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最終章 毒娘、故郷の為に戦う
152:疲れていても報告しないわけにはいきません
しおりを挟むネルトの焼き肉ついでに千剣竜の腕一本を分割してみんなの魔法の鞄に入れた。
これはファストン村へのお土産だ。
みんな辛い思いをしてきたんだから、朗報のついでに美味しいものを食べてもらいたいしね。
そんなわけで<ロングジャンプ>発動。
到着したのはファストン村から森に少し入った地点だ。
少し歩けば見えてくるのは土壁に囲まれた、未だ見慣れぬ我が故郷。
堀のない北側の門には松明が焚かれ、騎士団が警戒しているのが分かった。
「ああっ! 殿下! 皆さん! よくぞご無事で!」
北門の警備をしていた騎士団の中に近衛騎士さんたちも混じっていたらしい。
私たちに気付いて走って来たのはファイネルさんだ。ちょうど良かった。探す手間が省けた。
しかし近づくなり、私たちの様子を見て驚いている。
「ど、どうしたのですか!? 装備がこんなにボロボロになるなんて……ガメオウ山はそれほどの危険地帯だと!? やはり我々も――」
「いえいえ、もう大丈夫ですんで。問題は解決しましたから」
「えっ」
「えっと、とりあえず報告したいんですけど、昨晩の会議のメンバー集められますかね? 夜遅いから集まれる人だけでいいんですけど」
「は、はぁ、有事ですので集めるのは問題ないかと思います。では私が先に村長宅に言ってきます」
仕事熱心なファイネルさんはリーナに簡礼するとそのまま村長さんの家に駆けていった。
私たちも後を追う。
さすがに村を歩いても寝ている人ばかりだろう。誰に会うという事もない。
すんなりと村長さんの家へと着いた。
村長さんも起きていてくれたらしく、近くでテントを張っていたモーブビィさんとガルティーノさんも居てくれた。
騎士団のエッティ分隊長さんとファイネルさんもすでに居る。
ショーンさんは居ないね。家が離れてるからね。まぁ居なくても問題ないでしょう。
「それでどうしたんじゃピーゾン。その恰好は……」
「お前らがその様とか信じられねえんだが……何と戦えばそんなになんだよ……」
動物モフモフ装備が酷い事になってるからね。明るい所で見ると余計に引くらしい。
村長さんは心配してるし、ガルティーノさんは私たちの事を相変わらず過大評価しているようだ。
まぁネルトやソプラノはともかく、他は酷いからね。
私はサンダーライガーに放電されたくらいだけど、他の三人は酷い。
サンダーライガー、フレスベルグ、ケルベロス、マンティコア、千剣竜が主な犯人です。
それはともかく疲れてるからさっさと報告をしたいんだよ。
「えっとですね、まず今回の魔物増加騒動の原因は、おそらく帝国の組織と思われる魔物使いの集団によるものでした」
『はあ!?』
「その犯人、六名については捕縛の上、すでに王都に送りましたので安心して下さい」
「ちょ、ちょっと待て! 全く分からん!」
えー、詳しく話すと長くなるんだけど……と、そうも言えないか。報告は私の役目だ。
私たちがガメオウ山に向かうと、明らかに人為的な罠と見られる魔物の群れと遭遇した。
そこから、今回の騒動自体が人為的なものであると判断。
魔物を操る固有職の集団の影がちらついてきた。
「だから元々ガメオウ山に生息していなかった魔物が出てたってわけか?」
「あのトレントやゴーレムか」
「他の場所から連れて来たのか、この地で造ったのかは分かりませんけどね」
二度の罠と、その他にも戦った魔物の種類(ガメオウ山に生息していなかった魔物の種類)から、相手方の陣容を何となく掴みつつ登山を進めた。
で、八合目辺りまで行ったら、アジトの入口みたいな所があって、そこでもまた罠。
敵方の最高戦力と見られる魔物と戦うはめになった。
「最高戦力ってどんな魔物が居たんだ?」
「えーと、グリフォンと」
『グリフォン!?』
「ユグドレントと、クリスタルゴーレムと、グラトニースライムと」
『はあっ!?』
「ケルベロス、フェンリル、マンティコア……」
『…………』
「んで、最後がサウザンドドラゴンでした」
『ド、ドラゴン!?』
皆さん頭を抱えていたり放心状態だったり心ここにあらずという感じ。
だよね。私も言っててなんか変な感じだったよ。
これ一つのパーティーが一日で倒していいラインナップじゃないよね。
放心状態から逸早く復帰したのは、やはりファイネルさんとガルティーノさん。
少なからず私たちの実力を知っている人たちだ。
「はぁ……ともかく本当にご無事で何よりです。殿下の身に何かあれば私も他人事ではなかったでしょうし……」
「お前らもうSランクにしてもらった方がいいぜ? Aランククランでも倒せるわけねえよ」
リーナを危険な目に合わせた事については私が謝るしかない。リーダーとして。
それとSランクとか無理に決まってるでしょう。英雄級じゃん。私たち新人ですよ?
