ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

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最終章 毒娘、故郷の為に戦う

151:輝く礁域ですが依頼を完遂しました

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「ん。アローク勝った」


 後ろからネルトの報告。


「よし! じゃあもう後はこいつを倒すだけだ! みんな頑張ろう!」

『おお!』


 オーケーオーケー。かなり予想外の事が重なったけど終わりよければ全て良し。

 いやまだ終わってないし、ドラゴン相手に油断も出来ないけど、先が見えたのは確かだ。
 未来が見えればそこに向かって邁進するのみ。
 正直今日は戦いすぎてもう嫌なんだけど、あとちょっとだけ頑張る。


 そうこうしていたら、崖の上からおっさんがやって来た。
 その後ろには糸の束で持ち上げられた六つの白い芋虫が寝ている。
 その糸、パワーリフター代わりにもなるのか。やっぱ強いじゃん。


「ポロリン! ちょっと私の代わりに正面に入って! 無理しないでね!」

「わ、分かりました!」


 ポロリンとスイッチして戦線離脱。おっさんの下へと駆け寄る。


「おつかれー。ナイス捕獲。時間かけた甲斐があったね」

「おつかれー……って言える状況じゃねえだろ! ドラゴン相手に余裕かましてんじゃねえよ!」

「いや、あれもう毒ってるから」

「マジで!? 早くね!?」


 おっさんは盆地に入ってからずっと細~~い糸を出し続けていた。戦闘は私たちに全部任せて。
 崖上の連中に気付かれないようにひたすら長く、ひたすら静かに。
 五人を逃がさず同時に捕らえる為には、かなりの量の糸を伸ばす必要があるらしく、それでかなり時間が掛かった。

 途中、炎を吐くケルベロスが来た時には糸が焼かれるんじゃないかと不安だったが、どうにか保持できたようだ。


 崖の上の連中からすれば、私たちが苦戦しながら戦っているというのに、何もしていないおっさんという風に見えるはず。
 実際こっちはかなり厳しい戦いだったんだから、これでおっさんが失敗しようものなら、私は殴ってる所だ。
 しかし無事に成功し、五人どころか六人(多分これで全員)も捕まえられたと言うのなら褒めてやるのもやぶさかではない。


 とまぁそれはそれとして、次の行動に移らなければならない。


「とにかくその荷物を早いとこ何とかしよう。ネルト、ちょっと来て。ソプラノ、ブレス来たら踊ってね」

「ん」「了解です!」

「よし、ネルト、この六人とおっさんを連れて王都に飛んで欲しい」

「ん? 八人?」


 ドラゴンとの戦いは長期戦だ。その間ずっと芋虫を保護し警戒し続けるのは馬鹿らしい。
 おそらく帝国の手先なんだろうし、さっさと国に引き渡した方がいいだろう。
 というわけで<ロングジャンプ>で一気に護送する。

 ただ八人どころか七人同時に飛べるのかも分からないので、まずは盆地の外に作ってあるブックマークに飛んでみる。

 八人同時ジャンプが可能と分かれば、王都に飛ぶ、という感じ。MPポーション飲みつつね。
 距離的な問題で王都まで飛べないとすれば中継点を経由しつつ飛ぶ感じだね。


 王都にあるブックマークはホームと西門と南の森の三か所だ。
 衛兵に突き出す事を考えれば移動距離が一番近い西門に飛ぶべきだろう。
 そうした指示を一気に伝えた。


「んー、私は抜けるって事?」

「おっさんが衛兵か騎士団に引き渡したら戻って来て。その時おっさんが一緒に戻ってくるかは任せるよ」

「おっさんじゃねーけどな。引き渡しても短時間で説明出来ねえだろうなぁ……かと言ってお前らを放置するわけにもいかねーし」

「んじゃ時間を決めて西門に集合とかにすればいいじゃん。とにかくそっちは任せるよ」

「おう、分かった。じゃあ悪いけどちょっとネルト借りるわ」

「ネルト、MPポーションまだあるね? 飛んだ先で魔物とか居る可能性もあるから気を付けて。いいね? 頼むよ?」

「ん」かっくん


 範囲系の魔法の上限が六人と聞いていたのでどうかと思ったが、ネルトが「多分七人でもいける」と言った予想は正しかったようで、ネルトに触れていれば何人でも同時に転移が可能なようだった。

