ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

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第三章 毒娘、色々と出会う

66:村娘ですがうちの国の王女様が可哀想です

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■■■


 ジオボルト王国の国王、ジョバンニ・フォン・ジオボルトには多くの子供が居る。
 それは王家の血を残す事も理由の一つだが、一番の理由は『優秀なジョブを得た王侯貴族を国として確保したい』という事だ。半ば義務とも言える。

 どうしてもジョブとスキルで優劣が生まれる世界。
 次期国王筆頭候補の第一王子が【村人】でした、では済まされない。

 もちろんそういった可能性も多分にあるので是非は問えないが、それでも優秀なジョブを欲するというのはどの国もどの貴族も同じだ。


 第七王女として産まれたのがダンデリーナ。国王と第四王妃の娘である。
 第四王妃は非常に美人で、国王がぞっこんになった為に妃に迎えた経緯がある。
 しかし長年、子を為すことは出来なかった。ようやく産まれたのがダンデリーナだ。

 待望の子を産んだ第四王妃と共に国王も大いに喜んだ。
 今までの子供以上に親馬鹿だったと言っても良い。

 さらには成長するにつれて母譲りの美貌が見えて来る。
 いや、母をも超える美貌を持つのでは? そう思ったのは親馬鹿な国王だけではない。周囲も真面目にそう思った。


「うちの第七王女がかわいすぎてつらい」


 ジョバンニ国王の声は瞬く間に王国全土に広がった。
 どうやら第七王女はとんでもない美少女らしいと。

 実際にお披露目を王都で見た貴族、大商人も口をそろえる。
 あれやべーやつだわ。あれとんでもねー美人になっぞ。

 成長するにつれ美貌の増すダンデリーナ。
 しかし彼女の天賦はその容姿だけではなかった。

 学問を教えれば理解力・吸収力に驚かされる。
 剣を握らせれば年上の男子をも簡単に倒す。
 それに驕ることもなく、どの子供より王族の責務・精神を大事にする。

 天は二物……いや、何物与えれば気が済むのか、天よ。周囲の凡人たちは嘆いた。


 しかし国王にも一つの懸念があった。
 王女の責務の一つ。他家、または他国との婚姻だ。

 ダンデリーナ自身も王族の責務として真摯に受け入れている。産まれた時から決まった事と。


「は? ダンデリーナを嫁に出すとかまじで言ってんの? 死ぬの?」


 剣を抜いた国王は宰相他側近によって取り押さえられたと言う。

 出したくない。しかし出さないわけにもいかない。
 国王の苦悩を解決したのは『職決めの儀』であった。
 ダンデリーナは固有職ユニークジョブとなったのだ。

 それも歴史的に未知のジョブに。


 強大な力を持つジョブ、特に固有職ユニークジョブはおいそれと他国に渡すわけにはいかない。
 これは国として当たり前の決まり事だった。
 敵に塩を送るどころの騒ぎではないのだから。

 国王は喜んだが、当のダンデリーナは苦悩した。
 嫁に出ることで国の為になると思っていたのに、ジョブによって縛られた。

 第七王女というこの身を国のために活かすには固有職ユニークジョブを有用に使う他ない。
 未知のジョブを解析し、理解し、国の為に戦う他ない。
 誰よりも早く。誰よりも強く。


 そしてままならぬ学生生活でのジョブ考察をする中、出会えた年下の女の子。

 その娘は誰より強く、誰より固有職ユニークジョブを使いこなしていたのだ。



■ピーゾン 【毒殺屋】 10歳


「ですからわたくしは【サシミタンポポ】を使いこなさなければならないのです! ピーゾン様! どうぞわたくしと共に【サシミタンポポ】の解析にご協力ください!」


 …………。


「おい、ピーゾン。頭抱えてどうしたんだ」

「きっと考察モードですよ。ちょっと静かにしてたほうがいいです」

「ん。よくある」

「まさかジョブの名前聞いただけで何か分かったって言うのか……?」


 叫びてええええ!!!

 なによ【サシミタンポポ】って! 王女のジョブが【サシミタンポポ】って何よ!
 ライン作業で刺身のパックにタンポポの造花乗せるのか!? 王女様が!?
 まぁ【ニートの魔女】に比べればマシかもしんないけど!
 職に就いているだけマシかもしんないけど!
 いやそれにしたってありえないでしょうがあああ!!!


