ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

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第四章 毒娘、潜り始める

86:ダンジョン勝負をするはめになってしまったようです

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「どうです、お爺様? お爺様はゴミスさんを納得させるつもりもなく、ワタクシやリーナさんの処遇どうこうも関係なく、ただピーゾンさんの力が見たいが為にワタクシたちにダンジョンに挑戦しろと仰っている……違いますか?」


 ……は?

 えっ、いやいやいや、だって切っ掛けはゴミ野郎がリーナに絡んだからでしょ?
 で、そこから冒険者が下賤だとか平民が下賤とか選民思想バンザイってなってさ。
 じゃあリーナとサフィーの進退をかけてダンジョン競争しましょ、となった。

 私どこにも絡んでないじゃない!
 いきなり名前出さないでちょうだいよ!


 爺さんはサフィーの顔をニヤッと見る。


「四割ほどだな」

「七割の間違いではなくて?」

「いや、ピーゾン個人・・の力を見たいというのは四割だ。そしてピーゾンが育てたと言ってもいいだろうお前らパーティーの力を見たいというのが四割」

「はぁ、結局八割ではないですか」


 サフィーがやれやれって顔してるけど、こっちは「はぁ?」って顔しか出来んわ。
 なんで私の話になるのさ! あれか!? 私のジョブが目ぇ付けられてるのか!?


「えっと……言っておきますけど私、暗部に入る気ないですからね?」

「まぁそれはあまり期待しておらん。もちろん最終的にサフィーと共に入ってくれるならば歓迎だがな」


 勘弁して下さい、まじで。
 私、暗殺者になりたくないから危険な冒険者を頑張ってるんですから。
 まぁ当初より暗部の印象が変わったのは確かだけど。サフィーとかのおかげで。


「正直言うとなぁピーゾン、お前の【毒殺屋】の情報は色々と入っている。しかし解せない所も多いのだ」

「解せない所……ですか?」

「うむ、例えばダンデリーナの未知のジョブとスキルをあっという間に解析しただとか、戦闘訓練を行えば素人だろうが瞬く間に熟練戦士になるだとか、自身の戦闘力にしても攻撃系スキルもないのに桁違いに強いとか、どんな相手だろうが攻撃が当たったことがないとか、ワイバーンを毒だけで倒したとか、ダンジョンを単独で制覇して魔剣を手に入れたとか、元Aランクのネロに勝ったとか……」


 もうやめて! 私のライフはもうゼロよ!
 皆もそんなジト目で見ないで! 「だいたい合ってる」とか言わないで!


「話半分に聞いたとて『職決めの儀』を受けたばかりの十歳とは思えん。なればこそ確かめる必要があるだろう? 別に儂が直に戦ってもいいのだが……」

「無理です」

「お爺様、さすがにそれは……」

「うむ、だからピーゾン個人の力と、育てているパーティー全体の力量を見ようというわけだ。それを測る尺度としてザザルディを利用したに過ぎん」


 えぇぇ。なんか釈然としないんだけど。
 勝手にダシにされて利用されて力量を測るとか……。


「別にとって喰うつもりはない。結果がどうであれピーゾンを無理矢理引き抜こうだとか、ダンデリーナとサフィーの進路がどうとかは考えんで良い。ただ儂も国の中枢に居る人間の一人だ。把握しておきたいという、ただそれだけだよ」

「恐れながら、リーナとサフィーの進路に関わらないとすれば私たちがダンジョンに挑むメリットがないのですが?」

「報酬か、確かになぁ……何がいいか。サフィー、何かあるか?」


 いいように使われるのは癪だからね。
 冒険者らしく報酬くらい貰わないとやってられないよ!


「そうですわねぇ……市井では買えなさそうな装備か魔道具などがよろしいのでは?」


 おおっ!? さすがサフィー!
 ここでお金とか名誉的な話をされると困ると思ってたんだよ。
 お金は稼げるし、名誉とかいらないしね。
 装備や魔道具は確かにありがたい!
 よし、テンション上がって来た!


