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第五章 毒娘たち、注目の的になる
105:せっかくの休日なのでゆっくり過ごします
しおりを挟む「ピーゾンさんはFランクからDランクに更新ですね」
「ええっ!? もうDですか!?」
商業ギルドの応接室。私たちの対面には担当のメルルさんが座る。
本来、月に一回の納税確認や報告をするのは受付で終わらせるのが普通らしい。
それなのに応接室に通され、お茶も出されているのは……リーナが原因だろうね。マリリンさんどうこうじゃないでしょう。
ともかく、そんなわけで登録してから初めてとなる報告の席。
本来ならもうちょっと早めに来るべきだったんだけど……まぁ依頼とかあったし。
決して忘れてたわけじゃないんだからね! か、勘違いしないでよね!
さて、それはそれとしてだ。
リバーシの売り上げ、どうなってんのよ。
どんだけ売ってんのよ、ベルドットさん。
「売り方が上手だったという他ありませんね。貴族の方々への売り込みもそうですが、メインターゲットは一般都民という事でしたから、商業ギルドの入口付近のテーブルでも実際に遊んでいましたし」
おー、そりゃ商業ギルドに来る人たちの目を引くだろうね。
店舗を持つ商人さんだけじゃなくて宿屋とか雑貨屋とか行商人とかも居るだろうし、生産者も居る。
娯楽のない世界だから手軽に遊べるボードゲームというのは思っていた以上に求められていたのかもしれない。
ベルドットさんがやり手なのは間違いないんだろうけどね。
「ピーゾンさんがお越しになったら伝えて欲しいと言われていますよ、ベルドット商店に是非一度お越し下さいと。用件は分かりませんがリバーシの次のボードゲームの件かもしれませんね」
「そうですか。じゃあちょっと行ってみます」
メルルさんとのお話はそんなもんで終了。
わざわざお茶を出してもらってまでする話じゃないね。
ちなみに、商業ギルドの銀行的システムで預かってもらっているリバーシの売上も教えてもらった。
……売上の三割だったよね? 私が貰うのって。
もう一回言うけど、どんだけ売ってんのよ、ベルドットさん……。
「これちょっとパーティー資金に回した方がいいんじゃないの?」
「それは完全にピーゾンさん個人の収入じゃないですか。さすがにダメですよ」
ポロリンだけじゃなく、みんなそう言ってくれる。
しかしなー、国王からもご褒美で白金貨とか貰ったし、実家に仕送りで白金貨一枚(約一千万円)あげたけど、それでも金持ちすぎるんだよなー。
だからってバラ撒く気にはならないけど、パーティーで使えないとなるとなぁ。用途が限られる。
食事も家賃も装備もパーティー資金だし、本当に私個人で使うお金となると……。
あ、そういえばベルドットさんに頼みたいものがあったんだ。
行くついでに聞いてみよう。
そんなわけで商業ギルドを出てベルドット商店へ。
共に中央区の大通り沿いだから近いもんだ。
注目を集めながら五人で歩き、世界観をぶち壊しそうなデパート型巨大商店に到着。
……まぁ私たちのファッションこそが世界観ぶち壊しだと言う自覚はありますけども。
相変わらずそこそこ人が入ってるし、入口には警備の人が立っている。
そんな中にモフモフ動物五人衆が突貫。
「おお、皆様、お久しぶりです。お越し頂きましてありがとうございます」
速攻でベルドットさんがやって来た。身バレが早い。
当然のようにお辞儀はリーナ目掛けてやっているが、公にダンデリーナ王女殿下だとは扱わない。
私たちがそうお願いしたからなんだけど、そつなくそれを熟すあたりがベルドットさんだね。
おっ、カート使ってんじゃん。しっかり活用してるねー。
それを眺める程度で店内を巡る事も許されず、そのまま応接室へ。
この部屋も多分最上級接待用なんだろうなー。ランクとかありそー。
「カートどうです?」
「ええ、それのお礼もしたかったのですよ。確かにあれで客単価が上がりました。素晴らしいですね。他の大店でもさっそく真似して取り入れているようです」
「ほー」
やっぱり便利だもんね、あると。
小物が大量に陳列してあるこういったお店だったら絶対必要だよ。
「リバーシもかなり売れてますねー、さすがですよベルドットさん」
「ありがとうございます。先日、ご指名頂きまして国王陛下にも献上させて頂きました。ピーゾンさんが宣伝して下さったようで」
「おおーやっぱりいきましたか」
「まぁ、わざわざありがとうございます。父に代わりわたくしからお礼を」
「いえいえ滅相もございません。こちらがお礼をしたいほどです」
ホームでリーナとリバーシして遊んでるって言っておいたから、やっぱりベルドット商店に話が行ったらしい。
んで、ベルドットさんはプレゼントしたんだろうなー。
王族御用達ってブランドは強いだろうしね、ベルドットさんはウハウハでしょう。
国王がこれで遊んでるって広まったら貴族にも広まるだろうし、そこから市井まで広がるだろうしね。
おそらく他の大店もこぞって真似してくるはず。
そうして切磋琢磨して色んなボードゲームが出来たら私は嬉しい。
ベルドットさんには将棋かダイアモンドゲームか何か教えておいた方がいいのかもしれないけど。
私たちを呼んだのはそうした次作の打ち合わせかと思ったんだけど、どうも違うらしい。
純粋にお礼を言いたかったみたい。
「本来ならお礼に何か包みたい所ではありますが、ピーゾンさん達はすでにご活躍のご様子。下手なものもお贈り出来ないと思いまして。ですので新しいホームに必要なものをお買い求めのおつもりでしたら、それを私からの贈り物とさせて頂きたいと思いまして、わざわざご足労頂いた次第です」
