41 / 421
第二章 黒の主、混沌の街に立つ
40:陰謀の鴉爪団、消沈の幼女
しおりを挟む■ディザイ 獅人族 男
■40歳 鴉爪団 頭領
金貸しのボウルを消したと思われる基人族。
こいつの事はすんなり情報が集まってきた。
この街にいる基人族なんか一人しかいねえし、目立つんだから当然だ。
しかし調べれば調べるほどに「これ本当か?」と疑いたくなる。
だってそうだろう?
本人含めて連れまわしてる連中も種族・容姿・服装どれもおかしい。
おまけにAランク組合員で迷宮じゃとんでもない活躍をしているそうだ。
【黒の主】率いる【黒屋敷】って知らない組合員がいないレベルだとよ。
さらにはボウルが目を付けてたヒイノって兎人族とその娘、さらには組合専属占い師だったフロロまで奴隷だかメイドだかにして一緒に迷宮に潜ってると。
そんで基人族のくせに中央区北住宅地の一等地に豪邸持ってて、そこでヒイノとかも一緒に住んでいるらしい。
な? 「これ本当か?」だろ?
報告に来たヤツを殴りそうになっちまったよ。
しかし仮に噂が本当だとして、解せない点がいくつもある。
そもそも基人族にAランクどころか組合員になれるような戦闘力はないはずだ。
これはもう種族としての常識。
唯一の例外は御伽話にある【一万年前に現れた勇者】だが、そんなもんウェヌス神聖国の天使族や基人族だって信じちゃいねえだろ。
御伽話は現実じゃねえから御伽話だ。
じゃあなんで組合員になれてるのかって話だが、考えられるのは二つ。
一つは金で良い装備か魔道具を揃えている。
まぁ基人族が金持ってる時点でおかしいが、まだ現実味がある。
もう一つが戦えるメイドに任せている。
鬼人族か狼人族か闇朧族か樹人族あたりか。
ただ角折れだったり、白い忌み子だったり、罪人だったりと本来の種族に比べ戦力が低下しているか劣っているはずだ。
闇朧族にしても若すぎる。
そんなわけでやはり前者が有力。
あの家を持ってる時点で金はあるみたいだしな。
だったら逆にチャンスじゃねえか?
金を持ってて、良い装備か魔道具を持ってて、本人たちに戦闘力はない。
ちょうど山賊どもが消えた補填を考えてたところだ。
ヤツらを消して、全て奪い、あの家も確保できりゃ中央区への足掛かりになるじゃねえか。
おまけにボウルとこっちの繋がりも消せる。
メイドどもはどれも美人らしいから高値で売れる。
一石何鳥になるかも分からねえほどだ。
―――と、そう考えていたところに右腕のロウイが報告にやって来た。
「例の【黒の主】たちが南西区に来たそうで、そこでうちの連中ともめたらしいです」
「はぁ? そりゃあれか、俺らが「【黒の主】を調べ上げろ」って言ったからか?」
「でしょうね。功を得ようと先走ったんでしょう」
「馬鹿ばっかりだな。で、どうなった?」
話によれば【黒の主】と数人で南西区へと入ってきた。
そこで見つけたウチの下っ端どもが「てめえが【黒の主】か、ああん?」と絡んだらしい。
聞くまでもねえだろ、そんな特徴的な連中、二つとねえよ。
んで、無視しようとした【黒の主】に殴りかかったところを投げられて気絶させられた。
投げたのはヒイノとその娘、そしてフロロらしい。
決定だな。
やつらやっぱり何かしらの魔道具を持ってやがる。
おそらく身体能力を急激に上げるようなやつだ。
でなきゃ戦えないはずのあの母娘とフロロが、下っ端とは言えウチの連中を投げるだなんて出来ねえ。
投げたのが鬼人族とかだったら分かるが、少なくともヒイノの娘が投げるってのはおかしい。
「ちなみにヒイノとフロロに投げられたヤツは気絶だけでしたが、ヒイノの娘に投げられたヤツだけが重症です」
…………魔道具の質に差があるのか。
ともかくこうなったら早めに攻めたほうが良さそうだな。
馬鹿が絡んだことで俺らが【黒の主】を探ってるってのはバレただろう。
金の力で戦力を整えられる前に仕掛けたほうが良い。
「ロウイ、強襲部隊を準備させろ」
「! ……決行は?」
「今夜だ」
承知しました、と部屋を出るロウイを見送ったと思ったら別のヤツが入ってきた。
空気も読まず楽しそうなツラしてやがる。
「ディザイ~、酒がなくなったんだが」
「どんだけ飲むんだよ、お前は! まだ足りねえのか!」
「なんだ? 酒飲ませる代わりに用心棒やれっつったのはそっちだろうが」
「チッ! わぁったよ! そこにあるの樽ごと持ってけ!」
「おお~んじゃありがたく貰うわ」
こいつは……強襲部隊に入れるのはダメだな。
■セイヤ・シンマ 基人族 男