 ネルトとおっさん、そして芋虫六人は盆地の外に瞬間移動し、それから王都へと飛んで行った。


 よし、これで黒幕関係は片付いた。
 あとはネルトが帰って来るまで事故らないようにしないとね。
 ブレスの対応できるの<泡姫の舞>しかないし。


「んじゃ行きますか! ポロリンこっちはオーケー! 代わるよ!」





 その後、十分少々でネルトは帰って来た。
 詳しい話は聞く暇がなかったが、おっさんは明朝合流するとの事で、ネルトが迎えに行くらしい。
 ホント【ニートの魔女】が有能すぎて困る。働きすぎだろ、ニートのくせに。


 それからは六人で千剣竜との戦いを再開した。
 すでに暗くなっているので、ネルトとソプラノには<照明>を使ってもらっている。

 ちなみに毒らせたのをいい事に<石化毒>を使おうかとも思ったが、素材が全て石になってしまうのでやめた。
 ならば動けなくさせようと<麻痺毒>を撃ちまくったが、どうやら麻痺耐性は持っているらしく全くダメ。
 <ラックアップ>を掛けて貰いつつ百発以上撃ち込んでダメなので、もう諦めた。
 毒っただけでもラッキーだったと思うしかない。


 千剣竜も攻撃は相変わらずなのだが、さすがに焦れて来たのか、それともダメージが入っている影響なのか、暴れるような攻撃をしてくるようになっていた。
 あの巨体、あの剣鱗で少しでも暴れようものなら、それはとんでもなく強烈な範囲攻撃となる。
 オークキングが何百匹も剣を振り回しているのと変わらない。

 しかしまぁ、そこは距離をとるなり、逃げるなり、最悪<泡姫の舞>や<念力>盾で凌ぐ。
 <泡姫の舞>がチートすぎる。泡姫無双。
 MPが無限にあればバリアの内側から延々と攻撃し続けるだけで勝てるんだけど……まぁさすがにね。


 そんな感じで、危険ではあるものの安定もし始めたので、一人ずつ順番に休憩をとって食事したりもした。
 すでに長期戦になっているし、あとどれほど戦うはめになるのか分からない。
 その間五人になるリスクを背負ってでも休んでおくべきだと。

 まず考えるべきは安全第一である事。
 その上で千剣竜を足止めしつつ、少しずつでもダメージを与える事。
 もうそれだけでいい。その為の集中力を何とか維持出来ればいい。


 私は千剣竜の正面でヘイトを稼ぐのが仕事。
 一番危険だけど私がやるしかない。スポットでポロリンにもスイッチするけど。
 とにかくちょっかいを出し続ける。嫌がらせし続ける。それだけだ。





「ギヤアアァァァァァアアアア!!!」


 ――ドシィィィィィン……。


 断末魔とはこの事を言うのだろう。
 そう思えるほどの咆哮を上げ、千剣竜――サウザンドドラゴンは地に伏した。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ」


 息を整えつつ、恐る恐る近づく。みんなも無言だ。
 魔法の鞄から解体用のナイフを取り出し、剣鱗の隙間に突き刺してみた。


 ――サクッ


 ……斬れた。


 武器でない解体ナイフで傷がつく……つまりこれは″死んだ″という事だ。

 と、言う事は……。


「よっしゃああああああああ!!! 勝ったあああああ!!! 終わったあああああ!!!」


 両手を突き上げ、そのまま後ろに大の字に倒れた。
 やっと終わった。達成感、安堵感、色々とあるがとにかく疲れたとしか言えない。

 おそらく四時間くらい戦った。『クリハン』でもこれほど長時間戦った事はない。よく集中力がもったもんだと自分を褒めたい。

 四時間というのを長いと見るか短いと見るか。
 私としては当初「毒ダメだけなら丸一日掛かってもおかしくない」というつもりでいた。それに比べれば断然短いだろう。

 しかし実際にこうして戦ってみれば間違いなく「長い」と言い切れる。
 毒ってからどんだけ斬ったと思ってるんだ。顔とか傷だらけだぞ?
 ドラゴンとかタフ過ぎるわ、マジで。もう二度と戦いたくない。


「ピーゾンさん!」「ピーゾンちゃん!」「ピーゾン様!」「ピーゾンさん! やりましたわね!」


 次々に覆いかぶさって来る。おぅふ、重いわ!
 でもみんなとても嬉しそうだ。これだけはしゃいでいるのを見れば、どれだけ辛い戦いだったのかよく分かる。


 一人かぶさって来ないで、淡々とBBQの用意を始めている食欲魔人が居るが。

 え、もう食うの? ってか食えるの? なんかすごい固そうだけど。
 ああ、チャレンジすると。そうかい。もう私には止める元気もないよ、うん。


 私は大の字に寝続け、周りにはみんなが座る。
 横絶える千剣竜を見て、ぼーっと余韻に浸っているみたいだ。
 出来ればこのまま目をつむって、朝までこうしていたい。


 ……とは言えないのが辛い所だね。やらなきゃいけない事は多い。

 この状態のまま会議にして、それから動こうか。


「とりあえずサフィーは『言葉送りの護符』で連絡入れておいてくれる? 終わったよって。多分おっさんからある程度聞いてるはずだから術者の事は言わないでいいと思うけど」

「分かりましたわ」


 これでロートレク爺さんから国王とかにも話が行くだろう。
 スタンピードを画策していたと思われる魔物使いの集団、その切り札であろうドラゴンとAランクの魔物各種を全て討伐したと。

 あ、本当に全部倒したのか確認しないと。今さらだけど。

 気になるのはグラトニースライムだ。縮んで動かなくなったけど、あれが死んでるのか分からない。
 どうやって確かめればいいんだ?
 下手に近づいたり触ったりすると、溶かされたり吸収されそうで怖いんだが。


「私が範囲ギリギリで踊りましょうか。敵性存在なら結界からはじかれるはずですし」

「おお、なるほど。んじゃお願い」


 泡姫無双再び。やっぱチートだわこれ。
 結局<泡姫の舞>の結果、死んでると立証出来た。
 死体の状態のものはスライムゼリーと魔石だけ。つまりはただの素材だ。
 グラトニースライムの素材なんて貴重も貴重らしいので、是が非でも回収したいところだ。

 というか千剣竜も含め、回収しなければいけないものが多すぎるし、マリリンさん製の魔法の鞄を総動員しても入りきらない。

 かと言って捨て置くには勿体なさすぎる。
 この盆地の魔物だけでも相当だが、途中で倒したエルダートレントやミスリルゴーレムも回収したい。


「ネルトとソプラノに頑張ってもらうしかないか……」

「ん?」「私ですか?」


 <ロングジャンプ>運送と、MPタンクだね。
 全員の魔法の鞄を使っても十往復じゃ効かないだろうし、MPポーションも足りなくなる。
 だからソプラノには<マジックヒールバブル>も使ってもらいつつ運用する感じかな。


「ん。お肉いっぱいお土産できればいい」

「私も問題ないですよ。解体しようにもお邪魔になるだけですし」

「ピーゾン様、転移で運ぶにしても場所はどうするのですか? 何度も転移するとなれば見られるわけにもいきませんし、かと言って街から離れるとまた運搬が厳しいです」

「相当広い場所じゃないと置けなさそうですしね……」


 うん。だから明日おっさんと合流して相談しようと思うんだよ。
 例えば王城の庭とかにブックマークさせてもらって、そこに運び入れるとかね。
 国王だったら<ロングジャンプ>の事も知ってるだろうし、そこにおっさん――管理局が絡んでくれれば問題ないだろうし。

