ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

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第三章 毒娘、色々と出会う

68:新人冒険者ですが初めての遠征依頼に出掛けます

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「嬢ちゃん、ホントにこれロックリザード斬ったのか?」

「斬りましたけど」

「はぁ~すげえ剣の腕なんだな! 人は見かけによらねえってこったな!」


 リーナのスキル考察を終えた翌日、魔剣屋に行ってメンテをお願いした。
 そしたらハゲ親父の店主にそんな失礼な事を言われたわけだ。

 ハゲ曰く、普通は敵に対して斬るにも当て方がズレたり、曲がったりして、それが刃の歪みや欠けに繋がるそうだ。

 そしてそれは剣のサイズが大きくなればなるほど出やすくなる。扱いが難しいって事だね。
 そういった剣の扱いはスキルやジョブの補正範囲外で、単純に経験や技術による所が大きいらしい。


 言いたい事は分かる。
 でもね、動き回る相手にもちゃんと振ってちゃんと垂直に体重を乗せて当てないと『クリハン』ではクリティカル判定にならないのだよ。

 私だって伊達に『ラグーンの舞姫』と呼ばれ大剣振ってたわけじゃないんだよ。言えないけど。


 ま、ちゃんと扱えていると分かったから良し。
 ハゲ親父も特にメンテする所もなく、磨き直しだけで終わった。
 でもまぁこれに懲りずにちょくちょくは本職に見て貰いたいけどね。また来ます。


 魔剣屋を出てからは初遠征の準備で店を色々と巡る。
 いつもは日帰りで王都南の森の依頼ばかりを受けていた。
 採取も、討伐も、その場所の事だけを考えて用意すれば良いと。

 しかし今回は歩いて向かうだけで一泊二日。
 そこからベット湿地に入り、三日間の探索――採取と討伐依頼各種――を予定している。

 当然荷物は多くなるし、かと言って厳選しておかないと魔法の鞄を持っていても、現地での探索次第では入りきらなくなるだろう。
 そんなわけでポロリンやネルトと相談しつつ、丸一日かけて入念な準備を行った。





 翌日には朝からギルドに直行。目的地であるベット湿地でこなせそうな依頼をいくつか見繕って早速出発。

 東門から出て街道をひた歩く。
 馬車は使わない。理由はそこまで遠くないというのもあるし、お金がもったいないというのもある。

 が、私的に一番の理由は『その方が冒険者っぽい』という事だ。

 周りに自然しかない街道をパーティーメンバーとひたすら進む。
 時々街道まで現れる魔物を倒しつつ、警戒しつつ、和気藹々と進む。
 ああ、実に″冒険者″じゃないか。


 ……まぁそんな風に思ったのは最初だけだけどね。

 そりゃずっと歩くのはつらいし、暇だし、車が欲しくなる。
 せめて音楽プレイヤーが欲しい。
 転生して十年、未だに心はアジャストしていないらしい。


 街道を進む分にはネルトの<ホークアイ>を使うだけで索敵は事足りる。
 森とかの傍を通るような場合は私の<気配察知>もピコらせるが、基本的にはネルト頼み。
 <ホークアイ>の『半径300m俯瞰での視認』というのは反則すぎると思うよ。

 一流の斥候職の人がどの程度の察知範囲なのかは分からないが『視認』という点では引けを取らないんじゃないかと。

 まぁその分MPをよく使うので、もっぱら戦闘は暇な私とポロリンが担当する事になるんだけど。
 暇つぶしにはちょうどいい。街道に出る魔物なんてそれこそゴブリンとかだし。


 街道は途中でいくつも分岐しており、曲がればどこかの村などに繋がっているのだろう。
 私たちの目的地はずっとまっすぐだ。

 馬車で通った場合だと、だいたい一日分の距離ごとに宿場町がある。この道も同じ。
 私たちは初めての野営を挟み、二日目にして宿場町に着いた。


 初めての野営の感想? 特にないです。

 テントは魔法の鞄に収納してきたし、立てるのも楽チンな冒険者仕様だ。
 一泊だけだから食事も出来合いのもので、作ったりもしていない。
 冒険者っぽく携帯食料も買ってはいるけどね。出番なし。

