ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

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第四章 毒娘、潜り始める

85:下賤な平民ですが王城には危険(な貴族)がいっぱいです

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「あ゛ー、なんか疲れたね」

「はぁ……ボクも色々と疲れました……」

「お菓子食べられなかった……」


 応接室を出た私たちは王城の中を歩きながらエントランスへと向かう。
 先導しているメイドさんはおなじみのセラさんだけ。
 思わず愚痴めいたものが出てしまうのもしょうがない。

 向こうはリーナを心配してるオーラをビンビンに出してくるし、こっちは小市民だから返答に困る。

 リーナはリーナで「なんで心配してるのか分からない」とでも言うように若干突き放し気味。

 板挟みの上に、ちゃんとした言葉遣いしなきゃいけないし、リーダーとして私が答えなきゃいけないしで、気疲れしたわ。


 これが非公式の面会で助かった。
 ちゃんとした謁見とか、ドレス着ないといけないとかだったら死んでたね。


「申し訳ありませんでした。わたくしの身内事でお手を煩わせてしまい……」

「いや、リーナを預かっている以上顔見せは必要だからね。遅かれ早かれ来てはいたよ。ただ一般庶民としては陛下とお会いするのに気疲れするってだけでね」

「貴族であっても陛下とお話となれば緊張するのが当然ですわ。ワタクシは幼少の頃からリーナさんと遊んでいたのもあって接点は多かったのですけども」


 そりゃそうか、と思いながら王城内をテクテク歩く。
 すると背後から大きな声が聞こえた。


「ダンデリーナ! ダンデリーナじゃないか!」


 その声に振り返ると、ズカズカと近づいてくる人物が。
 体格の良い男子……なんと言うか小兵の相撲取りのような筋肉なのか脂肪なのか微妙な体格の良さだ。

 私とポロリン、ネルトは一応廊下の端に寄るが、リーナと一緒に居る手前、どういう態度をとればいいのか分からない。
 一応そのまま経過を見守ろう。


「ゴミス様? ごきげんよう」


 ゴミス? とサフィーに顔を向けると小声で教えてくれた。
 同学年のザザルディ伯爵家長子だそうです。老けて見えるなぁ。
 サフィーは挨拶しなくていいの? え、見ていれば分かる?


「探したぞ、ダンデリーナ! 突然学校を辞めると聞いて心配したぞ! なぜ婚約者である私に何の相談もせずに冒険者などと……!」

「失礼ですがゴミス様はわたくしの婚約者でもございませんし、相談をする理由もございません」

「何を馬鹿なことを! 他の誰がお前と釣り合うというのだ! 他家にも他国にもおるまい! お前は私と結婚する他ないのだ!」


 うわぁ……何こいつ……鳥肌立ってきたわ。
 怖いわー、こんなストーカー馬鹿貴族に言い寄られてたのか、リーナは。

 もしこいつが固有職ユニークジョブなら同じSクラスって事でしょ?
 こりゃ学校辞めて正解だったかもしんないね。

 チラリとサフィーを見ると、はぁと溜息一つ。
 やれやれと頭を抱えている。


「ゴミス様、ここは王城の廊下ですわよ? もう少し静かにお話し出来ません事?」

「……サフィーか。それと……なんだ? こいつらは」

「彼女たちはワタクシとダンデリーナ様が所属する冒険者パーティーの面々ですわ。今、陛下と顔を合わせて参りましたの」

「冒険者? そうか、貴様らがダンデリーナをかどわかしたか! 下賤な平民のくせにダンデリーナに近づこうなどと無礼な!」


 うわぁ……本当にいるんだ「下賤な平民」とか言っちゃう系貴族。
 まぁ普通に考えれば私たちがリーナとサフィーにすり寄って来た平民の小娘だと思うだろうね。

 そう言われるのは承知の上なんだけどさ、いざこのゴミ野郎から言われるとすっごい気持ち悪いんですけど。

 しかし私が反応する前にリーナとサフィーが食って掛かる。
 なんか周囲の温度が一気に下がった気がするんだが?


