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最終章 毒娘、故郷の為に戦う
128:道具屋の息子?ですが一時帰省しました
しおりを挟む■ポロリン 【セクシーギャル】 10歳
時刻は夕方。ボクたちはギルドを出てから、すぐ近くの道具屋へと足を運ぶ。
そう、ボクの実家だ。
オーフェンに帰って来たはいいけどずっと後回しになっていたから、思わず早歩きになってしまう。
「お母さん、ただいま!」
「えっ…………ポロリンかい!? まあまあまあ!」
帰ってくるとも伝えないまま来ちゃったから驚かせちゃったみたい。
すぐにカウンターから出て来て、少し涙目のままボクを抱きしめた。
無事で良かった。元気そうで良かった。ボクも少し泣きそうになる。
「あんたなんでいきなり……」
「王都のギルドで指名依頼を受けたんだよ。オーフェンとか南部の村が大変だからって。緊急だったから手紙も出せなかったけど」
「そうなのかい……それでそちらが?」
「おばさん、お久しぶりです!」
「ピーゾンちゃん! 本当にありがとうね! いつもポロリンを助けてくれてるみたいで」
「いえいえ、むしろこっちが助けてもらってますよ」
ボク以外のみんなは領主館に泊まるらしいけど、ついでだからご挨拶にって来てくれた。
ピーゾンさんもお母さんに会いたいって言ってくれたし。でも狭い道具屋だから応接室とかないんだけど……。
一応こっちのメンバーについては手紙で書いているからお母さんも知っているとは思うけど、実際に会ったのはピーゾンさんだけ。
だからボクの方から順々に紹介する。
「この子がネルトさん」
「ん。よろしく」
「まぁ、あんたがネルトちゃんだね。魔法使いなんだろ? ポロリンと仲良くしてくれてありがとうね」
ネルトさんはいつもの無表情だけど、どこか気恥ずかしそうな顔にも見えた。
「で、こちらがリーナさん……あ、ダンデリーナ殿下って言った方がいいか」
「ダンデリーナ・フォン・ジオボルトと申します。ポロリン様には大変お世話になっております、お母様」
「え、あ、こ、このたびは……」
「ちょちょちょ、おばさん大丈夫だから。傅かないで、普通にポロリンの友達として接して」
あー、まぁそうなるのか……ちゃんとリーナさんの事も書いてたんだけどなぁ。
ピーゾンさんの素早いフォローでどうにか持ち直してくれた。
これは後でまたお母さんに説明しておこう。
「で、こちらがサフィーさん」
「サフィー・フォン・ストライドですわ! ポロリンさんのお母さん、息子さんにはお世話になっておりますわ!」
「え、あ、その、どうもありがとうございます……」
サフィーさんが公爵令嬢だって言うのも知ってるから、やっぱり対応に困るっぽい。
「それと、こちらがソプラノさんね」
「ソプラノと申します。よろしくお願いいたします、ポロリンちゃんのお母様」
「な、【七色の聖女】……様……」
どうやらいくら手紙で伝えていても、実際に会うとお母さんには相当ショックだったらしい。
ピーゾンさんがフォローしてくれなかったら、ボクも対処に困ってたよ。
いくらボクが「普通に仲良しだよ」って言っても信じてくれないし。
「はぁ~、なんかもう、一生分驚いたね」
「アハハ……ボクはもう慣れちゃってるんだけどね……」
「そんでおばさん、こっちは大丈夫なの? シェラちゃんのトコとかは?」
「ああ、衛兵や冒険者は忙しそうだし、みんな不安そうではあるけどね。今の所は問題ないよ。ただ南側との流通が滞ってるし、ポーション関係の消費が激しいね。うちからもギルドに回してるが、正直供給が追い付かなくなりそうだよ」
うちの道具屋はギルドに近いから冒険者の人たちがよく利用する。
今は魔物討伐ばかりに駆り出されているはずだから、ポーション関係は品薄みたいだ。
やっぱり王都で補充してきて正解だった。
「シェラちゃんのトコは領主様からの依頼もあって、避難民を泊まらせているはずだよ。宿泊代金は領主様持ちで、避難民を泊まらせてくれって街中の宿屋に通達してるからね」
「おー、伯爵さんやるねー」
「でも食材とかは一部、南部から仕入れてるものもあるからね、そこら辺で大変みたいだよ。それはどの食堂とかでもそうだし、うちみたいな家庭でもそうだけどね」
魔物を多く狩るから肉は大量にある。でも小麦や野菜なんかは、少なくなっているらしい。
逆に商機と見て南に赴く行商人も居るらしく、全く入らないというわけではないみたいなんだけど。
もちろん北側の村や街からも入るし。
「じゃあシェラちゃんに会うのは無理かー」とピーゾンさんは残念そう。
ボクは後で顔を見せにいくつもりだから、伝えておきますよと言っておいた。
全部片が付いてファストン村からオーフェンに帰って来た時にでも会えればいいけどね。どうなるか分からないし。
……ん? まさかファストン村から王都まで<ロングジャンプ>で帰るなんて……しないですよね?
