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最終章 毒娘、故郷の為に戦う
134:山に着いても居ないのに仕掛けられました
しおりを挟む「よいしょお!!!」
「ブフォオオオ!!!」
――ズズゥゥゥン……
ハイオークにトドメを刺し、2mほどの巨体が倒れる。
私は魔剣を鞘にしまい、ふぅと一息。ネルトはすでに調理の準備を始めようとしていた。
いやまだ昼休憩には早いから。我慢しなさい。
「やっぱおかしいよね。まだ山にも着いてない段階でこれとか」
「オークの群れにハイオークまで混じるんですからね」
「ハイオークはCランクですか。オークキングでないだけ幸いでしょうか」
「オークキングなんて元々ガメオウ山にも居ないのでは? ハイオークは山に出てくると聞きましたけど」
いずれにせよ山に生息していたはずのハイオークが麓に下りてるのがおかしい。
オーク自体、本来であればガメオウ山の下の方、山中森林地帯で出るべき魔物だ。
それがこうして山に向かう途中の森で出てくると。
出てくる魔物は多く、その種類もおかしい。生息地域の変化も含め。
モーブビィさんたちが引き返すのも頷ける話だ。
「ハイオークとかダークボアとかは、まだ『ガメオウ山から下りて来たのかな』って想像出来るからいいんだけどな、マッドゴーレムとかトレントとか意味分からん」
「本来ならこの辺りには居ない魔物なんですよね?」
「おっさん、なんか心当たりとかないの?」
「おっさんじゃねーけど分からねえな。死体が残るって事はダンジョンの″氾濫″じゃねーし、そうなると別の所から流れて来たって事だろ? どっかから魔物が逃げて来たってんなら、ガメオウ山を探った所で原因は分からないかも知れねえな」
別の場所に原因があって、そのせいでガメオウ山に魔物が集中した?
そんな可能性もあるのか……でもそれでガメオウ山にばかり集中するのはおかしいんじゃない?
「あとは人為的に魔物を操ってるとか」
「えっ、魔物操れるの? そんな職あるの知らないけど」
職決めを受ける前に職について調べた私に隙はない。
この世界に【テイマー】や【魔物使い】とかはないはず……あ、固有職か!?
「俺の知ってる限りだと【死霊使い】とか【操獣士】とか【虫キング】とかが過去の固有職で存在してる。そういった職なら魔物を操れるはずだ。ただどの職にしても単一系統だけどな」
【死霊使い】ならアンデッド限定とかそういう事らしい。
仮にそういう輩が今回の元凶だとすると、こうも雑多な種類の魔物が増えているのはおかしい。
色んな系統の魔物を操れる固有職が居てもおかしくなさそうだけどねぇ。
……しかし【虫キング】はいいなぁ。名前が。
「……っと、サフィーお嬢、前方右にスライムだ」
「了解ですわ。(バババッ)<水遁>!」
「スライムも多いですね」
「ただのスライムなら無視ですがアシッドスライムやベノムスライムが混じっているのが厄介ですね。さすがに無視は出来ません」
スライムはこちらから攻撃しない限りは攻撃してこない、ほとんど無害な魔物だ。
ちなみに過去の私の天敵でもある。最弱だけど毒が効かない。
ところが上位種になると向こうからも攻撃してくる。
アシッドスライムは酸を、ベノムスライムは毒を吐いてくる。
ランクはEとかそんなもんだが油断は出来ない。見つけ次第殲滅しておく。
近接よりも魔法の方が効くからもっぱらサフィーにお任せだけど。
そんな事を話しつつどんどんと進み、もうじきガメオウ山の麓まで到着するかといった所。
最初に異変に気付いたのは、たまに<ホークアイ>を使っていたネルトだった。
「ん? 広場なんてあったっけ?」
「広場? この先は拓けてるって事?」
「ん」
この道はモーブビィさんも調査で通ったはずだ。そのルートを聞いて歩いてるんだし。
しかし広場並みに森が開けた場所というのは聞いていない。
詳しい情報が欲しいと、もう一度空が見えるポイントでネルトに見させる。
「んー、特訓場所より少し広い」
「王都南の森の特訓場所? それは結構広いね」
「んー、あと赤くて大きな花が……十個」
は? 花畑? 花壇? いやそんなわけないか。
と思ってる所で、アロークのおっさんが口にする。
「あー、俺の方でも分かった。こりゃ酷いぞ。ネルトの言ってるのはマンイーターだ。おまけに周りにゃトレントの大群」
『はあっ!?』
マンイーターはCランクらしい。蔦で捕らえて人を食べる花。それが十体。
広場の中心にこれ見よがしにマンイーターが居座り、広場を囲む木々に大量のトレントが潜んでいると。
