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第五章 毒娘たち、注目の的になる
116:リーダーですが聖女様のスキルを見せてもらいます
しおりを挟む「んじゃ今日は依頼も特訓もせずに、スキルと戦い方の確認だけするよー」
『はーい』
そんなわけで、ベルドット商会で一通りの買い物を終えた後、空いた午後の時間でいつもの南の森までやって来た。
そこまで時間があるわけじゃないから、本当に確認だけだ。
さすがにホームで確認出来ないし、『禁域』とかに行って試すわけにもいかない。今のうちにって事で。
一人ずつ、ソプラノにスキルを見せて、どういう効果か、どういう使い方をするのかを見ておいてもらう。
そうしないといざ使うって時に困るからね。
逆にソプラノのスキルとかも教えて貰わないといけないんだけど。
「とりあえず私からね」
私のスキルは分かりやすい。というか毒しかない。
<毒弾><毒霧><毒雨>を見せる。密集したパーティー戦やダンジョンではほとんど<毒弾>しか使わないけど一応見せる。
それと<毒精製>で作れる毒を色々と。
これはソプラノの<キュアバブル><ハイキュアバブル>で治せるのかも確認しておく。
状態異常には色々とあって、それを治す回復魔法には<キュア>と、それで治せない状態異常に対する<ハイキュア>しかないらしい。
それこそ過去の固有職のスキルで『あらゆる状態異常を治す』みたいな強力なものもあったらしいが、ソプラノの″泡″はそこまでの性能ではないらしい。
基本的には神官などの一般職が使う回復魔法の″泡バージョン″が<〇〇バブル>という事だそうだ。
で、その″泡″で私の毒は治せるのかと実験してみた。コボルトで。
結果、<衰弱毒><麻痺毒>は<キュアバブル>で治る。<石化毒>は<ハイキュアバブル>で治ると判明。
<腐食毒>はそもそも状態異常ではないので治らない。対処しようがない。
問題は<枯病毒>だったのだが、コボルトに撃ってみたけど<ハイキュアバブル>でも治らなかった。
「やっぱり状態異常じゃなくて病気扱いって事なのかね」
「病気でしたら<添い寝>で治る可能性もありますが……」
「えっ、<添い寝>って病気が治るの?」
ソプラノのスキルの中で一番の問題児――<添い寝>。
効果はソプラノが抱きついて一緒に寝ると、体調が良くなるらしい。
それはHPMPの回復はもちろん、外傷なども治るのだとか。
風邪を引いても治るらしいので、病気に対しても効果的との事。
まさしくエリクサーのようなとんでもない効果だと思ったが、『聖女による添い寝』が条件の為、神殿でも秘匿され、やたら使えないようにしていたらしい。
そりゃそうだ。
こんなのが知られれば強欲な貴族が「金を出すから聖女を一晩貸せ!」とか言ってくるだろう。
神殿が娼館と化してしまう。危うすぎるわ。
但し<枯病毒>に効くかの検証は出来ない。
私たちに撃つわけにもいかないし、コボルトと<添い寝>するわけにもいかないし。
やっぱ<枯病毒>は厄介すぎるという結論だ。
続いてポロリン。
<挑発><呼び込み>は一般職でも使える既知スキルなので特になし。
<ピンクマッサージ>は昨夜、ソプラノも実際に体験し、感動していた。
【セクシーギャル】の<ピンクマッサージ>を受ける【泡姫】……事案ですな。
<セクシートンファー術>も一通り見せ、盾役のはずのポロリンによる華麗な攻撃に拍手していた。
<魅惑の視線>に関してはコボルトに試した結果、<ハイキュアバブル>で混乱が治ると判明した。
これは良い情報だ。混乱の対処って殴って目を覚まさせるくらいしかなかったからね。
万が一、味方が混乱状態になってもソプラノさえ正気であれば治せるという事だ。
となると、回復役をますます守る必要がある。当然だけど考えものだね。
続いてネルト。
<生活魔法>と<快眠>はともかく<空間魔法><念力><室内空調>は詳しい説明が必要。
事前に一応説明はしていたが、さすがにソプラノの理解を超える能力らしく、最終的には「ネルトちゃんってすごいですね!」と若干思考放棄していたように思う。
まぁ「これはこういう効果です。原理は不明です」とでも納得しておけばいいと思う。
とりあえずネルトは攻撃・防御・索敵・緊急避難とやれる事が多く、それをソプラノが把握していればいい。
「ただどれを使うにしてもMP消費が激しいからね、そこがネルト最大の欠点」
「では私の<マジックヒールバブル>の出番が多くなりそうですね」
「″癒し″系で一番多く使うのはそれだろうね」
ソプラノの<癒しの泡>は回復魔法と同義だが、一味違うのはMP回復手段があるという事だ。
私たちは金の力でMPポーションを大人買いして凌いでいるけど、私とネルト以外は戦闘中に飲むのも難しいし、そうなるとソプラノの<マジックヒールバブル>は使用頻度が高くなるだろうね。
続いてリーナ。
<包丁術>は未知の固有スキルだけど理解するのは容易い。包丁使った<剣術>って感じだからね。
ただ<タンポポ乗せ>と<パッケージング>は実践して見せないとね。
あと<流水の心得>も使って見せた。回避能力の謎が解けたようで喜んでたよ。
「はぁ~、これで素材が鮮度を保つわけですか、素晴らしいですね」
「<解体>出来る地表の魔物限定ですけれどね。非常に重宝しています」
