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最終章 毒娘、故郷の為に戦う
141:DランクパーティーですがAランクにも立ち向かいます
しおりを挟む小声で魔物の詳細を聞きつつ、状況を確認する。
闘技場の中央に私たち七人。背中を合わせるように武器を構えている。
私たちが入って来た闘技場の入口には体高2.5mほどのグリフォン。
鷲の頭と翼、前足を持った獅子だ。ランクはAらしい。
その周りにフレスベルグという冷気を纏った大きな白い鷲が五体飛んでいる。こちらはBランク。
逆側の洞穴前には黒い毛並みを持つ三つ首の巨大犬――Aランクのケルベロス。
隣に言わずと知れた白銀の巨大狼――Aランクのフェンリル。
さらに隣には蝙蝠の翼と蛇の尾を持つ獅子――Aランクのマンティコア。
三体とも体高は2mを越える。体長は4mほどか。
おまけとばかりにBランクのサンダーライガーも五体居る。
洞穴側を向いて左側に、捻じれた幹で作られたような大樹の巨人――ユグドレント、Aランク。
その隣には水晶柱が身体中から生えたような輝く巨人――クリスタルゴーレム、Aランク。
反対の右側に5m級の漆黒の粘性球体――グラトニースライム、Aランク。
つまり私たちは四方をAランク七体、Bランク十体に囲まれたわけだ。
もう、ここの戦力だけでオーフェンどころか王都も攻められるんじゃないかと思えるほどの絶望感。
こんなのと戦うくらいならSランクのエビルクラーケン一体を私たちだけで戦った方がマシに思える。
本来であれば能力が見られる事になろうが即座に<ロングジャンプ>で避難すべきだ。
しかしそれは本当の最終手段と事前に決めている。
この場で戦わなくてはいけない理由があり、だからこそ意を決して乗り込んだのだから。
「みんな、作戦は頭に入ってるね?」
『はい!』
「おっさん、そっちは任せるよ?」
「おう、こっちは気にすんな。生き残る事だけ考えろ」
「うん、じゃあ行くよ! 【輝く礁域】戦闘開始!」
『おお!』
■サフィー・フォン・ストライド 【スタイリッシュ忍者】 11歳
ワタクシたちを包囲した強大な魔物たちは何かの合図を待つように、攻めては来ず、ジリジリと迫るべく動き始めた所。
洞穴から出てきた時点で襲い掛かって来るのであれば、対処も出来ずに窮地に陥られたでしょうが、「逃がさない」という前提で慎重に攻めてくるのであれば――それは隙。
ワタクシたちを包囲してくるのは想定の一つにありました。
相手はワタクシたちを逃がしたくないし、絶対にこの場で殺したいはずだと。
だから強力な魔物を嗾けてくるか、圧倒的物量で攻めてくるか――おそらく前者の可能性が高いだろうと。
その場合現れたそばから襲って来るか、包囲してくるか――これはどちらとも言えないが、前者の方が危険だと。
敵に植物・ゴーレム・スライム・獣の系統の魔物を操る能力があるならば、考えうる強力な手札、その魔物はどのようなものか。
そういった事も事前に想定を行いました。
だから比較的落ち着いていられるのでしょう。
鳥系の魔物を操る者が居るというのは想定外でしたが、飛べる魔物の存在は危惧されていたのでまだ想定の範囲内。
それでもAランクの魔物をこうも並べられると、さすがに少し臆しますけれどね。
しかし事前に話し合った作戦に変更はなく、ワタクシたちがやる事に変わりはありません。
「【輝く礁域】戦闘開始!」
ピーゾンさんの号令の下、ワタクシたちは走り出しました。入口――鳥系の魔物が待ち構えている方へ。
中央で互いを背にするように戦うのは下策も下策。
戦う為にはどうにかして隊列を組む必要があり、かと言って崖を背にして戦いたくはない。
だから入口に陣取って戦うべきだと。
その為にはグリフォンとフレスベルグを何とかしなければなりません。
グリフォンは地上へと降りましたが、フレスベルグは依然として空。
このパーティーで対空攻撃はワタクシと相場は決まっております。
「<マジックバブル>! <アタックバブル>! <MPドレイン>!」
「<毒弾>! <毒弾>! <毒弾>!」
「<鉄壁>! <魅惑の視線>!」
皆さん、作戦通りに始めましたわね。
ではワタクシも――!