 ともかく、そんな感じで第二回の保護者面談を終えた。
 最後にサフィーが爺さんにこんな事を聞いた。


「ちなみに残りの二割は?」

「ザザルディへの嫌がらせ」


 だそうです。
 ゴミ野郎、お疲れさまです。





「なんかごめんね、結局私が原因だったみたいで」

「いえ、元をただせばわたくしがゴミス様を説得しきれなかったのが原因です。自分の不甲斐なさを悔いるばかりです」

「いえ、ゴミスさんはいつもの通り適当にあしらっておけば終わりでしたわ。この度の原因はお爺様が出しゃばった事によるもの。ストライドの者として陳謝しますわぁ」


 私たちは王城から出てホームに戻って来た。
 もうなんか依頼とか特訓とかする気分じゃないのだ。
 とにかくぐったりした。ぐったりしてないのはネルトくらいだ。すごいなお前。

 そして「私が悪かった」合戦である。

 結局の所、『五人でダンジョンに挑戦してゴミ野郎と競う』というのは変わらず、無関係なポロリンやネルトを巻き込んでしまったという罪悪感もある。
 それは私だけでなく、リーナとサフィーもだ。


「大丈夫ですよ! ボクも頑張りますし!」

「ん。ダンジョン楽しみ」


 前向きで助かる。

 反省会めいた流れになったが、何を反省しようが、遅かれ早かれこういった問題は出て来て当然だろうという話にもなった。
 貴族に目を付けられたり、国に能力を示すような事になると。

 私が前世の記憶とゲーム技術を用いてチートめいた事をしているのは事実だし、魔物と戦う冒険者という職業についている以上、安全の為にも自重する気はない。

 目立ちたくはないが、目立って見られるのもしょうがない。
 ただでさえウサミミつけてるし。いや、これも安全の為の有用装備だから。趣味もかなり入ってるけど。


 リーナにしても冒険者になろうが「美しき第七王女」というのは付いて回る。
 騒がれるのは当然だし、貴族連中に目を付けられるのも当然だろう。

 ゴミ野郎以外にもリーナを狙う貴族や、お近づきになりたい富豪どもがいるに違いない。
 今回の一件がなくても遅かれ早かれ、絡まれたり狙われたりはしたんだと思う。


 サフィーもリーナの影に隠れるものの、美しい公爵令嬢には違いない。
 同じように近づきたい者が多いだろうし、何より実家が中二暗部集団である。

 私が自重していない上に、リーナとサフィーも囲っている現在、色々と探るのは当然だ。
 サフィー自身もこれまた目立つし、狙われる要因の一つになり得る。


 ついでに言えば五人とも固有職ユニークジョブだから狙われる可能性あるし、私の魔剣を狙ってくる輩が居るかもしれないし、ポロリンだって一人で出歩けばもれなく悪漢から狙われるだろう。

 目立つ要因、狙われる要因が多すぎるのだ、我々は。
 だったら地味な装備にしろというご意見は聞きませんのであしからず。


 とまぁそんなわけで、考えても無駄なのだ。
 反省しようもないし改善も出来ないだろうと思う。
 あとはもう何かが起こった際には、高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応するしかない。


 とは言え消極的改善策としてホームに衛兵を置いた方がいいかもしれない。
 今日、陛下に「いりません」って言っちゃったばかりだけど、本格的に必要性を感じた。
 まさかゴミ野郎からこんな問題に直面するとは思ってなかったし。


「でしたら明日、セラに伝えてもらいましょう」

「悪いね、リーナにばっかりお願いしちゃって」

「どういった形で警備させるのかも伝えた方がよろしいですわよ。こちらが何も言わなければ、おそらく陛下は昼夜問わずに十名以上を寄越しますわ」


 うわぁ……ありえるぅ……。
 とにかくそれは打ち合わせしつつ、ダンジョン勝負についても考えないといけない。
 爺さんに無茶ぶりされた格好だが、受けないという選択肢は端からないのだ。


