149 / 171
最終章 毒娘、故郷の為に戦う
137:山に入って早々、またも仕掛けられました
しおりを挟むガメオウ山を富士山のように表した場合、一合目から五合目が森林地帯、六合目から十合目が岩石荒野と、くっきり分かれる。
前半の森林地帯は麓の森からの延長といった感じで、背の高い木々が密集し、空を覗ける部分も限られる。
<ホークアイ>が使いづらい。
道にしても一応山道めいた細い獣道があるにはある。
ガメオウ山に登る人も居ないわけではないので、そういった人たちが踏み固めたであろう登山ルートだ。
私たちはダンジョン以上に歩きづらいその道を進む。
おまけにダンジョンのように前と後ろだけ警戒すれば良いというわけではないので、余計に探索に気を使う。
今となってはアロークのおっさんが合流してくれた事を有り難く感じる。口には意地でも出さないが。
見通しの悪い山道だというのに、相変わらず魔物の遭遇頻度は多い。
オーガの群れとか、そっちも隊列するの大変でしょうと言いたくなるが、それでも真面目に襲って来る。
おまけにトロールも現れ始めた。
トロールなんて一体で細い道を塞ぐレベルの巨漢だ。
縦も2.5mくらいあるが、横幅も酷い。ウェスト2mくらいあるんじゃないかと。キモイ。
そんなのが二~三体で棍棒振り上げて襲って来るのだ。まぁ道幅が狭いから一気には来れないんだけど。
【銀の鎖】が戦わずに退いたのも理解出来る。
ちなみにトロールは納得のBランクで、戦った感じとしてはオークキングと大差ない。
敏捷は落ちるが、攻撃力が高く、非常にタフだ。
ポロリンにも受けさせてみたが、<鉄壁>と<ディフェンスバブル>を併用してギリギリといった所。
「うわっ」とかわいらしく驚いていた。
と、そんな感じで進んでいると、またもネルトがたまに行う<ホークアイ>で奇妙なものを見つけたらしい。
「ん? ……池? ……がある」
「は?」
聞いた情報ではガメオウ山に池などない。このルートに池があるのなら目印として教えられているはずだ。
これはもしや、先ほどの『広場』と同じパターンか? と皆が訝し気な表情になる。
詳しくネルトに聞くと、やはりこの先に拓けたエリアがあり、山道ではなく平地のようになっているっぽいと。
そこに私たちのパーティーホームの庭くらいのサイズの『池』があると。結構デカいね。
んで、その池の周りに何やら『岩の塊』のようなものが点々とあるように見えると。
「んー、ゴーレム? かも?」
「色は?」
「んー、白っぽいのと、黒っぽいのと、灰色っぽいの。灰色がさっきのストーンゴーレムっぽい?」
「その法則でいきますと、白がミスリル、黒がアイアンゴーレムですか?」
「ミスリルゴーレムとかBランクですわよ?」
「ネルト、数は?」
立ち止まらずに<ホークアイ>を使わせるから詳細までは掴めないが、ともかくゴーレムの団体がお待ちかねらしい。
Bランクのミスリルゴーレムが五体、Cランクのアイアンゴーレムが二〇体、Dランクのストーンゴーレムが多数、こんな所。
HAHAHA! ゴーレムのスタンピードとか初めて聞きますよ、HAHAHA!
……でも妙だよね。
「妙、とは?」
「こっちを迎撃したいからこんな布陣してる、とは思えないよ」
「だな。俺もそう思う。あからさま過ぎるし、まるで『見つけたら逃げてくれ』って言ってるようだ」
おっさんの言う通りで、私たちが相応の斥候能力を持っているのは知っているんだろうし、ゴーレムの集団に気付くのは当たり前。
こんなに堂々と強いのを並べられれば、当然退却を第一に考えるし、ゴーレムは足が遅いから逃げるのは容易い。
だからこっちが逃げる前提で布陣してるようにしか思えない。
って事は、だ。
「退路もすでに塞がれてるかね」
「さっきの広場が怪しいな。そこくらいしか陣を布ける所がねえけど」
「ま、<ロングジャンプ>使えば楽勝なんだけど……それを見られた上で仕切り直すってのもなぁ……さて、どうしたもんか」
大人しく引き返すって選択肢はない。分かりきっている罠であり敵が未知数だからね。
じゃあ前進か、となるんだけど選択肢が二つになる。
一つは真面目に戦闘して、どうにかこうにか蹴散らす。
それでダメそうなら<ロングジャンプ>で緊急避難。
二つ目は最低限だけ倒して突っ切る。ゴーレムの足の遅さを考えれば追いつけないだろう。
しかし前方に逃げた先で、挟み込まれる可能性が大。
気にしなきゃいけないのは、おそらく後方に布陣されているであろう迎撃部隊だ。
私たちがそこに行く事はないが、もしそれがそのままファストン村へと進軍し始めると困る。
村の防衛戦力だけで防ぎきれるとは思えない。規模にもよるけど。
となれば、こちらに引き付けたい。でも連戦も挟み撃ちも食らいたくない。
「うーん、やっぱりゴーレム軍団を圧倒的に倒すってのが一番いいかな。その上で私たちが進軍すれば、後ろの迎撃も戻さざるを得ないでしょ。(おそらく元凶のアジトがあると思われる)上が手薄になるんだから」
「危機感は抱くだろうけどな。それで逃げられたら元も子もないぜ?」
「私たちは魔物の増加を止められれば一応は″勝ち″だよ」
そこから先はそれこそ国の仕事でしょう。冒険者としての依頼じゃない。
まぁそんな事を言うとリーナが「わたくし達で何とかしましょう!」とか言い出しかねないから言わないけど。
「しかしピーゾンさん、あの陣容相手に『圧倒的に倒す』と言われましても……」
「そこはうちの【魔法アタッカー】に頑張ってもらうしかないね」
そう言って私はネルトの肩に手を置いた。
「ん?」
■フロストン 【ゴーレムメイカー】 33歳
六人組が我らのアジトに向かってきたという情報はマニュエズ殿から聞いてはいた。
しかしイグルの鳥によってもたらされる情報は次々に更新され、元から不可解だったものが、さらに不可解なものへと変わる。
我らの使役した魔物によりガメオウ山から追い出されつつある魔物の群れ。
密集され、行き場をなくし、次々に襲い掛かるそれらを瞬く間に屠りながらの進軍。
紛れ込ませた我らの魔物もまた同様に屠られた。
滑稽な装備に身を固めた、年端もいかない少女パーティー。
そう聞いて侮っていた節はある。
プラティの魔樹たちを大量に、しかもエルダートレントまで嗾けるのはさすがにやりすぎだとも思った。
今後スタンピードを起こす上で貴重な戦力だ。
確かに戦わせるならば森が最適だが、育てるのに時間が掛かる魔樹を少なからず消費するのはどうかと。
――と、そう考えていたのは甘かったというわけだ。
ヤツら――男が一人増えて七人になったらしい――はどうやらAランク相当の少数精鋭集団であるらしい。
しかも魔剣持ちが何名か、固有職も何名か、そういった集団だと。
まさかプラティの魔樹が瞬く間に殲滅されるとも思っていなかったし、即座に我とプップルに声が掛かるとは思っていなかった。
マニュエズ殿は彼女たちを今、確実に屠るべきだと言う。
これまで向かってきた冒険者パーティーのように追い返し、少しずつ情報を拡散し、援軍を増やさせるといった処置では生ぬるいと。
それは確かにそうすべきだろう。
我だけでなく、他の四名も同じように思い気を引き締めていた。
我ら【幻惑の蛇】は忙しくも作戦を練り、即座に実行すべく全体が動き出していたのだ。
「うーん、来るみたいでふね。引き返しはしないでふか」
隣で望遠魔道具を覗くプップルが、溜息混じりにそう呟く。
こちらの陣容をどこまで捉えているかは分からないが、我のゴーレムはとっくに気付いていただろう。
これだけあからさまに、過剰に並べたのだから。
それでも戦地に足を進めるというのは――戦えるという自信があるか、馬鹿なのか。
まぁ前者である事は間違いない。
ここまでの道のりでヤツらは我のストーンゴーレムを幾度も倒している。
しかしアイアンゴーレムとミスリルゴーレムは見せていない。
それをどう対処してくるのか……まさかここまで来て逃げるはないだろう。
アイアンゴーレム二〇体に関しては問題なく倒して来るだろう。
ヤツらの魔剣であれば斬る事さえ可能だ。足止めと邪魔が出来れば十分。
しかしミスリルゴーレムは相当の魔剣でなければ傷がつく程度で終わる。ダメージにならない。
魔法に関してはもっと厳しい。ミスリル自体が魔法耐性に優れているから当然だ。
仮に上級魔法を撃たれようが全く問題ない。
一体ならばともかく、ミスリルゴーレム五体というのは仮にAランクパーティーであっても避けるべき相手なのだ。
我のゴーレムは直接操作しない限り、単純な指令しか受け付けない。
今、布陣している者たちは一定距離に迫れば一斉に動き出し、集中して攻撃するよう植え付けている。
さて、そろそろか。我のゴーレムたちが目覚め、そして――
――という所で、ミスリルゴーレムの一体が支えを失ったように倒れた。
「……!?」
「え!? な、なんでふか!? こ、攻撃!? 攻撃でふか!?」
訳が分からないまま、先刻聞いた報告内容が頭をよぎる。
プラティが囮として配置したマンイーターの群れは、ヤツらが近づいただけで、ダメージを受ける事なく死んだ、と。
それが起きたのはマンイーターの時だけでトレントなどの場合には同様の現象が見られなかったと言う。
つまり何らかの条件下で『植物を枯れさせた』か『即死――生命を停止させた』と判断した。
だからこそ我に声が掛かったのだ。
だからこそ今度は非生命体であるゴーレムを前に出したのだ。
だというのに今起きている現象は、まさしくマンイーターの時と同じではないか。
何がどうなっている……我の理外の事には違いない……。
「……プップル、準備しておけ」
「ふぁっ!? フロストンが喋るだなんて! これはとんでもない事態でふ!」
我の事などどうでもいい。戦場に集中しろ、このデブが。
11
あなたにおすすめの小説
生きるために逃げだした。幸せになりたい。
白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。
2020/9/19 第一章終了
続きが書け次第また連載再開します。
2021/2/14 第二章開幕
2021/2/28 完結
追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─
石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」
貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。
「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」
かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。
ときどき舞い込んでくるトラブル。
慌ててミーナを探しているルカ。
果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。
甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。
*サイトより転載になります。
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)
わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。
対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。
剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。
よろしくお願いします!
(7/15追記
一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!
(9/9追記
三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン
(11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。
追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる