ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

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after1:あれから7年後の今

1-1:はじめての王都

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■プレリス 【重魔導士】 10歳


「うっわぁ……」


 生まれ育った街を出て、初めて訪れた王都セントリオ。見るからに『都会』な雰囲気に圧倒される。

 道も建物も綺麗だし整っている。
 人通りも多く、その人たちの服装も何となくオシャレだ。
 白っぽいピンクとか、水色とか、こんな色使いの服は王都ならではなのだろう。


 そんな華やかな景色に少しの興奮と、一人都会へ来たという不安が入り混じる。

 来たくて来たわけじゃない。
 親元を離れるつもりなんてなかった。
 実家の本屋で、本に囲まれた生活をしていたかった。
 賑わう街並みと反比例するように、私の心は暗いままだ。


『職決めの儀』で固有職ユニークジョブに就いてしまったのが運の尽きだ。
 確かに世界で一人のジョブとか特別感があるし、国からも生活を保障され、将来は約束されていると言う。
 世間的には喜ばしい事なのだろう。でも私には不安しかない。

 訳の分からないジョブに就き、誰も知らないスキルを得た。それが怖い。

 王都に伝手があるわけでもないし、ここで五年も生活するとなれば私の中では二択しかない。
 職業専門学校に行った方が良いのか、戦闘職だからと冒険者になるべきなのか。

 そもそも私自身が自分のジョブやスキルを理解出来ていないので判断のしようがないのだ。理解しようにも試すのも怖いし。


 と、そんな事を考えつつ、ブツブツと呟きながら歩く。
 大都会の大通りを、地面を見ながら歩く田舎娘。
 また「勉強バカ」だの「根暗」だの「本しか友達がいない」だの言われそうだなぁとさらに陰鬱な気分になる。

 私から言わせると周りの同年代の子供がバカみたいに幼すぎるのだ。本も読まずに遊んでばかり。
 まぁそれくらい単純な子供であったなら、私もこんなに悩んでいないんだろうけど。


 そんな調子で王都の中央にある冒険者ギルドにやって来た。
 王都に来るにあたって身分証代わりに地元の街で登録しておいたのだ。別に冒険者になると決めたつもりではないが。

 ギルドの中はさすが王都支部といった感じで賑わっているし、とても大きい。
 ここでもカラフルな色合いの装備が目につくが、中には動物を模したローブを羽織ってる人もチラホラ。さすが王都と言うべきか、田舎者には理解出来ないセンスだ。

 私は登録窓口へと行き、拠点変更手続きをする。ついでに相談。


「なるほど、本格的に冒険者となるか、それとも学校に行くべきか悩んでいると。管理局の方とお会いした事は?」

「いえまだです。管理局に行って相談すればいいですかね?」

「そうですね……うーん……」


 受付嬢さんは何やら思案顔だ。
 やっぱり冒険者になるかどうかも分からないような小娘だから扱いに困るのだろうか。


「あっ、ミルローゼさーん!」


 受付嬢さんはホール内に居た人を見つけて呼んだ。
 そのミルローゼという人が来る……が、すごくカッコイイ大人の女性だ。
 神官のような剣士のような装備。背も高くてキリッとした美人。まるで物語に出て来そうな人だ。
 やっぱ王都にはこういう人が居るんだなぁ……。


「どうしたんだ?」

「すいません、ミルローゼさん。この子なんですけど――」


 受付嬢さんは、私が進路について悩んでいる事をミルローゼさんに説明した。
 私が固有職ユニークジョブという事も伝えていて「えっ、秘匿するんじゃないの!?」と思ったが、どうやらミルローゼさんも固有職ユニークジョブらしい。
 固有職ユニークジョブの先達としてアドバイスしてくれる上に、私の事は内緒にすると約束してくれた。

 こんなに綺麗な人なのに私みたいな小娘に対して真摯に接してくれる。
 王都はもっと怖い所かと思っていたけど、早速良い人に出会えたようだ。運が良かったと思おう。


 酒場スペースで話すのも何だからと、二階の個室へと案内された。固有職ユニークジョブだから気を使ってくれたのだろう。
 私はミルローゼさんの向かいのソファーに腰掛ける。


「じゃあ改めて、私は固有職ユニークジョブのみを集めた【唯一絶対ザ・ワン】というクランのマスターを務めている、Aランクのミルローゼだ」

「え、Aランク!? ですか!?」


 思っていた以上にとんでもない人だった。
 詳しくはないけど、いくら王都だからってAランクの冒険者は数える程度しか居ないのではないか。
 そんなすごい人に相談なんて大丈夫なんだろうか……。


「私は管理局でもなければギルド職員でもない。ただの冒険者だ。だから言いたくない事は言う必要はない」


 こちらに気を使って、そう言ってくれる。
 本当は固有職ユニークジョブの情報って他人に言っちゃダメなんだろうけど、他に相談できる人なんて居ないし、私にとってミルローゼさんは天上人のような存在だ。
 だから私のジョブやスキルに関しても全てお話しした。

 と言っても私自身、よく分かっていない。
 ジョブもそうだし、スキルにしても<生活魔法>と<杖術>はいいとしても<重魔法>というのが未知の属性すぎて分からない。「重い魔法って何?」という状態だ。
 ジョブの名前からして、この魔法属性が重要なのだとは思うけど……。

 やたら使うのも怖くて、まずは相談してから試そうと思っていた。
 分かっているのは一般職に比べて【魔力】が高いし、<杖術>を持っているからおそらく戦闘職なのだろうという事くらい。

 まぁ【魔導士】っていうのが【魔法使い】の上位派生職だから間違いないとは思っている。だから冒険者ギルドも登録できたわけだし。戦った事はないけど。


 ミルローゼさんにはそういった事を余すところなく伝えた。
 固有職ユニークジョブのAランク冒険者なのだから、これ以上に信用出来そうな人など居ないだろうと。都会はやっぱり怖いし。

 ミルローゼさんは口元に手を当てつつ、私の話を聞いていた。
 何やら悩んでいるらしく、キリッとした顔もさらに険しく見える。


「なるほどな。それで君は学校に行くべきか、冒険者になるべきか悩んでいると。指針を得る為に管理局に相談しようか、という所なわけだ」

「はい」

「こう言っては何だが非常に慎重だな。普通、十歳の新人となればもっと軽く考えるものだ。その結果、危険な目にあったりもするので先達の身としては君のような考え方は嬉しくもある」


 やっぱり他の子とは違うらしい。私は子供っぽくないってよく言われるから。
 でもミルローゼさんはそんな私を褒めてくれた。
 同じ固有職ユニークジョブの人に共感してもらうのは本当に嬉しい。


「仮に職業専門学校に入ったとすれば学問と戦闘技術を学びつつ、専門の教諭によってジョブとスキルを調べていく事になるだろう。それでどのような結果になろうとも生活自体は問題なく出来るはずだ」

「はい」

「一方で冒険者になるとすれば、君の場合、私のクラン【唯一絶対ザ・ワン】に入る事をお勧めする。私を含めクランメンバーが君のジョブとスキルを一緒に考察しながら戦えるようにする、という事だな」

「で、でも、私、戦えるかどうか……」

「もちろん最初は下働きからだ。冒険者の依頼もFランクのお手伝い系依頼が中心になるだろう。しばらくは考察と特訓に費やし、戦えると分かってから討伐系依頼に同行が許される……という形でやっているな、うちのクランは」


 どちらも手厚い対応に思える。王都に何も頼る所がない私にとっては好待遇に違いない。
 親切すぎて逆に怖い気もする。五年間は王都に居なきゃいけないから、そこまで含めて考えないといけない。


