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第五章 毒娘たち、注目の的になる
113:五人パーティーですがこの度六人目をゲットしました
しおりを挟む善は急げとばかりに、私たちは王都中央の西寄り、大通り沿いにある起神殿へと向かった。
昨日の『禁域』氾濫騒動は王都内でも結構話題になっているらしく――騎士団や衛兵が慌ただしければ当然だが――その中でも冒険者や騎士団に混じって【七色の聖女】様たちも共に戦ったと聞いたのか、神殿前には人だかりが出来ていた。
有名クランである【誇りの剣】や【唯一絶対】は冒険者ギルドでは有名人だが、一般都民にはそうでもないらしい。
私たちもある意味で有名人だが、冒険者として相応の実力があるとは誰も思っていないだろう。
リーナの存在も含め、知っているのは目耳の良い商人さん――ベルドットさんやメルルさんとか――に限られる。
となれば都民の注目が【七色の聖女】様に集まるのも必然で、感謝を伝えたいのか、治療を受けたいのか分からないが、ともかく混雑している。
神殿の神官さんたちが前に出て説明しているから押しかけるような事態にはなっていないけどね。
皆さん、礼儀正しい感じです。
さて、そんな人波の横を抜け、私たちは神殿の中へ。入るのは初めてだなー、オーフェンの神殿は入ったけど。
印象としては巨大な結婚式場。ズラーッと席が並び、正面の壇上には演壇と、立派な神像。
その周りにも一回り小さな神像が並び、おそらくそれが副神なのだろう。私はよく分からん。
高くアーチ状の天井と、スリットのような窓から入る鈍い光が神殿の中に注ぎ、何とも神々しい空間を作りだしている。
「おおー」と感心したように見回しながらも、そんなリアクションをしているのは私とポロリンだけなので、さっさと近くの神官さんに声を掛け、ソプラノさんを呼んでもらった。
聖女様を呼びつけるような真似はどうかと思ったので、ここぞとばかりにダンデリーナ第七王女殿下に出張ってもらった。
すまんね、リーナ。こんな時ばかり使っちゃって。
どうやらソプラノさんは神殿に居たらしく、奥の応接室で応対するとの事。
良かった。『禁域』に行ってたらどうしようかと思ってたけど、さすがに昨日の今日だからか留まっていたようだ。
私たちは神官さんに連れられ神殿の奥へと向かった。
「皆さん、昨日はお疲れさまでした。皆さんのおかげで王都が救われました。改めて御礼を」
「いえいえ、ソプラノさんこそお疲れさまでした。おかげでこっちも助かりました」
面と向かってお礼を言われると照れる。
促されるままソファーに座り、出された紅茶を飲みつつ少し話す。
ソプラノさんたちはあれから騎士団の人たちの回復を行い、神殿に帰って来たらしい。
しかし『禁域』氾濫の情報を得た都民が神殿でお祈りをしていたりと若干の混乱状態だったようで、一通り説明するはめになったようだ。
おそらく今日の混雑は、その説明を又聞きした人が押し寄せているのだろうと。
また、国からも神殿に、正式に救援に対する御礼があったらしい。
これはソプラノさんがリーナに逆にお礼をしていたが、こっちは国王の動きなんか知らないからね。
リーナも「初耳なので」と言いつつ、とりあえずお礼の言葉を受け取った形だ。
おそらく私たちが国から御礼――いや褒賞か――を貰うというのはないと思う。
あくまで冒険者として依頼・討伐を行ったので、あるとすると国→ギルド→私たちという流れになるだろう。
まぁリーナが居る時点で普通の冒険者パーティーとは異なるから、何かしらアクションがあるかもしれないが。
と、そんな事を話しつつ本題に入る。
「それで皆さんはどうして神殿へ?」
「いや、ギルドでも騒ぎになってたらしくて、昨日の私たちの戦闘が広まっちゃってるんですよ。特に私の……」
「ピーゾンちゃんの……ああ、あの″毒″ですか?」
やっぱりソプラノさんにもバレていたらしい。
あれだけ近くで<毒弾>連発してれば、そりゃバレるか。
で、どうにか私が危険視されないで日常生活を送る為にと考えた結果、回復役をパーティーに入れればいいんじゃないかと。
元々私がポロリンとパーティーを結成した時点で回復役を入れたいとは思っていたし。
そんなわけで六人目のメンバーは出来れば回復役にしたい。
パーティーの為にも、私自身の為にも。
「――というわけで誰か冒険者になってくれそうな神殿の方がいらっしゃればなーと、ソプラノさんに紹介してもらえないかなーと。この際固有職に拘るつもりはないんで」
出来れば固有職で固めて秘密を共有し合う関係性が理想だけど、この際一般職でも構わないというのは私たちの中でも話した。
やはり回復職自体が少ないし、冒険者になろうっていう回復職はもっと少ない。
その中でさらに固有職となると、これはもう無理ゲーだろう。
私たちが仲良くなれそうな人、秘密を共有し合えそうな人であれば贅沢は言わない。
と、そんな事を説明した。
ソプラノさんは顎に手を当て、考えながらも真剣に私の話を聞いている。
そして一通り聞き終わると、顔を上げた。
「……なるほど、分かりました。ちょうど良い人材が居ますね」
「ホントですか! 良かった! 是非紹介して下さい!」
「はい、私です」
『…………え?』
「私を紹介します」
『………………は?』
♦
「まぁまぁ、立派なお屋敷ですね~。ここが皆さんのホームですか。さすがに殿下……いえ、リーナちゃんも一緒のお住まいとなるとパーティーホームもこうしたものになるのですね~」
はしゃぐソプラノさんを引き連れ、私たちは再度ホームに帰還した。
当然のようにソプラノさんも魔法の鞄を持っており、そこに色々と詰め込んだ上で、さらに大きなリュックも背負っている。
つまりは″お引越し″である。どうしてこうなった……。
神殿の応接室で色々と話を聞いたが、ソプラノさんはこの一月、私たちの仕事ぶりを見ていて感心していたらしい。
幼い少女たちが危険な『禁域』に潜り、尚且つ誰より頻繁に、誰より多く討伐を行っている。
氾濫を防ぐ為、王都を守る為に、こんなに頑張っている。
それは簡易治療院を小砦に設けた自分たちの励みにもなったし、同時に潜れない自分たちを情けなくも思っていた。
そして昨日、実際に氾濫は起こり、私たちの戦いぶりを間近で見る事が出来た。
それはソプラノさんにして想像以上のものだったらしい。
いくら固有職だからと言って、十~十一歳でこの強さはありえないと思える程の才を感じたと。
だからこそソプラノさんは私たちのサポートに専念し、バフを使う事に決めた。
「エビルクラーケンを倒すには、王都を守るにはこの娘たちの力に頼る他ない」と。
そう熱弁されると何も言えないと言うか、照れるか謙遜するかくらいしか出来ない。
サフィーは「そうでしょう、そうでしょうとも! オーッホッホッホ!」と扇子を広げていたが無視だ。
で、そんな私たちが回復役を求めて自分を訪れた。
これは神のお導きなのでは?(違います)
私が固有職に就いたのは、今ここで巡り合う為だったのでは?(違います)
天啓を受けたように、そう思ったのだそうだ。(違います)
そんなわけでソプラノさんは「自分が加入する」とグイグイ来る。
私たちとしては知っている仲だし、超優秀な回復役だし、同じ固有職だし、当然文句などない。
しかし【七色の聖女】と民から慕われる存在。民にとってはある意味リーナ以上に英雄であり有名人だ。
神殿側だって手放したくないだろう。
冒険者登録しているパーティーも神殿組織で固めた面子のはずだし、だからこそ神殿と冒険者の二足の草鞋を履けたのだ。
これで私たちのパーティーに入るとなると神殿的にも色々と問題があるのでは?
ついでに言えば、今でさえ目立つ存在と自覚している私たちが、天元突破の注目度を浴びるはめになるのは確実。
それは今更という意見もある。認めたくない部分でもある。
そうした諸々を天秤に掛け、五人でヒソヒソと話し合った結果、ソプラノさんを入れる事にした。
そりゃこれ以上は居ないってレベルの人材だからね。逃すのは勿体なさすぎる。
それからのソプラノさんの行動は早かった。
私たちを応接室に待たせつつ、神殿長さんに話を通し(何やらギャーギャー聞こえたが)、すぐさま荷物を纏め(えっ、うちのホームで一緒に住むの?)、止めようとする神官さんや信者の人を聖母の笑みで巧みにかわし(説明くらいして出ろよ)、ルンルン気分で私たちのホームまでやって来たのだ。
今ここ。
「お帰りなさいま…………聖女様?」
「ただいまセラさん、えっと、ソプラノさん、ここで暮らすんで」
「……は?」
「えっと、うちのパーティーに加入したんで」
「……え? 聖女様が?」
「そう、聖女様が」
「……【輝く礁域】に?」
「そうそう」
「……伝令! 伝令――――っ!!!」
セラさんは門番(近衛騎士)さんに何やら話し、一人を王城へと走らせた。
いや、そんな事を緊急報告するの? そこまでしなくても良くない?
って言うかセラさん、近衛騎士を顎で使えるの? そんな偉いの?
あたふたするセラさんを後目に、早速パーティー会議して能力の事とか今後の事とか話し合わないといけない。
ただその前に自室に案内しないとね。
「二階がみんなの自室になってるんですけど、空いてるのは主寝室だけなんで、ソプラノさんはそこで」
「えっ、私が主寝室ですか!? リーナちゃんやサフィーちゃんは?」
「わたくしは今の自室で十分です」
「ワタクシも狭い方が色々と弄れて楽しいですわ!」
「ピーゾンちゃん、リーダーなら主寝室を使った方が……」
「私も今の部屋をファンシーにするのに忙しいんで、あんな広いのは無理です」
「はぁ……」
という事で清貧なはずの聖女様が一番大きな部屋になった。
一番年上だしいいんじゃないでしょうか。パーティー唯一の成人だしね。
さて、荷物を置いたら根掘り葉掘り聞かせてもらいましょうかね。能力の事を。グヘヘヘ。
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