 んで、素材の処理はそれこそ国王や騎士団とかに任せる。
 冒険者ギルドに運んで貰ってもいいし、王城で保管しておきたい素材とかあれば売るし、まぁ多少はあげちゃってもいいけど。
 こっちは一応ギルドの依頼で動いているからね。筋は通したい。


 と言うか、<ロングジャンプ>を使えるとなれば、だ。


「私は一刻も早く神殿に行きたい!」


 ガバッと身体を起こし、私はそう力強く宣言した。

 そう。私が延々と集中力を保って戦い続けていたのは、ひとえに「これが終われば神殿に行ける!」と考えていたからだ。

 依頼がどうとか、帝国の組織がどうとか関係ない。神殿に行く為に戦っていたのだ。

 ……いや、ファストン村を守りたいってのが第一だけどね。


 私のステータスは現在こんな感じになっている。


―――――
名前:ピーゾン
職業:毒殺屋Lv50【MAX】【転職可能】
―――――


 エルダートレントの辺りからずっとこの状態なのだ。
 Lv50でMAXらしいので、それ以降の戦いは全て経験値のムダという事になる。

 ジョブによっては50がMAXじゃない場合もあるらしく、固有職ユニークジョブである以上、【毒殺屋】がどうなのかは誰も分からなかったわけだが、どうやら一般的と言えるLv50MAXだったらしい。


 し・か・も・だ!

 転職が可能と言う事は、だ! ようやく【毒殺屋】とかいう物騒すぎるジョブから解放されるという事なのだ!

 苦節……数ヶ月だけだけど! 私は待ちに待っていたのだ!
 やっと! やっと【毒殺屋】じゃなくなる! こんなに嬉しい事はない!


 ちなみに私が最初にLv50MAXになったが、他の五人も同様にLv50がMAXだったようで、全員が転職可能の状態だ。
 さすがにこれだけAランクやらドラゴンやら倒せば、そりゃ50に行きますわな。

 固有職ユニークジョブの六人共がLv上限が50だったのも驚きだが、全員が上位派生出来るというのも意外だった。
 転職出来ないジョブもあるって聞くし、世界に一つの固有職ユニークジョブなのだから数名は転職不可でもおかしくはないと、勝手にそう思っていた。
 蓋を開ければ全員仲良く転職可能と。素晴らしい。


 で、転職に関しては『職決めの儀』と同じように起神殿で神官さんにお願いする必要がある。
 ソプラノじゃ無理らしい。だから神殿に行かないといけない。


 さすがに今日はもう疲れたので帰って寝たいが、明日おっさんを迎えに王都に行くのであれば神殿にも行きたいと思っている。
 私的には最優先事項なのだ。


 と言うか、ガメオウ山からファストン村付近の魔物を間引く必要があるからね。
 ヤツらが操ってた魔物だって残ってるかもしれないし、元々ガメオウ山山頂に居たトロールとかが山を下りてる状態だから。

 さすがに放っておくわけにはいかないし、そこで得られる経験値は今度こそ無駄にしたくない。
 間引きついでに新しいジョブの経験値になってもらおう。


 とは言え、素材のピストン運送も優先させなきゃいけないだろうから、そこら辺はおっさんと合流してから相談なんだけど。


「ギルドに報告もしないとダメですよね」

「少なくともオーフェンには必要でしょう。王都にはアローク様経由のお話が行ってそうですが。それとファストン村にも」

「今日は<ロングジャンプ>でファストン村に帰るからそこで話せばいいでしょ。オーフェンはどうしたものか……というか今日はもう眠りたいんだけど」

「ですね。しかし村の皆さんは心配なさっているでしょうし、しないわけにもいきませんよ」

「だね。じゃあもうちょっとだけ気合い入れて働きますか」

「ん? ドラゴン肉食べないの? もぐもぐ」


 よく食えるなお前は。匂いで分かってたけどね。勝手に焼いて食ってるって。こっちは疲労困憊で……え? くれるの? ああ、どうもどうも、もぐもぐ……うん、固いけどめちゃくちゃ旨いなこれ。すごいなこれ。さすがドラゴンだな。もぐもぐ。


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