「その、ドラゴン含め、全て討伐したという事でよろしいのですか?」
「はい。あ、ドラゴン肉お土産に持って帰って来たんで、皆さんや村のみんなで分けて下さい。美味しかったですから」
「はぁ~そんな軽く言うんじゃねーよ。どこにドラゴン狩って肉を土産にするヤツが居るんだ。オークじゃねえんだぞ?」
村長さんは未だ放心状態なので、ファイネルさんとガルティーノさんに渡しておく。
みんなの魔法の鞄からドサドサと。「多いな!」と騒がれたが無視だ。村中で分けておくれ。
「ピーゾン殿、それで主犯格の連中を捕らえて王都に送ったというのは?」
「えっと、ファイネルさん、管理局の私たち担当の人って知ってます?」
「ええ、アローク殿ですよね」
おっさんの事は知っているらしい。まぁうちのホームに来てたしね、おっさん。
門番してた近衛騎士さんが知ってるのは当然か。
と言うか元々リーナの護衛で今は管理局の担当なんだから、近衛騎士が知ってないとおかしいよね。
「その人が付いて来てましてね、王都からずっと」
「ええっ!? 私たちの馬車にですか!? さすがアローク殿ですね……全く気付きませんでした……」
「んで、私たちがドラゴンとかと戦ってる隙に捕らえてもらって、王都にも運んでもらいました。例の手段で」
「例の……ああ、なるほど」
ネルトの<ロングジャンプ>の事は知っているはず。だから想像はつくだろう。
まぁ詳しくは知らないだろうけどね。
これで『ここから王都まで転移出来る』と知られたわけだけど、今後の動きも考えると、むしろ知っていて貰わないと困る。特にファイネルさんや一部の人には。
今回ここまで来た事でオーフェンにもファストン村にもブックマーク出来たからね。
王都から<ロングジャンプ>で帰郷、という事もあると思うし、そうした時にホームの門番をしている近衛騎士さんたちには事情を知っていてもらわないと困る。
でないと、「いつの間にかホームから消えていた」という事になっちゃうし。
それでなくてもこれから素材のピストン運送とかしないといけないんで、知っていて貰わないと説明も出来ないし。
「ともかくそんなわけで魔物増加騒動に関しては一応解決したと思います」
「犯人を捕らえたんならそうだろうが、だからって『はい終了』ってわけにもいかねえんじゃねえか?」
「ですね。これ以上増えないってだけで、操っていた魔物の残党も居ると思いますし、トロールとかも山から下りたままです。間引きは継続すべきだと思います。ただ、それがいつまでって言えないから困るんですけど」
ギルドからの依頼で動いている以上、勝手に『依頼完了』とするわけにもいかない。
って言うのが普通なんだけど、今回は災害的な状況の上、リーナもこっちに居るからねぇ。現場判断でも大丈夫そうだけど。
いずれにせよ王都のギルドにはおっさんからの話が行ってるはずだし、オーフェンにどうやって伝えるかは、明日おっさんと合流しての様子だ。
ともかく皆さんにはもうしばらく間引きと警戒を継続してもらいつつ、何か情報が入れば伝えると。
私たちは明日の朝からまた忙しなく動く必要があるので、ファストン村近郊の間引きに関しては当てにしないでくれと。
あと、ドラゴン肉をちゃんと村のみんなに分けてあげてくれと。
そんな事を伝えて私たちは席を立った。
村長さんは放心してたし、モーブビィさんは頭を抱えていたし、エッティさんは固まってたけど、ファイネルさんとガルティーノさんに頼んでおけばいいだろう。
ショーンさんが後から来るか分からないけど、そっちもお任せ。
というわけで今日の仕事はようやく終わりだ。
足取り重く、我が家へと向かう。
「ただいまー」
「えっ、ピーゾン!? 帰って来たの!? こんなに遅くに!?」
「どどどどうしたんだ! ボロボロじゃないか! まさか怪我とか」
「あーあーあー、悪いけど疲れたから寝かせてもらうよ。明日また話すからごめん」
まだ起きていた両親からの過度な心配を何とか抑え込み、私の部屋へ直行。
食事はドラゴン肉食べたし、湯浴みもネルトに<洗浄>やってもらったからいいや、と布団にダイブ。
ちなみに私の部屋は狭いので、ベッドとかも片付けて無理矢理布団を六枚並べてある。
いやこの世界で布団とか言わないけどね。マットと毛布。私的にはこれはもう布団だ。
よほど疲れていたのだろう。適当にダイブしてそこからの記憶はない。
翌朝、一番に目覚めて周りを見れば、みんなちゃんと毛布をかけて静かに眠っていた。
リーナやサフィー、ソプラノはやっぱり疲れていても整えて寝るんだね。
端っこでポロリンも綺麗に寝ている。このコは女子力の塊だから仕方ない。
ネルトは私に抱きついて寝ていた。私はぬいぐるみじゃないぞ。
こっそり起きて食堂に行くと、すでにお父さんは仕込みを始めていた。食堂の朝は早い。
小声で少し話しておこうか。
「おはよー」
「おう、おはよう。もっと寝てるかと思ったんだけどな。疲れた顔してたし」
「あはは、まーね。昨日はさすがにしんどかったよ」
「んで、結局何があったんだ?」
あんまり下手な事を言うと騒ぎになりそうだから、ある程度はぼやかして説明した。
とりあえず今回の騒動が人為的なもので、その犯人を捕らえたからもう大丈夫だよと。
あと村長さんの家にお土産でドラゴン肉を渡しておいたから、みんなに料理してあげてと。
「さっすがピーゾンだな! お前は天才だ!」
お父さんは結局こういう結論になるから、ある意味説明しやすい。
普通、ドラゴン肉を持ってきた=ドラゴンを倒した!? となると思うが、よく聞きもせず「ドラゴン肉とか初めて扱うな! どう料理しようか!」となるのがうちの両親。
助かります。非常に。
ちなみに五人が起きてから朝食を作って貰ったが、それは普通のドラゴン肉を使っていない朝食だった。
ネルトは五人前食べていた。
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