カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第二章 黒の主、混沌の街に立つ

41:闇夜の防衛戦(無傷)

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■ネネ 闇朧族ダルクネス 女
■15歳 セイヤの奴隷


「ん……来た」


 警戒していた甲斐があった。
 屋敷の塀を乗り越えて入ってきそうな侵入者を察知した。

 やっぱりご主人様の勘が正しかった。
 誰も夜伽に呼ばず備えていてくれた。
 それにフロロの占いもすごい。本当に侵入してくるんだもん。
 警報の魔道具も切っておいて良かった。
 あれ屋敷中に響くから五月蠅いし、ティナが起きちゃう。


「よし、じゃあ適宜よろしく」

『はい』


 ご主人様の号令でみんなが散る。
 窓とか割られて入られたら困るから、その前に倒さなきゃいけない。

 屋敷の正面はイブキ、東側にエメリーとフロロ、西側にサリュとミーティアが行く。
 ティナには今回の件は内緒で寝かせている。
 ヒイノは知ってるけど、起きたままティナを守っている。
 良い子だから終わるまで寝ていて欲しい。

 私は全体を警戒しつつ、北側を見る。
 北側は第一防壁のすぐそばで、通り側からすれば一番遠いし、一番侵入しにくい。
 だからもし侵入者が北側を狙うようなら、それはプロの暗殺者だと思う。


 狙いはご主人様だろう。
 ご主人様の部屋は南側に開かれたバルコニーがある。
 誰が見たって主寝室。普通の賊ならそこに昇るか、その下の正面玄関から入る。

 玄関はイブキが押さえている。
 バルコニーに行けばご主人様直々に倒す。
 本当は手を煩わせちゃいけないんだろうけど、作戦を立てたのがご主人様だから。
 私は私の仕事をやるだけ。


「ん……」


 北側への侵入者を察知した。これはプロだ。
 こうした侵入とか暗殺とか慣れてる人だと思う。
 よし、そこへ行こう。


 しかし改めて、私の<気配察知>と<危険察知>はすごい事になったと思う。
 ご主人様に出会う前の何倍かも分からない。
 気持ち悪いくらいに広範囲・好反応。

 イブキとサリュの察知もそこいらの同種族以上なのは確実。
 エメリーに至っては多肢族リームズなのに<気配察知>を自力で覚えた。
 さすがとしか言いようがないけど、どれも引き上げたのはご主人様だ。

 私の場合は、おそらく一族の誰より察知能力が高くなっていると思う。
 少なくとも両親を含め、今まで接してきたどの人よりも高性能。
 私には過分すぎる力だと思うけど、そのおかげでこうしてご主人様を害する者に対処できる。
 殺られる前に察知できる。仕掛けられる。

 これもまた、力をくれたご主人様への恩返しをする機会だ。


 北側へ回り込んだのは五人。
 全体で二六人だから、満遍なく全周から攻めようとしているっぽい。
 おそらく南・東・西は数合わせの小兵による陽動。
 本命は北側の五人による侵入、そして暗殺するつもりだろう。

 ご主人様からは「口割らせる必要があるから全体で最低二~三人は殺さないで」と言われている。
 北側の五人は捕らえたところで口を割るだろうか。
 闇朧族ダルクネスなら絶対に口を割らないよう徹底して訓練されている。
 それは暗殺を生業にしている一族ならではなのかもしれないけど。

 ……種族見て決めようかな。


「<気配消却><影潜り>」


 ある程度近づいたら気付かれる前にスキルを使う。
 気配を消して、暗闇に潜る暗殺術。
 どちらも闇朧族ダルクネスが訓練して覚えさせられるものだ。
 ……私は覚えられなかったけど。

 五人を発見、気付かれている様子なし。
 黒い外套を覆ってるけど……獣人系かな。闇朧族ダルクネスではない。


「おい、さっさと行くぞ」

「入りやすそうなトコを探せ」

「女は殺すなよ、お楽しみは後だ」


 ……なんか結構弱そう。
 任務中に喋ってるし。
 プロじゃない? それとも侵入者たちの中ではこれでも・・・・精鋭なのかな?
 これじゃ闇朧族ダルクネスの暗殺者の方が何倍も強いと思う。

 うーん、二人くらい残せばいっか。


 ―――シュン―――ズバッ!


「うわっ! な、なんだ!」

「キースが殺られた!? 誰だ!」


 ―――シュン―――ズバッ!


「どこだ! 全然見えない!」

「遠距離か!? 魔法!?」


 ―――シュン―――ズバッ!
 ―――シュン―――ボコッ!
 ―――シュン―――ドゴッ!


 ……なんか、めちゃくちゃ弱かった。
 ほんとにこれで暗殺するつもりだったのかな。
 普段投げ飛ばしてる人たちとあんまり変わらなかった。

 とりあえず気絶させた二人を運ぼう。


 屋敷正面の庭に行くと、みんな集まっていた。
 やっぱりどこも早めに退治できたらしい。
 イブキはすでに尋問を始めている。

 私はサリュと話す。


「ネネちゃん大丈夫だった?」

「ん……なんか弱かった」

「あ、やっぱり? 私の方でもミーティアさんと言ってたんだ。集団で夜襲して暗殺してくるような人たちにしては、技術もないし力もないって」


 どこも同じ感じらしい。
 本命はなし? という事は夜襲自体が陽動?
 だとしたら……


「うーん、やられる前にやった方がいいかもな」


 ご主人様がそう言う。
 やはり何か腑に落ちないところがあるようだ。
 別の思惑があるなら、それが分からないで待ち構えるより攻めた方が早い。


「ご主人様、やはり【鴉爪団】のようです。アジトの場所も分かりました」

「ご苦労様、イブキ。とりあえず今日は連中を処理してさっさと寝よう。行動は明日だ」

『はい』


 そう言ったあと、ご主人様は私の頭を撫でながら続ける。
 とても気持ちがいい。


「今日のMVPはネネだな。察知は優秀だし、一人で五人倒した。ご褒美は何がいいか」


 警戒したのはフロロの占いのおかげだし、力を得たのはご主人様のおかげ。
 私の担当の場所に五人来たのはたまたまだ。


 でも、褒美に何がいいかと言われれば……


「……サリュと一緒に夜伽を」

「ぅえっ!?」


 サリュは真っ赤な顔して「ネネちゃん、なんで私まで!」って抱きついてきた。
 尻尾がぶんぶん振れてるから喜んでるのは間違いない。
 ご主人様は「とりあえずこの件が落ち着いたらな」を言って頭をポンポンとしてきた。

 ご主人様に頭を触られるのは気持ちいい。
 ずっと撫でて欲しくなる。
 ずっと褒めていて欲しくなる。

 その為には明日また頑張らないと。
 それで、終わったら夜伽に呼んでもらおう。


 ……捕らえた人たちどうするのかな、殺しといたほうがいいかな。


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