カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第二章 黒の主、混沌の街に立つ

35:兎少女の新世界

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■ティナ 兎人族ラビ 女
■8歳 セイヤの奴隷 ヒイノの娘


「いつか必ず良い暮らしが出来る日が来る。きっとお父さんが守ってくれるわ」


 いつもお母さんはそう言って頭を撫でてくれました。
 私にはよく分かりませんでしたが、お金がなくて猪人族ボエイルの人が来るたびにお母さんが悲しい顔をしていたのは分かります。
 その度に、覚えていないお父さんに守って下さいとお願いしていました。


 ある日、また猪人族ボエイルの人が来ました。
 いつもと違って私とお母さんを捕まえようとしたのです。
 私は怖くなって泣きました。大声で叫びました。

 そうしたら変な魔法をかけられて、声も出せなくなったのです。
 左手の模様から変な感じがして、泣くことも出来なくなり、頭もボンヤリするような魔法です。
 本当に怖くて恐ろしくて、泣きたいけど泣けないのが余計に怖かったのです。


 それを助けてくれたのは真っ黒なお兄さんでした。

 お兄さんは怖い人たちをやっつけ、私とお母さんを助けてくれました。
 お母さんはお店もやめてお兄さんの奴隷になるそうです。
 私も奴隷の人を見た事はありますが、お母さんが奴隷になるのなら私も一緒にいたいと言いました。


「お母さんと一緒に俺の家で働いてくれるか?」


 そう聞かれたので「はい」と答えました。
 私はお母さんと一緒であればそれでいい。
 もう怖い思いはしたくない、そう思ったんです。

 そうしたらお兄さんは頭を撫でてくれました。
 とても暖かくて、とても優しくて、また泣きそうになりました。
 お父さんが生きていたらこんな人だったのかな……そう思いました。


 荷物をまとめたらお兄さんがどんどん仕舞ってくれます。
 あれは多分マジックバッグというものでしょう。
 お金持ちしか持てないものだと聞いたことがあります。

 そして私たちは中央区に向かって歩きます。
 お母さんは「中央区にお住まいなのですか!?」と驚いていました。
 なんでも、それだけでお金持ちという事らしいです。

 私は中央区になんて行った事がないので不安でした。
 お母さんの手をギュッと握りながら歩きました。
 でもサリュお姉さんと、ネネお姉さんが話しかけてくれて仲良くしてくれて、少し元気になりました。


「お姉さんっ……うふふっ」

「ん……妹ができた……かわゆい」


 とてもいい笑顔で頭を撫でてくれます。
 つられて私も笑顔になりました。


 歩いた先に着いたところは綺麗な宿屋さんみたいな建物です。
 ここは【ティサリーン奴隷商館】というところだそうです。
 中に入るとすごく綺麗で立派で、思わず「うわぁ~」と見回してしまいます。


「あらあらセイヤ様ではないですか。三日ぶりでもう追加ですか」

「ティサリーンさん、今度はこっちの二人をお願いします」

「あらあらお可愛らしいお嬢ちゃんまで。良かったわねぇ、いいご主人様に巡り合えて」


 導珠族アスラの女の人にそう言われました。
 まるで貴族の人みたいなお洋服とお化粧をしています。
 なにかとても恥ずかしくなって「はいっ」という声が上ずってしまいました。

 契約内容がどうのこうのと難しいお話のあと、私とお母さんは魔法をかけられました。
 あの時お店でかけられたような変な感じのしない魔法です。
 そうして私の左手には綺麗な女神様の印ができたのです。


「ほ、本当に私にも御加護が……!」


 お母さんは涙目でお祈りをしていました。
 私はあまりの綺麗さに嬉しくなってサリュお姉さんとネネお姉さんと見せっこしました。


 そこを出たらお兄さん、ご主人様のおうちに行きます。
 奴隷になったらご主人様と言わないといけないようです。エメリーお姉さんが言ってました。

 私はお母さんと手を繋ぎ、左手を見せ合いながら笑顔で歩きます。
 お母さんのこんな笑顔を見るのは久しぶりな気がします。
 私もとっても嬉しくなります。

 そうして少し歩いた先、道の突き当りに見えた大きな家……お城でしょうか。


「こ、ここがご主人様のお屋敷なのですか!? わ、私たちはここに住まわせて頂けるのですか!? こんな立派な……!」


 お母さんが慌てています。
 私は「うわぁ」と見上げていました。

 道に続く大きな柵門、高い塀、広いお庭、厩舎と納屋、芝生の所も木が生えている所もあります。
 正面には真っ白な三階建ての大きな家。屋根は赤茶色で綺麗です。
 玄関まで続く石畳を歩き、お屋敷の入口、彫刻がされた大きな扉から入ります。


