166 / 171
最終章 毒娘、故郷の為に戦う
最終話:物騒すぎる職についたのでやっぱりスローライフは諦めます
しおりを挟むそれから数日後。
サフィーからの情報で、実はお隣のカナーン帝国がジオボルト王国に攻め込もうとしていたらしいと知った。
どうやら王国寄りの街に軍隊を集結させていたらしく、タイミングを見てティンバー大砦に攻撃を仕掛けるつもりだったと。
例の魔物増加騒動――スタンピードを起こして王都まで攻め込むというのはその作戦の一環だったらしく、魔物使い連中からの連絡が途絶えたせいなのか、結局戦争は回避されたらしい。
集めた軍隊は解散となり、帝国は王国に仕掛ける事はなくなった。
つまり戦争を未然に防いだ功労者という事だ、私たちは。ハッハッハ!
いやこんだけ色々と動いてる帝国がこの先も大人しくしているとは思えないけどね。
まーた何かしらやらかしそうで怖い。戦争は嫌だなぁ。
と、そんな事もありつつ、私たちは六人揃って『禁域』に潜っている。
依頼ではないが一月ぶりに間引き作業を再開……というわけではなく、八割方は特訓の為だ。
なにせ全員が転職し上位派生したもんで、ステータスも変われば新しく覚えたスキルなどもある。
ガメオウ山の間引きで色々と試してはみたけど、やっぱり『禁域』の方が魔物は強いし、遭遇頻度も多いから、私たちにとっては戦いやすいんだよね。慣れてるとも言えるけど。
と言うか、ガメオウ山の時は私がムキになって殺戮マシーンと化していたからね。
連携も何もあったもんじゃない。今は反省している。
「やっと受け入れましたか。長かったですね」
「さらにお強くなったのですから何も問題はないと思いますが」
「リーナさん、それはフォローになっていませんわよ? ピーゾンさんには強さよりも大事なものがあるのですわ」
色々と言われているが、私としては【毒殺屋】という物騒すぎる職から解放される事をずっと待ち望んでいただけに、悔しいやら悲しいやら色々と感情が爆発した結果なのだ。
しかしもうどうしようもないので開き直るしかない。
諦めつつ、前を向くしかないからね。
あの時の事を少し説明しよう。
♦
突然神殿に来た私たちに対して神官さんたちはかなり驚いていたが、そこはソプラノが適当にかわし、とにかく転職の依頼をした。
儀式に買って出てくれたのは神殿長さんだった。
やはりソプラノの転職も絡むとなると神官の中でも人を選ぶのだろう。
人払いをし、部屋には神殿長さんと私たち六人、そしてアロークのおっさんのみとなった。
私はメインディッシュなので、まずはソプラノから。
職決めの時と同じように羊皮紙に手を置いて、神託魔法を受けると、記載された職が変化する。
―――――
名前:ソプラノ
職業:泡姫Lv50 → 泡妃Lv1
―――――
姫から妃になった。あわ……き? と読むのか分からない。
そのうち泡后とかになりそうで怖い。
とにかく私が勝手に持っていた変なイメージを払拭出来たのが喜ばしい。
<快活の泡>というスキルも覚えた。これは<癒しの泡>の強化バージョンという感じだ。
今までが【神官】だとすると【大神官】並みの回復魔法が今後可能になるかもしれない。
聖女に相応しい治癒能力を持つ未来が来そうな気がする。
「とりあえず【七色の聖女】は継続出来そうですね」
安堵していたのは神殿長さんだ。
やはり少し危惧していたらしい。聖女じゃなくなる事を。
いやまぁ【泡姫】の時点で聖女とは思えないのだが。
続いてリーナ。
―――――
名前:ダンデリーナ・フォン・ジオボルト
職業:サシミタンポポLv50 → パートタイマーLv1
―――――
どういう事だよ!!! 今までバイトだったのか!?
と心の中で突っ込んだのは私だけだ。
「これは……【サシミタンポポ】の上位なのでしょうか……」
「原型を留めていませんわね。こうした事もあるのですね」
「固有職特有の現象だとは思うけどな」
みんなは【パートタイマー】の意味が分からない。そりゃそうだけどさ。私は頭を抱えたよ。
しかもこの職、恐ろしい事に『時間を操れる』らしい。
覚えたスキルは<速度低下>というものだが、魔物に掛ければ完全にスロウ状態。解体した肉に掛ければタンポポと合わさってほぼ劣化しなくなる。
つまり『対象の時間経過を遅くする』という事らしい。
今後、時間操作に特化したスキルを覚えそうで怖い。<クロックアップ>とか<時間停止>とかね。
そうなれば益々国家機密扱いの存在になるだろう。
こわいわー。パートタイマーこわいわー。
続いてサフィー。
―――――
名前:サフィー・フォン・ストライド
職業:スタイリッシュ忍者Lv50 → 忍者スレイヤーLv1
―――――
アイエエエ! ニンジャ!? ニンジャナンデ!?
