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第五章 毒娘たち、注目の的になる
115:メンバーが増えればやる事は目白押しです
しおりを挟む■ソプラノ 【泡姫】 25歳
「はあっ!? ぼ、冒険者のパーティーに加入すると!? 神殿から出て行くのですか!?」
ピーゾンちゃんたちを応接室へと待たせつつ、私は神殿長室へと向かいました。
パーティーに加入させて貰えるとなった今、ザッツエルト神殿長様に伝えて行かなくてはいけません。
「籍を抜くつもりはありません。お世話になった神殿に感謝の気持ちもありますし、私の治療を待つ民の皆さんがいらっしゃいますので」
「でしたらなぜ冒険者に……」
「私が加入するのは【輝く礁域】というパーティーなのですが、神殿長様はご存じですか?」
「【輝く礁域】……もしかしてダンデリーナ王女殿下がいらっしゃるという?」
「ええ、その通りです」
私は彼女たちの素晴らしさを神殿長様にお伝えしました。
若くして才能溢れたその力量はもちろんですが、何より殿下だけでなく皆さんが王都を守る為に奮闘していた姿が素晴らしいと。
冒険者とは魔物の脅威から非戦闘職の方々を守る為に戦うのが本分。
それをあの若さで誰よりも体現している。それは尊敬すべき姿であると。
私はその一助となりたい。若い彼女らを支える為に、共にありたい。
それは固有職であり回復役である私にしか出来ない事なのだと。
「我が儘を言って申し訳ありません。しかし神殿の名を穢すつもりもありませんし、民の救済を止めるつもりもありません。ですので――」
「はぁ、分かりました。貴女は昔からこうと決めたら真っすぐなきらいがありましたからね。私が止める事は出来ませんよ」
「ではっ」
「その代わり、神殿の本分を忘れないようお願いしますよ。得てして冒険者とは民から野蛮に見られる事も多いのです。貴女は民にとっての聖女。救済の精神を常に持ち続けて下さい」
「承知しました。ありがとうございます」
治療を求める民への対処や、『禁域』での簡易治療院に関しても神殿長様にお願いし、お任せする事になってしまいました。
もちろん休日などには私も神殿での治療奉仕に伺うつもりではいますが不定期になってしまうでしょう。
心苦しい部分もありますが、私には私にしか出来ない事があります。
彼女たちと共に歩まねばならない道があります。
私はしっかりと頭を下げ、神殿長室を後にしたのです。
尚、その数日後、私が神官服を脱ぎ、動物モフモフシリーズに身を包んだと聞いて、神殿長様は酷く荒れたそうですが、その事が私の耳に入るのはさらに後の事となりました。
■ポロリン 【セクシーギャル】 10歳
はぁ……パーティー上限の六人は埋まったけど、結局男はボク一人かぁ。
いや、何となくそんな気はしてたし、一応の覚悟はしてたんだけどね。
それでもなんか気まずいって言うか、恥ずかしいって言うか……みんなお風呂上りで薄着で談話室とかに居るから目のやり場に困るんだよ。
どうもボクが男って言うのを忘れられているみたいで……まさかそんな事ないよね?
そうは言っても、人材的には本当にスゴイ人たちばかりが集まってくれたと思う。
ネルトさんはとんでもない【魔女】だし、リーナさんは国中で噂の第七王女様だし、サフィーさんは公爵令嬢の上に【忍者】だし、その上今度は【七色の聖女】様まで加入した。
ピーゾンさんの人を惹きつける力ってホントすごいと思う。
実際、戦いとか指導とか考察とか、全部ひっくるめてすごいとは思うけどね。
ピーゾンさんじゃなかったら、ここまでのメンバーは集まらなかっただろうし。
……そんな中に凡人のボクが、しかも男一人で居るって言うのがね……心苦しい。
と、モヤモヤをかき消すように料理を頑張った。
今日はソプラノさん加入の歓迎も兼ねて豪勢に行きます!
『おおー!』パチパチパチ
「まぁありがとうございます! ……ポロリンちゃん一人で作るの? 私もお手伝いしますよ?」
どうやらソプラノさんも料理が出来るらしい。
でもすいません、ここはボクに任せて下さい! ボクここの料理長なんで!
そんな熱意を持って作られたピーゾンさん直伝の揚げ物づくし。
もちろんみんな(特にネルトさんが)がっついてたし、ソプラノさんにとっても衝撃的だったらしく満足してくれた。
今度作り方を教えて欲しいとも言われた。
じゃあ今度一緒に作りましょう、ソプラノさん!
でも料理長はボクですからね!
■ピーゾン 【毒殺屋】 10歳
「ええっ!? 聖女様、【輝く礁域】に入るんですか!?」
翌日、最初に行ったのは冒険者ギルドでのパーティー登録だ。
暇そうな登録窓口のカウンターで、ソプラノを私たちのパーティーに入れる旨を伝えた。
それでこのリアクション。大声出すなし。ただでさえ目立ってるのに。
「お、おい! 【輝く礁域】に【七色の聖女】が!」
「まじかよ! アリなのかそれ!」
「戦力補強ってレベルじゃねえぞ!」
「聖女様が入ってもポロリンちゃんが一番可愛いという事実は揺るがない」(小声)
ほら見ろ。もうヒソヒソ話ですらなくなってる。
これに喜んでいるのは扇子広げたサフィーくらいなものだ。
ともかく受付嬢さんにさっさと登録手続きをしてもらい、ソプラノのカードを更新。
どうやらソプラノはDランクらしい。
つまり【輝く礁域】としてはCが二人とDが四人の、Dランクパーティーとなる。変わらないね。
それだけ済ませば依頼も受けずにすたこらさっさと退散。
これ以上ギルドに用などない。
今日は忙しいのだよ。私たちは。
さて、次に向かうのは同じ中央区にあるおなじみのお店。
そう、ファンシーショップ・マリリンである。
「あらぁ~、聖女ちゃんも入ったの? 良かったわね~」
さすがのマリリンさんである。動揺などなし。
ソプラノもギョっとはしたものの、マリリンさんに動じる事なく、さすがの聖母っぷりを見せる。
まぁマリリンさんの事前情報は伝えていたんだけどね。こんな人だよと。
なんでここに来たのかと言うと、話は昨日の会議にさかのぼる。
「私は何の動物にしようかしら~、楽しみですね~、うふふ」
「えっ、ソプラノもこれにするの? 大丈夫?」
「せっかく同じパーティーに入るのですから当然揃えますよ! 私だけ仲間外れみたいで嫌じゃないですか!」
「お、おう」
いや、神殿とか聖女としての立場的に大丈夫かなーと思ってね。
今着てる『聖女のローブ』だって大層なものだろうし、インナーもファンシー装衣に変えるんなら神官服じゃなくなるって事でしょ。
それは許されるものなのかと。
確かに最初は私の毒イメージ払拭の為に「見た目で回復役らしい回復役を」って思ってたけど、ある意味リーナ以上に顔が知られているソプラノが入ってくれた事でそれは達していると言っても良いでしょう。
ついでに言えば、私的には是非とも聖女様に同じ格好をしてもらって広告塔として頑張って欲しい気持ちもあるにはあるが。
と、色々聞いたが、ソプラノの意思は固く「神殿に後から何か言われても無視します!」との事。
それでいいのか聖女様。神殿長さんが頭を抱えているイメージしか湧かない。
ともかくそんなわけでマリリンさんに発注しに来たのだ。
「なるほどね~、みんなと被らない動物のモフモフシリーズを作るのと、ファンシー装衣の神官バージョンね~。面白そうだわ~」
「神官服ってこういう形状じゃないとダメなんですかね?」
神官服はいわゆるキャソックと言うやつに近い。
詰襟長袖ロングスカートのワンピース。基調は白と青。
ソプラノはその上に立派な『聖女のローブ』を羽織っている。
「形状は近づける必要があるでしょうね~。ブラウスとタータンチェックのスカートをワンピースにしちゃうか、ロングスカートにするだけで行けるかもしれないけど~。あとは素材ね~」
「素材? 何か違うんですか?」
「糸の時点で聖水に漬け込むのよ~。それで織ったものが『聖布』。回復職の装備には聖布を使うのが一般的ね~」
「ほぉ、その聖布でファンシー装衣は作れるんですかね?」
「そこはチャレンジね~。楽しみだわ~」
なるほど、装備にも色々とあるんだなー。作る方は大変だ。
ここはもう専門家のマリリンさんにお任せするしかない。
「あっ、あと魔法の鞄と杖のカバーもお願いします」
「モフモフ装備と一緒のやつね~。作っておくわ~」
よしよし。これで発注はオーケー。
あとはソプラノの採寸をして……おいおい、すげえな。ローブと神官服に隠れてそんな武器を隠してやがったのか……。
身長は私たちの中で図抜けて高い170cmくらい。
スリーサイズは90-60-85とか? 分かんないけど。
その上、水色の長髪が美しい美人さんだと……デルモかな?
こりゃ聖女人気あるわけですわ。癒しですわ。
ただ一つ言わせて欲しい。こんな泡姫いるかい!
さて、気を取り直して、次はベルドット商会へ。
ソプラノ加入により日用品とか諸々を買い足す事となったのだ。
最低限はあるけど、必要なものもあるからね。
「ええっ!? せ、聖女様が加わったのですか!?」
ナイスリアクションだよ、ベルドットさん。
噂話に先んじる事が出来て私は満足だよ。
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