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最終章 毒娘、故郷の為に戦う
140:どうやら一大決戦が行われそうな予感です
しおりを挟む■モーブビィ 【上級騎士】 30歳
冒険者にはいつだって命の危険が付き纏う。
だから身体能力が絶頂期にある十代、二〇代で稼ぎ、衰え始める三〇を越えると引退ってパターンが多い。
ちょっとした反応の鈍さや感覚の鈍さが、即座に死に繋がるからだ。
ランクの高いヤツほど、そうした感覚に敏感になる。
俺も三〇を機に冒険者を引退し、ギルドで働く事にした。
オーフェンでBランクとなれば待遇は良いし、冒険者にも職員にも顔が利く。
【銀の鎖】でも俺以外は後輩で、指導するのが常だったってのもある。
職員になって冒険者の育成に従事しようと、そう思っていた。
しかし最初の新人戦闘講習でとんでもない目にあった。
ほとんどが普通の子供――戦闘職に就きたての新人だったが、明らかに″異常″なのが紛れ込んでいた。
事前に話は聞いていた。
たった一人でワイバーンを倒した新人が居ると。
そいつは【毒殺屋】とかいう物騒な固有職で、すでにEランク。腰には鉈をぶら下げていると。
道具屋のポロリンの防御技術にも驚かされたが、それは同じパーティーであるピーゾンという少女との訓練の成果なのでは、とすぐに予想はついた。
なぜって、ポロリンに戦闘経験なんかあるわけないし、ゴブリン程度を狩った所で身に付く防御技術じゃないからだ。
ならばピーゾンが鉈でもって打ち合い、そうして得た技術なのではと。
つまりはピーゾンも相応の剣技が出来るという事だ。
【毒殺屋】という職とワイバーンを毒殺したという情報に惑わされがちだが、おそらく剣も使えるはず。
そう思ったからこそ、俺はピーゾンと戦ってみる事にした。ただの興味本位だ。
結果はボロ負け。過大評価していたつもりだが、想定の数倍は強かった。
こんな新人は見た事もないし聞いた事もない。
それがオーフェンから生まれた事を喜ばしくも思った。
しかし同時に悔しくもあった。
オーフェンのトップを担い、【上級騎士】として強さを示してきた自負があった。
それが――俺の二〇年が、職に就いてたった数日の少女に負けた、と。
俺はギルドマスターに謝り、冒険者に復帰させてもらった。
仲間たちにも謝り【銀の鎖】にも入れてもらった。それも元々のリーダーポジションでだ。
方々に感謝をしつつ、俺は決意を固めていた。
俺はまだ成長しなければならない――あの高みへ近づく為に。
そうして再開した冒険者稼業であったが、例のピーゾンが仕留めたワイバーンに関する調査に大半が費やされた。
もしまたワイバーンがオーフェンの近くまで来れば大変な騒ぎになるし、それを倒そうにも戦えるパーティーは限られる。
だからこそ俺たち【銀の鎖】が指名依頼を受けた。
やがて南部にあるガメオウ山が怪しいと踏んで乗り込んだはいいが、明らかな異常と判断し調査も出来ず。
拠点となったファストン村も危険だと言う事で、防壁を作り、援軍要請を行いつつ、魔物の間引きを始めた。
俺たちはオーフェンでトップのパーティーであったはずなのに、それでも対処出来ない事態に見舞われ、そこでもまた悔しい気持ちもあったが、出来る限りの手を尽くそうと奮闘した。
援軍は王都からの騎士団やBランクの【蒼き風】を始めとする冒険者たち。
それは素直に感謝したが、すでにそれだけでは対処出来ないほど、魔物の増加は続いていた。
どうしたものかと悩んでいた所にさらなる援軍。
俺はその日の夜に、村長宅の定例会議にてその援軍と初顔合わせした。
王都から来た近衛騎士四名、それだけでもすごい戦力だとは思う。
そこにダンデリーナ王女や【七色の聖女】様まで居ると聞いた時点で理解不能なのだが、ピーゾンとポロリンが一緒に居るという意味不明さ。
しかも変てこな装備を身に纏い、かつての面影は顔くらいしかない。たった数ヶ月前のはずなのに。
つまりはこのとんでもない面子が、あの【輝く礁域】だと。
ダンデリーナ殿下や【七色の聖女】様を差し置いてリーダーのピーゾンが前に出ているから、それはそうなのだろう。