忍者から忍者を殺す側になっちゃってるじゃん! と頭を抱えたのはまたも私だけだ。
ちなみに覚えたスキルは<カラテ>である。
これが『空手』なのか、『カラテ』なのか未だ判明していない。今後のアーツで分かるだろう。
仮に『カラテ』だとすると、柔術や骨法から拳銃まで扱えるようになるわけで、そうなるともう今まで以上に器用貧乏が極まった存在になってしまう。
「スタイリッシュではなくなってしまいましたわね……」
と本人は残念そうだが、そういう話ではないのだよ、サフィーくん。
とんでもない危険性を秘めた職なのだよこれは。
ハイクを詠め、カイシャクしてやろう。
続いてネルト。
―――――
名前:ネルト
職業:ニートの魔女Lv50 → ニート魔王Lv1
―――――
魔王!? 魔王になっちゃったの!? でもすごく弱そう!
と言うか女なのに魔王なんだ!? 魔女の上って魔王なんだ!?
「おおー、かっこいい」
と本人はご満悦。魔王はカッコイイけどニートはカッコ悪いと思うよ?
周りは「うわぁ」という顔が数名。管理局のおっさんは扱いに悩んでいる。
得たスキルは<全消費半減>という規格外。さすがです魔王様。
MP消費だけでなく、スタミナや空腹も半減されるらしい。働かない、動かないって事かな?
しかし食事量は変わっていない模様。なぜだ、おい。
続いてポロリン。
―――――
名前:ポロリン
職業:セクシーギャルLv50 → セクシーダイナマイトLv1
―――――
「またセクシー……」
「ハハハハハハハッ!」
「笑わないで下さいよっ! ピーゾンさんっ!」(美少女憤慨ポーズ)
「はぁ、はぁ、まーその、ギャルじゃなくなっただけ良かったじゃん。男に近づいたって事じゃないの?」
「そ、そう、ですかね? いやでもセクシーが……」
もちろんこの世界にダイナマイトなんて存在しないので意味が分かるのは私だけだ。
個人的には【セクシーギャル】以上にセクシーになった印象がある。男を目指しているポロリンには言えないけどね。
覚えたスキルは<爆裂打>という非常に強力な攻撃用スキル。
トンファーでの攻撃と同時に爆発させるイメージ。
超至近距離で爆発させているのになぜかポロリンにダメージがないという不思議。
ともかく本人は喜んでいるので良しとしよう。素材をダメにしそうだけど。
さて、メインディッシュのお時間です。
真打登場。トリをとるのはこの私。
【輝く礁域】のパーティーリーダー、白ウサギこと、ピーゾンさんです!
さあ出でよ、新しき職!
私を毒のない世界へと誘え!
平穏を! スローライフをもたらすのだ!
―――――
名前:ピーゾン
職業:毒殺屋Lv50 → 毒殺屋本店Lv1
―――――
「ぐはぁっ!!!」
…………どどど、毒殺屋本店!? 今まで支店だったの!?
って言うか屋号やめろよ!!! なんとかしろや職業神!!!
―――――
スキル:毒耐性Lv1(New)
―――――
遅えよ!!! 最初に来いよこんなもん!!!
【毒殺屋】のLv1で覚えるべきスキルだろうがよ!!!
このスキルがないせいで死にかけたんだぞ、おいコラ!!!
ああああああああ!!!
なんなんだよこれはよおおおおお!!!
私のスローライフがあああああ!!!
バーカ! バーカ! 職業神のバーカ!!!
~Fin~
1
あなたにおすすめの小説
生きるために逃げだした。幸せになりたい。
白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。
2020/9/19 第一章終了
続きが書け次第また連載再開します。
2021/2/14 第二章開幕
2021/2/28 完結
追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─
石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」
貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。
「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」
かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。
ときどき舞い込んでくるトラブル。
慌ててミーナを探しているルカ。
果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。
甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。
*サイトより転載になります。
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)
わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。
対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。
剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。
よろしくお願いします!
(7/15追記
一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!
(9/9追記
三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン
(11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。
追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる