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第四章 毒娘、潜り始める
98:元村娘ですが都会の恐ろしさを再度実感しました
しおりを挟む「かぁ~っ、相変わらずすげえ量だな。いや、ありがてえけどよ、あんま無理すんなよ?」
レベル上げ、新スキルの検証、それを戦術に落とし込む。
訓練と依頼を兼ねた『禁域』浅層の間引きは順調で、Cランクの魔物にも慣れてきた感がある。油断は出来んが。
潜り始めて十五日ほど。
その日も『禁域』を出て、小砦の外に居るギルド職員のおっさんにまずは報告する。
魔石とドロップの数で、だいたいどれくらいの数を倒したのかを伝えるのだ。
もちろん全ての魔物がドロップするわけじゃないが、八割は落とすと見ている。
八〇個のドロップがあれば百体くらい魔物を倒したんだな、と。
このくらいの時間でこの階層を探索して、これだけ魔物と遭遇したのか、と。
そういう把握が出来るらしい。
んで、私たちと同じように指名依頼を受けた浅層間引き専門部隊に比べて、どうも狩る量が多いらしい。
おそらくCランクかBランクのパーティーかクランだと思うけど、その人たちは私たちの三分の一~二程度だと。
確か【唯一絶対】の筋肉ダルマがBランク。
オーフェンで戦闘講習してたおっさんも元Bランク。
『はじまりの試練』でボス周回してた【蒼き風】と【蜘蛛糸の綱】ってパーティーもBランクだね。
なんとなくおっさんが一番強いイメージだけど、それくらいしか狩れないもんなんだろうか。
さらに言えば潜る頻度が、多い人たちでも三日に一度。
私たちは働き過ぎって事だね。
まぁ訓練込みで潜ってるから、別に無理して間引きしてるわけじゃないんだけどさ。
そうして報告した後は王都へ戻り、ギルドへ直行。
ドロップ品の買い取りをお願いする。
「まー、相変わらずすごいですねー! 助かりますけど!」
ここでも案の定驚かれる。
小砦の職員のおっさんには大体の数を報告すればそれでお終いだが、ここでは査定ついでにちゃんとした戦績が出される。
今回の私たちはCランクを〇体とDランクを〇体ですよ、と。
それだけ多く魔物が発生してるんですね、とギルドで把握できるわけだ。
実際、普段の『禁域』に比べて明らかに魔物の数は増加傾向にあるらしい。
しかも日に日に多くなっている印象さえある。これは実際に潜っている私たちも感じている。
さらに言えば、DランクよりCランクの魔物の方が増加しているように思う。
魔物の数も増えているし、強くもなっているようだ、と。
「指名依頼増やした方がいいんじゃないですか? これで間引き足りてるんですかね?」
「そうは言っても指名出来るパーティーやクランも限られるんですよ。指名を出したCランクの方々も、思った以上に苦戦しているようでして依頼を破棄する人もいらっしゃいます」
「じゃあ増やすどころか減ってる状況なんですか」
「はい……だから【輝く礁域】の皆さんには助かってるんですよ。一つのパーティーで五つ分くらいの働きをして下さってますし」
うーん、Cランクが間引くのも無理だと思うレベルなのか……あれが。
どうやら私たちは自分の思っている以上に戦えているらしい。
ある意味、ネロさんの目は確かだったというわけだ。
と、そんな事を話しながらホームに帰宅。
門番の衛兵……と偽装している近衛騎士の方々に挨拶し、ホームに入ればセラさんに「おかえりなさいませ」と出迎えられる。
リーナに向けてやってるのは分かるんだけど、まるで私がお嬢様になったような気がするよ。悪くないね。
セラさんに軽く報告しつつお別れし、お風呂に入り、夕飯を食べ、団らんしてから就寝。
そんないつもの流れで眠る深夜。
廊下から聞こえるサフィーの大声がホームに響き渡った。
「敵襲! 敵襲ですわーっ!」
バッと目を開けるも混乱状態。
え? え? と思いながら寝間着のまま、枕元に立てかけた魔剣だけ持って廊下に出た。
どうやらサフィーはリーナの保護を第一に、隣のリーナの私室へ駆けこんだらしい。
私に続いて、あたふたしたポロリンと、くまのぬいぐるみを抱いたまま目をこするネルトが出て来る。
リーナの部屋を覗けば、二人は寝間着ではあるものの意識はバッチリ。警戒態勢にあった。
「サフィー、どういう事」
「ワタクシの察知が働きましたわ! ……でも、近衛騎士に抑えられたようですわね。もうしばらく様子を見ましょう。皆さん、この部屋に集まっていて下さいませ」
私はウサミミがなければ<気配察知>が働かない。ネルトは眠そうで使えない。
睡眠時でも警戒して察知が働くとか……さすが中二暗部の秘蔵っ子。
どんな訓練をすれば出来るものなのやら、私には想像出来ないよ。
リーナの部屋に五人で固まりつつ、警戒を強める。
すると、一階の玄関からドアノッカーの音がした。
「終わったようですわね。近衛騎士のようです。皆さんで行きましょう」
サフィーを先導にして階段を下りる。サフィーは玄関で扉越しに何か会話をし、警戒を解くと玄関を開けた。