「魔物を狩ったらリーナの仕事が多くなるんだよ。まず<パッケージング>で血抜きとか魔石とったりして、<解体>して、肉とかには<タンポポ乗せ>して、素材によっては<パッケージング>で魔法の鞄に収納……って感じ」
「戦闘後なのにリーナちゃんの仕事量が多すぎますね……」
「わたくしの【サシミタンポポ】を十全に活かせる方が喜ばしいです。綺麗に持ち帰った素材は冒険者の皆さんを守る装備になったり、錬金薬になったりするのですから」
この娘はどこまでも国の為、民の為、なんだよね。生真面目。
ソプラノと一番波長が合ってるとは思うけど。
続いてサフィー。
<短剣術>と<必中投擲>以外は説明がいるね。【忍者】自体がレアだから【忍者】特有のスキルも知らないだろうし。
<忍びの直感><忍びの歩法>だけでも反則級の複合スキルだし。
しかしやはり一番の問題は<スタイリッシュ忍術>だ。
「はぁ~、エビルクラーケン戦でも見せて頂きましたが本当に多彩ですね」
「そうでしょう! そうでしょうとも!」
「放つ前の所作はやはり必要なのですか? あと忍術の終わりに目が痛くなるような余韻が……」
「ぐぬぬ……」
「それは語ると長くなる苦労があってね――」
スタイリッシュじゃなければなー、普通の【忍者】が良かった。ちゃんと忍んで欲しい。
さて、一通り説明した所で、これからはソプラノのスキルを見せてもらう。
これは全員で把握しておかないとね。どういうもんかと。
<癒しの泡>は青や緑系のシャボン玉を飛ばし、回復させる。効果は回復魔法のそれと同じ。
違いはさっきも言った<マジックヒールバブル>というMP回復手段があるという事。
<高揚の泡>はバフだ。赤や黄色など暖色系のシャボン玉を飛ばし、ステータス項目にある七種のバフを行う。
<デックスバブル>や<ラックバブル>は使いそうにないけど、他は結構使いそうだね。
気になるのは、回復魔法のように杖を相手に向けるだけで、その人に効果が出るというわけではなく、あくまで『泡が当たってから効果が出る』という事だ。
つまりソプラノが放ってから、効果が出るまでタイムラグがあるって事だね。
「泡が飛ぶ速度はそこそこ速いと思うんだけど、私たちが動き回っていてもちゃんと当たるんだよね?」
「はい、私が放った時点で相手を指定していますので、泡が追いかけて行きます」
「間に壁とか遮蔽物があったらどうするの?」
「遮蔽物を避けて行きますね」
貫通は出来ないって事か。
どうやら非生物に当たると泡が消えるらしく、基本的にはそれを避けてホーミングするらしい。
「じゃあリーナに当てるつもりで放って、間に私が割り込んだら?」
「ピーゾンちゃんにバフが掛かりますね……」
「うーん、じゃあ魔物に泡が当たったら?」
「魔物にバフが掛かってしまいますね……」
「なるほど」
「私の方である程度のコントロールは出来るので避ける事も出来ます。でも急に割り込んだり、誰かが奪うように泡に触れた場合は、バフ効果が出てしまいます」
ああ、ソプラノの方でも少しはコントロール出来るのか。
そうじゃないとエビルクラーケンで足に囲まれた私に泡を当てるなんて無理だろうしね。
と考えると、ソプラノの操泡技術は相当高いんじゃないの?
「それはもう沢山練習しましたから」
だろうね。でもコントロールをミスる可能性も考えると、やっぱり立ち位置とか射線の確保が重要だ。
ここら辺は戦術訓練と並行してお互いに慣れていく感じかな。
「あと<泡姫の舞>っていうのは?」
「見せた方が早いのですが、コボルトの群れとかが居てくれると……」
「んじゃポロリン、よろしく」
「はい。<呼び込み>!」
そうして見せてくれたのは一言で言えば『バリア』だ。
ソプラノがバレエのようなダンスを踊ると、半径10mくらいが大きなシャボン玉で包まれる。
襲って来たコボルト三体はシャボン玉に阻まれてこちらに来る事が出来ない。
『おおー!』
「こ、このような感じです! お手数ですが倒して下さいますか!?」
踊りながらソプラノがそう言うので、サクッとコボルトを倒した。
聞けば、魔物……というか敵性存在の侵入と攻撃(投擲や魔法なども含む)も防ぐ完全バリアらしい。
しかし踊り続ける必要があり、踊っている間はMPが消費し続ける。
つまり罠や突然の強襲に対しては、そもそも踊れないから発動出来ないという事だ。
あくまでソプラノが″踊れる環境″でないと使えない。寝込みを襲われるとかも当然無理。
うーん、強いんだけど使い勝手が悪い……私の毒と近いねぇ。
「でもさすがに十年以上も研鑽を積んでるからか、私がテコ入れするトコも見当たらないね」
「即戦力ですね。さすが聖女様です」
「ありがとうございます」
「となれば六人での戦術を固める感じでしょうか」
「ソプラノさんを最後尾に置く感じでよろしいんじゃありませんの?」
「ん? 模擬戦の特訓とかは?」
ふむ、配置についてはサフィーの言うように最後尾固定で大丈夫だろうね。
ダンジョン探索とかは真ん中かな。
それとネルトも言う通り模擬戦はやったほうがいい。ソプラノは杖で防御も出来ないって言ってたし。
出来るに越した事はないからね。
よし、んじゃ色々と特訓してみますか。
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