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第三章 毒娘、色々と出会う
74:メンバーが増えてやる事もかなり増えました
しおりを挟む翌日、私たち三人は朝食を食べ終わった食堂の席で、リーナとサフィーと合流した。
周りがざわつく。
私たちだけでも目立つのに第七王女と金髪ドリルが来たのだ。それはしょうがない。
とりあえず話し合う為に部屋へと戻った。
さすがにパーティーに正式加入した昨日はおっさんに送られて二人とも実家に帰った。
そして昨日の今日でもうパーティーとして活動すると言う。
昨日の学生服ではなく戦闘用の装備品を身に纏い、最低限の荷物を持っての合流。
国王を説得したというリーナはまだしも、サフィーが突発的に冒険者になると言い出したのは昨日だ。
それでよくこうして来れたもんだと感心する……と言うか呆れると言うか。
私的には数日おいてから正式加入となるかと思っていた。
家もそうだし学校とかにも言わないといけないだろう。
クラスメイトとか「昨日まで一緒に授業を受けていた主席と次席がいきなり休学して冒険者になった」という訳の分からない状況になるだろうし。色々と心配です。
ま、それはともかくだ。
五人揃った新生【輝く礁域】。
やる事は目白押しなんですけど、その前に……。
「…………まず、その装備はなんなの?」
目の前に座る生真面目な超美少女。
王族であるはずの彼女は、どう見てもメイド服を着ている。
濃紺の長袖・くるぶし丈のメイド服、そしてベージュっぽい外套は首元で止まっている。
エプロンの下には皮のベルトが巻かれ、下げられているのは短剣……いや包丁か。
「わたくしは職の装備制限で、武器は包丁、体防具は『エプロンありき』に限定されているのです。どうやらエプロンドレスならば大丈夫らしく、これに落ち着きました」
普通のエプロンか、エプロンドレスか、プレートっぽい鉄の前掛けくらいしか装備できないそうだ。
もっと言えば軽装の装備品は装備出来るが、その上にエプロンをする必要があるらしい。
どういう事よそれ、どういう仕様なの? よく見つけたね、その条件。
【サシミタンポポ】どうこうじゃなくて解体職人じゃないか。
で、防御力で考えれば鉄の前掛けなんだけど、重いのでエプロンドレスにしたと。
王城のメイドさん用のメイド服を参考にオーダーメイドで『装備品』として作ったそうだ。
一応『全身を保護する防具』となっているそうだが、だったらシャツとか軽装の防具に普通のエプロン付けてもいいんじゃね? って思った。
その方が色々と融通が利きそうな気がする。
……まさかリーナがメイド趣味だったとか?
……詳しくは聞かないでおこう。また国家機密かもしれない。
しかし随分な装備制限だなー。
私の武器装備不可なんか楽な部類なのかも。防具は融通きくし。
そしてその隣に目を向ける。
サフィーは藍色のくノ一。ノースリーブ、膝上丈の和装。
まぁここまではいいよ。一応【忍者】だからね。
一目で【忍者】ってバレる恰好だし、全く忍ぶ気がないけどまぁ許そうじゃないか。
問題はその上に羽織っている茶色の外套がさ、いや被ってるフードがさ、モフモフな狐耳ついてるんだよね。
「ワ、ワタクシは装備制限で体装備が『忍装束』に限定されているんですわ!」
「そっちはいいんだけど……その狐はマリリンさんの店だよね? それ見たよ。確か高かったはず……」
「ま、まぁ、そこそこしましたわね! いえ、決して貴女方の恰好がお可愛らしくてお店を探したわけではありませんわよっ! 勘違いしないで下さいまし!」
おお、金髪ドリルに古典的なのやられるとグッとくるね。
ちなみにブーツも狐だ。外套もネルトのネコネコローブと同じく狐尻尾が付いている。
ネルトがさっきから「もふもふ」と狐耳と尻尾をなでている。
【スタイリッシュ忍者】の防具は『忍装束』限定らしいが、あくまで体防具だけの事らしい。
だからブーツは狐だし、外套も羽織れる。腕装備とかも大丈夫じゃないだろうか。
多分だけどリーナのエプロン縛りも同じなんじゃないかと。
私やネルトよりは縛り条件が厳しいが、ポロリンやサフィーに比べればかなり緩い縛り条件に思える。
重装備じゃなきゃ、どんな装備にしたってエプロン付ければいいわけだしね。
「なんか動物率が上がりましたね……さらに目立つなぁ」
「もうこうなったらポロリンとリーナも買うしかないね」
「ええっ! 嫌ですよ、ボク!」
「わたくしは構いません。優良な魔装具であれば利用すべきです」
リーナの外套は普通だからね、動物モフモフシリーズにしても良さそう。
五人中四人が動物モフモフとか、冒険者じゃなくて大道芸人の集団にしか見えなさそう。
そうなるとポロリン一人だけ浮きそうだけどなー。逆に目立つんじゃない?