「ようこそいらっしゃい」


 ご主人様がそう言うと、路上芸人さんのように両手を広げました。
 私もお母さんも言葉は出ず、ただ見回すばかりです。


「いきなり屋敷を紹介して回るのも何だから、とりあえず部屋に案内して荷物を片付けるか」

『はい』

「エメリーは二人の服を用意してくれ。サリュは食事の準備。イブキは一応見回りしておこう。フロロは風呂の用意な。他は引っ越しを手伝うぞ」

『はい』


 お城に入ったことはないけど、本当にこのお屋敷はお城だと思います。
 綺麗で広くて、前に見た宿屋さんよりも、さっき見た奴隷商館よりもすごい。
 私はキョロキョロしながらご主人様に続いて階段を上がって行きました。


「ティナの部屋はどうする? ヒイノと一緒がいいのか? 部屋は余りまくってるから一人部屋でもいいんだが」

「お、お母さんと一緒がいいですっ」

「だよな。じゃあベッドとかも運ぶか」


 みんなのお部屋は三階に並んでいるそうです。
 私とお母さんのお部屋も三階になりました。
 フロロお姉さんのとなりです。


「こ、こんな立派な部屋に住まわせて頂けるのですか!?」

「私たちも皆同じ部屋ですよ」

「し、しかし奴隷ですのに……」

「ご主人様は私たちを奴隷であり侍女であり仲間であるようにと仰います。普通の奴隷とは違う所も多々ありますが、徐々に慣れていきましょう」

「は、はい……」


 ミーティアお姉さんがお母さんとそう話します。
 私は走って窓まで行き、景色を眺め、ベッドのフカフカさを押して楽しんだりしていました。
 ネネお姉さんが一緒に居てくれています。

 そこへご主人様がマジックバッグでベッドを持って来てくれて、お店から持ってきた荷物も出してくれました。
 それを私とお母さん、そしてみんなに手伝ってもらい大きなタンスや棚に入れていきます。
『うぉーくいんくろーぜっと』と言うそうです。大きなタンスです。


 しばらくするとフロロお姉さんが来て「風呂の用意ができたぞ」とご主人様に言いました。
 ご主人様は「じゃあ頼むな。先に入るわ」と部屋を出て行きました。


「お母さん、ふろって何?」

「お風呂って言うのは、暖かいお湯に身体を付けるのよ。水浴びみたいにね。貴族の方が好まれるとは聞いたけど、まさかご主人様の家にもあるだなんて」

「へぇ~」


 お湯浴び? 寒くもないのに何でやるんだろう。
 そう思っていたら、横からフロロお姉さんたちが笑って話しかけてきました。


「普通はそう思うだろうなぁ、我もかなり驚いた」

「ヒイノさんの想像しているものとはかなり違うと思うわ。ご主人様のお風呂への拘りは尋常ではないから。説明が必要だから誰か一緒に入ると思うけど」

「ん……衝撃的……だけど一度入ると病みつき」

「うむ、もはや風呂のない生活など考えられんな」

「ここのお風呂が特別すぎると思いますけど」


 三人で盛り上がっていて、私とお母さんにはよく分かりません。
 でもお母さんが聞きました。


「えっ、ご主人様だけでなく私たちも入るのですか? お風呂に? 貴族ではないどころか奴隷の身分ですが」

「ご主人様も貴族ではありませんし、我々も奴隷です。あとで衛生管理に関する注意があると思いますが、我々は奴隷であると同時にご主人様のお傍にお仕えする侍女なのです。身綺麗でなければなりません」

「ましてやご主人様の綺麗好きは度を越えておる。言い方は悪いが神経質で潔癖症だ。それをご自分だけでなく我々にも課してくる」

「ん……さっきも歩きながら<洗浄>やってた」


 そんな話をしながら荷物を片付け終えて、一階へ行くと、ご主人様が『お風呂』から出ていました。
 私とお母さんに先に入るよう言われ、ミーティアお姉さんとネネお姉さんが一緒に入ってくれる事になりました。

 そして私は『別世界』というものを見たのです。

 湯気が立ち込める大きな浴槽。
 高価な石鹸で身体を洗い、何かの液体で髪を洗えばツルツルになります。
 お湯に浸かればポカポカと夢心地。
 ジェットバスというものはビョーッと面白い。

 サウナは熱くて無理でしたが本当に今まで体験したことのないものばかり。
 水で拭いたり<洗浄>するだけでは味わえないくらい身体のあちこちがピカピカになった気がします。

 これがご主人様が拘ったというお風呂……!
 改めてすごい人だなぁと思いました。
 こんな人がお父さんになってくれたらなぁって。


 ……ちなみにこの後、トイレで『新世界』というものを見ることになります。


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