「ソロの冒険者や友達同士で組むのは、君の場合、あまりお勧めしない」

「やっぱり危険だから、ですか?」

「それもあるが、君のジョブとスキルが未知数すぎる。誰かしらに協力してもらいつつ自分のものにしなければ、冒険者として生活出来るほどの稼ぎは見込めないだろう」


 やっぱり私の【重魔導士】というのはミルローゼさんにしても『特殊』らしい。
 【魔導士】なのだから魔法を使って戦うのだろうが、その魔法が<重魔法>という訳の分からないものだから困る。

 ミルローゼさん曰く、管理局に行っても学校に行ってもミルローゼさんのクランに入っても、そこを調べる所から始まるそうだ。
 そしてそれだけで、おそらく一年以上掛かるだろうと。

 私としても自分の能力を早く知りたい気持ちはある。

 自分がこの先どんな道に行くのか、『職決めの儀』をした後なのに決める事が出来ないもどかしさ。
 それを解決したいと思う反面、ミルローゼさんでも「時間が掛かる」というくらい意味不明なジョブなのか、と自分の事ながらにげんなりした。
 数の少ない固有職ユニークジョブの中でも、さらに訳の分からないものを引き当ててしまったのかと。


 どうしたものかと悩みつつ、ここまで親身になって考えてくれるミルローゼさんのクランにお世話になった方がいいのでは? という考えに天秤が傾き始めた。
 良くして頂いて、さらに甘える感じになってしまうが、私に頼れる選択肢がない。

 しかしミルローゼさんはそんな私に提案する。


「……君さえ良ければ、だが『相談所』に行ってみるか? 私と共に」

「相談所?」

固有職ユニークジョブ専門の相談所があるのだ。一応管理局と同等の扱いになっている」


 固有職ユニークジョブ専門の相談所!? そんなのがあるの!?
 さすが全国から固有職ユニークジョブが集まる王都と言うべきか……。

 でもそんなのがあるなら、受付嬢さんもミルローゼさんも先に教えてくれればいいのに……。


「本来は王都に少しの間、滞在してから行った方が精神的ダメージが……ゴホン、その、色々と下調べを行った上で訪れるべきだとは思うのだが、君の場合は早めに相談に行くべきかと思ったのだ」


 え、なんか不穏な言葉が聞こえたんだけど……。
 つまり王都に少し住んでからじゃないと行かない方が良いって事? 相談所なのに?
 どういう事なの……?


 少し考えさせられたが、結局はミルローゼさんに連れて行ってもらう事になった。
 ここまで相談してもらったミルローゼさんにも申し訳ないし、聞けば管理局に相談に行っても、同じ場所を紹介される可能性が高いと言う。
 だったらミルローゼさんに付いて行った方がいい。

 その相談所はギルドを出て大通りを少し歩けば、すぐに着く場所にあるそうだ。
 歩きながらミルローゼさんと少し話す。


「あの、王都に来てから気になってたんですけど、チラホラ居る動物の外套を着た人たちは……」

「ああ、王都で少し流行っているんだがな。ああ見えて魔装具なんだ。着ているのはほとんど冒険者だよ」

「えっ、魔装具!?」

「これから行く相談所に諸悪の根源が居るんだが……(小声)」


 ミルローゼさんはどこか苦々しい表情で教えてくれた。
 装備に動物の装飾は必要ないと思うんだけど……やっぱり王都の価値観は田舎娘には難しい。
 こんな私でも本当に住めるものなのだろうか。また少し不安になった。


 そうこうしているうちに、目的地に着いた。
 通りから一本入った枝道。でも中央区だから当然道は広い。
 大きな商店とか高い建物が並ぶ中、違和感を覚えるような貴族邸宅があった。

 通り沿いにある鉄柵の門からお屋敷へと続く庭園に、ポツンと小屋が建っている。
 まるでそこだけ地元の雑貨屋を思い出させるような、妙な建屋。
 どうやらそこが目的地らしい。

 小屋の扉の脇には『固有職ユニークジョブ専門相談所 ホワイトラビット』とあった。


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