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最終章 毒娘、故郷の為に戦う
138:罠が見えれば正面からぶっ潰していくスタイルです
しおりを挟む「<グリッド><ルールシュレッド>」(小声)
「よしよし、ナイスニート。ミスリルだけ先に処理しよう。視線に注意ね。<グリッド>の認識能力に頼って自分の視線は外す感じで」(小声)
「ん」(小声)
やはりゴーレムは近づかなければ動かない。想定通り。
トレントでさえアレだったのにゴーレムに自意識なんかあるわけないからね。
であれば遠目から魔石だけ破壊出来ればそれで良し。
MPは食うけど簡単なお仕事です。ニートのお仕事です。
ゴーレムの魔石は胸の中央にあって、それを核として動いているってのは私でさえ知ってるくらいに有名。
実際にマッドゴーレムとかストーンゴーレムでも斬って確かめたし。
ミスリルゴーレムであっても魔石の位置は変わらないでしょう。
いくら相手が硬かろうが、動かずにじっとしてて、弱点の場所が分かっていれば<ルールシュレッド>で一撃だ。
ミスリルで試したわけじゃないけど<ルールシュレッド>はおそらくどんな物でも斬り裂く。
ただ斬れる範囲が本当に細いから、それこそ魔石に当てないと意味ないだろうけどね。
ミスリル部分だけ斬っても平気で動きそうだし。
と、そんな事を考えているうちに五体のミスリルゴーレムは倒れ伏した。
よしよし、さすがうちの【魔法アタッカー】だよ。良い仕事しました。
私はみんなと目を合わせ、一つ頷くと走り始める。作戦はすでに伝えてある。
陣形は3-1。私とリーナとサフィーが遊撃で突っ込み、後衛陣をポロリンに任せる、いつもの『ガンガンいこうぜ』プランだ。
私とリーナはアイアンゴーレムの二〇体を優先。
サフィーも魔剣を手にストーンゴーレムに向かった。
ソプラノから<アタックバブル>を貰い、次々にぶった斬っていく。
ミスリルゴーレムさえ片付ければあとは雑魚――そう思っていた時期が私にもありました。
「!? あの″池″、おかしいですわ! アローク!」
「ああ! …………うわっ! あれ池じゃねえ! レイクスライムだ!」
サフィーは<忍びの直感>で何かを感じ取ったのだろう。
その指示でおっさんが糸を飛ばした結果、池に見えていたものが――巨大なスライムだと。
■プップル 【スライムパパ】 23歳
【幻惑の蛇】はカナーン帝国を裏から支える暗部の一つ。
ただでさえ珍しい固有職の、その中でも珍しい『魔物操作』に特化した部隊でふ。
隊長のマニュエズさんは【幻惑術士】という洗脳型。
数を揃える事は出来ないらしいでふが、その分強力な魔物を操れまふ。さすが隊長。
その下にボクも含めた五名が居まふが、【ゴーレムマスター】のフロストンはゴーレムの魔石があればいくらでもゴーレムを作れまふし、【魔樹育成士】のプラティは苗から育てる必要がありまふが、こちらも数多くの魔物を操れまふ。
そんな名立たる集団にあって、ボクもなかなかの強者だと自負していまふ。
【スライムパパ】はスライムに好かれ、それを育てる能力に特化した固有職。
最初こそ、スライムが最弱であるが故にみんなにも馬鹿にされ、固有職だというのに虐められたりもしました。
でもポヨンポヨンと近寄ってくるスライムはカワイイでふし、ボクの心を癒してくれまふ。
そうして仲良くしているうちに、ボクはスライムの能力に驚かされる事になったのでふ。
スライムの強さは色々とありまふが、やはり繁殖力と多様性じゃないでしょうか。
よく居る最弱のスライムは<溶解>くらいしか出来ませんが、上位種になれば酸を吐いたり、毒を吐いたりもしまふ。
<溶解>し<吸収>し<分裂>もしたりしまふ。
そうしてどんどんと強くなっていくスライムがとてもカワイイのでふ。
で、話は六……七人組の迎撃に戻りまふが、正直その強さは予想外でした。
プラティの魔樹が殲滅されるとは思ってなかったでふし、実際にこの目でフロストンのゴーレムが蹂躙されていくのを見た時は、これが現実なのかと、とても理解出来ませんでした。
ともかくゴーレムが全滅される前にボクのレイクスライムも参戦させなきゃと、急いで<念話>しました。
レイクスライムはその名の通り、湖や大きな池に偽装して襲い掛かるスライム。
水場があると近づいた人たちを丸飲みにする、とても危険なスライムでふ。
だからスライムなのにランクはBに指定されていまふ。
ボクのレイクスライムはまだそこまで育っていませんので、大きさはさほどありませんが、能力的には問題ありません。
動き出せばそれは波のように襲い掛かりまふ。七人くらいなら飲み込めるほどに。
フロストンのゴーレムも巻き込むかもしれませんが、それはフロストンも承知の事。
直ちに襲わせるように――
『(バババッ)――<轟雷>ッ!』
――ドガァァァァン!!!
