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第三章 毒娘、色々と出会う
64:依頼を受けた冒険者ですが護衛を見事?完了しました
しおりを挟む「あー、疲れたー」
やっぱ舌が厄介だったね。ベロローンって縦横無尽な感じ。
だが『クリハン』は出て来る敵がほとんど触手持ちだったからなぁ。なんか懐かしかった。
すかさずポケットから本日三個目のスタミナ回復剤を口に入れる。
結局、口と目に向けて<衰弱毒>の<毒弾>を連発した上で首を斬った。
<腐食毒>で岩の鱗をなんとかしようと思ったけど、岩っぽくても生物と判定されるらしい。
<麻痺毒>を至近距離で撃つ勇気はない。
しっかしワイバーンの時もそうだったけど毒らせるのに時間が掛かった。
亜竜って言うのは【抵抗】が高いもんなんだろうか。おかげで下級MPポーション使っちゃったよ。
でも毒らせられれば、やっぱり【魔鉈ミュルグレス】は強い。
あの固いのをスパッといったからね。かーなり気持ちいい。
さて、さっさと剥ぎ取りたいんだけど……こいつはワイバーンと同じで血液も売れるんだろうか。
現在進行形で首からドバドバいってるんだが。
いやしかし私のウサギポーチでもこんな巨体は入らないぞ。全部持って帰るのは不可能だ。
というか、さっさとしまって皆を追いかけないといけない。
よし、ぶつ切りにして出来るだけ押し込もう。
とりあえず首と尻尾と爪は確保。あと優先は魔石か……。
「ピーゾンさーん!」
お? ポロリンと……リーナとサフィーさん?
「おーおつかれー。どしたの? 逃げたんじゃないの?」
「ネルトさんと四人は街道まで行ってもらいました。ボクたちはピーゾンさんが心配だったので……アハハ……」
「ピーゾン様、ありがとうございました。素晴らしい戦いでした」
「まあワタクシの護衛ですもの! 当然の戦いぶりでしたわ! オーッホッホッホ!」
サフィーさんの高笑いをジト目でみつめるポロリン。
こりゃ何かあったな? まぁとりあえず「そりゃどうも」と言っておく。
って言うか見られてたの? 私<毒弾>使いまくってたんだけど……。
固有職同士の暗黙の了解って事で、吹聴しないでくれませんかね?
まぁ死因は毒殺じゃなくて斬殺だったから、まだマシなのかもしれんけど。
と、それは後だ。今考えるべきは目の前の岩山だから。
「あ、ちょっと待ってて。こいつ解体して出来るだけ持って行きたいから。ポロリンも手伝ってよ」
「はい、ボクの袋も出しますね」
「ピーゾン様、お手伝いいたします」
「さっさとやって、皆さんと合流しますわよ!」
あー何か悪いね。王侯貴族に解体手伝わせちゃって。
「んまぁ! なんですの、そのウサギさんは! 魔法の鞄!? これもゴンザレスの作品ですの!? んまぁ! 口がビョーンって! 気持ち悪いですわ!」
言うなし。
♦
その後、森を抜けて街道に出ると、ネルトと四人が待っていてくれた。
……なんか焚火を囲んで焼き肉を食っている。
「ん。おかえり」
「お、おう……ただいま。それは何?」
「ん? イノシシ。もぐもぐ。美味しい」
「そ、そうかい」
なんか街道に抜けるまでに逃げてたファングボアと遭遇したらしい。
ネルトは四人を守りながら<念力>で撃退。やるじゃん。
そして捨て置くのはもったいないと早々に解体し、戸惑う四人を後目にキャンプファイヤーを実施。
手持ちの塩と香辛料を使い、見事な焼肉を作り上げる。
四人はロックリザードの恐怖、そして逃亡、私を置き去りにした負い目、そこへ来てファングボアとの遭遇という事で混乱状態だったらしい。
リーナたちを待つべきか、教諭に報告に行くべきか、はやくこの場から去りたい。色々と思いがあり収拾がつかなかったようだ。
しかし――
「だいじょぶ。もぐもぐ、上手く焼けたからあげる」
と余裕綽々で食べているネルトを見て気概も削がれ、差し出された焼肉を食べてみたらアラ美味い。
そして大BBQ大会となり現在に至ると。
……おめぇ、こちとら亜竜と戦ってたんだぞ? 何もぐもぐしてやがるんだ。
え? 信頼していた? 絶対勝つって?
ああ、なんかありがとうとは言えないんだけど。
え? ロックリザードの肉も焼く? いやぁあれは食べられないんじゃ……岩だよ?
