カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

文字の大きさ
10 / 421
第一章 黒の主、世界に降り立つ

10:忌み子の白狼

しおりを挟む


■サリュ 狼人族ウェルフィン 女
■15歳 アルビノ


 狼人族ウェルフィンという種族は獣系の種族の中でも戦闘向きだと言われています。
 力があり、速さがあり、連携を得意とする。
 いわゆる近接戦闘を旨とし、幼い頃から剣などの扱いを仕込まれます。


 私はそんな集落の中にあって「忌み子」と呼ばれています。

『白き狼人族ウェルフィンは厄災をもたらす』

 集落に昔から伝わるものです。
 何度、村長である祖父から言われたか分かりません。

 狼人族ウェルフィンは近接戦闘が得意なはずのに、私は魔法しか使えません。
 逆に強化魔法以外を使う狼人族ウェルフィンは居ない為、余計に「異物」として見られます。
 忌み子の白狼は戦えず、魔法を使って厄災を招くと。

 この年齢まで村に居られたのは、父親が村長の子供だというそれだけの理由です。
 祖父は私を捨てたかったらしいですが、両親が食い止めてくれていました。
 村の中で、私を守ってくれたのは両親だけでした。


 しかしその両親も先日、魔物に殺されたのです。
 少し村の外に出た時、普段は現れないオークの群れに襲われました。
 父は一人で立ち向かい、私と母を村に逃がそうとしました。
 母は村の手前で、飛んで来た槍に貫かれ死にました。
 生き残ったのは私だけです。

 当然のように私が責められました。

「お前がいたから襲われた」「お前が代わりに死ねば良かった」「お前が殺したんだ」「お前はやはり忌み子だ」「居るだけで厄災を呼び寄せる」

 祖父だけでなく村中から言われました。


 私は泣くことしか出来ませんでした。
 唯一味方だった両親を目の前で失った悲しみ。
 何も出来なかった自分への悔しさ。
 責め立てて来る祖父や集落の人たち。
 どれも辛くて、ただ泣いていました。


「お前は次に来る行商人に奴隷として売り払う! もうこの村に置いておくわけにはいかん! 今まで世話してやった恩を忘れるな! 逃げるんじゃないぞ!」


 祖父からそう一方的に言われました。
 それでも私は泣く事しかできませんでした。
 奴隷となる。それでこの村から離れられるのならばそれでも良いのかもしれない、そう思いました。

 しかし、その翌日のことです。

 村にオークの群れが襲ってきました。
 方向的に私の両親を殺したオークたちと同じ群れだと思います。
 その群れを制していたのはオークキング。
 どこから集めたのか百体近くのオークを引き連れて、村を襲撃してきたのです。

 いつもならこれも私のせいにされるでしょう。
 忌み子が呼び寄せた厄災だと。
 しかしそんな事も出来ないまま、人々は慌ただしくしていました。

 いくら戦闘適正のある狼人族ウェルフィンと言えども百体のオークは倒せません。
 ましてやオークキングに敵う者など村にはいません。
 男衆は壁際で食い止め、戦えない女衆などは逃げ惑っていました。

 私はそれを鍵を掛けられた小屋の窓から見つめるだけでした。
 逃げられないように閉じ込められていたのです。
 何かが叩きつけられる音、同族の悲鳴、そういったものを耳を塞ぎながら蹲ることしかできません。


 どれほど経ったでしょうか。
 男衆の断末魔、連れ去られたであろう女衆の悲鳴、その声がなくなりました。
 代わりにオークたちの声が大きく聞こえるのみになりました。
 ただ騒いでいる声ではありません。
 それこそ断末魔のような叫びが次々に聞こえるのです。

 狼人族ウェルフィンはもう全滅したはず。
 なのに、誰かがオークを倒している?
 様子を知りたいけれど、怖くて窓に近づけません。小屋の隅で蹲るだけです。


「ブルルルオオオオオ!!!!」


 一際大きい断末魔―――おそらくオークキングが倒された声でしょう。
 一体何が起こったのか。
 私はついに窓に近づき、その目で見たのです。

 オークキングの巨躯から細身の剣を抜く男の姿。
 髪も瞳も服も剣も、全てが黒い―――基人族ヒュームの男性でした。
 見たのは初めてですが基人族ヒュームが戦えない種族だという事は知っています。
 だからこそ目を奪われたのです。
 狼人族ウェルフィンの誰もが倒せなかったオークキングを倒した基人族ヒュームの男性に。


