ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

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第三章 毒娘、色々と出会う

69:またニートが微妙に扱いにくい魔法を覚えました

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「なんじゃこれ」

「ん?」

「何がです? <ルールシュレッド>ですか?」

「これちょっと調べないと……」


 まず<念力>と<室内空調>は範囲や大きさが変わった感じで、それは良い。

 新しく覚えた<快眠>は短時間でも眠れば、HPMPが極端に回復するというもの。
 既知スキルなので私でも知っていた。ニートらしいスキルだね。

 <生活魔法>の<手当>は切り傷などの軽傷を癒す。
 回復魔法以下だけど現状<ピンクマッサージ>しかないから非常にありがたい。


 で、問題は<ルールシュレッド>だ。
『シュレッド』は『シュレッダー』と同じだろう。つまり『細断』。
 攻撃系……しかも斬撃系の魔法なんじゃないか?

 しかし『ルール』が何を指すのか分からない。やっぱり『規則』だろうか。

 だとすると『規則を細断する』という恐ろしすぎる効果になるんだが……。


「私たち離れるから、試しにその草むらにスキル使ってみて。杖を前に向けてまっすぐ何か出すイメージで。ポロリン、もっと後ろに行って」

「えっ、こんなに離れるんですか? いまだかつてない警戒の仕方ですね……」

「オッケー、じゃあネルトやって」

「ん……<ルールシュレッド>……ん? できない」


 ……しかし何も起こらなかった。
 おや? 発動しない? また何か条件があるのか?

 リーナの時も<解体>後じゃないと<タンポポ乗せ>出来なかったりしたからなー。
 それか攻撃魔法じゃなく全く別の用途なのかもしれない。
 と考えつつ、とにかく色々と試してみた結果――。


「<グリッド>……おお、使える」

「よっし。んじゃ草むらに<グリッド>当てつつ試してみて」

「ん。<ルールシュレッド>」


 ――スパァァァン!!!


「「「おお!」」」


 背の高い葦がまとめて斬れた。
 剣で薙いだように「バサササッ!」と順々に斬れていくわけではない。
 列を為した葦が何本も、同時に・・・斬れたのだ。

 どうやら<ルールシュレッド>というのは<グリッド>と併用する魔法らしい。
 ネルトにしか見えない<グリッド>の格子空間。最大2m四方の箱。
 その立方体を形成する″十二本の辺″が″同時に切断される″という事らしい。


 つまり『ルール』とは『規則』ではなく『罫線』だったというわけだ。
『<グリッド>の罫線を裁断(細断)する魔法』だと。


 ネルト待望のちゃんとした攻撃魔法であると同時に非常に強力な魔法である。
 <グリッド>の範囲が約50mなので攻撃範囲としても申し分ない。

 しかし色々と問題が盛り沢山でもある。


① <グリッド>で指定してから<ルールシュレッド>を放つので咄嗟には撃てない。

② 消費MPが30と馬鹿高い。ついでに言えば<グリッド>の分も消費される。

③ 十二辺のうち、どれか一辺という指定は出来ない。必ず十二辺全てが斬れる。

④ つまり″斬りたくないもの″を<グリッド>の罫線外に指定しないといけない。確認が重要。

⑤ ″面″で斬れず″線″で斬るから、実質的な攻撃範囲は極めて狭い。

⑥ 発動すれば石だろうが木だろうが、何でも瞬時に斬れる。つまりフレンドリーファイアで即死の可能性。


「ざっと思いつく所でこんなもんだね」

「うわぁ……」

「んー……」


 便利なのは便利だけど、それ以上に危険な魔法という印象だね。私としては。
 まぁ<空間魔法>自体が危険だとは思ってたけど、ますますネルトの危険性が上がってしまうよ。

 ネルトも危険性についてはよく分かってくれたらしく、それからは戦術を含めた練習を入念に行う事になった。

 万が一、動き回っている前衛の私やポロリンに当てたら死ぬからね。
 消費MPの問題もあるし、どういう時に使うか、使うとなればいかにスムーズに使うか、そういった事を相談しながら試す事となった。





 そうして迎えた探索三日目、最終日。
 依頼の討伐と採取をすでに終え、マリリンさん向けの蜘蛛狩りと、なんかお宝(採取物)ないかなーと少し奥まで足を延ばした。

 最初にそれ・・を発見したのはネルトの<ホークアイ>。

 葦の群生の中を歩く五人パーティーを上空からの俯瞰視点で捉えた。
 他のパーティーとの遭遇は避けたい私たちは、少し離れようかと思ったのだが――


「んー、なんか変」


 とネルトが言うのだ。
 聞けば五人全員が女性で装備どころか、何も着ていないように見える、と。

 はっ! これはアレか? 山賊に拉致られた女性たちが乱暴され、隙を見て逃げ出してる系のアレか?
 助けよう! 女性の尊厳を守らねば!

 そう思い、裸と聞いて顔を赤らめているポロリンと無表情のネルトと共に女性の集団に向かったのだ。


 そしたら……。


「キシャアアア!!!」


 確かにこのベット湿地には蜘蛛系の魔物が多い。
 そうは言っていたけども……


「なんでアラクネまで居るのさあああ!!!」


 アラクネでしたよ、ええ。Cランクが五体も。
 あのね、アラクネって聞いて蜘蛛の胴体の上に裸の美女の上半身がくっついてると思うでしょう。
 私もそんなイメージを勝手にしていたわけですよ。

 確かにフォルムはその通りなんだけど、蜘蛛に乗ってるのは『人っぽい何か』なんだよ。
 長い黒髪を振り回し、鬼の形相でね。腕なんか手長族かってくらい長い。

 もちろん人語なんか介せないし超魔物だよ。
 そのくせ人っぽいから攻撃に躊躇してしまうというね。
 え? ゴブリンも人っぽいだろって? あれノーカンだから。


「ポロリン、<挑発>は一体までにして! ネルトは<念力>盾から<ルールシュレッド>! 斬る方向注意してね! 私の麻痺は期待しないで! 各個撃破でいくよ!」

「了解!」「ん!」


 蜘蛛系に状態異常はほとんど効かない。
 それはここ二日間で得た情報だ。やっぱ自分が毒持ってたりするからだろうか。
 おそらくアラクネもそうだろうと魔剣ですいすいと回避しながら斬りつけていく。

 しかし身長も体長も2m近いんだよね。
 それで手足がワサワサとしてくるし。集団相手だと回避しづらい。

 ポロリンもネルトも一対一がいいとこだろう。
 <ルールシュレッド>とかいう反則技がなければ、それすら危険だと思う。
 現状彼女たちはよくやっている。
 ということで、私は三体相手だ。集中しよう。


「キシャアアア!!!」

「うるさいわっ!」





「……で、アラクネの討伐証明ってどこ?」

「さあ……?」

「んー全部もってく?」

「入りきんないよ。解体して良さげなとこだけ持ってくしか……」

「これ解体するんですか……?」


 さすがになぁ。蜘蛛部分はまだマシだけど、上半身はなぁ……。
 でも魔石があるとすると上半身の胸だろうし開くしかない。
 あと売れそうなのどこだよ。
 あー資料室で調べた時に湿地の奥側の魔物も見ておくべきだった。


「足食べる?」

「ごめんネルト、自重して」


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