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第三章 毒娘、色々と出会う
77:五人で戦う為に色々と確認していこうと思います
しおりを挟む翌日の早朝、私たち三人は市へと来ている。
せっかくキッチンや冷蔵庫代わりの地下保管庫があるのでこれからは自炊が主になるかなと。
特にポロリンがはりきっている。
もしリーナとサフィーが来るならば待っていてもらおうと玄関にメモを置いてきた。
市というと朝市のイメージだが、前世と違い夜に運搬したり漁をしたりといった事はしない。
仮に漁をしても王都までの運搬手段がないので早朝に新鮮な生鮮食品が並ぶわけではない。
しかしながらこの世界でも市と言えば朝のイメージなのだ。
朝が賑わい、夕方は閑散としている。
なぜかと言えば単純な話で、冷やす魔道具が高価だから、日中に市に並べておくわけにはいかないと。
傷むからね。だから多くの店が昼前に閉めるというわけだ。
王都は広く、市となる通りや区画は何か所かある。
そのうち、私たちのホームから近いのは『中央区東市』。徒歩十分くらいである。
ちなみに中央区には『西市』もあるが、どちらも王都で一番の規模を誇る。
やはり中央区は賑わいやすく、色々と集まりやすいのだ。
『東市』は大通りから数本入った先にある通り三つ分ほどの区画だ。
そこに露店が所せましと並び、様々な食材が置かれている。
庇のある露店も多いが、地面にゴザを敷いただけの露店もある。食品限定の露天商だね。
「うわぁ~! これはすごいですね!」
「おなかすいた」
「朝は適当に買ってもいいかもね。夕飯はポロリンに任せて大丈夫なの?」
「うんっ! 何つくろっかな~」
大変嬉しそうで何よりである。
しかしこれだけ食材が並ぶと目移りするし、何を選ぶにしても迷ってしまうね。
「<毒感知>」
とりあえず私はスキルを発動させる。街中でもよく使っている。
リーナとサフィーが加入したから余計に使うようにしないとね。
下手なものを食べさせるわけにはいかない。
……まぁお腹壊したところでポーション飲めばいいんだけど。
すると<毒感知>に引っ掛かる反応がいくつか。
古い食材が混じっていたりもするんだけど、やっぱジャガイモには反応するらしい。玉ねぎにはなぜか反応しない。
芽に毒があるっていうのはファストン村の食堂だったうちでさえ知っていたので、周知の事実なのだろう。
今さらポロリンに言うまでもない。
という事で私の役目は古い食材の排除である。
絶対に買う必要があるのはパンや油、塩などの調味料。調理用のお酒、あとはある程度長持ちする食材。それこそジャガイモや玉ねぎ、大根、ニンジンとかも買っていいかも。
ちなみにこの世界では『ポテ芋』とか『オヌオン』とか言う。
分かりやすいのか分かりにくいのか……。
あとチーズとか干し肉とかもいいね。あって困るものでもなし。
それ以外はポロリンにお任せ。作りたいものを買えばいいさ。
私的にはピザや自家製パンが欲しいけど窯がないしなぁ。
あと揚げ物も食べたい。トンカツや唐揚げかな。
しかし唐揚げは小麦粉はあるけど醤油がない。
下味が……醤油の代替えで何かあれば……。
ちなみにこの世界の豚肉・鳥肉と言えば、オーク肉とコッコ肉である。
どちらも魔物であり、知った時には忌避感があったが、実際には前世の豚肉・鳥肉より旨かったりする。
前世の品種改良技術が、野良の魔物に負けるという事実に驚愕した。
どうやら魔力のある肉を旨いと感じるらしい。だからワイバーンとか強めの魔物は旨いらしい。オークキングもそうだね。
卵に関してもワイルドコッコの卵が主流であり、養鶏場ならぬ『養コッコ場』があるらしい。
戦闘職でなければ経営出来ないんだろうね。屠殺できないし。
他にもコカトリスの卵とかもあるらしいが、やはり高級品との事だ。
私にはマヨネーズ無双をするという義務がある。
夢ではない、義務だ。
転生者となったからには義務である。
というわけでコッコの卵も買ってもらった。ポロリンに。
ポロリンも卵料理作るつもりだったらしいのでついでにね。私のマヨの分も。
……卵にサルモネラ菌があったら私の<毒感知>は反応するのだろうか?
