じゃないとダメなの?」

「どうでしょう……魔物でしか試したことがございません」

「出来るはずだぞ。野菜は無理だが動物とか魚はいける。精肉店の【商人】とかが<解体>持ってる場合もあるしな」

「なるほど。じゃあ悪いけどリーナ、この魚を自分の包丁で<解体>してくれる?」

「魚を捌いたことはございませんが……やってみます」


 しかしスキルのサポートというのは優秀なようで、捌いたことのない魚でも<解体>できた。三枚に下ろしてある。

 そしてそこへ手をかざし<タンポポ乗せ>。ポンッと刺身の上に黄色い花が乗った。


「ああっ! で、出来ましたわ!」

「この花が『タンポポ』か!? 花を召喚……?」

「よかったよかった。消費MP見て。どれくらい減った? 召喚してる間は減り続けてる?」


 やはりリーナでなければダメか、<解体>を使った物でないとダメか、そんなとこだね。
『刺身にタンポポを乗せる』のは確実なんだろうから、あとはポロリンがいけないのか、普通に下ろすのがいけないのか、それくらいしか思い浮かばなかったから。
 思った通り成功して良かったよ。

 消費MPは5。結構高い。で、タンポポを乗せる時にだけ消費する。
 タンポポはとると消える。誰にでもタンポポはとれる。と判明。

 また、魚以外の肉でもいける。
 極端な話、魔物を倒して<解体>し、大きな肉ブロックとなってもタンポポは乗せられるという事が分かった。
 もう『刺身』じゃないじゃん。


「魔物の死体相手に試したことはございましたが<解体>の後に使うとは……盲点でした」

「スキル使用後に使うスキルねぇ。戦闘用スキルかと思ってたら戦闘後のさらに<解体>後じゃないと発動しないとか……お前よく分かったな」

「『サシミ』ってのが『切り身』みたいなもんかなぁと思ったんだよ。んで【サシミタンポポ】ってくらいだからそれに『タンポポ』ってヤツを『乗せ』るのかなーと。ただ『タンポポこの花』を乗せたから何が起こるんだって言われると分からないね」


 適当に説明してお茶を濁した。
 でも本当に「タンポポ乗せたから何なの?」って感じだよ。効果不明。


「多分、<解体>したものに何かしらの変化があると思うんだけど……例えば味が変わるとか、価値が変わるとか、鮮度が落ちないとか、全く別物に変化するとか」

「見た目は変わりありませんね」

「花は取ると消えるんだから、乗せている事に意味があるんだろうな」


 MP5消費って結構重いから何かしら起こってるはず。
 これはそれこそ学校の教諭とか管理局の人間を使って調べてくれと丸投げした。
 取っ掛かりを与えただけで十分でしょう。


「ありがとうございます、ピーゾン様! おかげで前進できましたわ!」

「うん、<タンポポ乗せ>はそれでいいんだけどさ、私<パッケージング>も気になってるんだけど」

「<パッケージング>ですか。こう言っては何ですがわたくしも使用用途に限られるとは思っております……」

「本当に『パッケージ』するだけだからな。それこそ水筒代わりとか部屋の整理とかでしか使えん。全く新しいスキルではあるんだがな」


 これ【サシミタンポポ】がLv10になって覚えたスキルらしいんだよね。
 成長して覚えたスキルが役立たずとか、ありえるのかって思うんだよ。


「ちょっと試しに見せてくれる? MPは大丈夫? ポーションあるけど」

「いえ大丈夫です。<パッケージング>の消費は10掛かりますが、MPポーションは持っておりますので」


 消費10か。やっぱ『パッケージ』するだけにしては重すぎるよなー。
 大きさによっても消費変わるんだろうけど。

 試しにテーブルに乗ったティーカップを<パッケージング>してもらった。
 リーナがカップに触れてスキルを発動させると、カップはガラスケースのような立方体に包まれた。

