カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第一章 黒の主、世界に降り立つ

11:狼人族の集落を救え!(手遅れ)

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■セイヤ・シンマ 基人族ヒューム 男
■23歳 転生者


 俺たち三人はアフォードの街を出てボロウリッツ獣帝国領内を北上している。
 俺が基人族ヒュームとして、皆の主人として生きていく為、拠点となる場所はどこがいいのか。
 そんな相談をした。


「やはり基人族ヒューム保護区がある【ウェヌス神聖国】ではありませんか?」

「それは却下」


 ゴミ女神に植え付けられた知識で知ってるよ。
 主教が創世教でヤツを崇めているとこ。
 なんでも『創世の女神の眷属』である天使族アンヘルが治めてて、基人族ヒュームはそこで保護を名目に一纏めにされているらしい。

 それもう保護じゃなくて飼ってるだけだろ、と思ったね。
 実際、この世界じゃ絶滅危惧種なんだろうけどさ、基人族ヒュームは。
 そんな中に他種族の奴隷を連れて行ったらどうなるか、想像もしたくない。


「では【混沌の街 カオテッド】はいかがでしょうか」

「カオテッド? 知らないところだな」

「イブキ、あそこは治安が良くないのでは?」

「確かにそうだが良くも悪くも、力があれば一番人種差別からは遠い場所だと思う」


 聞けばここ十年ほどで出来たばかりの街らしい。
 四つの国にまたがる街なんだとか。
 そんなのありえるのか、と思ったら異例中の異例でありえるらしい。

 迷宮が中心となり国の文化や種族も入り乱れるから、少なくとも国全体・街全体で基人族ヒュームを虐げるような真似はしないだろうと。
 なるほどな。
 エメリーから【エクスマギア魔導王国】という案も出たが、そこへ行くにもカオテッドを経由して行くのが順路との事で、とりあえず北進し、カオテッドを目指すことにした。


 基本的に街道を進むものの、出来れば多くの魔物を狩りたい。CPの為にね。
 というわけで森に入ったり寄り道しながら進んでいる。

 ちなみにエメリーの武器をハルバード二本に変えている。
 ショートソードとバックラーだと、せっかくの四本腕が宝の持ち腐れになっていたのだ。
 剣を三本とか、盾を二枚とかにしてもいいんだが、色々と試した結果ハルバードになった。

 正直、生産職特化の多肢族リームズという種族の【器用さ】を嘗めていた。
 エメリーは戦闘に必要なステータスさえ<カスタム>で確保すれば大抵器用にこなすのだ。
 これには戦闘種族であるイブキも舌を巻いていた。

 ただでさえ扱いの難しいハルバードを左右二本ずつの腕を器用に使い、二槍流をこなす。いや二斧槍流と言った方がいいのか分からないが。
 ともかく柄での防御に加え、突く・斬る・叩くを行える万能ぶりだ。
 さすがに技量的にイブキのほうが強いがそれでも戦闘は問題ないように感じる。


「全てご主人様のお力によるものです」

「いや、俺の<カスタム>でステータスやスキルはいじれても、その人の本質や種族特性は変えられないし、新たにスキルを覚えさせることも出来ない。間違いなくエメリーの力だよ」

「ありがとうございます。これからも精進します」


 そんな感じで順調に魔物狩りを続ける。
 ちなみにエメリーとイブキが倒しても俺にCPが入る事を確認した。
 やはり奴隷は俺の持ち物と見なされるらしい。

 そのくせ正式に奴隷契約を結ばなくても<カスタム>できたんだよなぁ。
 奴隷とはいったい……うごごご、よく分からなくなるね。
 気持ちの問題かな? アバウトだな、それ!