 戦闘が終わった男性に近づいてきたのは武器を持った二人のメイドさん。
 多肢族リームズ鬼人族サイアンの女性です。
 鬼人族サイアンはともかく多肢族リームズも戦えない種族だったはずです。
 しかし様子を見るに、基人族ヒュームの男性と共にオークと戦っていたのでしょう。

 私は今まで戦えない自分の事を諦めていました。
 魔法しか使えない白い狼人族ウェルフィン
 集落で一番弱い忌み子。

 私は彼らの姿に打ちのめされた気がしたのです。
 戦えないと諦めていただけではないのか。
 戦う術を持っていれば両親を救えたのではないか。
 村中から虐げられることもなかったのではないか。
 そうしてまた涙が流れるのです。


「オークは倒した! 誰か生き残りはいないか!」


 その言葉に私は窓から声を出しました。泣き声で、ここに居ますと。
 小屋の鍵を開けられ、外へと出してくれたのは基人族ヒュームの男性でした。


「もう大丈夫だ」


 そう言ってくれた彼は真っ黒なのにとても暖かく、基人族ヒュームなのに頼りがいを感じました。

 どうやら私以外に生き残りは居ないようです。
 連れ去られた女衆がいたはずですが、それがどこに行ったのか、本当に連れ去られたのかさえ分かりません。


「じゃあ村の人たちを集めて墓をつくるか」

「……墓……ですか」

「どうした? 狼人族ウェルフィンは供養とかしないのか?」


 私は彼にこれまでの境遇を吐露してしまいました。
 虐げられていた事、両親を亡くしたこと、自分が厄災を呼ぶ忌み子だという事。
 正直、私は村のみんなが好きではありませんでした。
 彼らが死んで尚、墓を作って埋葬してあげようとは思えなかったのです。
 そんな自分の非情さをも吐露しました。


「そうか」


 彼は一言、そう言うと泣いて俯く私の頭をなでます。
 それは両親以外では初めての温かみでした。
 そして彼は続けます。


「俺の生まれたところでは白狼ってのは忌み子どころか″神の使い″って言われてた。神聖な存在だってな」


 だからお前は悪くない。彼はそう言って私が泣き止むまで頭を撫で続けてくれました。

 メイドさんのお二人も私を慰めてくれました。
 聞けば彼女たちも似たような境遇だったと言うことです。
 そして主人である彼に助けられたと。


「サリュ、あなたはこれからどうするのですか?」


 エメリーさんと仰る多肢族リームズのメイドさんにそう聞かれました。
 私は奴隷として売られるはずだった。
 村が全滅しそれも消えた。
 しかしどこへ行き、何をすればいいのか私には全く分かりません。


「ではあなたも私たちと一緒にご主人様の奴隷になってみませんか?」

「そうだな、私も賛成する」

「えっ、ちょっ」


 お二人の提案は、彼の奴隷となる事。
 本来嘆くはずのその提案は、私にとってなぜか光明に思えました。
 閉じたはずの未来が拓けた気がしたのです。
 当のご主人様はなぜか当惑されていた様子でしたが。

 それから話し合いを行い、私はご主人様の奴隷兼侍女とさせて頂くことになりました。
 ろくに戦えない事を不安に思いましたが、御三方曰く、それは問題ないそうです。
 私を戦えるように特訓して下さるのでしょうか。
 それは私も望む事、嬉しいお話でした。


「じゃあサリュ、本当にこの村に未練はないんだな? 悔いはないな?」

「はい」

「分かった」


 私たちは死んだ村民を一まとめに土に埋め、火を放ちました。
 死体のまま放置すれば魔物を呼び寄せるので、墓を作らずに焼却しようとなったのです。

 それから村中の家を周り、金銭や食料などをかき集めました。
 それを全てご主人様のマジックバッグ―――後から特殊なスキルと聞きました―――に入れました。
 オークの死体も全て入れているそうです。

 私はこれを盗賊だとか、火事場泥棒だと言うつもりはありません。
 食料を放置しておけば腐るだけですし、金銭を残していけば近くの街か領主様にとられるだけです。
 ならばオークを倒したご主人様が貰うべきだと思います。

 こうして何もなくなった村から、私は旅立ちました。
 新たな家族となる御三方と一緒に。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

処理中です...