「ただ、あのゴミ野郎はギャフンと言わせたいけどね」


 それは五人全員の思いだ。
 あの野郎はリーナだけでなく全員の敵だ。

 サフィーの爺さんが言うように、勝負したところで勝敗は関係ないかもしれない。
 しかし負けたくはない。
 絶対に勝つ。そのつもりで臨む。


「と言いましても、どんな勝負になるのか分かりませんわ。お爺様は『公平に』と仰っていましたので奇抜な事はしないと思いますけど」

「どのダンジョンに挑戦するのか、先に分かっていれば対策をとりたい所ですが……」

「ダンジョンの経験自体がほとんどないですからね。出来れば勝負の前に一回潜ってみたいです」

「ん。私だけ一回もない」


 私もポロリンも、ほとんどないのと同じなんだよね。
 オーフェンダンジョンは三〇分しか潜らなかったし、山賊(偽)の住処はただの洞穴だったし。

 ちゃんとした経験者は学校の授業でダンジョン演習したというリーナとサフィーしか居ないから、色々と教えて貰わないとダメだね。
 持ち物や探索ルールや基本的な事を。


「とりあえず冒険者ギルドの資料室行かない? あそこに周辺のダンジョン情報まとまってたし、予習しておいて損ないでしょ」


 ということで、翌日は王都の外には出ず、お勉強する事にした。
 勝負に使われそうなダンジョンの情報を片っ端からまとめてやるぜい!

 ……リーナ、サフィー、ネルトの頭良いトリオに頑張ってもらおう。



■クズォーリオ・フォン・ザザルディ(伯爵位) 【会計士】 35歳


「ばっかもおおおおん!!!」


 ゴミスのやつが屋敷に戻ってくるなり、衛兵を貸せと言ってきた。

 何事かと聞けば、ダンデリーナ様に婚姻を迫り、同伴していたサフィー嬢ほかパーティーメンバーに喧嘩を売り、そこに来たロートレク卿の執り成しでダンジョン勝負をするに至ったと言う……。

 ダンデリーナ殿下を婚約者呼ばわりするのも間違っている。
 殿下の前だと言うのに、それと共に居る平民に対し悪態を吐(つ)くのも間違っている。
 ロートレク卿に見られたのも間違いで、言いくるめられたのも間違い。

 そして出た結果が『ダンジョン勝負』など……ましてやそれを受けるなど!
 最初から最後まで間違いだらけではないか!


「な、何を仰います父上! 勝負に勝たねばダンデリーナは私の元へ帰って来ません! 私は何としても勝たなければならないのです!」


 このバカ息子が!
 確かにゴミスがダンデリーナ様に惚れているのは知っていたが、どうやら頭の中では婚約者にまで発展していたらしい。

 大した想像力だと鼻で笑いたいところだが、もはやそんな事態ではない。

 だいたいダンデリーナ様という存在自体がアンタッチャブルなのだ。
 迂闊に触れようものならば大火傷では済まない。
 ジョバンニ陛下の耳に入ったが最後、それはどの貴族でさえも同じだろう。


 すでにロートレク卿に聞かれている時点でほぼ終わりだ。
 間違いなく我が家に火がつく。

 これまで儂が水面下で慎重に動いてきたのがパアだ!
 このバカ息子のせいで、全てが水の泡だ!


 そもそも勝負に勝ったところで何一つ旨味はない。
 前提からして間違っているのだからな。
 卿に聞かれた時点でこちらにとっては『不利』しかない。

 となればロートレク卿の思惑は「ダンジョン勝負をする事によって卿が何を得るか」という部分にあるだろう。

 もし卿が『利』を得て、こちらが『さらなる不利』を被るとすれば、それはこちらが負けた時のみに絞られるのではないか。


「負けて残念だな、ザザルディの衛兵は新人冒険者にも負ける弱兵ばかりか」


 そう言われるだけでお終いという訳はあるまい。
 となれば、それを起点として陛下から何かしらの沙汰が出る……。


「てめぇんとこのバカ息子、うちのダンデリーナに付き纏ったあげく喧嘩売ったらしいな? んでダンジョン勝負だぁ? 何危険な目に遭わせてんの? 死ぬの?」


 と、こうなる。間違いない。
 あの陛下はダンデリーナ様の事となると人が変わる。
 だからこそアンタッチャブルなのだ。


 ……どうする?

 ……どうすれば一番被害が少なくて済む?

 ゴミスを廃嫡? それで済ましてくれるならばいくらでも廃嫡しよう。
 しかしダンジョン勝負自体をやめるわけがない。
 ロートレク卿に思惑があるのならば猶更だ。

 せめて万全を尽くして勝負に勝ったほうが傷が浅くて済むのか……?

 であるならばいっそ……。


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