カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第一章 黒の主、世界に降り立つ

17:異端な迷宮探索

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■ミーティア・ユグドラシア 樹人族エルブス 女
■142歳 セイヤの奴隷 『日陰の樹人』


 迷宮という場所は恐ろしいところです。
 道は入り組み、魔物も多く、罠もある。
 少しの油断は即座に死につながる世界です。

 私はそう習いましたし、実際その通りだとも思います。
 しかし迷宮への初挑戦から数日、私たちは毎日楽し気に・・・・探索をしています。


「やっぱ迷宮は魔物の数が段違いだな。集中して多く狩れる」

「ご主人様のおかげで私たちも強くなっているのが実感できています。ありがとうございます」

「いや、お前たちに狩ってもらえれば俺のCPも溜まるんだからお相子だ。正直、山賊狩りが一番効率いいと思ってたが、迷宮のほうがいいかもしれん」

「山賊は数に限りがありますしね」

「発見も困難ですし、人を殺すのは後味が悪いです」

「宝を持っている分、実入りは良いのかもしれないけどな」


 そんな他人や迷宮組合員が聞けば不謹慎だと思われそうな会話をしながら探索をしています。
 弱い魔物でもなるべく多く倒したいので、普通の組合員とは探索方法自体が違います。

 すぐに次の階層に下りるような事はせず、なるべく階層を回り切ってから進む。
 地図でマークされ危険とされている『魔物部屋』も、「CP大量確保のチャンスだ」と嬉々入っていきます。

 私もサリュも最初は面食らいましたが、さすがに数をこなせば慣れてきます。
 それにご主人様の<カスタム>により急激に成長しているのが分かるのです。


「ミーティアは<弓術>はとりあえず据え置きかな。<火魔法>はどうしようか」

「使えるようになれば便利だとは思いますが……」


 私は『日陰の樹人』となった事で、得意だったはずの風魔法を失いました。
 代わりに樹人族エルブスとしては禁忌とも言える火魔法の適正を持ったのです。
 ご主人様にステータスで確認してもらうまでその存在には気付きませんでしたが、火魔法は使ったことがありません。
 まさか樹人族エルブスである自分が火魔法を使えるとは思わず驚いたものです。
 それと同時に呪いによって身体を作り変えられたと改めて思わされました。


「うーん、とりあえず今回はステータスに振るか。【敏捷】でいいか?」

「はい、お任せします。……しかしご主人様は最初の時や悩んだ時には【敏捷】を上げる傾向がおありかと思いますが、何かこだわりが?」

「ああ、こういうステータス振る系ってさ、やっぱ【敏捷】とか【素早さ】とかを上げるのが一番良い、って俺の経験則……いや好みだな」

「そうなのですか? ステータスのお話をお聞きした時、てっきり【攻撃】や【防御】、【魔力】を上げるものだと思ったのですが……」

「【魔力】はともかく【攻撃】【防御】は二の次だな。だって【攻撃】上げなくても【敏捷】上げて攻撃速度を上げれば威力が高くなるだろうし、【防御】上げたところで当たれば痛いんだから【敏捷】あげて回避したほうがいいだろ?」

「なるほど」

「だから攻防共に有利な【敏捷】は最優先。それに【器用】も馬鹿にできない。エメリーやミーティアは特にな。これも攻撃・防御に直結してるから優先的に上げるつもりだ」


 ステータスのお話は複雑で理解するのが非常に難しいです。
 サリュは未だによく分かっていないそうですし、最初にお聞きしたエメリーさんやイブキさんも完全には理解できていないそうです。
 それを理解し<カスタム>を使いこなしているご主人様。
 その叡智は恐ろしくもあり心強くもあります。

 結局はCPの割り振りをご主人様にお任せするのが現状です。
 相談はしますが決定権はご主人様という感じでしょうか。
 私を含め、奴隷の皆もそれで否はありません。


 そうして徐々に階層を下りて行くと、逃げて来る探索パーティーとすれ違いました。
 必死の形相で私たちの脇を抜けて行きます。


「イブキ、気配は?」

「はい。……先に魔物の群れ……それと一人襲われているかもしれません」

「急ぐぞ!」

『はい!』


 急行すると、そこにはケイブアントに群がられ、今にも襲い掛かられそうな少女の姿がありました。
 その少女は闇朧族ダルクネス
 おそらく数日前に組合で、仲間から責められていた少女だと思います。