 フタの開け閉めのような事は出来ず、他人が解除する事も出来ない。
 リーナが解除しない限り、カップに触れることは出来ない。
 ちなみにMP消費は発動する時だけらしい。

 私は<パッケージング>されたティーカップを持ち上げ、見たり叩いたりしながら眺める。


「ほ~。こりゃ面白いね。『パッケージ』って言うか空間隔離……ネルトの能力に近いかな」

「そうなのですか?」

「言われてみりゃそうかもな。極端な区分けをすれば、だが」

「んー、私にはできない」

「うん、ネルトのとは用途が全然違うよ。ただ色々と可能性は見える」


 ネルトの<空間魔法>にもありえそうな『空間の隔絶』に思える。
 ティーカップの周囲を囲み、周りから干渉させなくするわけだしね。
 正直、意味不明な<タンポポ乗せ>よりもこっちのほうがテンション上がるわ。

 ……って言うか、ちょっと考えるだけでヤバイ気がするんだが。

 これで消費MP10ってありえなくないか? 破格の性能じゃないか?
 やっぱ空間系の能力は危険だと思うんだよなぁ……。


「これ外部干渉できないんなら、<パッケージング>した箱を積み重ねるだけで無敵の防壁になるんじゃないの?」

「「あっ」」

「まぁ箱数の制限とか、時間制限とか、消費MPの問題とかあるかもだけど」

「す、すごいです、ピーゾン様。そんな事が……!」

「お前やっぱ頭がどっかおかしいわ。なんですぐにそんな考えが浮かぶのか」


 うっさいわ。


「あとちょっと聞きたいんだけどさ、<パッケージング>出来るのは一抱えくらいで、触れないと発動しないんだよね? んで生物には効果なしと」

「え、ええ、今はLv1ですのでレベルが上がれば大きくなるのかもしれませんが」

「試しに私と握手した状態で、グローブだけを<パッケージング>できる?」

「やってみます……<パッケージング>」


 おお、右手のウサウサグローブが隔離された。
 箱は私の手のすぐ横に出現し、そのままテーブルに落ちる。


「今、箱を出す位置は自分で決めたの?」

「いえ、意識はしていませんが……言われてみればなぜ元の位置に出なかったのでしょう」

「私の腕を『生物』と見なして位置を外されたか、リーナが無意識に外したかだね。今度は左手でやってみよう。リーナは「自分の横に出す」って意識してやってみて」


 再度やってみると、今度はリーナの隣のソファーの上にグローブ入りの箱が出現した。


「で、できました!」

「やっぱ無意識か。逆に言えば意識的にスキルを使えば効果は変わるってことだね。どれくらい位置調整ができるかは分からないけど、遠くは無理だろうし」

「地味な発見ではあるが可能性の広がる新発見ではあるな。さっきの防壁の件も含めて」

「そうですね! 本当にすごいです!」

「喜んでいるとこ悪いけど、ここからが本題だよ」

「ま、まだ何かあるのですか?」


 ネルトの<念力>とかもそうだったけど、スキルは想像力で効果が変わるものがある。
 常識に囚われると可能性を狭めるって事だね。
 意識して<パッケージング>を操作できるとすれば、常識外の事が常識的に行えるかもしれない。


「じゃあもう一度握手して、今度は私のブーツを<パッケージング>してみて」

「えっ……しかしブーツに触れなければ……」

「触れてるじゃん、私の身体ごしに。自分の手と私の身体、それとブーツが繋がっている事を意識してやってみて」

「わ、分かりました……」


 そして発動する<パッケージング>。私の足元に『パッケージ』されたブーツが。


「出来ました……出来ましたわ」

「だよね。つまり直接触れなくても『何か越しに触れていればパッケージできる』って事だよ。ここまでは予想通り」

「よ、予想通り?」


 だって微粒子レベルで見ればリーナの手とカップとかが密着してるわけじゃないでしょう。
 必ず空気の壁があるはずだし。
 握手にしても細胞同士がくっついてるわけじゃない。