俺はピーゾンという才能に触れたから冒険者に復帰した。
さらなる成長を目指して。
しかしたった数ヶ月で、ピーゾンは考えられない成長を遂げていた。
あの時、俺が手も足も出なかった相手は、職に就いて数日の新人に過ぎなかった。
実際にピーゾンの戦いを見たわけではない。聞いただけだ。
それでも相対してみれば分かる。
メンバーも増えた、装備も変わった、何よりピーゾン自身が成長したのだと。
ピーゾンたちはガメオウ山に行くと言う。俺たちが無理と判断した調査に。
俺は知る限りの情報を伝え、アドバイスをした。
こいつらならきっとやってくれるはずだと思ったから。
こいつら以外には無理だろうと思ったから。
俺はこのファストン村を守る。
だからそっちは任せるぜ――【輝く礁域】。
■ピーゾン 【毒殺屋】 10歳
ガメオウ山の八合目といった所。
そこには丁度良く設えたような、決戦の地が存在していた。
私たちはそこに辿り着くまでに魔物を倒しながら、色々と話し合った。
その結果、決めた方針により登山を続けたわけだ。
事前に聞いていたルートから外れる時もあった。
例えば渓谷の底を進むようなルートの場合、攻められやすい上に戦いにくい。
そうした場所を<ホークアイ>で確認しては避けつつ、こちらに有利な状況で戦う為にルート選びを行った。
それが功を奏したのかは分からない。上るにつれて明らかに魔物の数は減り、それに伴って私たちのペースも上がる。
結局、その場所に辿り着いたのは暗くなる前。夕方に差し掛かるかといった所だった。
トレントに襲われた時も、ゴーレムに襲われた時も、不自然な広場が作られていた。
明らかに人の手が入った、戦いの為の場所。
同じように、そこはまるで巨大な闘技場のような丸い盆地で、周囲は小高い崖に囲まれていた。
盆地が闘技場だとすれば崖は観客席。そこに魔物の姿はない。
闘技場を囲む崖――私たちの方からすると奥側――には入場口とばかりにトンネル並みに大きな洞穴が開いており、その中を窺い知る事は出来ない。
<ホークアイ>で見られるのは上空からの視点だけだし、おっさんの糸もそこまで飛ばせない。
ともかく私たちが「ああ、ここなのか」と理解するには十分で、小声で作戦を確認しつつ、あくまで探索を継続しただけといった様子で盆地へと侵入した。
改めて自分たちの目で確認すると、盆地は半径100mくらいで地面はフラットな土。
崖は5mくらいの所もあれば10mくらいの所もある。
正面に真っ暗な洞穴。まさしく前世のトンネルを彷彿とさせる大きさと不自然さだ。
「ここがアジトですよ」と手招きしているようにも見える。
だからこそ、私たちはまるでそこに引き寄せられるように、盆地の中へと進んだ。
隊列を維持し、警戒を保ったまま。
そして私たちが盆地の中央付近に来た時――事態は動き出す。
最初に洞穴から飛び出したのは″鳥″だった。
大きな鳥が数羽、勢いよく飛び出したかと思えばすぐに上昇。
上空を渡り、私たちが入って来た盆地の入口付近に陣取る。
……訂正するわ。一匹、″鳥っぽくない鳥″も混じってるわ。
「グリフォン……!?」
「それに、フレスベルグが五体も……!」
鳥の群れを皮切りに、洞穴からは次々に魔物が現れ始める。
まるで闘技場に入場する王者のように。挑戦者である私たちの前に。
人を模した大樹の巨人、ユグドレント。
全てを飲み込む漆黒の巨大粘体、グラトニースライム。
水晶の結晶柱で構成されたような巨塊、クリスタルゴーレム。
それら三体が中央で構える私たちを囲むように崖沿いに進み、洞穴の入口を開けた。
最後に出てきたのは″獣の群れ″。
サンダーライガーが五体、そして――ケルベロス、フェンリル、マンティコアという三体だ。
「ちょっと予想以上ですわね」
サフィーが冷や汗を流しながらそう言う。
リーナとソプラノは決意の目、ネルトは無表情ながら戦う意思を持っていた。
ポロリンは「ひぃぃ」とかわいく怯えている。
「なんとも手厚い歓迎だね」
私は皮肉を込めてそう言った。
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