……今は何も反応しないんだが……一応こまめに<毒感知>しておくか。
よし、機を見てマヨネーズを作ってみよう。
今日は作らないけど。
♦
朝市から戻ると、すでにリーナとサフィーが荷物を搬入していた。
もちろん彼女たちが荷物を持つわけがない。それぞれの家の使用人だ。下男とかメイド。
その前で彼女たちが持つわけにもいかないのだ。指示するのみ。
こういう光景を見ると「やっぱ貴族なんだなー」とか思ってしまう。王族もいるけど。
「おはようございます」
「おはようございますわ!」
「おはよー。朝ご飯は食べた?」
食べて来たらしい。それでこの時間に搬入とは恐ろしい。
ならば搬入作業中に私たちは食べちゃいますかね。
朝市で色々と買って来たし。
二人が運び込んだ荷物はそこそこある。
これ私室に入るの? って感じ。
この二人は普段の部屋の整理とかもメイドさん任せだろうし、ちゃんと部屋を使えるのだろうか。
不安になり、搬入の様子を窺う。
「お嬢様、こちらの棚に下着類、肌着、寝間着をまとめてございます。お間違えないよう。クローゼットの並びに関しましては……」
「だーいじょうぶですわ! ワタクシ一人でも探すのも着付けるのも問題ありません!」
「しかし……」
リーナの所も同じ感じ。皆さん不安そう。
なぜか本人たちは大丈夫だと言い張っているが根拠のない自信である。
せめて最初の方は洗濯から畳むのと仕舞うところまで一緒にやってあげよう。私とネルトでね。
搬入を終えた使用人の方々には「いつでも様子見にいらして下さい」と言っておいた。
ホッとした表情で「助かります」と言われ、「お嬢様をどうぞよろしくお願いします」と深々と頭を下げられた。
箱入り娘だから仕方ないね。
一応、私の構想の中にはリーナのメイドさんを一人くらい、ハウスキーパーとして常駐させる事も考えている。
料理はポロリンが張り切ってるからいいんだけど、やっぱり掃除の範囲が広すぎる。庭とかね。
だから『掃除婦』みたいな感じで毎日来てもらうってのも手かなーと。
多分、向こうもリーナの事、心配だろうしね。監視の意味も込めて。
あと、私たちが依頼で出掛けている時の警備とか。
ま、これも少し後の話かな。
五人だけで生活してみての様子だけどね。
♦
さて、そんなこんなでやって参りました、南の森。いつもの訓練場です。
なんか久しぶりに来た気がする。
ちなみにギルドで依頼などは受けていない。
訓練と考察がメインで、事後報告できる依頼があればするって感じで。
「じゃあまずは誰がどんな事を出来るのか、確認からするよ。みんなが知ってないと連携も考察も何もできないからね」
ということで、まずは私の戦い方とスキルを説明する。
リーナとサフィーは覗き見してたみたいだけど、よくは知らないからね。
説明しつつ実際に使って見せながら。
基本的な戦い方は敏捷と回避主体の魔剣アタッカー。そして毒。
<毒感知>で毒系採取物や毒持ちの魔物、相手の状態異常なんかも分かる。
あとは<毒弾>が高速単体射撃、<毒霧>が中距離範囲、<毒雨>が広範囲を毒らせる。
毒の種類は<衰弱毒>が継続ダメージ。
<麻痺毒>はそのまま。ダメージなしで麻痺らせるだけ。
と、ここまでは永続効果。<石化毒>も永続だろうっていう予想はしている。
<腐食毒>だけ非生物が対象で永続的に腐食し続けるわけではない。
<石化毒>はベット湿地に遠征した時に覚えたけど、これが効くと四肢の先から固まって石になっていき、徐々に身体を浸食、最後は頭まで石化し、そこで死亡する。逆に言えば『全てが石化しないと死なない』という事らしい。
死ぬまでに時間はかかるが、身体の自由を奪いつつなので、私としては<麻痺毒>と<衰弱毒>の混合という印象を持っている。
しかし死んでも石のままなので、剥ぎ取れない。
完全に死ぬと抗石化薬も効かないらしく、素材は諦めるしかない。
頭以外が石化した状態でも抗石化薬で治す事は可能だ。
強力ではあるんだけど、実用性がなぁ……オークの集落潰した時みたいに「とにかく数減らさなきゃ」「とにかく動けなくさせなくちゃ」って時は便利だと思うけど……。
「エグイですわね……是非とも【幻影の闇に潜む者】に……」
「回避と高火力武器、そして遠距離でも状態異常ですか……弱いところはあるのですか?」
「もちろんあるよ。紙防御でダメージソースが近接オンリーな事。それと毒の成功率が相手の多分『抵抗値』に関わるから基本戦略に組めない。おまけに味方も毒らせるから、特に前衛のリーナやポロリンは私の毒に気を付けてもらう。もちろん当たりそうなら使う気ないけど」
デバフはおまけで『回避系物理アタッカー』と見てもらった方が分かりやすいね。
パーティー戦闘を考える上で戦術を練るなら、それだけで十分な気がする。
続いてポロリン。
「えっと、ボクは盾役と近接打撃攻撃ですね。敵の注意を引くことに特化してるらしいです、ピーゾンさん曰く」
<挑発>でヘイトを稼ぎ、<呼び込み>で魔物を集める。
<魅惑の視線>は混乱付与。
<セクシートンファー術>は攻撃と防御の良いとこどりだけど、器用貧乏でもあるんだよね。