 一応野営時に夕食の焚火で、途中で狩ったイノシシの肉を焼いたくらいだ。
 夜警も三時間ずつくらいしたけど問題なし。
 まぁ遠征御用達の『魔物避けのお香』も焚火で焚いてたから、夜警も一応だけど。
 強いて言えば暇でしょうがなかったくらいだね。


 とにもかくにも、宿場町に着いたその日は一日ぶりの酒場での食事と、大部屋ではあるものの夜警せずに眠った。

 初めて宿場町のありがたみを感じたと思う。
 やっぱ安心して寝られる状況ってのはありがたい。

 ……まぁ一度宿場町で拉致られた経験があるんですけどね。


 宿場町から先、まっすぐ東側には街道はない。
 街道は湿地を避けるように左右にぐるっと伸びている。

 すなわちここから先は『ベット湿地』。
 正確には、道なき道を少し進めばもう目的地であるベット湿地の狩場となる。

 宿場町からでも、すでに見える景色は水溜りが多い。
 背の低い草原と背の高い葦の群生。ぽつんぽつんと背の高い木もあるのが余計に目立つ。


 私たちは「やっと来たか」と意気込みつつベット湿地に足を踏み入れた。


「えっと、依頼はマッドスパイダー、リングスネーク、七色スズラン、ポレギの実、あと……」

「ママリミ草ですね。ママリミ草は毒草なんでピーゾンさんお任せです」

「了解。問題は<ホークアイ>で蜘蛛と蛇が見つかるかだけど……」

「んー、草が邪魔」

「だよねー。もうちょっとデカイ魔物の方が逆に良かったかも」

「マッドスパイダーもリングスネークもEランクですからね。Cとは言わないまでもDランクの討伐依頼があれば良かったんですけどね」


 なかったもんはしょうがないね。あんまりベット湿地の奥の方には行きたくないし。

 広い湿地は王都から離れれば離れるほど、強い魔物とか出て来るらしい。
 当然、依頼のランクは上がる。
 私たちは初遠征という事もあり、比較的浅い所で可能な依頼しか受けていないのだ。

 とりあえず<毒感知>と<ホークアイ>でなんか見つかったら行く感じかな。
 いざ進みましょう。


 と、湿地を進んでみれば、なかなかどうして難しいと感じる。
 いつもの森も歩きづらい所はあるのだが、それでも冒険者や魔物によって踏み固められていたんだなーと実感。
 まぁ獣道でもそういう所を選んで歩くのが基本なわけだが、このベット湿地だと勝手が違う。


「んー、足が重い」

「地面がゆるいですよね。沼っぽいのは避けても泥が靴裏に付いちゃいます。こまめに泥をとらないと動きに支障が出ますよ」

「私のウサウサブーツがががが」


 真っ白なモフモフが台無しなんだが?
 あとでネルトに<洗浄>してもらおう。





 一応、植生の地図とかについてはギルドの資料室でメモってきたので、それを頼りに探索した。
 採取をしながら出会った魔物を討伐と、そんな流れだ。
 結果、初日の探索にて依頼の八割方は終了。やはり資料室有能。

 夕方前には宿場町まで戻って明日に備える。
 今回の遠征は移動含めて七日間を目論んでいる。

 もちろん依頼数が足りなければ延長もありえるけど、無理そうなら大人しく依頼失敗とするつもりだ。
 初遠征で無理はしたくないという安全第一方針である。


「明日は北側の川沿いに行ってみようか」

「南側は草の背が高いですからね。探索が難しそうです」

「ん。でも人が」


 そう、私たち以外にもベット湿地に来ている冒険者パーティーが何組も居る。
 さすがに私たちと同年代の『いかにも新人です』っていうのは居ないが若年層が多い。

 私たちが探索しているのは広大なベット湿地の西側……王都寄りの方だけで、そこはDランクや下手するとEランクパーティーでも行けそうなレベルなのだ。

 私たちと同じような浅層狙いのパーティーや、奥側――東側から流れて来たパーティーも居るわけで、そこそこの頻度で他パーティーと遭遇する。

 いや、<ホークアイ>で確認して遭遇しそうになったら離れるんだけどさ。


 広い湿地の奥のほうには強い魔物が居る他、ダンジョンもあるらしい。
 そうなるとさすがにEランクなど居ないだろう。多分Cランクくらいが多いんじゃないかと。

 まぁそこへ行くような人はここの王都寄りの宿場町じゃなくて、ぐるっと湿地を回った別の街道沿いの宿場町が拠点なんだろうけどね。

 ともかく、奥の方で探索して、王都への帰り道がてらに浅い方にまで足を伸ばすパーティーも居るって事。


 背の高い草が生えていれば探索はしづらいけど他人に見られる心配が少ない。
 背の低い草しかなかったり川沿いだと遮蔽物がないから、その逆だ。

 ま、今回は安全第一なので川沿いにしますけどね。
 常時<気配察知>してるわけじゃないんで、蜘蛛や蛇に襲い掛かられるとつらいんです。


 そんなわけで翌日、湿地探索二日目。


「<毒感知>……お、多分また蜘蛛」

「多いですね」

「マリリンのおみやげ」


 依頼のマッドスパイダーはすでに指定の五体を狩り終え、討伐証明部位の顎を回収済み。
 もちろんマリリンさんから頼まれた魔篩板ましばんもね。

 ただこの湿地にはEランクのマッドスパイダー以外にも蜘蛛系魔物が多いらしく、同じくEランクの高足蜘蛛やDランクのクリアタランチュラなんかも居る。

 総じて毒持ちらしく私の<毒感知>に引っ掛かる。
 クリアタランチュラなんか透明のプラスチックみたいな見た目だから普通に見つけるのは難しいと思うんだけどラッキーだね。

 帰った時に依頼票があれば受付と同時に報告したいので、一応討伐証明部位は確保している。


「うわぁ……」

「いい加減慣れなさい」

「う、うん……」


 ちなみにポロリンは蜘蛛が苦手らしい。
 確かに魔篩板は蜘蛛の体内だからグロいんだけどね。
 しかしポロリンも男の意地(笑)を見せ、頑張って倒し、頑張って解体している。

 時々「ひぃっ」と言うのが可愛らしい。男の意地(笑)。

 気持ちは分かるが、あいにくと私は『クリハン』でグロ耐性あるし、ネルトは淡々と解体する。
 何なら高足蜘蛛とか大きめのヤツならば、足を焼いて食おうとしている。
 さすがに私もそれは無理だ。焼こうとしているのを止めた。

 そうして細々と討伐しているとネルトが声を上げる。


「ん。レベル上がった」

「おお、ナイスニート」

「んー、スキル覚えた」

「なぬっ!?」

「ピーゾンさん、目がギラーンってなってますよ」


 ネルトがレベル20になった。
 これだけ乱獲してるし王都周りの魔物より強いんだろうしね。

 あ、そう言えばこないだのロックリザードは私にしか経験値が入らなかったんだよね。
 なぜ二人に入らなかったのか。
 ネルトはともかくポロリンは30mほど離れていたらしいんだけど、それでも入らない。

 パーティー人数、距離、その他にもどんな形で戦闘に参加してたのかも″寄生″の判断基準になるのかもしれない。

 全く戦闘に参加せずに経験値が入るのは知っているから、それでも″戦闘区域″に入ってないといけないとか?
 まぁ分かんないけど。


 とりあえずネルトの能力をチェックする。


―――――
職業:ニートの魔女Lv20(+3)
スキル:生活魔法Lv3(+1)、空間魔法Lv3(+1)、念力Lv4(+1)、室内空調Lv2(+1)、快眠(New)
生活魔法=着火・給水・乾燥・洗浄・照明・手当(New)
空間魔法=グリッド・ホークアイ・ルールシュレッド(New)
―――――


「なんじゃこれ」


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