ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

文字の大きさ
147 / 171
最終章 毒娘、故郷の為に戦う

135:ガメオウ山の手前は植物園と化していました

しおりを挟む


 私たちは七人で固まりながら、恐る恐る、広場へと足を踏み入れた。
 あたかも「不自然な広場を視認出来たから警戒してますよ」という感じで。

 本当なら広場に入る前から私の<枯病毒>の<毒雨>か、サフィーの<風刃乱舞>、はたまたおっさんの糸で遠距離から攻撃したかったが、手の内を隠す意味でもとりあえずやめた。


 まだとれる手段があったからね。


「<グリッド><室内空調>」


 広場周囲のトレントはマンイーターという餌に食いつかない限り、擬態したままだろう。
 だからこちらもマンイーターから攻める。トレントは襲って来るのを待つ。

 マンイーターは近づけば蔦や酸飛ばしで攻撃してくるらしい。さらに近づけば混乱効果の花粉なんかも飛ばすと。

 だから近づきたくないわけだが、ネルトの<グリッド>は範囲が約50m。しかも不可視。
 動かない敵に対してある程度遠くから攻撃する分には<室内空調>でいける。

 <グリッド>自体が2m四方の箱型だから一体ずつしか攻撃出来ないが、確実な手段だ。
 ちなみに温度は下げる一方にしている。植物だから寒さに弱いだろうと、魔物だけど。


 それは功を奏したのか、マンイーターは赤い花を萎ませるように、胴体部分の茎もへにょんとなった。
 HPダメージはないだろう。でも死んだか瀕死なのは確実。
 ネルトはそれを見て隣のマンイーターへと標的を変える。


 一体目がやられた事により他のマンイーター、もしくは周囲のトレントが動き出すかと思ったらどうやら動く気配はない。

 都合が良いので<室内空調>は継続させるが、少し不可解でもある。


 これを誰かが操っているとすると、マンイーターが倒されたのに何も動かさないのはおかしい。
 可能性としては、この場を見ていないか、見ていても指示出来ないか、倒されたと確認出来ていないか。

 見ていないとすればありがたい事だけど楽観視は出来ない。
 見ていながら指示出来ないと考えた方が良さそうだね。

 魔物に近づかないと指示出来ない、もしくは指示の書き換えが出来ない、もしくは単純な指示しか出来ない――こんなとこかな。

 これは後で相談しましょう。
 さて、そんな事を考えているうちに、ネルトの仕事は終わりそうだ。


「よし、ナイスニート。隠れて<マジックヒールバブル>受けといて。ソプラノもよろしく」

「ん」「了解です」

「固まったまま近づいて、私とリーナで死体斬りするよ。トドメを刺す感じで」

「はい」

「そのままトレント戦に移行するからポロリンとサフィーは警戒よろしく」

「「はい」」


 さて、これからが本番かな。どれほど隠れているものやら。



■イグル 【鳥獣匠】 17歳


「は? え? 何が起きたの、プラティ!?」

「わ、分かりません! マンイーターはダメージを負ってません! でも……死んだ、の?」


 ジリジリとあの七人がマンイーターに近づき始めたと思ったら、次々にマンイーターが倒れていった。

 何かしらの攻撃だろうけど……まさか近づくだけで倒せるの!?
 そんなスキルや魔法はない。ありえるのは固有職ユニークジョブの固有スキルとかだけど……帝国の研究資料でもそんなの見た事ないよ。


 いや、何かしらの攻撃手段があるとしてもダメージがないってのがおかしい。
 仮に結界とか毒系の見えない範囲攻撃をくらったとしてもダメージは入るでしょ。

 ……分からん。私にはさっぱりだから、これはマニュエズさんに丸投げしよう。

 ともかく私たちも近づいちゃいけないって事だけ注意だ。
 マンイーターが倒れた距離を見るに、そこまで広範囲ってわけじゃなさそうだけど……用心はしておこうかな。


「プラティ、他の魔物はすぐに動かせないの?」

「マンイーターに接近か、攻撃を仕掛けたタイミングで襲うように設定してるので……今から操作変更するには触れないとダメですね……」

「だよねー。こいつだけ動かしても意味ないし」


 私はすぐ近くに控えさせているエルダートレントを見上げる。
 こいつはプラティの手駒の中でもかなり強い。Bランクだ。

 一気にヤツらを殲滅する為にプラティが用意した魔物は相当多い。

 Cランクのマンイーター十体から始まって、周囲にはDランクのトレントが二五体、その陰に隠れるようにEランクの蔦の魔物スネークヴァインが二〇体、さらに地下にはCランクの根っこの魔物ワームルートが五体も居る。

 おまけで用意したのがエルダートレントだ。
 こいつを隠したまま終えられればそれで良し。

 出すはめになっても、スタンピード並みの植物系魔物の物量を受けつつエルダートレントと戦うなんて、七人だけじゃ無理だ。


 もしあいつらがAランク相当なら倒せるかもしれないけど……『禁域』を放っておいてAランクを派遣するかね?

 今の王都は手駒が少ないはずなんだけど。
 って言うかAランクならあたし達が知ってないとおかしいんだけど。


 まぁ万が一あたし達の知らない強者であったとして――随分と変な恰好の強者だが――そのままガメオウ山まで来てくれるなら、いくらでも対処できる。

 エルダートレントまで倒してそこで探索中止と引き返すなら、こっちの仕掛けを早めるだけだ。
 スタンピードを起こし、まずは連中が拠点にしてる村、そしてオーフェン、さらに北上して王都へと。
 いままでちまちま準備してきた事を一気に吐き出せば良い。

 あたしはそっちのが好きなんだけどなー、マニュエズさん慎重だから。

 ま、今回の報告も含めて相談しましょ。
 とりあえず今はヤツらの戦いぶりを見せてもらいましょーかね。



■ピーゾン 【毒殺屋】 10歳


 ――ワサワサッ


 マンイーターに近づいた段階で広間の周りのトレントが動き始める。
 やっぱ始めからそういう罠だったって事だね。んじゃ作戦通りいきますか。

 私とリーナはまずマンイーターを殲滅。
 ほとんど死んでいるだろうけど、万が一生きていたら困るから斬り捨てておく。
 そうしている間にもサフィーは攻撃開始。


「(バババッ!)――<風刃乱舞>ッ! ですわッ!」


 <スタイリッシュ忍術>は何気に広範囲攻撃というものがない。この<風刃乱舞>くらいだ。
 たからとりあえず密集しているトレント目掛けてぶっ放つ。
 トレントがDランクである事を考えれば、食らえばほぼ死ぬという威力。

 ポロリンとネルトはソプラノを挟むようにして警戒。
 ネルトの<ルールシュレッド>も温存だ。
 ソプラノは最低限のバフだけ投げて、あとは<MPドレイン>で自身の回復に努める。


 速攻でマンイーターを処理し終わった私とリーナは、サフィーが攻撃した方向以外のトレントに向かって突貫。

 私が一撃で倒すのは問題ない。リーナの方が攻撃力あるけど包丁でトレントを斬るのが辛い。そこはアーツと併用して無理矢理にでも押し通す。
 本当は<氷の刃>を使いたいけどこれも温存だね。MP食うし。


 トレントに突っ込んでみたら、その後ろから伏兵の如く、蔦が飛び出して来る。
 これは森の奥でもたまに見かける魔物だ。スネークヴァイン。
 蛇みたいにウネウネ襲って来るけどかなり弱い。
 草刈りの要領でいける。村娘なめんな。


 そうこうしているとサフィーから、マンイーターの傍に固まるソプラノたちに向かって声が上がる。


「下から来ますわ! 警戒を! おそらくワームが五体!」

「っ! 了解!」


 うわお、私も<気配察知>怠ったわ。さすがサフィー、本職ですな。
 即座にネルトは<グリッド>を発動、敵の場所をポロリンに教える。
 ソプラノを下がらせ、ポロリンが盾役タンク、ネルトをサブ盾役タンクとする。


 ――ボコボコボコボコボコッ!!!


 次々に足元から現れたワーム……いや、これも植物だ。根っこっぽいワーム。
 五体同時はさすがに防げないと踏んだのか、ポロリンも一気に攻める。


「ネルトさん、フォローよろしく! <ピンクタイフーン>!」


 回転しながらの連続打撃。ポロリンのアーツの中では一番攻撃範囲の広いものだ。
 魔剣の威力とアーツの補正も相まって、三体のワームを同時に巻き込む事に成功した。

 しかし二体は範囲外。ポロリンの脇から襲い掛かるが――


「<念力>」

「<MPドレイン>! <マジックヒールバブル>!」

「俺もちょっとは貢献しねえとな」


 一体はネルトの不可視の手により叩かれ、もう一体はおっさんが短剣で応戦した。
 ソプラノはみんなを信じていたのか、相変わらずMPの回復に努めている。同時にネルトの回復も。

 しかしどうやらこのワーム、なかなかタフらしい。
 スネークヴァインの比じゃないね。高ランクなのかもしれん。


「サフィー、ネルトの援護よろしく! リーナもワーム優先にして!」

「「了解!」」


 二人を本陣に戻しつつ、私は残りのトレントを処理しようと――そこでピコらせたウサミミに反応が出る。
 奥からなんかデカい″気配″が来る、と。


 ――ガサガサ――バキバキ


 木々の間を無理矢理通ってくるような音、私は警戒を強める。
 気付いたサフィーが私の名前を呼んだが、とりあえずワームを優先させた。

 そして見えて来たのは――黒く硬質な樹皮を備えた、10m級の巨木。
 幹の中央には節を遊ばせて作ったような歪な顔が見えた。


「エルダートレント!?」


 後ろのリーナの声を聞きつつ、私は魔剣を握る手に力を籠めた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─

石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」 貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。 「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」 かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。 ときどき舞い込んでくるトラブル。 慌ててミーナを探しているルカ。 果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。 甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。 *サイトより転載になります。

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...