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最終章 毒娘、故郷の為に戦う
150:勝ち筋はすでに見えていたようです
しおりを挟む「うえっぃ!?」
思わず変な声が出た。
いや、あのさ………………毒ったわ。
いつものルーティーンで<毒弾>から<毒感知>やったらさ、毒ってたの。
まだ二〇発くらいしか撃ってないんですけど!?
全部口狙いで頑張ったけどさ! それにしても早くない!?
同じSランクのイカが百発以上掛かったんだが!?
って言うかドラゴンって毒るの!? いやそれは有り難いけどさ!
これまさか<ラックバブル>の効果? LUK上昇うまし、ってレベルじゃねーぞ!?
運なんて元々よく分からないし、バフった所でどの程度運が良くなるかなんて分からないけど、そうでも思わないと納得出来ないんですよ。
私が過去、ワイバーン戦から始まってどれだけ毒らせるのに困ってきたか。
それを払拭する【七色の聖女】とかいう存在、マジチート。祈りますわ。神じゃなく聖女に。
と、とりあえずみんなに報せなきゃ。
「みんなー! 毒ったよー!」
「「「ええっ!?」」」
「ソプラノ、サンキュー! もう私はマジックとラックなしで大丈夫だから!」
「わ、分かりました!」
これでよし。とりあえず一発入れてみるか。
――ズバッ!!!
「ギヤアアァァァァァアアアア!!!」
ヒュー! 剣鱗がなんぼのもんじゃい!
状態異常特攻サイコー! 超キモチイー!
千剣竜が<衰弱毒>になった事で、勝ちは確定になった。
私の毒は永続だから、このまま<ロングジャンプ>で逃げても勝手に死ぬ。
まさか竜だからって回復魔法は使えないだろうし……使えないよね?
HPがどれだけあるか知らないけど、例え十万くらいあったとしても、<衰弱毒>は十秒10ダメージだから……えっと……一日くらい? 分かんないけど、一日くらいで死ぬ。
とは言えこいつの遅い足でも一日あればファストン村に辿り着いてもおかしくはない。
って言うか十万以上ある可能性だってあるし、削れるだけ削っておいた方がいいだろう。
「みんな! 安全第一で削っていくよー! 長期戦のつもりで!」
『了解!』
「リーナは機を見てヒットアンドアウェイくらいでいい! サフィーも遠距離だけね!」
「了解です!」「了解ですわ!」
よし。ただヘイトは私に向かせたいから、私は普通に攻撃を入れる。
<状態異常特攻>の威力をもって顔面ボコボコにしてやる。
リーナとサフィーは適度な攻撃だけでいいとして、ポロリンも適度に攻撃させようかな。
ポロリンの役目は今の所、後衛陣の守りオンリーなんだよね。
千剣竜の攻撃は剣鱗を使った攻撃が多いけど、怖いのが二つあって、一つは尻尾で薙ぎ払いしてくる事。
これはバフとスキルを積んだポロリンでも受けられないので、全員で避けるしかない。
ちなみにリーナとサフィーは一度尻尾の薙ぎ払いをくらって吹き飛ばされている。即回復したけど。
で、範囲外に避けるのはいいんだけど、その時に一緒に地面を抉って土塊とかも飛ばして来るのが厄介。
これが離れた後衛陣にも当たりそうなのでポロリンには守って貰わないといけない。
もう一つ怖いのがブレスだ。ドラゴンだからと当然のようにブレスを放つ。
千剣竜の場合は竜巻のような風のブレスらしい。
それを防ぐのはネルトの役目になっている。
ポロリンの前に<念力>の盾を作るのではなく、千剣竜がブレスを吐きそうだったら口元に<念力>盾を出して出所から塞ぐイメージ。
とは言え完全に防げるというわけでもなく、漏れるようにブレスが放たれるので、事故防止の為にもやはり後衛陣はポロリンに守ってもらいたい所。
そんなわけでポロリンは可愛らしくトンファーを構えて最後衛に居るわけだが、薙ぎ払いもブレスも頻度は少なく、最悪ソプラノの<泡姫の舞>で防御も出来る。
まぁMPの都合上、あまり使わせたくないし、ソプラノにはバフも頑張って貰ってるしなー。
とは言えポロリンが暇って言うのも勿体ないので、攻撃参加もアリだなーとも思う。
うん、よし、やらせてみよう。
狙いは私と一緒に顔面狙い。顎に<ヘブンスター>を入れてもらって脳震盪が起きれば大チャンスだ。
まぁドラゴンが脳震盪を起こすのか分からないけど。
あとはネルトか。
ネルトにはブレスの対処以上に別の仕事を重点的にやらせている。
<ホークアイ>でおっさんの監視だ。そっちの戦い如何ではこっちの対応が変わる。
もしおっさんがやられたら、捕らえた五人も含めて黒幕全員に逃げられるだろう。
ここまで来てそれはダメだ。死んだおっさんも浮かばれない。
だから千剣竜を無視して黒幕一味を追うべきだろう。どうせ毒ってるから千剣竜死ぬし。
今からでもサフィーに<忍びの歩法>を使わせておっさんの援軍にすべきだろうか。
<気配消去><無音歩行><跳躍強化>とかも複合されているし、気付かれずに近づく事も可能じゃないかと。
でもまぁ、おっさんの″糸″を考えると【ドラゴン使い】の術者如きに後れをとるとは思えないけどね。
とりあえずネルトには継続して監視させよう。
■マニュエズ 【幻惑術士】 35歳
――キンッ! キンッ! キンッ!
「チッ――はぁっ!」
くそっ! この男は一体何なんだ……!
<武器偽装>も<身体偽装>も<偽装攻撃>も、その全てが見破られる。
【幻惑術士】となり覚えた<幻想術>も意味を為さない。
対人戦では負けなしのはずの攻撃が、だ。何故かこの男には効かない。
私はあの頃とは違う。帝国へ逃げ帰ってから、より強くなる為、血の滲むような思いをしたのだ。
【偽装士】から【幻惑術士】への上位派生も為した。
新しいスキルも習熟した。
<幻惑操作>を磨き、Sランクのサウザンドドラゴンを操るまでになった。
私の武器も攻撃も身体も『虚』と『実』が入り混じる事で、相手は私の攻撃を躱す事も受ける事も出来ない。
ただ斬られて終わる。確実に勝てる力を身に付けた――はずだった。
だと言うのにこの男――憎きアロークには通用しない。
右手に短剣、左手からは糸の束。
それで全てがいなされる。
なぜだ。なぜ私の『虚実』が見破れる!?
【操糸者】というのは糸を操るだけの固有職ではないのか!?
「″幻″かぁ」
「!?」
「自分で攻撃するのにも使えてドラゴンも操れるとか、何とも便利な能力があったもんだ」
暗部の者が戦いの場で――よくも呑気に喋るものだ!
それだけ余裕があるとでも!? 嘗めやがって!
「まーだ気付かねえのか?」
「何……ッ!?」
「もうとっくに終わってんだよ。見せてやろうか」
その言葉の意味はすぐに分かった。
私はヤツが左手から出している糸――裁縫にでも使いそうな何百本のも糸の束を見て「それが全てだ」と思い込んでいた。
一本一本は細く白い糸。それを束ねたものを左手から出していると。
しかし実際は違った。
『より細く』『極めて透明に近い』糸を、左手のそれとは別に放出していたのだ。
それはヤツを中心に蜘蛛の巣のように広がり、崖上の戦場を覆いつくす。
さらには私の身体にも気付かぬうちに巻き付かれている。
ヤツはそれを白く、太くする事で私にも分かるように見せた。
「すでに捕らえている」そう示す為に。
「くっ……! 一体いつの間に……っ!」
「お前が出て来る前からだよ。とっくに地面に張ってたさ。伏兵を用心するのは当たり前だろうが」
私は……みすみす罠が仕掛けられた地に侵入したと……!?
「お前がいくら″幻″を使おうが、糸は常に″本物″に触れてるんだ。間違いようがねえっつーことだ」
「アローク、貴様……っ! 【操糸者】とはこれほどの……っ!」
「あー、もう黙ってろ」
私を捕らえた糸はより太く、そして何重にも瞬時に巻き付き、口も塞がれ、身体の自由は完全に失った。
他の五名と同じく転がされるだけだ。
結局、私はこの男には勝てないという事か。
私の全ては″糸″というただ一つの能力によって敗れた。
まさかこれだけ自由に糸を操れるとは……
――いや、あの時これほどの力があれば、私は殺されていたはずだ。
――まさかコイツも……!?
「【操糸者】ねぇ、あの時は確かにそうだったな」
我々六名を捕らえた男は、″庭″を見下ろしながらそう言う。
「ちなみに今は――【糸佩者】だけどな」
――十数年前より成長したのは私だけではなかった。
――この男もまた上位派生を――。
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