「……しかしピーゾンさんとネルトさんの服もお可愛らしいですわね。それもあのお店ですの? ワタクシがお店に行った時にはございませんでしたが」
「これ昨日買ったんだよ。私がデザインしてマリリンさんに作ってもらったんだ。近々本格的に売り出すと思うけど」
「んまっ! ピーゾンさんデザインですの!? それもよろしいですわねぇ……忍装束しか着られないこの身が恨めしいですわぁ」
「普通の服装備もダメなの? 学生服は装備してたじゃん」
「それは学生服が特別ですのよ。職に関係なく装備できるのはアレくらいですわ。性能も悪いですし」
「わたくしは着られるかもしれません。その上にエプロンをつければ、ですが」
このファンシー装衣も見た目はスクール系なんだけどね。
王女がこれ着てエプロンつけると……なんと言うかグッとくるね。
まぁ装備に関してはのちに考えましょ。
しこたま脱線したけど、女五人も集まれば姦しいってもんでね。
えっ、何、ポロリン。私何も間違えてない。
さあ話を本題に戻しますよ。
「で、やらなきゃいけない事リストがこちらです」(優先度高い順)
① ギルドで二人の冒険者登録、及びパーティー登録
② パーティーホームの用意
③ スキル考察(特にサフィー)
④ 集団戦闘訓練(戦術含む)
⑤ 個人戦闘訓練
⑥ 依頼を受ける
⑦ 装備を考えたり、道具買ったり色々
「ワ、ワタクシたち冒険者になるのですよね? 依頼が六番目ですの?」
「仕事の前の準備が多すぎるんだよ」
「パーティーホームが一気に上位に来ましたね」
「二人が実家から通うんなら別に急ぐ必要もないんだけどね、そうじゃないんでしょ?」
そう、二人は地元だと言うのに寝泊りを共にするというのだ。
それが冒険者であり、それがパーティーであると。
まぁ言わんとしてる事は分かるんだが、実家(王城含む)がすぐそこなのになぁと思ってしまう。
おまけに私たちと寝食を共にってなると、さすがにこんな安宿に泊まらせるわけにもいかない。
王侯貴族を泊まらせるってなると宿側も困るでしょ。
かと言って高級宿に泊まり続けるのも馬鹿馬鹿しいし、だったらパーティーホームをさっさと見繕おうというわけです。
「わたくし達の為に……申し訳ありません」
「いや、もともとパーティーホームは早くに借りようって話してたんだよ。そのタイミングが今になったってだけ。とりあえずホームに腰を落ち着けてからパーティーとして活動するよ」
「ふむ、そういう事でしたらワタクシかダン……リーナさんの紹介で良い物件を探せるんじゃありません事?」
「ああ、それは良いですね。さすがサフィー様です」
「えっ、いいの? それはすごく助かるけど」
さすがに王侯貴族の権力を使いまくるとか言われると引くけど、紹介くらいならありがたいね。
あとサフィーがリーナの呼び方をこの機に変えた。いや、変えてもらった。
街中で『ダンデリーナ様』と呼ぶのは騒ぎが起きるからね、確実に。
んじゃあ、とりあえずギルド行ってから、物件探しますか。
♦
冒険者ギルドに着くと、大勢の冒険者やギルド職員からの注目を浴びる。
いや、すでに宿から大通りに出ただけでも視線が痛い。
覚悟はしていたが、想定以上に目を引くらしい。
「おい、何なんだあの二人……」
「あいつらメンバー増やしたのか……?」
「ウ、ウサギと猫に狐が増えやがった……!」
「もう一人はメイドか……?」
「いや、あのメイド……まさか……!」
「ダンデリーナ王女!? いや、そんなわけないだろ……」
「ああ、まさか姫様がメイドの恰好であいつらと一緒にいるわけがない」
「しかしあの美しさは……」
「よく見ろ、ポロリンちゃんの方がかわいいじゃないか。人違いだろ」
「だよなぁ。いやそれでもかなりの美人だぞ。ポロリンちゃん抜かしたらダントツだ」
などと呟く声が多数。
リーナは小声でポロリンに感謝している。ポロリンのおかげで注目が分散されているのだ。
これでポロリンが居なかったら「王女、王女」と大騒ぎだろう。
尚、当のポロリンは全く納得いってない表情。諦めなさい。なぜかほぼほぼ名前知られてるし。
しかしやっぱりリーナは抜群の超絶美少女なんだなぁと周りの反応で確信する。
『第七王女殿下は国で一番の美少女』という噂があったらしいが、誇張なくその通りなんだよね。
ちなみにその噂はポロリンから聞いて、ポロリンはシェラちゃんに聞いたらしい。
あの八歳児はどこから情報と知識を仕入れるのか……あれ、二年後は絶対固有職だろ。存在自体が希少すぎる。