「(バババッ)――<風刃乱舞>!」
ワタクシの最大範囲攻撃忍術は斬り裂く刃となってフレスベルグを巻き込み――
「バカ! 鳥相手に風属性使ってんじゃないこの金髪ドリル! おとなしく<火遁>にしとけ!」
……と、ピーゾンさんから最速で叱咤の声が上がりました。
も、申し訳ありませんわぁ。そうですわよね、フレスベルグは氷属性と風属性の鳥ですものね。
<火遁>ですわね、<火遁>。すぐに撃ちますわぁ。
■ダンデリーナ・フォン・ジオボルト 【サシミタンポポ】 11歳
ドリルとは一体何でしょうか……いえ、今はそれどころではありませんね。
ソプラノ様からのバフを受け、わたくしはグリフォンに突貫します。
最初に行うべきは盆地への入口に陣取る事、その為の敵の排除です。
わたくしには皆様のような補助や遠距離攻撃の手段はありません。
ただ敵に近づき、ただ斬る事しか出来ません。
だからこそ全力で、相手が強大であっても臆せず前へ、わたくしは走って斬りつけるだけです。
「クルルルォォォオオオ!!!」
グリフォンが風のブレスを放って来ました。
それは細かい刃であると同時に、私たちを足止めすべく向かい風となって襲い掛かります。
後衛陣が心配でしたがネルト様の<念力>によってソプラノ様を中心に守られたようです。一安心。
わたくしはと言えば、体勢を低くし、ワンワンブーツの<踏み込み強化>を使えば下がらされる事もありません。
本当にこのような装備を作って下さったマリリン様には頭の下がる思いです。
おかげでわたくしは前へと進む事が出来るのですから。
「クルルルォォォオオオ!!!」
迫られると感じたのでしょう、グリフォンは先頭を走るわたくしに狙いをつけました。
翼を利用した機動力から繰り出されるのは、鋭い爪で抉るような前足の斬撃。
さらには嘴による刺突、巨体による体当たり。見掛け以上の素早さはさすがAランクと言えるでしょう。
わたくしはそれを<流水の心得>で避けつつ、<氷の刃>を纏わせた【魔包丁ベリサルダ】で斬りつけます。
ピーゾン様のような華麗な回避からのカウンター、それには及びませんがこれが今のわたくしの全力です。
「クルルルァァァ!!」
グリフォンは風属性。フレスベルグのように氷に強いというわけではありません。
Aランクと言えども鳥系の魔物である以上、ミスリルゴーレムより硬いというわけではありません。
わたくしの攻撃もそれなりに効いたようです。
グリフォンの視線を見るにわたくしに敵愾心を集中させているようです。それは重畳。
このまま接近して攻撃を続ければ――
「ヒョォオオオ!!!」
――ガガガッ!
くっ……! 上空からフレスベルグの<氷弾>が降って来ます。
どうやらサフィー様お一人では抑えきれない様子。
これを避けつつ、グリフォンと対峙するのは……いえ、やるしかありません。
ピーゾン様であれば難なく回避しつつグリフォンに攻撃するでしょう。
であれば――わたくしにも出来ない理由などありません!
「はああああっ! <氷の刃>! <微塵斬り>!」
■ネルト 【ニートの魔女】 10歳
乗り込む前に作戦会議しながら歩いてたけど、すっごいいっぱい、一気に情報量が増えた感じ。
知識も経験もない私は、聞くくらいしか出来ないけど、みんなすごいなーと思いながら聞いてた。
ピーゾンが頭おかしいのは前からなんだけど、ここに来ていつも以上に考察してるらしく、作戦はより多く、より緻密になっていった。
それに口を出すリーナとサフィーもすごい。
アロークもピーゾンの作戦を修正したりアドバイスしてたけど、二人も同じようにやってる。
私はポロリンと一緒に頷く事しか出来なかったよ。
で、いざ盆地に乗り込んでみれば、聞いてはいたけどすごい魔物ばっかで。
こんなのと戦うとか平気かなーと思いつつ、私は私で精一杯やるしかないわけで。
ここで私がお荷物になっちゃったら、本当に全滅しかねないし。頑張ろう。
第一に考えるのはMPを半分以上保つ事。
<ロングジャンプ>もそうだけど、場合によっては<ショートジャンプ>を使うかもしれない。
盆地の入口にもブックマークはしてあるから<ロングジャンプ>でそっちに逃げて即座に追撃という事も出来る。
その場合の消費MPは100。ちなみに私の総MPは352だ。余裕。
ただ<ショートジャンプ>は25×人数となる。七人だと175かな?
それはキープしておきたい。転移は出来る限り見せたくないって言われてるけどね。
本当ならソプラノに<マジックヒールバブル>をお願いしたいんだけど、今回の戦闘だとソプラノは忙しい。
だからMPポーションを飲みながら戦う事になる。
用意はバッチリ。何本でも飲んじゃうよ。
という事で、ピーゾンの号令で戦闘開始。
みんなが一斉に動き出す。
私の最初の目標は、あのキラキラしたゴーレムだ。あれを<ルールシュレッド>で倒す。
でも距離がある上に、私たちが入口に走ってるせいで余計に離れていってる。あいつ遅いし。
待つしかないかなーと思ってたら隣のソプラノから声が。
「ネルトちゃん! 後ろに<念力>を!」
「ん! <念力>!」
ゴーレムの方を見ていて、グリフォンの方は見ていなかった。
どうやら風のブレスを吐いたらしく、危うく食らう所だった。
あれはポロリンじゃ防げないしね。ソプラノが見ててくれて助かった。
って言うか、ポロリンも獣軍団の方に集中してるんだけど。
あっちもこっちも警戒しなきゃいけないのはつらい。
早く鳥を倒して入口を確保しなきゃ。
リーナとサフィーだけじゃ無理だよね。ゴーレムを見つつ、私も参戦しようかな……。
「ネルトはゴーレムとユグドレントに集中して! 少ししたら私が行く!」
おお、ピーゾンも鳥の方に行くの?
じゃあそっちは任せよう。私はあのデカいのを……どうしたもんかなぁ。
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