「ひぃっ!」
な、な、何でふか今の!? 雷!? 雷が落ちた!?
い、いや、雷魔法!? そんなレアな属性魔法を持ってるでふか!?
「……! 【忍者】だ! 狐のヤツは【忍者】に違いな……いや待て、<忍術>の<轟雷>は手から雷光を放つものだと聞いたが……」
隣でいつも無口なフロストンがブツブツ言ってまふ。
それくらい異常な状況だという事でふ。
<忍術>なのか<雷魔法>なのか分かりませんが、とにかくこれはマズイ。
レイクスライムは物理耐性も魔法耐性も高いでふが、雷属性は唯一と言って良いほどの弱点。
食らいながらも襲わせるか、それとも<分裂>させて数百匹のスライムに襲わせるか……。
――と、少しの間考える事さえ許されませんでした。
『(バババッ)――<轟雷>ッ! (バババッ)――<轟雷>ッ! (バババッ)――<轟雷>ッ! (バババッ)――<轟雷>ッ!』
――ドドドドォォォォン!!!
「ひぃぃぃぃっ!!!」
こ、こんなの酷いでふ!
■マニュエズ 【幻惑術士】 35歳
「――というわけでふ……」
「…………」
フロストンとプップルが帰還し報告を受けた。
その前にイグルの鳥からの報告も聞いたが……やはり想像以上。
これはもうAランク上位と見た方が良いかもしれん。
見た目詐欺にもほどがある。甘く見たつもりはなかったが。
相変わらず不可解な点も多いが、少しずつ判明してきた点もある。
まず、ヤツらは何らかの力で『敵を戦闘不能にする』手段を持っている。おそらく固有スキルだ。
プラティのマンイーターもフロストンのミスリルゴーレムも、それで倒されたと見るべきだろう。
『即死』の能力かと思っていたが、まさかゴーレムにも効くとは思わなかった。
まぁ『即死』にしても強力すぎて妄想の類だったのだが。
しかしいずれも戦闘開始時にしか使用しておらず、その後――例えば強力なエルダートレントが出た時にさえ使っていない。
その事から、ある程度の接近に加え、準備時間が必要なのだと思われる。
相手にその時間を与えたのが敗因だ。
また、陣容についてだが、フロストンとプップルが見た印象を聞いても、おそらく犬と羊はダンデリーナと【七色の聖女】で確定。
プップルはともかく、フロストンは私と同じくベテランの域にある暗部だ。
見間違える事はないだろう。
となれば、高名な【七色の聖女】はともかく、若干十一歳のはずのダンデリーナがAランク上位の力を持っているという事になる。
周囲の少女もおそらく同年代だろう。
固有職に就いて一年やそこらでこれだけの力を持てるものか? ……という疑問も出てくる。
確かにダンデリーナに関しては『王国一の美姫』であると同時に『文武両道の天才』だと聞いている。
だからと言ってたった一年で固有職の能力を使いこなせるわけがないし、他の少女も同じように強いというのは不可解以外の何物でもない。
知れば知るほど理解出来なくなる感覚。
それでも考察し、冷静に、現状を対処しなければならない。
「それでヤツらは探索を続けているのだな?」
「…………(コクリ)」
「ろくに休まずにまた上り始めたでふ」
引き返さずに前へ、か。一気にこの場所を突き止めるつもりだろう。
我々の存在に気付いている。それは間違いない。
だからこそ確実に殺さねばならん。
今回のゴーレムとレイクスライムによる迎撃は、罠の意味合いが強かった。
戦わずに引き返せば、麓でベオウルフの魔獣部隊とゴーレムによる挟み撃ち。
ゴーレムを突っ切ろうとすればレイクスライムが襲い掛かり、それすら躱して進んだならば、イグルの魔鳥部隊とゴーレムの挟み撃ち。
……そのつもりでいたが、結局はどちらの策もとらず、正面から殲滅という一番痛い手を食らった。
ヤツらを無視してスタンピードを早めれば近隣の村やオーフェンは潰せるだろう。
しかしヤツらを自由にしたままでは後方から潰されて行く。
とても王都まで続くスタンピードにはなり得ない。
やはり今は全力でヤツらを潰すべきだ。確実に殺す。
生きて帰すのは最悪の手でしかない。
「よし、ベオウルフを戻らせる。総員、最大戦力を出す準備をしておけ。ベオウルフが戻り次第、作戦会議を行う」
「「!?」」
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