ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

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第三章 毒娘、色々と出会う

65:面倒なイベントを終えたつもりが始まったばかりだったようです

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 護衛依頼を終えた翌朝、朝食を終えて宿を出る。
 さあ遠征に向けてお店を回ろうかという所で見知った顔が近づいてきたのだ。
 それは無精ひげを生やした、見るからに変質者と思えるおっさん。


「よお、おはようさん」

「変質者のくせに部屋に侵入しなかっただけ褒めてあげるわ」

「朝から辛辣すぎるんだが?」


 ジョブ管理局の監視員、私担当のアロークのおっさん(三二歳)だ。
 とてもこれが国の役人とは思えない。


「悪いけどちょいと付き合ってくれ」

「えー」

「頼み事なんだが半分強制みたいなもんだ。諦めてくれ」

「うわぁ、三人で?」

「だな。まぁピーゾン一人でもいいんだが、三人のほうが良いだろ」

「やだー、なんか嫌な予感するー」

「アハハ……ボクは構いませんよ。どうせ今日はオフですし」

「ん。買い物と食べ歩き」


 そして有無を言わさず私たちの前を歩きだす。
 何なんだよもう。半分強制の頼み事? 頼んでないよね絶対。


「で、用件は?」

「着いてから説明する。さすがに天下の往来じゃ無理だ」

「じゃあ目的地は? 管理局?」

「いや、王城」

「「王城!?」」「?」





 ジオボルト王国の王都セントリオを十字に渡る大通り。
 東西南の突き当りは都外へと続く城門がある。

 北の突き当りは白い尖塔が連なるような巨大建造物。
 王都で一番のランドマーク。つまりは王城だ。


 大通りを北に進むとだんだんと店構えが豪華で大きなものとなる。
 王都自体オーフェン以上に高層の建物が多いけど、北側は特に多いね。
 大通り沿いの店は最低でも三階建て。宿屋もホテルって感じ。
 私たちには縁のない店ばかりだ。というか北側自体初めて来たかもしれない。

 道行く人も冒険者っぽい人はあまり居ない。
 人口密度は多少低くなってるんだけど、反比例して私たちが余計に目立つ事態となっている。

 大道芸人じゃないですよ? 演劇団とかでもないです。
 ヒソヒソ声と奇異の視線を無視しつつ、私たちはおっさんに付いていくしか出来ない。
 おっさんに連れられている時点で事案だと思うんですけど? 衛兵さん出番ですよ?


 現実逃避しつつしばらく歩くと城壁に遮られる。貴族区との区分けの為の城壁だ。
 同じ王都内に作られたこの城壁を通るにも身分証が必要らしい。

 私たちは衛兵さんにギルドカードを見せ、怪訝な顔をされながら通る。
 大丈夫ですよ、こんな格好してますけど悪さしないですよ。ジョブは危険ですがね。


 城壁の内側はこれまでの土地より一段高い。これが貴族区か。
 これ大通りにも高低差があるんだけど馬車とかどうすんの?
 と思ったら普通の貴族は乗り換えるそうだ。貴族区用の馬車と外用の馬車。はぇ~。

 普通じゃない王族とかの場合、大通り自体が浮き沈みするらしい。
 つまりエレベータ完備の大通りだと。はぇ~。


「あのさ、つまり呼び出したのはリーナ……ダンデリーナ王女なんだよね? 国王陛下とかじゃないよね?」

「よく分かったな」

「分からいでか」


 王城に行くのにこの格好はマズイんじゃないかと。
 自分で着ててなんだけど、さすがに「ふざけるな!」って怒られるんじゃないかと。

 これが国王とかお貴族様から呼び出しとかだと、そう怒られると思ったんですよ。
 でもまぁリーナだったら昨日会ったばっかだし大丈夫なのかなーと。

 さすがにこの格好で貴族区を歩いている時点で、ちょっと抵抗がある。


「自分が珍妙な恰好してるって自覚あったんだな」

「うるせい」

「服装はいいけど、せめてフードはとっておけよ。ネルトもな」

「えー」「ん」


 フードとると<気配察知>できないんだよなぁ。すっかりこの付与に依存してる私。
 そんなことを話しながら人通りの少ない貴族区を歩く。
 さすがに平民区と違い貴族区は大通りと言えども人波はない。非常に歩きやすい。

