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最終章 毒娘、故郷の為に戦う
132:久しぶりのファストン村ですがゆっくりは出来ません
しおりを挟む村長宅は村の中央にある。一応村で一番大きい建物ではあるが、オーフェンにあるシェラちゃんの宿屋とどっちが大きいかと、それくらいのレベルだ。
家の周りにはいくつもテントが立っている。
騎士団のものか冒険者のものかは分からないけど、村に宿屋がないからね。
集会所も病院代わりになってるそうだし、自前のテントで寝泊まりしているのだろう。
こういうのを見ると、早く何とかしなきゃなーと思うわけだ。
村長さんの家に行くと、すでに主要メンバーは揃っていたらしい。私たち待ちか。
すまんね、両親との話が長引いてしまったよ。
「ピーゾン……! 本当に帰ってきてくれるとは……」
そう言って私をハグして来たのは村長。名前は知らん。村長は村長だ。
老人と言っても差し支えない白髪頭と髭だけど、農作業をやってるからガタイは良い。マッスルお爺ちゃん。
奥には村長さんの奥さんも居て、口に手を当て感涙している。とりあえず手を上げておこう。
集会にも使われるリビングには大きめの机が一つと、無理矢理数を揃えたのだろう椅子がぐるりと並んでいた。
見回せば近衛騎士のファイネルさん、北門に居た騎士団のエッティ分隊長さん、王都から来た【蒼き風】のガルティーノさん、オーフェンから来て最初の調査から担当していた【銀の鎖】のモーブビィさん、あとは村の衛兵団長でアルスのお父さん――ショーンさんと、私たち六人だ。
エッティさんが改めて膝を突こうとしていたので、止めさせる。
それを見たガルティーノさんが「ああ、そういやそうだった」と頭を掻き苦笑い。
奇妙な装備の六人衆に目を丸くしていたモーブビィさんは、私とポロリンに気付いたようだが、何が何やら分かってない。
とりあえず「お久しぶりです、こんちわー」と挨拶だけしておいた。
まずは自己紹介しないと始まらないので、こっちの素性を全員に知ってもらう。
ファストン村出身のリーダー、ピーゾンこと私。オーフェン出身のポロリン。特に言う事はないネルト。第七王女のリーナ。公爵令嬢のサフィー。【七色の聖女】のソプラノ。
よく分かってなかったモーブビィさん、ショーンさん、村長さんが混乱していた。が、無視をする。
「という事で、私たちDランクパーティー【輝く礁域】です」
「相変わらずとんでもない……いや、聖女様とか俺も初耳なんだが」
「ピーゾンお前、この数月で何が起こったんじゃ……」
あまりダメージをくらってないガルティーノさんが呟き、村長さんが頭を抱えている。
とにかく落ち着かせつつ、状況の確認、今日の討伐報告と以降の予定の確認を行う。これを毎日行っているらしい。ご苦労様です。
「Cランクが村まで来るようになったのか……間引きを減らして防備を固めるか?」
「いや、間引きしなかったら、それこそずっと危険に晒される事になるぞ」
「しかし数を揃えないと村に侵入され兼ねん。聖女様に治して頂いて戦線復帰出来た者も居るが……」
やっぱり危険な状況だな、と感じた。お父さんとかに聞いたより遥かに。
実際に戦っている人たちは危機的状況だと認識していながらも、何とか頑張って凌いでいる。
全員を一気に避難させるべきでは、という意見も出ていた。逆に攻勢に出るべきでは、という意見も。
そんな中、私は挙手し、意見を言わせてもらう。
「とりあえず私たちは明日からガメオウ山に向かうつもりです」
「はあ!? お前らだけでか!?」
「Dランクじゃないのか!? Bランクでも無理じゃったんだぞ!?」
「ダンデリーナ殿下も一緒に行かれるのか!? 危険すぎる!」
驚くポイントはそれぞれ違うけどファイネルさん以外は、やはり驚く。
しかしリーナを隣に座らせているもんでね。王女の威光を以って強く言わせてもらいますわ。
「どこかで原因究明の為にガメオウ山に行かなくてはいけない。でも戦力不足。他に援軍を呼ぼうにも時間が掛かりますし、オーフェンも手一杯の様子でしたよ」
オーフェンは周辺の村々も含めて管理地域が広いからね。
いくら冒険者が多く居ても強い冒険者は色々と仕事を任されてしまう。ファストン村に余剰戦力を回すのは難しいだろう。
「で、失礼ですけど、大量の魔物を殲滅しつつ調査するってのは、多分私たちが一番向いていると思います。Bランクの先達の方々には申し訳ないですが」
「まぁ俺らも『禁域』に潜ってたけどお前らみたいに大量には狩れなかったし、エビルクラーケンなんか到底倒せねえな」
「エビルクラーケン!? Sランクじゃないか!」
相変わらず苦笑いで頭を掻くガルティーノさん。モーブビィさんは『禁域』の件も知らなかったようでまた驚いている。
本当なら「私たちだけで倒したわけじゃないですよ」と言いたい所だが、今は利用させてもらう。