■23歳 転生者
「残念だったなぁ」
「申し訳ありませんご主人様」
「別にヒイノは悪くないだろ。俺が目当てっぽかったし」
ヒイノが作ったパンを知り合いの店に売りに行こうと思ったんだが、南西区に入って早々絡まれた。
どうも金貸しの一味って言うより、バックにいるであろう【鴉爪団】とかいうマフィアっぽかった。
ヒイノは借金取りの一連から俺が目を付けられたと思って恐縮している。
まぁ俺としては絡まれ慣れてるからなぁ。悲しいことに。
別に気にしちゃいないんだが。
ともかくこの状況で売りに行っても、持って行った先の店が目を付けられる。
やたら動かないほうがいいだろうという事で、売りに行くのはキャンセルした。
焼いたパンは<インベントリ>に入れておいて俺たちで美味しく頂きましょう。
と、慰めているんだが、ヒイノはともかくティナも元気がない。
「ティナも売れなくて残念なのか?」
「……いえ、手加減がうまく出来なくて」
「ハハハッ」
確かにティナが投げたヤツだけドグシャアアア!!! ってすごい音したからな。
死んでなきゃいいんだが。
まぁ殺したところでチンピラだし、マフィアだし、別にいいんだけど、ティナに人殺しはさせたくないしなぁ。
やっぱステータスの上昇を感覚にアジャストさせるのは慣れがいるな。
これからも上げ続ける予定だし。
ティナにも経験的な意味で積極的に迷宮に潜らせたほうがいいかもしれない。
俺はティナの頭を撫でつつ喋る。
「ティナはよくやったぞ。でも力加減を覚えるならもっと練習しなきゃな。今度また一緒に迷宮行くか」
「! はいっ!」
「よしよし」
うん、元気になったようだ。
ティナは真面目に剣士目指してるからな。
敏捷高い剣士ならレイピアとか持たせてもいいかもしれん。
「八歳の女子に言うセリフか。聞く人が聞けば死刑宣告か拷問だぞ」
「いいじゃないかフロロ、現にティナは喜んでる。な?」
「はいっ! 行きたいです!」
「ご主人様、私も一緒にお願いします」
「ヒイノはティナを守らないといけないからな、当然一緒に連れて行くよ」
「ありがとうございます」
ヒイノも笑顔になった。
迷宮で発散させればいいと思うよ。
「おかしい……我の感覚が一番アジャストしてない気がする……」
「ん? フロロも練習するってことか?」
「……魔物部屋マラソンじゃなければいいぞ」
辛い思い出だったようだ。
安心してくれ、マラソンじゃなくて普通に魔物部屋に行くだけだ。
6
あなたにおすすめの小説
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜
昼寝部
ファンタジー
2XXX年、X月。
俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。
そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。
その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。
俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。
これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。
スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました
東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!!
スティールスキル。
皆さん、どんなイメージを持ってますか?
使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。
でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。
スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。
楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。
それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。
2025/12/7
一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる