カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第一章 黒の主、世界に降り立つ

22:スタンピードとかいうボーナスステージ

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■イブキ 鬼人族サイアン 女
■19歳 セイヤの奴隷


 それはイーリス街を出て、いつものように・・・・・・街道から森へと入ってからの事。
 目当ての魔物が全然いないと、奥の方まで探索していた矢先だった。
 ネネ、サリュそして私の察知にも反応する魔物の群れ・群れ・群れ。

 さすがに異常事態だと腰が引ける私たちを後目に、ご主人様は


「おお、すごいな。CP稼ぎ放題じゃないか。迷宮制覇したご褒美か」


 と満面の笑みを浮かべる。
 余裕。本当にこのお方の底が知れない。

 こうなってしまっては我々は奴隷として侍女として付き従うしかない。
 これまでも迷宮の魔物部屋へ嬉々と入っていくご主人様に付いて行ったのだ。
 九階の魔物部屋など誰もが避けて通るだろう所を、我々は蹂躙してきたのだ。
 今さらゴブリンやウルフ、オークが群がったところで怖くはない。

 ただ数が多すぎるのですが……と言いたいところだが。


「いくぞ!」と前を行くご主人様の後ろから、全員が意を決したように「はいっ!」と返事をした。
 もはや引くことは許されない。
 皆が皆、己の仕事を遂行するのみ。


聖なる閃光ホーリーレイ!」

炎の嵐フレイムストーム!」


 これだけの群れが相手となると、サリュとミーティアの広範囲魔法がありがたい。
 魔物部屋では使えなかった規模の大きな魔法を使える。
 その一撃で、周りの魔物がどんどんと屍となっていく。

 私たちはそれに付かず離れず、ご主人様を突出させないように蹴散らしていく。
 エメリーとネネは素早い動きで次々に首をはねていく。
 これだけの数が相手だ。一撃必殺を繰り返していくしかない。
 足を止めて切り結んではすぐさま包囲されるだろう。

 ご主人様は最近覚えたばかりの<飛刃>を多用している。
 刀から放たれる飛ぶ斬撃・・・・は、ゴブリン一体を斬って尚衰えず、その後ろの数体をもまとめて斬っていく。
 私は近接・単体攻撃しかないので、少し羨ましくも思う。
 ただ大剣を横薙ぎに、なるべく多くを屠ろうと進むのみ。


 倒した魔物が邪魔なので、ご主人様はある程度倒すと次々に<インベントリ>に入れる作業にうつる。
 その間に迫ってくる魔物の群れを、また私たちが殺し、また<インベントリ>へ。
 最高戦力であるはずなのに完全にご主人様が回収係になっている事に、申し訳なく思う。
 マジックバッグがあれば私も回収したのだが……。


 そうこうしていると、オークの群れの最後尾、オークキングと近衛であるオークジェネラルも現れた。
 オーガの群れも出始める。
 オーガは百体くらいだろうか。ゴブリンやオークどもに比べれば数は少ないが、一体でオーク数体分の強さだ。
 ネネの短剣ではさすがに一撃で殺すのは無理だろう。


「ネネ! エメリーと組め! ミーティアは弓使うならエメリーのサポート! 魔法ならサリュと同じでどこ撃ってもいい! イブキは俺と前へ出るぞ!」


 ご主人様も分かっていらっしゃった。
 我々は返事と共に陣形を変える。
 巨体の敵が多くなったことで、一度に近接で相手取る敵の数も減る。
 場所を動かしながら戦うことで、回収を後回しにするのだろう。


「はあああっ!!!」


 私の大剣がオークジェネラルの首を落とす。
 少し前の私であれば考えられないほどの威力だ。
 そんな力を授けてくれたご主人様の一番近くで私は剣を振るっている。
 それはとても名誉な事で、感動的なものだった。

 しかし近くで見てもやはりご主人様の剣技とその威力は群を抜いている。
 消えるように動き、滑らかに躱し、オークキングやオーガの分厚い身体をスパスパと斬っていく。
 私はそれなりに力を入れているが、ご主人様の場合そうは見えない。
 力を入れずとも斬れるステータスなのか、そういう武器なのか。
 まるでスライムを相手にしているように倒しては回収していってる。


 オーガキングまで出てくる頃にはさすがに魔物の数もあと少しだと分かる。
 皆、疲労はあるが怪我などもない。
 攻撃を多少くらってもステータスで【体力】【HP】などを上げて頂いているし、サリュが回復すれば即座に治る。

 ようやく先が見えた。
 そう思った矢先「グルオオオオ!!!」という咆哮が聞こえた。


 山の中から現れたのは四体の地竜ランドドラゴン
 地を這う巨大な四足亜竜だ。
 皮膚は硬く、身体に見合わず俊敏だ。


「イブキ! 一匹まかせる!」

「ハッ!」


 突如のご指名に即座に応えてしまった。
 まさか私が亜竜を相手取るとは……そんな感慨と使命感を胸に私は一体の地竜ランドドラゴン目がけて走った。


「うおおおおっ!!!」


 突貫し、跳躍し、渾身の斬り下ろしを見舞う。
 ガンッ! と岩を斬りつけたような感覚を覚えるも、鱗ははがれ、肉にまで達していることを確認。
 私の剣でも戦える。
 タイラントクイーンには傷つける事も叶わなかったが、あの鋼鉄の外殻に比べればまだマシだ。

 私は突進と尾撃に備えつつ、足を止めないように剣戟を繰り返した。
 一度攻撃を加えたところは斬れやすい。
 狙いをしぼって、ひたすら走っては攻撃を繰り返した。


 ―――ズズゥゥゥン……

 やがて巨体が地に沈む。
 私は息を荒げながら、周りを見渡すと、すでに終戦といった様子だった。
 オーガたちはエメリー、サリュ、ミーティア、ネネが協力して倒したらしい。
 ご主人様は私が一体倒す間に、三体の地竜ランドドラゴンを倒したらしい。

 達成感がこみ上げる。
 あの数の群れを相手取り戦った。一体ではあるものの地竜ランドドラゴンを倒した。
 そして何より、皆が無事だった事に安堵する。

 下賜された大剣はボロボロだった。
 侍女服の汚れもひどい。


 これはすぐにでも<洗浄>しなければ。
 そう思う私は、すでに傭兵ではなく『侍女』なのだな、と少し笑った。


 合流し、倒した魔物をあらかた回収したご主人様と共に、座って一息ついている。
 戦場となった森は破壊され、広場のようになっているのでちょうどいい。


「これ、一度イーリスに戻ったほうがいいかな。回収したはいいけど、とてもじゃないけど解体できないだろ」

「全員でとりかかっても数日はかかるでしょう」

「千体くらいいましたからね……」

「解体後に焼いて処理するのも一苦労です」


 ご主人様はイーリスで解体を依頼したほうがいいか、とお考えだ。
 私も賛成し、エメリーやミーティアも賛成の意を示す。
 魔物討伐組合に持ち込んで解体してもらったほうが良い。
 それでも数日かかるだろうが、私たちの手間が省けるし、同時に売れる。


「それに宿で風呂に入りたい」


 その言葉に思わず皆が吹き出した。
 これだけ激戦をした後に、「休みたい」ではなく「風呂に入りたい」なのだから。
 つくづくこの御方の異質さと豪胆さを好ましく思う。


「……ん?」

「どうした、ネネ」

「……向こうに、人が……います」


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