 しかし、だからこそ目立つというのもまた事実。
 少なからず遭遇する住民からは100%奇異の視線を送られる。どもども、ウサギです。
 色々と怖いので常時ピコらせつつ、気持ちは重く、北を目指す。


 貴族区の終点にはまた城壁。この先は王城。
 つまり王都は三重の城壁になってるってこったね。
 ここでもまた身分証明。めんどくさい。
 そしてさらに一段高くなった王城の敷地内に入る。

 さあフードをとろうか。ネルトもね。
 久々に<気配察知>なしの状況に若干緊張する。


 敷地内と言っても王城だけが建っているわけではない。
 広大な敷地には王城の手前に綺麗な広場と左右には何かの建物がある。
 荘厳麗美。美しい光景に思わず立ち止まって見回してしまう。

 そして見上げる王城は白くこれまた美しい。
 こればかりは前世知識を持ってる私でも感心・感動してしまう建物だ。
 ヨーロッパにはこういうお城あるんだろうけど見たことなんてないしね。

 王城の入口にはメイドさんが何人か立っており、おっさんが管理局のカードを出しながら言う。


ジョブ管理局のアロークだ。ダンデリーナ王女殿下と約束させて頂いている。うしろの三人も同様だ」

「かしこまりました。ご案内いたします。こちらへどうぞ」


 私たちは一人のメイドさんに引き連れられて王城を歩く。
 どうやら別のメイドさんがリーナの下へと伝えに行ったらしい。

 王城の中は明るい。採光と高い天井、そして魔道具でも照らされている。
 白い壁と天井には至る所に模様が入り、柱も同様だ。まさにゴシック建築。
 足元は赤い絨毯。所々に絵画や花が活けられてあったりと目を楽しませる。いやはや素晴らしいですな。


 王城と言っても王族と使用人しか居ないわけではない。
 ここで働く貴族も多くいるらしく、廊下を歩いているとすれ違ったりする。

 案内してくれているメイドさんとおっさんに倣うように、廊下の端に寄り、すれ違い様には軽く頭を下げる。
 そういうものらしい。我ら平民也。

 って言うか、おっさんそういうの教えておけよ。
 おかげでネルトが「?」ってなってたんだぞ? ネルトもネルトで空気読め。

 ちなみにすれ違う貴族はもれなく奇異の視線で見てくるが、ポロリンに目が釘付けのヤツも居る。

 このロリコンどもめ! やめときな! そいつに惚れると火傷じゃ済まないぜ!
 いやまぁ貴族は子供相手だろうが手を出したりするのかもしれんけど。
 衆道的なサムシングも貴族にありそうな気もするけど。


 どういう道順かもすでに分からないが、とりあえず三階まで上がった。
 わざと複雑な作りにしているのか、私たちに覚えさせない為に遠回りしているのかは分からない。
 ともかくしばらく歩いてやっと着いたのは一つの扉の前。やっとゴールか。

 メイドさんのノックと共に私たちが来たことが告げられる。
 中からリーナの返事が聞こえ、扉は開かれた。


「ようこそおいで下さいました。ご足労頂き感謝いたします」


 出迎えたリーナは昨日とは違い普段着……いやこれを普段着といっていいのか、とにかくワンピースドレスだ。

 やっぱこの娘はとんでもなく可愛い。
 私が男だったら確実に惚れてるね。ほら見ろポロリンも顔真っ赤になってる。
 いやまぁそのポロリンが可愛すぎるという不具合があるのですが。


「ピーゾン様、ポロリン様、ネルト様、昨日はありがとうございました。改めてお礼を申し上げます」

「いや……いえ、どうぞお気になさらず。ダンデリーナ王女殿下におかれましては……」

「うふふ、どうぞ昨日と同じようにお呼び下さい。ご無理なさらず」


 あ、そう? じゃあ遠慮なく。
 いやぁ昨日は生徒と護衛って間柄だったからさ、アレだったんだけど、今日は王女と一般人でしょう?
 一応気を使ったんだけど無駄だったね。