ドラゴンステーキとは違うよ? まじ岩だから。
うん、そうそう、諦めなさい。今度ワイバーン狩ったら食おうじゃないか。
あ、私にも一つ頂戴、イノシシ肉。うん、確かに美味いわこれ。もぐもぐ。
♦
予定より若干早くなった帰り道を私たち九人は歩いている。
ロックリザードが出たことを報告しないといけないし、シャボンとトトゥリアなんか疲労困憊だしね。
逆に焼き肉パーティーやって正解だったかもしれない。おかげで多少気力が回復してる。
そんな二人にサフィーさんが話しかけている。
「――そしてヒュンヒュンと避けていたと思ったらズバーッと首が落ちましたわ! さすが護衛パーティーのリーダーと言ったところでしょう! まぁワタクシの速さには敵いませんけれどね! オーーッホッホッホ!」
武勇伝めいたものを語り、女子二人も楽しそうに聞いている。
これで元気づけているのだろうか。
しかし私はジト目でサフィーさんを見るけどね。てめえこの野郎と。
「ポロリンさん、今度お茶でもご一緒しませんか?」
「あ、俺、いい店知ってるよ! 今度どうかな?」
一方でディオとマックスがナンパしている。
どうやら身近に居る美人のリーナとサフィーは家柄もあり手が出せないらしい。
そこに現れた超絶美少女に食いついたようだ。
「え? えっと、まさかそんなわけないと思いますけど……もしかしてボクって女の子って思われてます?」
「「えっ」」
「はぁ……やっぱり……あの! ボクは男ですからっ!」
『はあっ!?』
ポロリンも男友達として誘われているのではなく誤解されていると気付いたらしい。
その言葉に男子だけではなく女子たちも反応。一斉にポロリンを見つめる。
「ハ、ハハハ……じょ、冗談でしょ? ……え、マジで……?」
「なん……だと……」
「わ、私より華奢なのに……」
「その髪の綺麗さは何!? その肌の綺麗さは何!? その仕草の可愛さは――」
収拾がつかなくなってきたねー。
ロックリザードに出会った以上の衝撃にさえ思えるよ。
「ピ、ピーゾン様、本当ですか? ポロリン様が男子と言うのは……」
「ホントだよ。チ〇コついてるらしい」
「なんとポロリン様にチ〇コが……」
「チ〇コなんかついてるわけありませんわっ!」
「<グリッド>……やっぱチ〇コついてた」
「うわああ! もうやめて! それ以上言わないで!」(美少女憤慨ポーズ)
「しかもけっこう大きい」
「ネルトさん!!」(美少女憤慨ポーズ)
初めての郊外魔物討伐。強敵との遭遇。
それに加えて誰よりかわいい男の子というショックを受けた生徒たちは、トボトボと東門に向けて歩いた。
心身ともに堪えた演習だったと言える。
東門に戻ると集合時間より早いものの、何組かのグループはすでに帰還していたらしい。
リーナが代表して「Sクラス第1班もどりました」と教諭に報告している。
私たちはギルド職員のもとへ行き、帰還報告とロックリザードの件を報告する。
「ロ、ロックリザードですか! 詳しい経緯と場所を教えて下さい! 調査申請をしなければ!」
職員の人も驚いていた。普通は森などに出る魔物ではなく、山岳とかじゃないと出ないらしい。
素材はどこに出せばいいかと尋ねると、護衛依頼の報告と一緒にギルドの買い取り窓口で、との事。
ついでにギルドに帰ったらメモを渡してくれと頼まれた。
職員さんは護衛の帰還報告で東門から動けないので調査を申請するよう先にギルドに伝えて欲しいとの事だ。
んじゃとっととギルドに戻りますかね。
と思っていたら第1班の六人が報告を終えたらしい。挨拶に来た。
「ピーゾン様、ポロリン様、ネルト様、本日はありがとうございました。大変勉強になりました。また何かの機会にお会い出来ると嬉しいです」
「うん、ちゃんと護衛できたか微妙だけどみんな無事で良かったよ。リーナもお疲れさま」
「オーーッホッホッホ! 貴女方はちゃんと護衛をしておりましたわ! 及第点を差し上げます! 今度ワタクシが指名依頼してもよろしくてよ! オーーッホッホッホ!」
「お、おう。サフィーさんもお疲れさん」
ほかの四人にもお礼を言われた。疲れてるっぽいけど達成感のある顔つきだ。
みんなと握手で別れたけど、ポロリンと握手する時の反応が微妙だった。
触れちゃいけないものに触れるみたいな。
手も腕も華奢な女の子なんだよねぇ、ポロリン。
♦
冒険者ギルドで依頼報告。とりあえず護衛依頼の報酬をもらう。
お値段金貨五枚(五〇万円)。高い! さすがは金持ち学校!
そしてメモを渡し、ロックリザードの件を報告する。
「また貴女たちは……なんで王都近郊で大物をサクッと倒してくるのか……」
受付嬢さんは頭を抱えながらそう呟く。
そんな事言われてもねぇ。被害者ですよ。
私たちが悪いみたいに言わないで下さいな。
ロックリザードの買い取りは窓口では無理なので、解体室へと向かう。
オークキングの時にもお願いしたおじさんだったので、ここでも「またお前らか」みたいな扱いされた。
ちなみにお値段は金貨一八枚。同じ亜竜扱いのワイバーンが三〇枚だったからそれより安い。
やっぱワイバーン丸ごとと、ロックリザードのぶつ切りでは価値が違うか。
全部は持ってきてないしね。肉も食べられないだろうし、血もないし。
しかし結構な稼ぎになったのは事実。
お小遣いとか抜かして、パーティー資金は金貨六〇枚ほど。富豪ですな。
これもうパーティーホームにしちゃった方がいいのでは?
「うん、装備とか考えても結構いいとこ住めそうですよね」
「ん」かっくん
「とりあえずベット湿原に行ってマリリンさんにお土産したいから、そこから帰ってきたら物件探そうか」
「ベット湿原はいつ行きます?」
「うーん、固いの斬りまくったから魔剣屋さんでメンテしたいんだよね。それに野営が絡むから明日は準備に充てて、明後日かな。早い?」
「ボクは大丈夫ですよ」
「ん。だいじょぶ」
そんな感じでその日は宿へと帰った。
……しかし予定とは確定した未来ではないのだよ。
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