ともかくこれで一応みんなをお母さんに紹介できた。
店先で立ち話ですみませんとお母さんはリーナさんたちに恐縮してた。
それから五人は領主館へと帰っていく。ボクは明日の朝に合流だ。
一人になり、ようやくカウンターの奥に腰を下ろしてお母さんと話す。
本当は奥で休みたいけど、街がこんな感じだから閉店時間もなるべく遅くしているそうだ。
だからお母さんはカウンターから動けない。そこでゆっくりと話す。
いきなり帰って来たと思ったら王女様とか連れて来たから驚いた、という愚痴から始まり、手紙では書ききれない王都での生活、冒険者としての仕事、逆にお母さんからオーフェンの街の変化とかを聞く――つもりだったんだけど、その前に店に飛び込んできた来客があった。
「おばさん! ポロリンが帰ってきてるって……ポロリン!」
「シェラちゃん!?」
どこで噂を聞きつけたのか、宿屋の仕事の合間を縫って、シェラちゃんが駆け込んできた。
あちゃー、もうちょっと長くピーゾンさんが残っていれば会えたのに……。
少し残念に思いつつも、ボクもシェラちゃんと会いたかったのでカウンターの前に出て、「久しぶり、ただいま」と両手握手で答えた。
シェラちゃんは二歳下だけど幼馴染というか、ボクの唯一の親友でもある。
小さいんだけど仕事してるからかボクよりしっかりしてて、なぜか知識も豊富。
時々お姉さんのようにも感じる女の子だ。
一通り再会を喜び合った後、さっきまでピーゾンさんたちがここに居た事も伝えた。
「えっ、ダンデリーナ第七王女殿下とか【七色の聖女】様とか居たんですか!? うわぁ! 会いたかったです!」
いやそこはピーゾンさんの名前を出してあげなよ。
ずっと泊まってもらってたじゃない。角ウサギとか狩ってもらってたじゃない。
ボクは苦笑いするけど、シェラちゃんらしいなぁとも思う。
すると、シェラちゃんは急に真剣な表情になってボクを見る。
「しかしポロリン……」
「え、何……?」
一歩下がって、顎に手を当て、ボクを上から下まで見てからこう言った。
「とんでもなく可愛いですね……それ装備なんです?」
「え……あっ! あああああ!!!」
帰ってくる時には着替えなきゃって思ってたのに……忘れたあああああ!!!
今のボクは黒狼王と戦った時のまま。つまりはピンクくま+ファンシー装衣だ。
「ピンクのくまです? すっごくモフモフです。しかもスカートとか……」
「あたしは見て見ぬふりしてたんだけどね……ポロリン、あたしはあんたが元気ならそれでいいんだよ? 別に周りが女の子ばかりだから、あんたが男を捨てたって――」
「捨ててない! 捨ててないから! これは話すと長いんだけど――」
そこからかなーーり長い時間を掛けて装備に関するアレコレを説明した。マリリンさんの事とかも。
いや、もっと話したい事あったんだけど……言い訳っぽい事に貴重な時間を使ってしまった。
ボクだって好きで着てるわけじゃないんだよ?
いや本当に。
え? 似合ってるって、シェラちゃん、そういう話じゃないから。
だいたい似合ってるわけないでしょ? ボク男だからさ。
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