 私はご主人様の命により走りながらも弓を番え、少女の近くのケイブアント目がけて撃ちこんでいきます。
 もともと弓は得意でしたが威力も精度も段違いです。
 こうして素早く走れるのは【敏捷】を上げたおかげ。
 走りながら射れるのは【器用】を上げたおかげです。
 やはりご主人様の采配は素晴らしい。こうした事まで予期されていたのでしょう。


 ケイブアントの群れを殲滅したところで、少女を保護しました。


「大丈夫か? 足の傷が深いな。サリュ、頼む」

「かしこまりました」

「ケイブアントにやられたのか?」

「……いえ……パーティーの人に……」

「何?」


 サリュの治療を受けながらその少女――ネネはポツリポツリと話し始めます。
 新しく組んだパーティーとのやりとり、メンバーが先行したこと、自分の察知能力が未熟で気付くのが遅れたこと、そして―――囮にされたこと。

 涙を溜め、時に流しながらも泣き顔ではなく無表情。
 まるで生きる事をやめたアンデッドのような瞳は、その辛さを物語ります。
 私は思わず抱きしめたくなってしまいました。


「ゴミが……」


 ご主人様が珍しく怒気を見せています。
 非道な山賊や、横柄で粗暴な輩にも見せない怒りをそのパーティーメンバーに対して抱いている。
 それは普段から近くにいる私たちでさえ寒気がするものでした。
 サリュは尻尾がピンと立って毛を逆立てています。ゾワッとしたのでしょう。


「ネネ、歩けるか?」

「ん……大丈夫」

「とりあえず迷宮を出るぞ。それで組合に報告する。あいつらを罰する必要があるからな。それでいいか?」

「……」


 ネネは俯いたまま返事をしませんでした。
 報告したくない、罰を与えたくない理由があるのでしょうか。


「わ……私が報告したら、あの人たちは怒られる……それはいい。でも……もう誰も私とパーティーを組んでくれなくなる……」


 報告はするべき、しかし問題提起した事でネネが厄介者の扱いをされるかもしれないと。
 組合でそう思われたらもう誰もパーティーを組もうとは言ってくれないんじゃないか。
 そうすると自分の生活はどうなってしまうのか。ソロでは迷宮に潜れない。
 だったら報告しないでパーティーを解散するだけにしたほうが良いんじゃないか。

 ネネはそうした不安を少しずつ語ってくれました。
 時間はかかりましたが、臆病ながら思慮深く考えていると思います。
 ご主人様も私たちもそれを聞いていました。


「じゃあ、俺たちとパーティー組むか」

「え……」

「パーティーって六人までだろ? 今五人だからちょうどいいじゃないか」

「……いい……の?」


 ご主人様は私たちを見回し、いいよな? と聞いてきます。
 もちろん私たちは頷きました。


「ご主人様のご随意のままに」

「奴隷仲間が増えるのですね、歓迎です」

「侍女としても教育しなければ」

「侍女服は私のサイズでよろしいでしょうか」

「えっ、ちょっと待てお前ら」


 なぜかご主人様が慌てていらっしゃいます。
 我々の仲間に入れるという事は女神様の使徒たるご主人様にお仕えするという事。
 女神様の奴隷紋を刻み込めるという名誉をお与えになると、ネネをその一員に選ばれたという事です。


「いや待て。仲間=奴隷ってのはおかしい。ネネだって奴隷は嫌だろ?」

「ん……奴隷で……よろしく……お願いします」

「!?」


 ほら、ネネも乗り気じゃないですか。
 ご主人様はご自身の魅力、「使徒の奴隷」という引力のようものを失礼ながら分かっていらっしゃいません。
 誰だってこの奴隷紋を見れば魅了されるでしょうに。


「なんか思ってた展開と違うんだが……」


 頭を抱えていらっしゃいますが、我々は皆、思っていたとおりの展開だったと思います。
 きっとあの時組合でネネが責められているのを見たのも運命だったのでしょう。
 全ては創世の女神ウェヌサリーゼのお導き。
 私は左手を見て、そう思ったのです。


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