少なくともDランクと思われたままでは動けそうもないし……まぁどう思われようが動くんだけどね。
「というわけで私たちは明朝からガメオウ山に行きます。ファイネルさんたちはエッティさんたちと協力して村の防衛をお願いします」
「ピーゾン殿、私たちもご一緒に――」
「防衛戦力が不足しているみたいですし、ファイネルさんたち近衛騎士の方々は残ってもらった方がいいと思います。その方が私たちも安心出来ますし」
騎士の本分は守る事にある。
一方で、様々な魔物に対応して攻め手を変え、斥候から何から熟す少数精鋭部隊が冒険者だ。
ガメオウ山に出てくる魔物を殲滅し、臨機応変に対処するとなれば私たちだけの方が身動きはとりやすい。
「仰りたい事は分かりますが、しかし……」
「それに私たちだけならば、仮にSランクの魔物が居たとしても全員で確実に逃げられる手段があります。詳しくは言えませんが」
ネルトの<空間魔法><ロングジャンプ>による緊急避難。
ファイネルさんなら国からその情報が流れてるかもしれない。聞いた所で理解は出来ないだろうけど。
「安心して下さい、リーナは守りますし、無茶するつもりも死ぬつもりもないんで」
「……はい、よろしくお願いします」
ファイネルさんは私に対して頭を下げた。近衛騎士が平民の村娘に対して。
それを見た他の面子は何も言えない。もう口を挟む事は出来ない。
これ以降は、【輝く礁域】が調査探索に出るという体で話が進んだ。
ガルティーノさんたち【蒼き風】は一回、ガメオウ山に向かおうとしたが、途中で引き返したらしい。
一番多く向かったのはモーブビィさんたち【銀の鎖】だそうだ。
そこから詳しい情報を聞く。どんなルートを通り、どんな魔物が出たか。
そうして聞くと、本当に雑多な魔物が居るなという印象を受ける。
元々の生息環境として、ガメオウ山の麓までは弱い魔物が多く、それこそゴブリン系やウサギ、狼、虫など一般的な魔物ばかり。
しかし山に入ればオークや上位のゴブリン系も出てきたりと急に強くなる。
さらに上ると木々は消え、オーガなどのCランクも出る。頂上付近にはBランクのトロールまで居るそうだ。
ところが今回の魔物増加騒動によって、生息環境は激変。
麓の森にオーガが出てきたり、トロールが山中の森林地帯まで下りてきていたりと、徐々に下がってきている感じ。
それに加えて生息していなかったはずの魔物――ゴーレム系やトレント系まで出てくるようになった。
魔物の増加と一言で言えばその通りなのだが、種類が増えている上に、強い魔物が多く出やすい環境になっているように感じるとの事だ。
「接敵頻度も半端じゃないぞ。それこそ迷宮と同じかそれ以上だと思っておいた方がいい」
「あの状態の『禁域』に比べりゃマシだとは思うけどな」
ふむ、そう考えると『禁域』の間引きは良い経験になったかもしれんね。
頻繁に潜ってバンバン倒したから討伐数だけ見れば私たちトップクラスだろうし。浅層だけだけど。
その後も色々と話し合いは行われた。
私たちがガメオウ山に向かうので冒険者たちが行っている村周辺の間引きも若干変化する。場所的にね。
近衛騎士が村の防衛に入るのでその体制も変わる。
たった四人だけど近衛騎士の強さは別格なのだ。エッティ分隊長もヘコヘコしている。オナシャスと。
ほんとホームの門番やらせておくの勿体ないわー。
♦
長い会議が終了。我が家に帰宅し、遅めの夕食となる。
「とりあえずたらふく食ってくれ! ピーゾンの友達なんだから遠慮するなよ!」
緊急事態に相応しくない豪勢な夕食となった。と言っても、肉が多いし村ならではの豪勢さって感じだけどね。
それでもリーナやサフィーも美味しいと言ってくれたし、ネルトはここぞとばかりにガン食いしてた。
途中から武具屋のベルダさんとかも駆けつけ、食べながらではあるが話に花が咲いた。
魔剣を見せたら驚いてたね。私が持ってるとは一応知らせておいたけど、今じゃ全員魔剣だし。
村に宿なんてないので、無理矢理私の部屋に泊まった。雑魚寝で。
お父さんが「ポロリンはピーゾンの部屋で一緒に寝るわけにはいかないだろう!? 俺と一緒に寝るぞ!」と言い出し、ポロリンもその気になっていたが、何となくお父さんが美少女連れ込んで同衾してるイメージしか湧かなかったので却下した。
ポロリンの場合、同性と一緒に居るだけでいかがわしく見えるんだよ。
そんなわけで六人で毛布に包まって寝る感じ。川の字が二つだね。
「こういうのが良いですわよね! 冒険者してますわ~!」
と、公爵令嬢様もご満悦である。王女様もどことなく嬉しそう。
ネルトは元から誰かと一緒に寝たい派だからね、ソプラノに抱き着いている。抱き着かれたソプラノも嬉しそう。
ポロリンは全てを諦めたようで一番端で寝ていた。背中をみんなに向けて。
生きろ。私にはそれしか言えない。
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