 ともかくそうして旅を続け、そろそろ次の村である狼人族ウェルフィンの集落に着こうかという所だった。

 村から煙が上がっている。
 そしてかすかに聞こえる喧噪。
 何かの異常事態か、すぐに俺たちは行動に移した。


「走るぞ!」

「「はいっ!」」


 集落へと辿り着けばそこはもう阿鼻叫喚。
 オークの群れによって狼人族ウェルフィンたちが蹂躙されている。
 すでにそれも終盤のようで、中心部でオークキングの周りをオークが囲み、狼人族ウェルフィンを喰い出している。宴会だ。

 正直三人だけで正面から突っ込むのは下策も下策だが、それでも集落の入口から順々にオークたちを打ち倒していく。
 俺が先頭、エメリーとイブキは両サイドだ。
 なるべく一撃で、なるべく瞬殺する。

 次第にハイになっていくのが分かる。ゴブリンキングの巣でも同じ感じだった。
 もはやオークが経験値とCPにしか見えん。
 あ、あと肉ね。オーク肉美味いらしいし。

 オークを次々に屠り、オークキングもほとんど一撃で倒した。
 全ては<スキルカスタム>でレベル上げした<剣術>スキルと、規格外の黒い刀のおかげです。
 この刀、<アイテムカスタム>でも強化できないんだよな。すでに上限なんじゃないかと思う。
 何で作られてるのかも分からないし、とりあえずオーパーツだと思っておこう。


 結局一足遅く、村人で残っているのはなぜか閉じ込められていた白狼の狼人族ウェルフィンの女の子だけだった。
 名前はサリュというらしく、汚れているものの非常に綺麗な顔つきと毛並み。
 真っ白でモフモフとか尊いわ。

 聞けばこの娘も理不尽な目にあってきた境遇らしく、なんとなく同情してしまう。
 で、どうやら俺の奴隷になるらしい。
 いや待てエメリー、イブキ、どうしてこうなった。
 サリュとやら、なぜそんな乗り気なんだ。奴隷だよ? 奴隷。意味分かってんのか。

 まぁ確かに可愛くてモフモフで魔法使えるとか夢の物件ですからね、否はないですよ。
 とりあえず次の街で奴隷の正式契約しようって話になりました。
 あと、とりあえず手持ちの侍女服を着せておいた。
 ほんと例の召喚施設の物資には助けられています。召喚してくれてありがとう、蛙の人。

 で、この村の物資も遠慮なく貰います。
 もはや恒例行事みたいになってきた感はある。
 でもこれ有効活用だから。生き残りの住人(サリュ)の許可とってるから。決して犯罪じゃありません。


「今日はこの村で一泊の予定だったんだけど、どうしようか」

「宿でベッドを借りればよろしいのでは? 無断借用になりますが」

「野営よりも安全かと存じます」


 村から出ようと意気込んでいるサリュには悪いけど、出発は明日にしよう。
 殲滅があったばかりの村でちょっとアレだけど、今日は仕方ないな。
 宿屋の厨房借りてオーク肉の焼き肉パーティーでもしようか。


「サリュ、ちなみにこの村に風呂はある?」

「い、いえ、ないと思います」

「だよな。諦めよう」


 期待はしていなかったがしょうがない。
 とりあえず今日は飯食って寝るだけだな。
 いや、その前に<インベントリ>に突っ込んだオークを解体せにゃならん。
 百体近くあるからなー。手分けして終わらせようか。


「エメリーさん、ご主人様は貴族様なのですか?」

「いえ、貴族ではありません。単にお風呂がお好きなだけです」

「は、はぁ……そうなのですか」

「サリュには色々と説明しなければいけない事が多くあります。今日一日でどれだけ教えられるか……」

「そ、そんなにですか」

「私やエメリーでさえ未だに理解できていない部分がある。そういう時は素直にご主人様に質問したほうが良い」

「ご主人様は分からないままで居られるほうが嫌がられます。奴隷であり侍女である私たちがご主人様の意図を汲めない事が問題ではありますが、ご主人様の場合、事情が事情なので理解するまで時間はかかるでしょう」

「は、はぁ」

「それと侍女としての心得も教えなければなりません。とりあえず返事は「はい」です」

「は、はいっ」

「よろしい」


 なんか女性陣が話し合ってるけど、解体手伝ってくれませんかねぇ。
 口もいいけど手を動かして欲しいんですが。

 ……しかしエメリーが侍女長っぽくなってきたな。よし、任せよう。


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