 ま、そんな事言わないけどね。説明できないし。

 要はリーナが「触れている」と認識できれば<パッケージング>の対象になるわけだ。
 問題はどこまで認識の壁を越えられるかってトコでね。
 リーナが「これは触れている」と思えないと多分発動しないんだよね。


「じゃあ次。そこにティーポットがあります。その中には紅茶が入っている。紅茶はお湯と茶葉だよね。ここまで大丈夫?」

「え、ええ」

「じゃあポットを持って、茶葉だけ・・・・を<パッケージング>してみて」

「えっ? 茶葉だけ……ですか」

「そうそう。さっきは『私の身体越しのブーツ』を<パッケージング>出来たでしょ? だったら『ポット越し、お湯越しの茶葉』も出来るでしょう?」

「そ、そうでしょうか……」

「出来る出来る。むしろ出来ない理由がないよ。大丈夫だからポット握って。そんでイメージして。ポットの中の様子、お湯に混ざって確かに茶葉がある、それとリーナは繋がっているよ。茶葉だけを隔離する事は可能。絶対出来る」


 これもう洗脳だな。イメージどうこうじゃない気がしてきた。
 そしてリーナがスキル発動すると、ポットの横に小さな箱が。
 そこには大匙一杯ほどの茶葉。


「で……出来ました……本当に……」

「ふむふむ」

「……お前のその自信はどこから来るんだ。頭痛くなってきたぞ」


 私はポットの中を覗いてみる……見る限り茶葉は残っていないようだ。
 だとすると、リーナは『どれくらい茶葉があるのか』分かっていない状態で、『ポットの中の全ての茶葉』を抽出した事になる。


 というわけで結論。


「やっぱこのスキルはやばいね」

「えっ」

「やばいって何がだ? 何か越しでも触れていればってだけじゃねーのか?」


 これだけやっても危険性が見えないのかこの変質者は。
 こんなのがジョブ管理局の固有職ユニークジョブ担当員とか心配になってくるぞ、国が。
 まぁリーナの為にもちゃんと説明するけどね。


「一例を挙げれば、倒した魔物の死体に触れただけで血抜きが出来る」

「ああっ!」

「そうか、死体越しの血だけを<パッケージング>するって事か!」


 血じゃなくたって、わざわざ魔物の胸を開かずに内部の魔石だって取れるって事だね。
 しかしそれはまだ単純な方でね……


「例えば、金鉱石に触れただけで純度100%の金を取り出せる」

「「!?」」

「もしかすると鉱山に触れただけで鉱石も宝石もとれるかもしれない」

「「!!?」」


 触れていると認識するだけで抽出・隔離できる能力。
 これはヤバイでしょ。使いようによっては危険すぎる。国が傾く。

 ネルトの<空間魔法>もそうだけど、やっぱ空間干渉系は危険だ。
 これをどう活用するのか、どこまで秘匿するのか、それは国と管理局に任せよう。


 リーナは若干放心状態、おっさんは頭を抱えている。
 ポロリンは苦笑い。ネルトはリーナ付きのメイドさんに餌付けされている。おいずっと食ってんのか。

 ともかく私に出来るのはここまで。
 こうしてリーナのスキル考察は終わった。


「今日は本当にありがとうございました」


 そう言うリーナの表情は嬉しさ、驚き、不安、疲れ、色々なものが混じっているように見えた。

 ……これ、リーナの能力を知ってしまった私が国から狙われるとかないよね?
 リーナに一応頼んでおいた方がいいだろうか。
 なんなら吹聴しませんって誓約書でも書きますぜ? 王女様。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─

石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」 貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。 「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」 かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。 ときどき舞い込んでくるトラブル。 慌ててミーナを探しているルカ。 果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。 甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。 *サイトより転載になります。

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...