 はぁ、はぁ、……いやまて落ち着け私。

 この世界に『刺身』も『タンポポ』もないはずだ。
 仮に『タンポポ』があっても別の名前のはず。〇〇草みたいな。
 それに生食文化も絶対ない。刺身なんて存在しない。

 ……港町とかだったらあるのか?
 生で魚を食べる……いや、寄生虫の概念とかもないはずだから危険だろう。

 という事は【サシミタンポポ】は私の思っている【刺身にタンポポを乗せる仕事】とは違うのかもしれん。

 もしかすると『サシミタン』という『フレイムタン』的な武器で『ポポ』という魔物を狩るような仕事の可能性が無きにしも非ず。

 そうだ、リーナは戦闘職なんだから【刺身にタンポポを乗せる仕事】なわけないだろう。
 むしろ【サシミタンでポポを狩る仕事】の可能性の方があるんじゃないか?

 いくら何でも【刺身にタンポポを乗せる仕事】はないだろう。だって第七王女殿下だよ?


「リーナ、ちょっと質問していいかな? 固有職ユニークジョブの内容についてだから答えられないならそれでいいけど」

「もちろんです。何でもお聞きください」


 いや、そんな前のめりで来られてもさぁ……。
 こっちも答えを探してるところだよ。暗中模索だよ。


「まず、本当に戦闘職なの? ステータスやスキル的な話で」

「はい、間違いないと思います。ステータスは『攻撃』と『俊敏』『器用』が高く、スキルは<包丁術>と<解体>を持っています」


 ……<包丁術>……だと?


「ちょっと待って。<包丁術>って……」

「それは俺から説明しよう。これも未知のスキルでな、普通の包丁を″武器″として扱えるらしい」

「わたくしは長い包丁を作って頂きまして、それを武器としております。見た目は片刃の短剣と同じなので学校では<短剣術>だと言っておりますが」


 つぅ……頭いてぇ……。
 頭の中でガンガンと警報が鳴ってやがる……!


「……えっと、ちなみに他のスキルは?」

「他は<タンポポ乗せ>と<パッケージング>です」

「うわあああああん!!!」

「ど、どうしました! ピーゾン様!」


 はい決定! 【刺身にタンポポ乗せる仕事】じゃねーか!

 <包丁術><解体><タンポポ乗せ><パッケージング>って刺身パックでも作ってるのか!
 そのうちパックにラベリングする作業出てくるんじゃないだろうな!
 なにが『サシミタン』だバカが! そんな武器あるわけねーだろ!
 バーカ! バーカ! 職業神のバーカ!


 しばらく頭を抱えてふさぎ込んだ。
 みんな心配してくれてるけど、私はリーナの今後が心配だよ。
 何だよ【サシミタンポポ】って。どう説明すりゃいいのさ。


 ちょっと落ち着こう。深呼吸……。
 いやこれ、ちゃんと考察しないとダメだね。
 誰も得しない。よく考えよう。


「ふぅ……ごめんごめん」

「だ、大丈夫ですか?」

「うん、もう大丈夫。ちゃんと考えるから」

「ここまでピーゾンさんがモードに入るのは初めて見ますね……ゴクリ」


 顔をパンパンと気合を入れる。
 あとポロリン、何楽しそうな顔してんだ。全然楽しくないんだよ、こっちは。


「で、一旦ジョブのことは置いておいて、スキルで分かってるのは?」

「<解体>は戦闘職じゃなくても商人系で持ってる場合があるな。<包丁術>も包丁を使った戦闘術だ」

「<包丁術>はアーツも覚えております。<ぶつ斬り>という一撃強化のものです」

「<パッケージング>は『非生物を透明の箱に収納する』らしいな。これも未知のスキルだ」

「しかし大きさは一抱え程度のものが限界です。水を<パッケージング>して持ち運ぶことも可能です。戦闘での用途はありません」


 ふむ、これもまた怪しいスキルだな。
 でもとりあえず後回し。


「ただ<タンポポ乗せ>が全く分からねえ。ジョブの名前に入ってるから『タンポポ』ってのが重要だとは思うんだが……」

「スキルを使おうと思っても何も起こらないのです」

「なるほどね」


 私も意味は分かるけど、どんなスキルかは分からないね。
 この世界にタンポポがないから教諭も管理局も私以上に意味不明だろうし。

 この一年でどんな事を試したのか聞いてみた。
 人や魔物、草木や家具、石、空、対魔法など色々なシチュエーションでスキルを試してみたらしい。
 しかしどれも何も起こらない。

 暗礁に乗り上げたまま一年が経過していると。そりゃ可哀想に。


「ん? 魔物は生きてるやつ? 死んでるやつ? どんなシチュエーションで試した? 人は死体も? 動物とかは?」

「え、えっとですね……」

「あーやっと調子出て来ましたね。いつものピーゾンさんです」

「こりゃ一安心かな」

「ん」


 こうして結局一日中、リーナの部屋に籠ることになる。
 ベット湿地への準備は一日ずらす事になった。


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