『おお』
ホームに住み始めて一月半くらいか。
最初にまとめて必需品を買って、それからもチマチマ買ってはいるけど、くれるって言うなら選んじゃいますかね。遠慮なく。
ここで「結構です」とか言っちゃうとベルドットさん的にも困るでしょう。
「じゃあお言葉に甘えて選ばせて貰います。ありがとうございます」
「ええ、どうぞ皆さんでお選びください」
あんまりがめつくしても失礼だし、みんなでそれぞれ欲しいものをピックアップする事にした。
とは言え極端に高いものを選ぶつもりはないけどね。
「ボクは調理道具ですかね~、揚げ物用のお鍋とお皿、あとデザート用の器が欲しいです」
「わたくしは何が良いでしょうか……個人的に必要なもの……」
「思いつかなければ消耗品で宜しいのでは? 洗髪剤や石鹸などでもいいですし茶葉とかもいいと思いますわ」
「んー、私はやっぱりぬいぐるみ欲しい。黒猫のモフモフの」
ぬいぐるみか……あのデカイくまのやつ買ってたもんなー。お小遣い貯めて。
そして次は黒猫か。そのうちメンバー全員分のぬいぐるみが揃いそうだね。
私は最初から決まってるんだよね。元々それを買うつもりで来たんだし。
「ベルドットさん、マリリンさんのお店で使ってるような色使いで、淡いピンクのカーテンとかシーツとかってありますか?」
前世の私室もピンク基調のフリフリメルヘンな感じだったから、同じようにしたいんだよねー。甘々で。
ホームの私室はパーティー資金でいじるわけにもいかないし、だったら稼いだお金で模様替えしたいなーと。
「あの色合いですか……あれは特注でしたので店置きはないのですが、注文をお受けする事は出来ますよ」
「おおっ! じゃあ私はそれでお願いします!」
「しかしそうですね……皆さんの活躍もあってあのお店も流行り始めるかもしれません……となると『ふぁんしー』家具や小物が流行るかも……となれば……」
ベルドットさんがブツブツと自分の世界に入ってしまった。
この店でファンシーグッズを扱ってくれるなら、私は買い占めると思うよ。
淡いピンクの可愛い系を希望します。
♦
休日のその日は、午前中にそういった諸々を済ませ、午後からはさて何をしようかと。
せっかく時間があるのでケーキを作ろうという話になった。
「ピーゾンさん、絶対触らないで下さいね!」
えっと、ケーキを作って貰おうという話になった。
卵はコッコの卵、牛乳はなくて山羊乳が一般的なんだけど、これでいけるか挑戦。砂糖は高価だけどある。
問題は薄力粉なんだけど、『小麦粉』としか売られていない。薄力粉も強力粉もない。
産地とかで微妙に違うらしいので、とりあえず細かい粉のやつを用意してみた。
でスポンジ生地を作ってみる……作って貰う。
生クリームの方は、ゼラチンがあるのか不安だったけど、膠は普通に使っているらしく、その一種として存在していた。
あとはバターと山羊乳、砂糖で作る……作って貰う。
混ぜるのが大変そうだけど、そこはポロリン料理長に頑張って貰おう。
マヨネーズで散々混ぜているから大丈夫だと思う。
あとは私の(料理未経験なりの)前世知識を総動員してどうにか形にする。
何となくそれっぽくなったので、果物などで豪華に彩って完成。
ポロリンだけじゃなく、興味を示した他の三人も一緒に作った。
おや? どなたか一名、お手伝いしない人が居るみたいですねぇ。どなたでしょうねぇ。
特にリーナとサフィーは自分でお菓子作りなんて初めてだし、やったのは果物を切って飾り付けたりと手伝いと呼べるほどのものではないが、それでも満足そうだった。
「ダ、ダンデリーナ様がお料理を……! これは報告せねば……!」
セラさんが帰るのは夕方なので、まだ一緒に居る。
手伝ってもらうのも何なんで、私と一緒に見学組。
リーナが心配らしくて、自分で作りたがってたけどね。我慢してもらった。
そうして出来上がったフルーツケーキは、私たちとセラさん、そして門番(近衛騎士)さんにも振る舞われた。
門の所に持って行って、休憩がてらちょっと食べてと。
「ダ、ダンデリーナ様の手料理をわ、我々が!? そんな恐れ多いっ!」
恐縮しまくってたけど、別にリーナの手作りってわけじゃないし、たまにある御裾分けって感じだから気にしないでと言っておいた。
セラさんもそうだけど、涙ながらに食べていた。
どういう意味の涙なのかは分からない。
私も食べたけど、やっぱり前世のような「ふわふわ甘々」というわけにはいかないが、十分美味しいと思った。
この世界、甘味自体が少ないし、あっても蜂蜜の甘味が多くて砂糖をどっさり使うなんてまずしない。
それもあって非常に贅沢で美味に感じたよ。
「おお、これは美味しいですね! 時間があったら毎日でも作りたいですよ!」
「ん。ポロリンナイス。おかわり」
「わたくしもちょっとしたお手伝いではありましたが良い経験が出来ました」
「自分が携わったと思うと、より美味しさが増しますわね!」
……携わらなくても美味しいですよ? ええ。
ちなみにセラさんがその日に提出した報告書により、国王が暴れそうになったらしい。
リーナの手料理を一番最初に食べるのは自分だと。
百歩譲ってパーティーメンバーが食べるのはともかく、近衛騎士が食べるとは何事だと。
危うくうちの門番(近衛騎士)さんは辞表を出す寸前だったとか。
今度作ったら王城にお土産するべきだね、こりゃ。
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