ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

文字の大きさ
85 / 171
第三章 毒娘、色々と出会う

75:新人らしからぬパーティーホームが決まりました

しおりを挟む


 中央区の大通り沿いにある不動産ギルドに到着。冒険者ギルドからすぐだ。
 着いてからの展開はトントン拍子に進んだ。


 まずギルドに入れば注目を浴び、こちらから話す前に職員にリーナの存在がバレる。
 ギルド長がダッシュで出て来る。案内されるまま個室へ。

 サフィーの存在にも気付き「ス、ストライド公爵家の!?」とテンパる。
 パーティーホームを探している旨を伝え、しかし新人冒険者なのでそれ相応のものが良いと相談。

 サフィーが「スタイリッシュな物件がよろしいですわね! オーーッホッホッホ!」とよく分からない事を言い出し、無視する事を決める。

 どう見ても「殿下の手前、下手な物件など紹介できん!」と言わんばかりの物件を超格安で提示され、ギルド長の付き添いのもと、物件の下見に行く。←今ここ


 リーナとサフィーの紹介とは何だったのか。


「宰相か内務卿の名前を出すつもりでしたが、その暇もなかったですね」

「ワタクシもお爺様の名前を使うつもりでしたが。たしかギルドとも懇意にしていたはずですし」


 そんな話を先頭で歩きながら背中に聞くギルド長は、何やら汗が止まらないご様子。
 それもう紹介じゃなくて恐喝の類だからね?
 二人には″使っているつもりのない権力″というものを理解して欲しい。

 そんなわけで王都中央の大十字路、その少し北側、大通りから二本ばかし脇道に入った所にやってきた。
 つまりは中央区のほぼ中央で、北寄りの高級住宅街だ。

 えっ、まずいですよこれ。


「こちらの物件でございます」


 汗を拭きながら紹介してくれたのは、庭付き一戸建て。
 馬車が乗り入れできる大きな門と、そこから家までは石畳が敷かれ、両サイドの庭園は芝生と庭木、小さいながらも池すらある。
 白い外観の家は二階建て。庇付きの玄関もこれまた大きい。

 これ完全に貴族邸宅でしょう?
 私、新人冒険者パーティー用って言ったよね?

 ポロリンを見てみなさい、ビクついてるじゃない。可愛らしく。
 ネルトは「おお」と感動してるっぽい。無表情ながら。
 リーナとサフィーは超普通。「これくらいか」ってなもんで。庶民感覚を養え。


「こちらは以前、他国のとある貴族様の別邸だった物件です。他国の方でしたので貴族区に邸宅を持つ事が出来ず、しかし王国に長い事暮らしていらっしゃったので、その時に住まわれていたものです。管理はギルドで定期的に行っておりますので、庭園は整っておりますし、屋内の掃除も行っております」


 と、汗が止まらない様子のギルド長。

 なるほど他国の貴族か。随分と一等地に暮らすもんだね。
 貴族的にはもっと北の方がいいのかもしれないけど。
 ギルド長に続いて門から石畳の道を歩き、玄関から屋内に入る。

 エントランスは広いものの、建物自体は思っていたほど大きくないようだ。
 貴族邸宅って言ったらもっとドデカいイメージだったけど、そうでもない。
 その貴族ってのは小じんまり住んでたっぽいね。

 とは言え、庶民感覚で考えれば「宿屋かな?」となるんだけど。
 少なくとも私の実家の数倍は大きい。


 一階はエントランスの他、食堂と調理場(地下倉庫付き)、浴場、談話室、応接室、客室。
 二階に主寝室、執務室、書斎、私室が五つ。一階二階ともにトイレ・倉庫あり。庭に納屋あり。


「お値段は月に金貨二枚でいかがでしょうか」

「「安っ!」」

「このくらいの屋敷ですと月に金貨十枚は最低でもかかると思いましたが」

「リーナさん、立地を考えますと十二枚でも安いですわ」

「こちらとしては誰も利用しないまま維持費ばかりかかるので、住んで頂けるならばお安くと思った次第です。それにダンデリーナ殿下やサフィー様、そして今話題の新星冒険者の方々に住んで頂けるならばお安くする価値があります」


 話題の新星はさておき、絶対前者が理由でしょう。
 そりゃリーナが住むってなれば箔が付くよね。

 南西区・南東区のアパート形式で金貨一枚くらいだからね。
 中央区ど真ん中の庭付き一戸建てで二枚はおかしい。
 今までの維持費・管理費・税金の元とれないでしょう。税金あるのか知らないけど。

 とは言え、貰えるもんは貰う性格ですから。


「借ります」

「ありがとうございます。ではあちらの部屋で契約書類を」

「いつから入れます?」

「本日から大丈夫です」


 この世界に敷金・礼金というのは存在しないらしい。ただ契約手数料に銀貨三十枚かかる。
 という事で金貨二枚、銀貨三十枚(約二三万円)をこの場でお支払い。
 ギルド長さんはホッとした表情でさっさと帰って行った。


「勝手に即決しちゃったけど大丈夫だった?」

「大丈夫ですけどいいんですかね、こんな大きなホーム……」

「ん。大きい」


 という庶民派意見。


「そうでしょうか。小じんまりとして新人冒険者に相応しいかと思ったのですが……」

「新人らしくこの辺りが妥当でしょうとも! ワタクシに否はありませんわ!」


 という王侯貴族意見。
 感覚の違いはアジャストさせていかないとなぁ。主に後者二人に分からせる感じで。


「でも管理は大丈夫ですかね。ボクこれだけの家、掃除するだけでも大変だと思うんですけど」

「わたくしの侍女を遣わせましょうか」

「悩ましいね。そりゃリーナに頼れば管理は楽なんだろうけどさ、私たちのホームだから私たちでって気持ちもある」

「そうですわ! せっかくのパーティーホームですしワタクシたちで管理しますわよ!」

「ん。<洗浄>する」


 リーナとかサフィーは自分の側付きメイドがいるはずだからね。
 管理を手伝ってもらうってのも手だ。
 正直、これだけの屋敷を私たちだけで管理出来るのか不安がある。

 とは言え、サフィーとネルトが意気込んでるように、せっかく私たちパーティーの拠点が出来たのだから極力自分たちでやりたいって気持ちもある。

 だからとりあえずは掃除日とか分担とか決めてやってみて、それから考えるかな。
 まぁネルトの<生活魔法>が大活躍なのは間違いない。


 リーナとサフィーは実家から離れて暮らすのが初めてだから楽しそう。
 全部を自分たちでやるとか、苦労が分からないだろうし楽しみなんだろうね。
 小学校の時の林間学校を思い出すね。子供同士でワイワイお泊りする感じ。


「部屋割りはどうする? 全員二階?」

「ん? 一人一部屋?」

「そうだよ。主寝室が一つと私室が五つもあるからね。個室でいいでしょ」

「んー、一人でなんて使ったことない」


 おう、そうか。ネルトは孤児院だもんね。
 王都に来て冒険者になっても私たちは三人部屋だったし。
 でもそこは慣れたほうがいいんじゃないかな。成長って意味で。

 一人で寝るのが寂しかったらモフモフのぬいぐるみでも抱いて寝るといいよ、とアドバイスすると「おお」と乗り気になった。

 あとは誰かの部屋にお邪魔するとかね。
 ポロリン以外ならオーケーでしょう。


「リーナかサフィー、主寝室使っていいよ」

「いえ、そこはリーダーのピーゾン様が使うべきです」

「そうですわ! ワタクシは逆に狭い部屋が良いですわ! 家と違う環境のほうがワクワクしますでしょう!」

「いや、私は私室で十分だなぁ。ポロリンは? 主寝室は私室と離れてるし、男一人で離れた部屋のほうがいいんじゃない?」

「あっ、そう言えばポロリンさんは男子でしたわね……」

「ええ、つい忘れがちになってしまいます……」

「忘れないで下さいっ! えっと、ボクは普通の部屋でいいです。主寝室とか大きすぎますよ」


 という事で主寝室は空き部屋と化した。
 五人でそれぞれ私室を決めて部屋割りは終了。

 ベッドやタンスなどの家具はある。
 ただシーツや毛布、その他もろもろ足りないのがあるね。

 食事は出来合いとか外食でいいけど、寝るのに必要なものは最低限揃えたい。
 まぁ最悪、野営用の毛布とかあるし、今夜くらいホームじゃなくて普通に宿屋に泊まってもいいんだけどさ。

 あとお風呂グッズとかタオルとかは欲しいなぁ。
 出来れば今日からお風呂ありきの生活がしたい。


 ちなみにお風呂やキッチン、トイレの水道や照明なんかも魔道具仕様になっている。
 井戸で汲んだり、ランタンを灯したりなんかしないらしい。さすが元貴族別邸。

 その動力に当たる魔石はすでに付いていて、毎日魔力を籠める必要があるとの事だ。
 ただ魔石は消耗品でもあるので、買っておいた方が良いかもしれないね。


「じゃあ今日のところは色々と買い出しして、住めるように整えようか」

『おー』


 とは言うものの、別行動かな。
 リーナとサフィーは実家から色々と運び込みたいだろうし。
 とりあえず私たち三人で必要そうなものを買いそろえ、夕方にホームで合流って感じだろうか。


「わたくしも皆様とお買い物したかったのですが……」


 なるほど。そうか、今まで気軽に出歩いてショッピングは出来なかったか。
 新生活、冒険者デビュー、親元を離れる暮らし。
 今まで出来なかった事がたくさん出来るからね。出来るだけ酌んでやるべきだろう。


「そうしたら、五人で買い出しして、二人はこっちに泊まらず実家に帰宅。明日、荷物と一緒に合流ってのは?」

「ありがとうございます、ピーゾン様」

「ワタクシもそれでいいですわ! ……でも装備を整えて来る必要ございませんでしたわね」


 冒険者は装備が普段着みたいなもんだからね。そこは慣れて下さいな。
 これからも装備着てるのが基本になりますし。
 んじゃ五人で買い出し行きますか。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

生きるために逃げだした。幸せになりたい。

白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。 2020/9/19 第一章終了 続きが書け次第また連載再開します。 2021/2/14 第二章開幕 2021/2/28 完結

追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─

石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」 貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。 「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」 かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。 ときどき舞い込んでくるトラブル。 慌ててミーナを探しているルカ。 果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。 甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。 *サイトより転載になります。

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

処理中です...