悪く言えばどっちも中途半端。基本的には盾役優先ではある。
<ピンクマッサージ>で回復も出来るけど非戦闘時に限定した方が無難。
「ではポロリン様が最前線ですか?」
「それは場合によるね。私が前で、ポロリンはネルトを守る事に専念してもらう事もある。ネルトを一時的に盾役にしてポロリンは打撃アタッカーにもなる。私が回避盾だっていいわけだし。極端な話、このパーティーは全員単体戦闘が出来るからどうとでもなるんだよ」
「ユーティリティが故に戦術が難しくなりますわね」
「もうこのパーティーでオーソドックスなパーティー戦闘は無理だって諦めてるよ」
「アハハ……」
アタッカーが増える分、ポロリンには盾役に集中してもらった方がいいとは思っている。基本的には。
ただ人数が増えるとポロリンのヘイト管理はより難しくなるだろう。
その特訓もしなきゃね。
続いてネルト。
「んー、私は索敵と<念力>……?」
いや、お前が聞くなし。
でもネルトはポロリン以上に器用貧乏なんだよね。
リーナとサフィーに実際に見せつつ、理解させるのに苦労した。
<空間魔法>の<グリッド>と<ホークアイ>は主に索敵。
<ルールシュレッド>は<グリッド>と併用しての近~遠距離攻撃。
<念力>は盾にも攻撃にも行動阻害にも使える。
<室内空調>も戦闘では行動阻害かな。
弱点はどれも魔力の消費が激しく<快眠>の回復も野営時くらいでしか使えない。
「これは……さすがは【魔女】と言いましょうか」
「<念力>の攻撃力はそれほど高くないにせよ不可視の攻撃は厄介ですわね。いえ、攻撃ならば<ルールシュレッド>があるのでしたか」
「範囲は<念力>の方が狭いけどそっちの方が多用するかな。消費MP的にも。でも<ルールシュレッド>は本当に危険だから二人とも、いやネルトも含めてみんな気を付けないとね」
私の想像通りなら相手がどんな防御力を持ってても無駄だからね。
速く動く私やリーナ、サフィーに間違って当たろうものなら「スパン!」といくだろうし、万が一心臓や脳が<グリッド>の罫線に乗っている状態で発動されたら即死だと思う。
使う時はかなり限定的にして、リーナとサフィーもそれに慣れて貰わないといけない。
まぁそれで斬れる範囲は本当に狭いんだけどね。本当に『線』だから。
ネルトにもよく練習させないと動く魔物に対して、一発で倒すとか無理そうだし。
かと言ってやたら練習させるのも怖いんだけどさ。
続いてリーナ。
「わたくしは戦い方で言いますと、敏捷値の高い前衛物理アタッカーです。包丁による近接攻撃、それ以外に出来ないと言ったほうがよろしいかと」
非常に分かりやすい。むしろ戦術に組み込みやすいので助かります。
<タンポポ乗せ><解体><パッケージング>はどれも倒した後に使うスキル。
戦闘だけで考えれば<包丁術>しかないからね。
パーティーの攻撃の軸にしたいところだ。
「リーナさんのスキル、そんなことになっていましたのね……」
「ああ、サフィーは詳しく知らなかったのか」
「ええ、非常に興味深いですわ。よくこのスキルを考察できたものですわね、ピーゾンさん」
「本当に感謝しておりますわ」
「やめとくれ。結果的にパーティーの戦力になってもらうんだし、もういいでしょ」
リーナはメインアタッカーになってもらうつもりなんだけど、まだ分からない所があるから検証してからだね。
すでにテコ入れしたい部分もあるけど。
最後にサフィー。
「ウオッホン! ワタクシは索敵と攻撃! 近距離は忍刀! 中距離・遠距離は<投擲>と<スタイリッシュ忍術>! まさに非の打ちどころのない戦闘スタイルと言えるでしょう! オーーッホッホッホ!」
敏捷特化の【忍者】。攻撃と魔力、器用も非常に高い。
戦闘一辺倒かと思いきや、罠を含む索敵と<影縫い>で行動阻害もできる。
<短剣術>で忍刀を操り、<必中投擲>は中・遠距離物理、<S忍術>は中・遠距離属性魔法。
<アクセルエッジ>という短剣アーツは、一時的に敏捷を強化し短剣で切り裂くものらしい。短剣の基本アーツらしいがかっこいい。
非常に優秀。なんか癪だけど優秀。
ただネルトと同じく器用貧乏で、<S忍術>は変なポーズが必要だし、索敵もネルトに劣る部分がある。
「やはり多彩な攻撃手段は羨ましいですね」
「そうでしょう、そうでしょうとも!」
「いると便利なんだけど戦術的に使うには難しいんだけどね」
「んなっ!?」
一見何でも出来るユーティリティプレイヤーなんだけど、何をするにも一癖ある。
これをパーティー戦闘の戦術に落とし込むのは一苦労だ。
とりあえずは、そこら辺……サフィーのスキル考察は必須だね。
それからパーティーでの連携・戦術訓練と個人訓練かな。
しっかし固有職ってのは厄介なもんだね。
何に関しても天才のリーナが戦闘だと近接物理しか出来ない一方で、秀才のサフィーは逆にユーティリティすぎる。
まぁポロリンやネルトも偏り過ぎた職なわけだけどさ。
……もちろん私の【毒殺屋】も。
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