 ちなみに郊外演習の翌日という事で学校は休みだそうだ。

 そして応接セットのようなソファーへと座らされ、即座にメイドさんが紅茶とお茶菓子を出して来る。

 ……どうしよう、ネルトのお茶菓子絶対すぐなくなるんだけど。
 十倍くらいないと食べ続けると思うんだけど。
 自重させるべきか、先に用意してもらうべきか。

 そんなことを考えているとリーナに勧められ、紅茶を一口。


「あ、美味しい」


 こんな紅茶飲んだの転生して初めてだと思う。ダージリンに近い。
 やっぱ王族は飲んでるお茶も違うんだなぁ。

 ちなみにこの世界……王国だけかもしれないけど『お茶』と言ったら『紅茶』になる。
 同じ茶葉で緑茶も出来たと思うけど、緑茶は見た事がないね。コーヒーもない。
 確かウーロン茶みたいのはあったはず。


「お口に合って幸いですわ。わたくしが好きな紅茶でして」

「リーナは香りが強いのが好きなのかな。私もこれ好きだよ。銘柄とかは分からないけど」

「こちらはドルティーヌ産です。他にも色々とありますが――」


 なるほど、やっぱ味とか香りの違いがあるらしい。
 ドルティーヌ産ね、覚えておこう。一般庶民に買えるものか分からないけど。


「お前がまさか紅茶の味が分かるとは……ウサギ以上の衝撃だわ」

「うっさい。食堂の娘をなめるな」

「まぁ、ピーゾン様はご実家が食堂なのですか?」

「そうそう、ファストン村ってとこでね。ただ紅茶なんてほとんど出さないよ。水かお酒ばっか」


 そんな風に他愛もない話を少し続ける。
 ポロリンは未だに緊張しているらしい。
 ネルトは……ああ、もう食べ終えたのね。私のあげるから我慢しなさい。
 あ、すいませんねメイドさん、追加してもらっちゃって。


「しかし、アローク様がピーゾン様の御担当とは驚きました。おかげでこうして早くにお迎え出来ましたが」

「俺は不本意なんですがね」

「こっちのセリフだ。で、リーナもおっさんと知り合いって事?」

「おっさんじゃねーし。俺が管理局で働く前に、一時的に殿下の護衛とかやってたんだよ」

「ええ、アローク様には随分と助けて頂きました」


 大丈夫だったのだろうか。こんな変質者が護衛なんて……。
 むしろカワイイ王女様から離すべき対象だと思うんだが……。

 ん? つまりおっさんは管理局の前に近衛兵だったって事か?
 エリートからのドロップアウト? まぁクビになったんだろうな、おっさんだし。


 そして話は昨日の事件へと続く。


「嫌な予感がしたんだよなー。お前らが郊外演習の護衛依頼受けたって聞いてさ。そしたら案の定、殿下の班になったろ? ギルドは何してくれてんだって思ったね」

「私だってまさか王女殿下が出て来るとは思ってなかったよ」

「わたくしも始めはお可愛らしい護衛の方々だと思ったのですが、結果的には最高の護衛でした」

「いや護衛だけなら良かったんだよ。それがさー何ロックリザードとか倒しちゃってんのって話で。おかげでほら、殿下が興味持たれちゃって」

「文句はトカゲに言ってよね。ていうか、おっさん気付いてたんなら助けなさいよ」

「いや、俺はあの場に居なかったんだよ。聞いただけ。あとおっさんじゃねーし」


 どうやらリーナの郊外演習にあたり、見張りについていたのは国の暗部的な組織らしい。
 そいつらが監視しているから逆におっさんは監視できない状態だったと。

 ……私の<気配感知>とかネルトの<ホークアイ><グリッド>に反応なかったんだけど? 怖いわー。暗部怖いわー。


「ピーゾン様の戦いは素晴らしいものでした。ポロリン様からもお聞きしましたが、まさしく才能と努力の結晶。わずか一月少々でそれほどまでにジョブの能力を扱え、そして戦える……わたくしは是非とも教えを乞いたいと本日お呼びしたのですわ」


 とりあえず今日の用件はそれか。ただのお茶のお誘いじゃないのか。

 教えを乞うって言われてもねぇ……。
 私はポロリンをジト目で見る。てめー何吹き込んだ? あん?
「アハハ……」じゃないよ。目を逸らすなコラ。


「それは私に固有職ユニークジョブとかスキルとかの扱い方を教えてくれって事? 正直学校の先生とかの方がそういうのプロだと思うんだけど」

「確かに先生方は数々の固有職ユニークジョブを手掛け、数々の未知のスキルを発見してきた方々です。その道に精通し一から順序良く、考え、検証し、ジョブにあった相談をして下さいます」


 それはいい環境じゃないか、と私は思う。
 しかしアロークのおっさんが言う。


「学園の教諭も管理局の固有職ユニークジョブ担当……俺とかもそうだが、アドバイスするには過去のジョブから推測するしかねぇ。それはどんな未知のジョブでもだ。考察と検証に時間のかかる作業だよ。仮にお前ら三人が学校に入学して、今くらいまで戦えるようになるまでには最低でも三年はかかるだろうな」


 えっ、まじで? そんなじっくりやるの!?
 色々と聞けば、未知のジョブ、未知のスキルに関しては本当にゆっくり、細かい検証を重ねるらしい。

 仮に私の″未知のスキル″【毒弾】を調べようとした場合、身体の動きや魔力の流れから、どういった効果が出るか、敵と自分にどのような効果が出るか、影響と反応、あらゆる物に対する試し撃ち、効果の変化の検証、などなど……とにかくじっくりやるらしい。

 すでに研究材料モルモット化してませんかね、それ。

 うわー私学校行かなくて正解だわー。いや、行くつもりなかったけど。
 ポロリンも「うわぁ」って顔してる。


「ところがお前ときたら「多分こうでしょ」「やってみよー」「おー出来た」「じゃあこんなこと出来る?」「これで戦うにはこうすればー」ってさ。一年分の検証を一日で熟してるようなもんだ。怖い物知らずって言うか、頭おかしいって言うか、それでこれだけ使いこなして戦えてるのが異常だよ。二人への指導も含めてな」


 ひどい……。
 そりゃ『ニート』とか『空間魔法』とかのこの世界にない予備知識があったからでしょうに。言えないけど。

 そもそも前世知識がある時点で想像力には格段の差があるんだよね。この世界の人たちとは。
 もうこれだけでチートって言えるくらいに。

 と言うか、私が二人の検証とか特訓指導とかしてるのは、もちろん廃人ゲーマー時代のサブマス経験とか趣味の延長ってのもあるけど、基本的には安全志向だからなんだよ?

 せっかく仲間になったのに死なれたら困るし、この世界で冒険者やるってのは私でさえ嫌がってたくらいに危険な事なんだからさ。そりゃ過度な特訓にはなるさ。

 まぁ結果的にオークの集落潰したり、筋肉ダルマたちと戦ったり、ロックリザードに襲われたりしてるから危険な思いをさせているとは思うけどね。

 それは結果論だから。
 むしろ特訓してて良かったじゃないって正当化してみる。


「ですからわたくしもピーゾン様に教えを乞いたいのです。わたくしのジョブの力は国のために使う物。逸早くジョブを理解し、スキルを理解し、国のために役立てたい」


 それは王女として立派な考えだと思う。
 堅すぎるとも思うけど、志を否定しちゃいけない。
 王族としての矜持をリーナから感じた。


「それには学校の教えだけでは遅いのです。わたくしは戦闘職。早くジョブを理解し、魔物の脅威から国を守らねばなりません。昨日、ピーゾン様の戦いを見て、そしてポロリン様からお話をお聞きして確信しました。教えを乞うならばピーゾン様以外いないと」


 思わず再度ポロリンを見る。
 おい、目を逸らすなっつってんだろ。


「昨晩アローク様と連絡がとれ、ピーゾン様のご担当と知った時には運命めいたものを感じました。つながりがあったと。ピーゾン様、改めてお願いいたします。わたくしの力になって頂けないでしょうか。是非ともわたくしを成長させて頂きたいのです。共に考察して頂きたいのです。わたくしのこの未知のジョブ――

















 ――【サシミタンポポ】を」




 …………ん?

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