顔を出したのは夜番になっている門番の近衛騎士二人だ。
リーナを見るなり「夜分に申し訳ありません!」とビシッと簡礼を決める。
「庭からお屋敷に侵入しようとしていた賊を捕らえました。全部で三名。見張り等は見当たりませんでした」
「ご苦労様です。お二人にお怪我は?」
「問題ありません。お気遣いありがとうございます」
「ネルトさん、一応<ホークアイ>して下さいます? 遠くに監視の目があるかもしれませんので」
「ん。<ホークアイ>」
近衛騎士を労うリーナ。
しかし闇夜の中、侵入した三人を二人だけで捕らえるのか。しかも無傷で。
すげーな近衛騎士。
そしてサフィーはネルトと庭に出て<ホークアイ>で確認。
賊が捕らえられてから数分経っているので、仮に居ても逃げているだろう。しかし念の為、という事らしい。
どうやらネルトには見つけられなかったらしいけどね。
リーナは近衛騎士と話している。
「それで、賊というのは?」
「あちらに寝かして…………あっ! くそっ!」
庭に寝かされていた賊の三人は、揃って口から赤い泡を吹いていた。
服毒自殺。
捕らえられた瞬間に死んだのか、気絶から復活してから死んだのかは分からない。
しかし捕らえられるよりも死を選んだ。これは――
「プロですわね。さて、身ぐるみ剥いだ所で情報が出て来るものか……」
淡々とサフィーは死体に近づき、漁り始めた。
近衛騎士は「申し訳ありません!」とリーナに平謝り。リーナは宥めている。
ポロリンはガクブルで腰が抜けそう。ネルトがよしよしとフォローしている。
おい、逆だろ、男子しっかりしろ。
とは言え、こうして死体を間近で見るのは私も初めてだ。
村では魔物被害とかで死んだ人も居たけど、両親に見ないように守られていたし。
山賊に拉致られた時も、筋肉ダルマたちに襲われた時も、覚悟はしていた。
私が人を殺すかもしれないと。
結局それはなかったわけだけど、だからこそ目の前で人が死んでいるという光景は少なからずショックを受けるもので。
どうやら私はまだ甘く見ていたらしい。
この世界は危険に溢れている。そして冒険者はその危険に近づく仕事だ。
納得して、自分で選んだ道のはずだった。
でも、それでもやっぱり怖いものは怖いし、恐ろしいものは恐ろしい。
ふぅと一息。私は冷静にならなきゃいけない。
リーダーだし、精神年齢高いわけだし。
サフィーやリーナ、ネルトを見てみろ。あんな美少女たちがしっかりしてるのに私が戸惑ってどうする。
ポロリンは……ちょっとアレだけど。
むしろポロリンを落ち着かせる為に私は動くべきだ。うん。
よし! と心の中で気合いを入れ、状況の把握とフォローをする事にした。
「ポロリン、ネルト、ホームの中に戻って一応見回りしてくれる? 大丈夫そうならお茶の準備しておいて」
「は、はいっ」「ん」
「リーナ、騎士さんと話して今後の動きをまとめておいて」
「分かりました」
「サフィー、どう?」
「手掛かりらしいものはありませんわね。どこの誰かも分かりませんわ」
「一応、実家の方にも連絡しておいてね。もう知ってるかもしれないけど」
気を紛らせるように私も精力的に動いた。
賊の身柄は応援に呼んだ衛兵の手により、王城の騎士団まで運ばれたらしい。
私たちはそこから眠る気にもならず(ネルト以外)夜更かしした為、翌日の『禁域』探索は見送られた。
談話室で紅茶を飲みながら夜更かしする最中、やはり私たちは狙われやすいという話も出た。
・パーティー全体
目立った存在の、年端も行かない固有職の集団。
固有職狩りの件もあるし、狙われる可能性は十分。
・リーナ
王国一の美しき第七王女というだけで狙われるが、国王のアキレス腱でもある為、より狙われやすい。
スキルの危険性は機密になっているが、もし洩れたら大変だろうね。
・サフィー
目立ってなんぼの美しき公爵令嬢。それだけで狙われる要素は十分。
実家が暗部だから恨みを買ってる可能性もある。
・ピーゾン
私の場合、固有職狩りを捕らえた元凶みたいな所もあるから、それで狙われる可能性もあるし、何より背中の魔剣が目立つ。デカイし。
魔剣の所有者が死ねば他の人でも装備可能になるようだし、ダンジョンに一つしかない貴重品だから狙われて当然。
・ネルト
ネルトは一番狙われる要素は薄いけど、もし<空間魔法>の情報が洩れていたら一番危険。
<ショートジャンプ>を覚えた今となっては余計に怖いね。
・ポロリン
リーナを上回る美貌。それだけで十分。分かりやすい狙われやすさ。
ポロリンファンクラブの男がストーカー気味に来るかもしれん。恐ろしい……。
とまぁ改めて考えれば、色々と用心は必要で、警備をお願いして正解だなーとも思う。
私たちも、例えば一人で出歩かないだとか、近衛騎士以外の警備体制として都合の良い魔道具とかないか、そんな話も出た。
あー、王都とかいう都会、物騒だわー。
ファストン村でスローライフしたいわー。
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