そして、それでも尚、ポロリンの方が可愛いと見られる不具合。
見慣れた私でもそう思うから仕方ないね。
新規登録窓口は相変わらず暇そうだったので、列にも並ばず受付のお姉さんに登録をお願いする。
仮に顔を知っていても『ダンデリーナ殿下に似ている別人』と思ったのだろう。
まさかメイド服を着て、冒険者登録に来るわけがないと。
しかしながら、登録用紙を見るなり顔色が変わった。
残念、そこのメイドは第七王女殿下本人だ。
平伏すべきか悩んだのだろう、躊躇があった後「しょ、少々お待ち下さいっ」と上ずった声を出して奥に駆け込む。
ダッシュで戻って来たかと思えば、ギルドマスター室へ行ってくれと。
あーそうなるのね。私は観念して五人で三階に向かった。
トントントン
「【輝く礁域】ですが、ギルドマスターはいらっしゃいますか」
「どうぞ」
おお、以前は「入れ」だったのに「どうぞ」だ。
失礼しますと部屋に入れば、ギルドマスターのリムリラさんは片膝をついていた。
「お初にお目にかかります、ダンデリーナ殿下、サフィー様。冒険者ギルド王都支部のギルドマスター、リムリラでございます」
「どうぞ頭をお上げ下さい、リムリラ様。わたくしは王女ではなく一人の新人冒険者として来ております。むしろ畏まるのはこちらの方。どうぞただの新人のつもりで接して頂けると嬉しいです」
「リーナさんはともかくワタクシに傅く必要はございませんわよ。貴族としても家の事でワタクシ個人はただの一国民。普段通りの対応で結構ですわ。リーナさんではありませんが、むしろこちらが頭を下げる立場なのは重々承知しております」
この後、「どうぞどうぞ」の応酬があり、結局はリムリラさんが折れた。
そりゃいきなり王女と公爵令嬢が来たらギルマスとしてはそういう対応になるんだろうけどね。
リムリラさんが普段の傲慢不遜な感じに戻るまでには時間が掛かった。
何とか妥協してもらったけど、未だに若干の恐縮感は残っている。
「はぁ……それで? とりあえずピーゾン説明してくれ」
「えっとですね――」
説明と言われても困るんだけどね。
こないだの護衛依頼で一緒になって、そこで仲良くなって、職のアドバイスとかしてたら冒険者になるって言い出したと。
これで納得できるもんなのかね?
「……あのロックリザードの件か。あれが出た、そしてお前らが倒したと聞いて、第1班にお前らを付けたのは正解だと思ってたんだがな……こんな落とし穴があるとは……」
「あれ、調査は結局どうなったんです?」
「周辺の森に異常はなし。方向的には北のミガンマ森林かその先のタデル鉱山が考えられるが……そこから来たとしても距離がありすぎる。本来森に居るようなやつではないからな」
うーむ。じゃあ分からず終いか。
ワイバーンと言い、ロックリザードと言い、変なのに当たるもんだね。
「ちなみに国王陛下や公爵閣下は二人が冒険者となる事をご存じなのか?」
「説得済みらしいですよ。ね?」
「はい、お父様にも相談の上、冒険者となる事を了承して頂きました」
「ワタクシの場合は笑って快諾されましたわね。リーナさんが先に冒険者となるご意思を示していらっしゃったのでそのせいもあると思いますわ」
「ふむ、そうですか。しかしやたらな依頼は回さない方が良いか……とは言え戦力的に……」
リムリラさんはブツブツと呟きながら考え込んでいる。
気持ちは分かる。リーナが居るなら危険な指名依頼とか出すの躊躇しちゃうよね。
なんか国王がリーナを溺愛してるのって周知の事実らしいし。
ギルドとしては扱いに困るだろうなぁ……ま、私が考える事じゃないけど。
それから私たちはギルドマスター室でそのまま手続きを終えた。
リーナとサフィーはFランクの冒険者カードを受け取る。
パーティーとしては『Eランクパーティー』と降格になるそうだ。
Dが二人、Eが一人、Fが二人だからね。
リムリラさんを通してギルド職員の人たちには「普通に接してくれ」とお願いしてある。
貴族ではなく新人冒険者として、と。
まーそれで普通に接してくれるかは分からないけどね。
あと「パーティーホームが決まったら連絡先を教えてくれ」とも言われた。
ギルドでも私たちの事を把握しておきたいって事だろうね。
じゃあそのホームを探しに行きますか。
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