「ゴミス様! わたくしは自ら頼み込んでパーティーに入れて頂いたのです! それを拐かすなどと! 失礼ではございませんか!」

「そうですわ! 果たして無礼なのはどちらなのか比べるまでもないでしょう!」

「何を言う! 冒険者など平民の中でも粗暴な者が集まる下賤の中の下賤! 卑しい考えのもとにダンデリーナに近づいたに決まっている! 見ろ! 今も尚、こうして私を前にしているというのに膝を突きもしない! これを無礼と言わずして何と言う! 身分というものを理解していないクズではないか!」


 うわぁ……何というかもう、うわぁ……。

 とりあえず選民思想で脳内お花畑のゴミスとか言うゴミは、いくらリーナやサフィーが言ったところで収まる気配がない。

 これ学校でいつもこうだったのかな?
 どうやっていつも収めてたんだろ。


 そう思いながら言い争っているのを見ていると、また近づく人物が。


「随分と騒いでいるなぁ、若いのは元気なもんだ」


 歩いてくるのは初老の男性。
 オールバックの髪と丁寧に切り揃えた髭が特徴的な細身の男。
 隣でサフィーが「お爺様……」と呟く。

 えっ? サフィーのお爺さん?
 じゃああれか、【幻影の闇に潜む者ファントムシャドウ】とかいう中二暗部組織の頭領?

 とりあえずリーナが頭を下げるのと同時に頭を下げておく。
 ポロリンは泣きそうな顔で緊張しっぱなし。ネルトは無表情でかっくんと。


「ロ、ロートレク様……!」

「……ロートレク様、お久しぶりでございます」

「お爺様、どうしましたの? 珍しいですわね」

「なぁに、たまたま用事があって来てみれば騒がしい声が聞こえてな。なぁザザルディの」


 そういってゴミスをニヤリと見る。
 公爵家当主と言うからもっと貴族然としているのを想像していたけど、まるで違う。
 何と言うか掴みどころのない人だ。飄々としているのに威厳がある。


「も、申し訳ありません、お耳汚しを……」

「まぁ話声は聞こえていたぞ? 要はダンデリーナが学校を去り、平民の職である冒険者となっているのが間違っている、冒険者は貴族よりも劣っている、そういう事だろう?」

「は、はっ!」

「お爺様!?」

「ハハハッ、ならばこの者らの力を測れば良い。果たしてダンデリーナが属するに値するのか、『所詮は平民、所詮は冒険者』というほどの力しか持っていないのか、自身の力をもって測れば良いではないか」


 ……ん? あれ? そういう話なの? 婚約者云々は?
 なんか問題すり替えられてない?
 そういう風に持って行きたいのか?

 サフィーのお爺ちゃんはサフィーやリーナの味方のはずだ。
 このゴミ野郎の婚約者云々なんて認めるわけないし、ストーカーに倫理を教えても無駄だ。
 だから単純に『力』の勝負で決着をつけろと?

 ただ『冒険者としての力を測る』って言われてもねぇ……。


「そうだなぁ、後日どこぞのダンジョンにでも挑戦するというのはどうか。そこに双方が挑戦し競い合う。そっちのパーティーが五名だから、ザザルディの衛兵団からも五名だな。もちろんお前自身を入れても良い。ダンデリーナは自身が戦うのだしな」


 ダンジョン? ダンジョン挑戦で競争?
 私たちがリーナを有するに値するか力量を測る――その方法が……ダンジョン?


「それでダンデリーナたちが負けるようならば、やはり冒険者は貴族の衛兵団に劣るという事だろう? ダンデリーナを警護する意味でも不安がある。ならば儂からも国王陛下に諫言せねばなるまい。もちろんサフィーも学校に戻るようにしよう」

「「んなっ!?」」

「逆にダンデリーナたちが勝てば、それは十~十一歳の少女たちにザザルディ衛兵団が劣るという事。これもまた問題だ。そうだろう?」

「っ!」

「ルールについては儂の方から双方に後日提示する事にしよう。なぁに、サフィーに肩入れなどせんから安心しろ。ストライド家がその名にかけて公平な審判を下すと一筆入れても良い。分かったな?」


 ニコニコ顔の爺さんと対照的に他の面々は皆渋い顔だ。
 唯一ネルトくらいだよ、変化ないの。

 その後少しの言葉を交わし、急ぎ足でゴミスは去って行った。
 残されたのは私たちと爺さん、そしてセラさんのみ。


「お爺様……?」

「ロートレク様……?」

「ハハハッ、そんな顔するな。場所を変えるぞ、付いて来い」


 そうして爺さん先頭でまた歩き出した。
 着いたのは誰も使っていない応接室。

 え、王城の応接室って勝手に使っていいの?
 なんかセラさん走っていきましたけど、あれ絶対パニクってるよね?


 そしてソファーに並んで座る。本日第二回の保護者面談ですね分かります。


「さて、改めてロートレク・フォン・ストライドだ。ピーゾン、ポロリン、ネルトだったな? 孫娘が世話になっておる」


 そう言って頭を下げる。
 いやいやいや、爺さん公爵家当主にして中二組織の頭領でしょう! 頭下げるのはやめて下さいな!

 とりあえず私たち三人の自己紹介と、「こちらこそお孫さんにはお世話に」的な事を言っておく。


「それでお爺様! さっきのはどういうおつもりですの!」

「ロートレク様、わたくしは自らの意思で冒険者となっております。他の誰に言われようともそれを違えることはございません」

「知っておるよ、お前らが自ら決めた事をすんなり変えるような者ではないとな。だから今回の勝負にしても負けたところで冒険者を続けるのだろう? 何も変わらないではないか」


 え、そういう事なの?
 いやいや、リーナは陛下に諫言するで終わってたけどサフィーは学校に戻すって言ってたじゃん。


「戻すも何もサフィーは休学であって退学ではない。学校に在籍したまま冒険者になっているに過ぎん。戻す以前に離れておらんわ」


 うわぁ……口八丁……いやまぁそれならそれでいいけどさ。


「そもそもあの場でサフィーとダンデリーナが何を言ったところで、冒険者どころか平民全てを見下すようなヤツだ。訂正も謝りもするわけがないし、説明した所で聞く耳持たん。真っ当な解決策などないだろう?」

「そ、それはそうですが……」

「しかしゴミス様と言えど対話を続ければきっと……」

「無駄無駄無駄。ダンデリーナのその精神は高潔ではあるが現実的ではない。お前の思っている以上にああいった貴族絶対主義の人間というのは多い。そいつらは共通して他人の話に耳を傾けんのだ」


 あーやっぱ多いんだ。たまたま私が会った貴族にそういう人が居なかっただけかな。

 ……いや、初対面のサフィーが……あれは仮面を被っていただけか。


「そしてそういったバカ共に限って金と権力と密事の使い方が上手い。儂らが動いて次々に粛清していければ早いのだが、そうすれば国が破綻する。やっていいならやるんだがなぁ……まぁそういう訳で陛下にとっても頭が痛い問題なのだよ」


 殺っていいなら殺るのか……。
 恐るべし【幻影の闇に潜む者ファントムシャドウ】。忍殺ですね分かります。


「納得させる為に煙に巻こうと? しかし、それと我々がダンジョンに挑戦するのと何の関係が……」

「リーナさん、それは想像つきますわ。お爺様は最早ゴミスさんやザザルディの事などどうでも良いのでしょう。ダンジョンに挑戦させるのは我ら……いえ、ピーゾンさんの力に興味があるのではなくて?」


 …………ん? なんか呼んだ?


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