ちなみにトレントはDランクだ。
おっさんは糸を細く飛ばして索敵しているようだ。触れて感じる事で敵を把握しているようだが、全ての木々を見れるわけじゃないらしい。
だからトレントが何体居るかは不明。時間をかければいけるらしいが、現状だと最低でも二〇体。
ネルトの<ホークアイ>も上空からの視点だから森に潜むトレントを見つけるのは無理。
本当ならここで立ち止まって十分に索敵し、作戦を練ってから進みたい所だが……
「みんな立ち止まらないで、普通の探索を装ってね。動揺を見せないように。ここからは小声で行くよ」
「っ……! という事は……!」
「ハハッ、なんだ俺が言うまでもねえな。さっすが。――しかし俺が合流したのは間違いだったなぁ」
「今さら仕方ないでしょ。知られてる前提で行くしかないよ」
「ちょ、ちょっと待って下さい、ピーゾンさん! つまりこれって……」
不自然に広場が出来てて、そこに待ち伏せのように魔物の群れが居る。
まさか野生のトレントとマンイーターがそんな事するわけないしね。
となるともう誰かの手によるものと考えた方が良い。
つまり今回の魔物騒動も、人為的なもの。そして元凶はガメオウ山に居るに違いない。
だからこそ私たちの邪魔をしてきたと。
私たちがここに居る事を知っている――その情報を何らかの手段で得ていると。
ここまですでに私たちの能力はある程度開示している。
まぁこの調子で魔物と戦う事を考えれば隠し通すなんて無理だろうけど。
それでも「向こうの策をこちらがある程度掴んでいる」とは思われない方が良い。
であるならば、この先の罠に気付いていないと思わせたまま近づくべきだ。
ネルトの<ホークアイ>の範囲や、おっさんの索敵手段を把握させるわけにはいかない。
まぁ音を拾われてるなら、ある程度バレてるだろうけどね。
「と、そんなわけで近くまでは普通に歩くよ。サフィーの察知が働く距離まではね」
『はい』
「んで、どう戦うかって事だけど――」
■プラティ 【魔樹育成士】 25歳
「ターゲット確認しましたよ」
「こっちも見えてる。さすがに気付いたみたいだねー」
森の奥から望遠の魔道具で、向かって来る相手を見ました。
隣に居るイグルちゃんも同じように見ています。同時に鳥も飛ばしていますが。
相手は動物みたいな装備を纏った少女の六人組。かわいいですけどすごく変です。
男の人が一人混じってますけど、スラムにでも居そうな風貌。ある意味一人だけ異質。
とても冒険者には見えませんが、イグルちゃんの鳥によれば、相当強い集団との事。
あの見た目で戦う事自体が理解出来ません……かわいいですけど。
しかし私が育てたトレントを何体か向かわせた所、どうやら速攻で倒されたようです。
私はイグルちゃんみたいに意思の疎通は出来なくて一方的に命令するだけですが、自分で育てた植物系の魔物の『生命管理』が出来ます。
どの子がどこに居るか、どの程度ダメージを受けたか、生きているか死んでいるか、そうした事が把握出来ます。
彼女たちに倒された子は、どれもほとんど一撃で倒されていました。しかも次々と。
それだけで彼女たちが見掛けによらない強さを有していると分かります。
だからこそ、かなり多くの子たちを集めましたけど、さて、彼女たちはどう出るか。
そう思案した所で、隣のイグルちゃんが驚きの声を上げました。
「……ん? あれ? あの犬のヤツって、ひょっとして……ダンデリーナ!?」
「えっ!? ……そう、見えます、ね……いやでもまさか……」
ジオボルト王国の要人についてはあらかた頭に入っていますが、その中でも第七王女のダンデリーナ姫はジョバンニ国王にとっての弱点にもなりうるという事で重要人物扱いとなっています。
ダンデリーナ姫さえ手に入れれば王国は簡単に落ちる、と言われるほど。
実際に拉致計画も上がったそうです。
そのダンデリーナ姫がこんな所に!? あんな変でカワイイ恰好をして!?
王都、それも王城に居なきゃいけない人が、こんなに離れた危険地域に来るものでしょうか……。
それに……。
「……王国で一番の美人さんなんですよね? 確かに美人さんですけど……隣のピンクのクマさんの方が可愛くないですか?」
「……そう、だね……じゃあダンデリーナじゃない? いやでもあれだって相当美人だと思うけど……」
似顔絵とは似てるんですけどね……美人さんは美人さんですし。
とりあえずこれも報告ですかね。他の人の事も含めて。
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