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最終章 毒娘、故郷の為に戦う
最終話:物騒すぎる職についたのでやっぱりスローライフは諦めます
しおりを挟むそれから数日後。
サフィーからの情報で、実はお隣のカナーン帝国がジオボルト王国に攻め込もうとしていたらしいと知った。
どうやら王国寄りの街に軍隊を集結させていたらしく、タイミングを見てティンバー大砦に攻撃を仕掛けるつもりだったと。
例の魔物増加騒動――スタンピードを起こして王都まで攻め込むというのはその作戦の一環だったらしく、魔物使い連中からの連絡が途絶えたせいなのか、結局戦争は回避されたらしい。
集めた軍隊は解散となり、帝国は王国に仕掛ける事はなくなった。
つまり戦争を未然に防いだ功労者という事だ、私たちは。ハッハッハ!
いやこんだけ色々と動いてる帝国がこの先も大人しくしているとは思えないけどね。
まーた何かしらやらかしそうで怖い。戦争は嫌だなぁ。
と、そんな事もありつつ、私たちは六人揃って『禁域』に潜っている。
依頼ではないが一月ぶりに間引き作業を再開……というわけではなく、八割方は特訓の為だ。
なにせ全員が転職し上位派生したもんで、ステータスも変われば新しく覚えたスキルなどもある。
ガメオウ山の間引きで色々と試してはみたけど、やっぱり『禁域』の方が魔物は強いし、遭遇頻度も多いから、私たちにとっては戦いやすいんだよね。慣れてるとも言えるけど。
と言うか、ガメオウ山の時は私がムキになって殺戮マシーンと化していたからね。
連携も何もあったもんじゃない。今は反省している。
「やっと受け入れましたか。長かったですね」
「さらにお強くなったのですから何も問題はないと思いますが」
「リーナさん、それはフォローになっていませんわよ? ピーゾンさんには強さよりも大事なものがあるのですわ」
色々と言われているが、私としては【毒殺屋】という物騒すぎる職から解放される事をずっと待ち望んでいただけに、悔しいやら悲しいやら色々と感情が爆発した結果なのだ。
しかしもうどうしようもないので開き直るしかない。
諦めつつ、前を向くしかないからね。
あの時の事を少し説明しよう。
♦
突然神殿に来た私たちに対して神官さんたちはかなり驚いていたが、そこはソプラノが適当にかわし、とにかく転職の依頼をした。
儀式に買って出てくれたのは神殿長さんだった。
やはりソプラノの転職も絡むとなると神官の中でも人を選ぶのだろう。
人払いをし、部屋には神殿長さんと私たち六人、そしてアロークのおっさんのみとなった。
私はメインディッシュなので、まずはソプラノから。
職決めの時と同じように羊皮紙に手を置いて、神託魔法を受けると、記載された職が変化する。
―――――
名前:ソプラノ
職業:泡姫Lv50 → 泡妃Lv1
―――――
姫から妃になった。あわ……き? と読むのか分からない。
そのうち泡后とかになりそうで怖い。
とにかく私が勝手に持っていた変なイメージを払拭出来たのが喜ばしい。
<快活の泡>というスキルも覚えた。これは<癒しの泡>の強化バージョンという感じだ。
今までが【神官】だとすると【大神官】並みの回復魔法が今後可能になるかもしれない。
聖女に相応しい治癒能力を持つ未来が来そうな気がする。
「とりあえず【七色の聖女】は継続出来そうですね」
安堵していたのは神殿長さんだ。
やはり少し危惧していたらしい。聖女じゃなくなる事を。
いやまぁ【泡姫】の時点で聖女とは思えないのだが。
続いてリーナ。
―――――
名前:ダンデリーナ・フォン・ジオボルト
職業:サシミタンポポLv50 → パートタイマーLv1
―――――
どういう事だよ!!! 今までバイトだったのか!?
と心の中で突っ込んだのは私だけだ。
「これは……【サシミタンポポ】の上位なのでしょうか……」
「原型を留めていませんわね。こうした事もあるのですね」
「固有職特有の現象だとは思うけどな」
みんなは【パートタイマー】の意味が分からない。そりゃそうだけどさ。私は頭を抱えたよ。
しかもこの職、恐ろしい事に『時間を操れる』らしい。
覚えたスキルは<速度低下>というものだが、魔物に掛ければ完全にスロウ状態。解体した肉に掛ければタンポポと合わさってほぼ劣化しなくなる。
つまり『対象の時間経過を遅くする』という事らしい。
今後、時間操作に特化したスキルを覚えそうで怖い。<クロックアップ>とか<時間停止>とかね。
そうなれば益々国家機密扱いの存在になるだろう。
こわいわー。パートタイマーこわいわー。
続いてサフィー。
―――――
名前:サフィー・フォン・ストライド
職業:スタイリッシュ忍者Lv50 → 忍者スレイヤーLv1
―――――
アイエエエ! ニンジャ!? ニンジャナンデ!?
忍者から忍者を殺す側になっちゃってるじゃん! と頭を抱えたのはまたも私だけだ。
ちなみに覚えたスキルは<カラテ>である。
これが『空手』なのか、『カラテ』なのか未だ判明していない。今後のアーツで分かるだろう。
仮に『カラテ』だとすると、柔術や骨法から拳銃まで扱えるようになるわけで、そうなるともう今まで以上に器用貧乏が極まった存在になってしまう。
「スタイリッシュではなくなってしまいましたわね……」
と本人は残念そうだが、そういう話ではないのだよ、サフィーくん。
とんでもない危険性を秘めた職なのだよこれは。
ハイクを詠め、カイシャクしてやろう。
続いてネルト。
―――――
名前:ネルト
職業:ニートの魔女Lv50 → ニート魔王Lv1
―――――
魔王!? 魔王になっちゃったの!? でもすごく弱そう!
と言うか女なのに魔王なんだ!? 魔女の上って魔王なんだ!?
「おおー、かっこいい」
と本人はご満悦。魔王はカッコイイけどニートはカッコ悪いと思うよ?
周りは「うわぁ」という顔が数名。管理局のおっさんは扱いに悩んでいる。
得たスキルは<全消費半減>という規格外。さすがです魔王様。
MP消費だけでなく、スタミナや空腹も半減されるらしい。働かない、動かないって事かな?
しかし食事量は変わっていない模様。なぜだ、おい。
続いてポロリン。
―――――
名前:ポロリン
職業:セクシーギャルLv50 → セクシーダイナマイトLv1
―――――
「またセクシー……」
「ハハハハハハハッ!」
「笑わないで下さいよっ! ピーゾンさんっ!」(美少女憤慨ポーズ)
「はぁ、はぁ、まーその、ギャルじゃなくなっただけ良かったじゃん。男に近づいたって事じゃないの?」
「そ、そう、ですかね? いやでもセクシーが……」
もちろんこの世界にダイナマイトなんて存在しないので意味が分かるのは私だけだ。
個人的には【セクシーギャル】以上にセクシーになった印象がある。男を目指しているポロリンには言えないけどね。
覚えたスキルは<爆裂打>という非常に強力な攻撃用スキル。
トンファーでの攻撃と同時に爆発させるイメージ。
超至近距離で爆発させているのになぜかポロリンにダメージがないという不思議。
ともかく本人は喜んでいるので良しとしよう。素材をダメにしそうだけど。
さて、メインディッシュのお時間です。
真打登場。トリをとるのはこの私。
【輝く礁域】のパーティーリーダー、白ウサギこと、ピーゾンさんです!
さあ出でよ、新しき職!
私を毒のない世界へと誘え!
平穏を! スローライフをもたらすのだ!
―――――
名前:ピーゾン
職業:毒殺屋Lv50 → 毒殺屋本店Lv1
―――――
「ぐはぁっ!!!」
…………どどど、毒殺屋本店!? 今まで支店だったの!?
って言うか屋号やめろよ!!! なんとかしろや職業神!!!
―――――
スキル:毒耐性Lv1(New)
―――――
遅えよ!!! 最初に来いよこんなもん!!!
【毒殺屋】のLv1で覚えるべきスキルだろうがよ!!!
このスキルがないせいで死にかけたんだぞ、おいコラ!!!
ああああああああ!!!
なんなんだよこれはよおおおおお!!!
私のスローライフがあああああ!!!
バーカ! バーカ! 職業神のバーカ!!!
~Fin~
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