144 / 171
最終章 毒娘、故郷の為に戦う
132:久しぶりのファストン村ですがゆっくりは出来ません
しおりを挟む村長宅は村の中央にある。一応村で一番大きい建物ではあるが、オーフェンにあるシェラちゃんの宿屋とどっちが大きいかと、それくらいのレベルだ。
家の周りにはいくつもテントが立っている。
騎士団のものか冒険者のものかは分からないけど、村に宿屋がないからね。
集会所も病院代わりになってるそうだし、自前のテントで寝泊まりしているのだろう。
こういうのを見ると、早く何とかしなきゃなーと思うわけだ。
村長さんの家に行くと、すでに主要メンバーは揃っていたらしい。私たち待ちか。
すまんね、両親との話が長引いてしまったよ。
「ピーゾン……! 本当に帰ってきてくれるとは……」
そう言って私をハグして来たのは村長。名前は知らん。村長は村長だ。
老人と言っても差し支えない白髪頭と髭だけど、農作業をやってるからガタイは良い。マッスルお爺ちゃん。
奥には村長さんの奥さんも居て、口に手を当て感涙している。とりあえず手を上げておこう。
集会にも使われるリビングには大きめの机が一つと、無理矢理数を揃えたのだろう椅子がぐるりと並んでいた。
見回せば近衛騎士のファイネルさん、北門に居た騎士団のエッティ分隊長さん、王都から来た【蒼き風】のガルティーノさん、オーフェンから来て最初の調査から担当していた【銀の鎖】のモーブビィさん、あとは村の衛兵団長でアルスのお父さん――ショーンさんと、私たち六人だ。
エッティさんが改めて膝を突こうとしていたので、止めさせる。
それを見たガルティーノさんが「ああ、そういやそうだった」と頭を掻き苦笑い。
奇妙な装備の六人衆に目を丸くしていたモーブビィさんは、私とポロリンに気付いたようだが、何が何やら分かってない。
とりあえず「お久しぶりです、こんちわー」と挨拶だけしておいた。
まずは自己紹介しないと始まらないので、こっちの素性を全員に知ってもらう。
ファストン村出身のリーダー、ピーゾンこと私。オーフェン出身のポロリン。特に言う事はないネルト。第七王女のリーナ。公爵令嬢のサフィー。【七色の聖女】のソプラノ。
よく分かってなかったモーブビィさん、ショーンさん、村長さんが混乱していた。が、無視をする。
「という事で、私たちDランクパーティー【輝く礁域】です」
「相変わらずとんでもない……いや、聖女様とか俺も初耳なんだが」
「ピーゾンお前、この数月で何が起こったんじゃ……」
あまりダメージをくらってないガルティーノさんが呟き、村長さんが頭を抱えている。
とにかく落ち着かせつつ、状況の確認、今日の討伐報告と以降の予定の確認を行う。これを毎日行っているらしい。ご苦労様です。
「Cランクが村まで来るようになったのか……間引きを減らして防備を固めるか?」
「いや、間引きしなかったら、それこそずっと危険に晒される事になるぞ」
「しかし数を揃えないと村に侵入され兼ねん。聖女様に治して頂いて戦線復帰出来た者も居るが……」
やっぱり危険な状況だな、と感じた。お父さんとかに聞いたより遥かに。
実際に戦っている人たちは危機的状況だと認識していながらも、何とか頑張って凌いでいる。
全員を一気に避難させるべきでは、という意見も出ていた。逆に攻勢に出るべきでは、という意見も。
そんな中、私は挙手し、意見を言わせてもらう。
「とりあえず私たちは明日からガメオウ山に向かうつもりです」
「はあ!? お前らだけでか!?」
「Dランクじゃないのか!? Bランクでも無理じゃったんだぞ!?」
「ダンデリーナ殿下も一緒に行かれるのか!? 危険すぎる!」
驚くポイントはそれぞれ違うけどファイネルさん以外は、やはり驚く。
しかしリーナを隣に座らせているもんでね。王女の威光を以って強く言わせてもらいますわ。
「どこかで原因究明の為にガメオウ山に行かなくてはいけない。でも戦力不足。他に援軍を呼ぼうにも時間が掛かりますし、オーフェンも手一杯の様子でしたよ」
オーフェンは周辺の村々も含めて管理地域が広いからね。
いくら冒険者が多く居ても強い冒険者は色々と仕事を任されてしまう。ファストン村に余剰戦力を回すのは難しいだろう。
「で、失礼ですけど、大量の魔物を殲滅しつつ調査するってのは、多分私たちが一番向いていると思います。Bランクの先達の方々には申し訳ないですが」
「まぁ俺らも『禁域』に潜ってたけどお前らみたいに大量には狩れなかったし、エビルクラーケンなんか到底倒せねえな」
「エビルクラーケン!? Sランクじゃないか!」
相変わらず苦笑いで頭を掻くガルティーノさん。モーブビィさんは『禁域』の件も知らなかったようでまた驚いている。
本当なら「私たちだけで倒したわけじゃないですよ」と言いたい所だが、今は利用させてもらう。
少なくともDランクと思われたままでは動けそうもないし……まぁどう思われようが動くんだけどね。
「というわけで私たちは明朝からガメオウ山に行きます。ファイネルさんたちはエッティさんたちと協力して村の防衛をお願いします」
「ピーゾン殿、私たちもご一緒に――」
「防衛戦力が不足しているみたいですし、ファイネルさんたち近衛騎士の方々は残ってもらった方がいいと思います。その方が私たちも安心出来ますし」
騎士の本分は守る事にある。
一方で、様々な魔物に対応して攻め手を変え、斥候から何から熟す少数精鋭部隊が冒険者だ。
ガメオウ山に出てくる魔物を殲滅し、臨機応変に対処するとなれば私たちだけの方が身動きはとりやすい。
「仰りたい事は分かりますが、しかし……」
「それに私たちだけならば、仮にSランクの魔物が居たとしても全員で確実に逃げられる手段があります。詳しくは言えませんが」
ネルトの<空間魔法><ロングジャンプ>による緊急避難。
ファイネルさんなら国からその情報が流れてるかもしれない。聞いた所で理解は出来ないだろうけど。
「安心して下さい、リーナは守りますし、無茶するつもりも死ぬつもりもないんで」
「……はい、よろしくお願いします」
ファイネルさんは私に対して頭を下げた。近衛騎士が平民の村娘に対して。
それを見た他の面子は何も言えない。もう口を挟む事は出来ない。
これ以降は、【輝く礁域】が調査探索に出るという体で話が進んだ。
ガルティーノさんたち【蒼き風】は一回、ガメオウ山に向かおうとしたが、途中で引き返したらしい。
一番多く向かったのはモーブビィさんたち【銀の鎖】だそうだ。
そこから詳しい情報を聞く。どんなルートを通り、どんな魔物が出たか。
そうして聞くと、本当に雑多な魔物が居るなという印象を受ける。
元々の生息環境として、ガメオウ山の麓までは弱い魔物が多く、それこそゴブリン系やウサギ、狼、虫など一般的な魔物ばかり。
しかし山に入ればオークや上位のゴブリン系も出てきたりと急に強くなる。
さらに上ると木々は消え、オーガなどのCランクも出る。頂上付近にはBランクのトロールまで居るそうだ。
ところが今回の魔物増加騒動によって、生息環境は激変。
麓の森にオーガが出てきたり、トロールが山中の森林地帯まで下りてきていたりと、徐々に下がってきている感じ。
それに加えて生息していなかったはずの魔物――ゴーレム系やトレント系まで出てくるようになった。
魔物の増加と一言で言えばその通りなのだが、種類が増えている上に、強い魔物が多く出やすい環境になっているように感じるとの事だ。
「接敵頻度も半端じゃないぞ。それこそ迷宮と同じかそれ以上だと思っておいた方がいい」
「あの状態の『禁域』に比べりゃマシだとは思うけどな」
ふむ、そう考えると『禁域』の間引きは良い経験になったかもしれんね。
頻繁に潜ってバンバン倒したから討伐数だけ見れば私たちトップクラスだろうし。浅層だけだけど。
その後も色々と話し合いは行われた。
私たちがガメオウ山に向かうので冒険者たちが行っている村周辺の間引きも若干変化する。場所的にね。
近衛騎士が村の防衛に入るのでその体制も変わる。
たった四人だけど近衛騎士の強さは別格なのだ。エッティ分隊長もヘコヘコしている。オナシャスと。
ほんとホームの門番やらせておくの勿体ないわー。
♦
長い会議が終了。我が家に帰宅し、遅めの夕食となる。
「とりあえずたらふく食ってくれ! ピーゾンの友達なんだから遠慮するなよ!」
緊急事態に相応しくない豪勢な夕食となった。と言っても、肉が多いし村ならではの豪勢さって感じだけどね。
それでもリーナやサフィーも美味しいと言ってくれたし、ネルトはここぞとばかりにガン食いしてた。
途中から武具屋のベルダさんとかも駆けつけ、食べながらではあるが話に花が咲いた。
魔剣を見せたら驚いてたね。私が持ってるとは一応知らせておいたけど、今じゃ全員魔剣だし。
村に宿なんてないので、無理矢理私の部屋に泊まった。雑魚寝で。
お父さんが「ポロリンはピーゾンの部屋で一緒に寝るわけにはいかないだろう!? 俺と一緒に寝るぞ!」と言い出し、ポロリンもその気になっていたが、何となくお父さんが美少女連れ込んで同衾してるイメージしか湧かなかったので却下した。
ポロリンの場合、同性と一緒に居るだけでいかがわしく見えるんだよ。
そんなわけで六人で毛布に包まって寝る感じ。川の字が二つだね。
「こういうのが良いですわよね! 冒険者してますわ~!」
と、公爵令嬢様もご満悦である。王女様もどことなく嬉しそう。
ネルトは元から誰かと一緒に寝たい派だからね、ソプラノに抱き着いている。抱き着かれたソプラノも嬉しそう。
ポロリンは全てを諦めたようで一番端で寝ていた。背中をみんなに向けて。
生きろ。私にはそれしか言えない。
11
あなたにおすすめの小説
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─
石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」
貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。
「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」
かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。
ときどき舞い込んでくるトラブル。
慌ててミーナを探しているルカ。
果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。
甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。
*サイトより転載になります。
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)
わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。
対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。
剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。
よろしくお願いします!
(7/15追記
一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!
(9/9追記
三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン
(11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。
追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる