ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

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最終章 毒娘、故郷の為に戦う

137:山に入って早々、またも仕掛けられました

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 ガメオウ山を富士山のように表した場合、一合目から五合目が森林地帯、六合目から十合目が岩石荒野と、くっきり分かれる。

 前半の森林地帯は麓の森からの延長といった感じで、背の高い木々が密集し、空を覗ける部分も限られる。
 <ホークアイ>が使いづらい。

 道にしても一応山道めいた細い獣道があるにはある。
 ガメオウ山に登る人も居ないわけではないので、そういった人たちが踏み固めたであろう登山ルートだ。


 私たちはダンジョン以上に歩きづらいその道を進む。
 おまけにダンジョンのように前と後ろだけ警戒すれば良いというわけではないので、余計に探索に気を使う。
 今となってはアロークのおっさんが合流してくれた事を有り難く感じる。口には意地でも出さないが。


 見通しの悪い山道だというのに、相変わらず魔物の遭遇頻度は多い。
 オーガの群れとか、そっちも隊列するの大変でしょうと言いたくなるが、それでも真面目に襲って来る。

 おまけにトロールも現れ始めた。
 トロールなんて一体で細い道を塞ぐレベルの巨漢だ。
 縦も2.5mくらいあるが、横幅も酷い。ウェスト2mくらいあるんじゃないかと。キモイ。

 そんなのが二~三体で棍棒振り上げて襲って来るのだ。まぁ道幅が狭いから一気には来れないんだけど。
 【銀の鎖シルバーチェイル】が戦わずに退いたのも理解出来る。


 ちなみにトロールは納得のBランクで、戦った感じとしてはオークキングと大差ない。
 敏捷は落ちるが、攻撃力が高く、非常にタフだ。
 ポロリンにも受けさせてみたが、<鉄壁>と<ディフェンスバブル>を併用してギリギリといった所。
「うわっ」とかわいらしく驚いていた。


 と、そんな感じで進んでいると、またもネルトがたまに行う<ホークアイ>で奇妙なものを見つけたらしい。


「ん? ……池? ……がある」

「は?」


 聞いた情報ではガメオウ山に池などない。このルートに池があるのなら目印として教えられているはずだ。

 これはもしや、先ほどの『広場』と同じパターンか? と皆が訝し気な表情になる。

 詳しくネルトに聞くと、やはりこの先に拓けたエリアがあり、山道ではなく平地のようになっているっぽいと。
 そこに私たちのパーティーホームの庭くらいのサイズの『池』があると。結構デカいね。

 んで、その池の周りに何やら『岩の塊』のようなものが点々とあるように見えると。


「んー、ゴーレム? かも?」

「色は?」

「んー、白っぽいのと、黒っぽいのと、灰色っぽいの。灰色がさっきのストーンゴーレムっぽい?」

「その法則でいきますと、白がミスリル、黒がアイアンゴーレムですか?」

「ミスリルゴーレムとかBランクですわよ?」

「ネルト、数は?」


 立ち止まらずに<ホークアイ>を使わせるから詳細までは掴めないが、ともかくゴーレムの団体がお待ちかねらしい。
 Bランクのミスリルゴーレムが五体、Cランクのアイアンゴーレムが二〇体、Dランクのストーンゴーレムが多数、こんな所。

 HAHAHA! ゴーレムのスタンピードとか初めて聞きますよ、HAHAHA!


 ……でも妙だよね。


「妙、とは?」

「こっちを迎撃したいからこんな布陣してる、とは思えないよ」

「だな。俺もそう思う。あからさま過ぎるし、まるで『見つけたら逃げてくれ』って言ってるようだ」


 おっさんの言う通りで、私たちが相応の斥候能力を持っているのは知っているんだろうし、ゴーレムの集団に気付くのは当たり前。

 こんなに堂々と強いのを並べられれば、当然退却を第一に考えるし、ゴーレムは足が遅いから逃げるのは容易い。
 だからこっちが逃げる前提で布陣してるようにしか思えない。


 って事は、だ。


「退路もすでに塞がれてるかね」

「さっきの広場が怪しいな。そこくらいしか陣を布ける所がねえけど」

「ま、<ロングジャンプ>使えば楽勝なんだけど……それを見られた上で仕切り直すってのもなぁ……さて、どうしたもんか」


 大人しく引き返すって選択肢はない。分かりきっている罠であり敵が未知数だからね。
 じゃあ前進か、となるんだけど選択肢が二つになる。

 一つは真面目に戦闘して、どうにかこうにか蹴散らす。
 それでダメそうなら<ロングジャンプ>で緊急避難。

 二つ目は最低限だけ倒して突っ切る。ゴーレムの足の遅さを考えれば追いつけないだろう。
 しかし前方に逃げた先で、挟み込まれる可能性が大。


 気にしなきゃいけないのは、おそらく後方に布陣されているであろう迎撃部隊だ。
 私たちがそこに行く事はないが、もしそれがそのままファストン村へと進軍し始めると困る。
 村の防衛戦力だけで防ぎきれるとは思えない。規模にもよるけど。

 となれば、こちらに引き付けたい。でも連戦も挟み撃ちも食らいたくない。


「うーん、やっぱりゴーレム軍団を圧倒的に倒すってのが一番いいかな。その上で私たちが進軍すれば、後ろの迎撃も戻さざるを得ないでしょ。(おそらく元凶のアジトがあると思われる)上が手薄になるんだから」

「危機感は抱くだろうけどな。それで逃げられたら元も子もないぜ?」

「私たちは魔物の増加を止められれば一応は″勝ち″だよ」


 そこから先はそれこそ国の仕事でしょう。冒険者としての依頼じゃない。
 まぁそんな事を言うとリーナが「わたくし達で何とかしましょう!」とか言い出しかねないから言わないけど。


「しかしピーゾンさん、あの陣容相手に『圧倒的に倒す』と言われましても……」

「そこはうちの【魔法アタッカー】に頑張ってもらうしかないね」


 そう言って私はネルトの肩に手を置いた。


「ん?」



■フロストン 【ゴーレムメイカー】 33歳


 六人組が我らのアジトに向かってきたという情報はマニュエズ殿から聞いてはいた。
 しかしイグルの鳥によってもたらされる情報は次々に更新され、元から不可解だったものが、さらに不可解なものへと変わる。

 我らの使役した魔物によりガメオウ山から追い出されつつある魔物の群れ。
 密集され、行き場をなくし、次々に襲い掛かるそれらを瞬く間に屠りながらの進軍。
 紛れ込ませた我らの魔物もまた同様に屠られた。


 滑稽な装備に身を固めた、年端もいかない少女パーティー。
 そう聞いて侮っていた節はある。

 プラティの魔樹たちを大量に、しかもエルダートレントまでけしかけるのはさすがにやりすぎだとも思った。

 今後スタンピードを起こす上で貴重な戦力だ。
 確かに戦わせるならば森が最適だが、育てるのに時間が掛かる魔樹を少なからず消費するのはどうかと。


 ――と、そう考えていたのは甘かったというわけだ。


 ヤツら――男が一人増えて七人になったらしい――はどうやらAランク相当の少数精鋭集団であるらしい。
 しかも魔剣持ちが何名か、固有職ユニークジョブも何名か、そういった集団だと。

 まさかプラティの魔樹が瞬く間に殲滅されるとも思っていなかったし、即座に我とプップルに声が掛かるとは思っていなかった。

 マニュエズ殿は彼女たちを今、確実に屠るべきだと言う。
 これまで向かってきた冒険者パーティーのように追い返し、少しずつ情報を拡散し、援軍を増やさせるといった処置では生ぬるいと。

 それは確かにそうすべきだろう。
 我だけでなく、他の四名も同じように思い気を引き締めていた。

 我ら【幻惑の蛇ステルスネーク】は忙しくも作戦を練り、即座に実行すべく全体が動き出していたのだ。


「うーん、来るみたいでふね。引き返しはしないでふか」


 隣で望遠魔道具を覗くプップルが、溜息混じりにそう呟く。

 こちらの陣容をどこまで捉えているかは分からないが、我のゴーレムはとっくに気付いていただろう。
 これだけあからさまに、過剰に並べたのだから。

 それでも戦地に足を進めるというのは――戦えるという自信があるか、馬鹿なのか。
 まぁ前者である事は間違いない。


 ここまでの道のりでヤツらは我のストーンゴーレムを幾度も倒している。
 しかしアイアンゴーレムとミスリルゴーレムは見せていない。
 それをどう対処してくるのか……まさかここまで来て逃げるはないだろう。


 アイアンゴーレム二〇体に関しては問題なく倒して来るだろう。
 ヤツらの魔剣であれば斬る事さえ可能だ。足止めと邪魔が出来れば十分。

 しかしミスリルゴーレムは相当の魔剣でなければ傷がつく程度で終わる。ダメージにならない。
 魔法に関してはもっと厳しい。ミスリル自体が魔法耐性に優れているから当然だ。

 仮に上級魔法を撃たれようが全く問題ない。
 一体ならばともかく、ミスリルゴーレム五体というのは仮にAランクパーティーであっても避けるべき相手なのだ。


 我のゴーレムは直接操作しない限り、単純な指令しか受け付けない。
 今、布陣している者たちは一定距離に迫れば一斉に動き出し、集中して攻撃するよう植え付けている。

 さて、そろそろか。我のゴーレムたちが目覚め、そして――






 ――という所で、ミスリルゴーレムの一体が支えを失ったように倒れた。


「……!?」

「え!? な、なんでふか!? こ、攻撃!? 攻撃でふか!?」


 訳が分からないまま、先刻聞いた報告内容が頭をよぎる。

 プラティが囮として配置したマンイーターの群れは、ヤツらが近づいただけで、ダメージを受ける事なく死んだ、と。
 それが起きたのはマンイーターの時だけでトレントなどの場合には同様の現象が見られなかったと言う。

 つまり何らかの条件下で『植物を枯れさせた』か『即死――生命を停止させた』と判断した。


 だからこそ我に声が掛かったのだ。
 だからこそ今度は非生命体であるゴーレムを前に出したのだ。

 だというのに今起きている現象は、まさしくマンイーターの時と同じではないか。

 何がどうなっている……我の理外の事には違いない……。


「……プップル、準備しておけ」

「ふぁっ!? フロストンが喋るだなんて! これはとんでもない事態でふ!」


 我の事などどうでもいい。戦場に集中しろ、このデブが。


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