カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第二章 黒の主、混沌の街に立つ

48:みんなで楽しい迷宮探索・後編

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■フロロ・クゥ 星面族メルティス 女
■25歳 セイヤの奴隷 半面


 全くご主人様にも困ったものだ。

 全員で迷宮に潜るのは別に良い。
 しかし特に急ぎでもないのだから、十人揃って行動すれば良かろう。
 何も二パーティーで別行動することないだろうに。

 わざわざ戦力を削って、誰も通らないルートを通り、困難な領域を抜け、ミスリルを採掘するなどと……。
 他の組合員が聞けば卒倒するに違いないわ。
 素材や魔石を組合に持ち帰っても受付で騒ぎになる事は間違いない。

 もう少しご主人様には「常識」というものを持ってもらいたいものだ。


「ハハハッ! イブキやるじゃねえか!」

「そりゃツェンよりステータスが上だからな。そのうち抜かされるだろうがまだ負けんよ」

「二人とも喋ってないで次の魔物部屋に向かいますよ」

「ん……次こっち……」


 ……侍女連中にも「常識」を持って探索して欲しい。
 ご主人様に毒され過ぎだろう。

 魔物部屋は散歩がてらに行くような所ではない。
 組合員は避けるのが当たり前、誤って入れば決死の戦いを繰り広げる場所だ。
 それがご主人様と付き合いの長いエメリーやイブキだけならまだしも、まだ若いネネやサリュ、最近ではティナまでもが嬉々と入っていくのだ。

 ツェンに至っては迷宮に入る事自体が奴隷となってからだし、なまじ力がある故にこう進むのが当然と思っている様子。
 まぁこやつは元々戦う事自体に楽しみを感じるタイプだから例外なのだが。

 確かにご主人様がいなくとも、この四人ならば問題なさそうな気はする。
 しかし絶対など存在しないのが迷宮というもの。
 ここは我がストッパーとなる他あるまい。


「とりあえず今日のうちに行けるところまで行きますよ。二階層の山岳付近まで行ければ良いのですが、まぁ途中でグレートウルフの群れやオーガキングの群れが来ても問題ないでしょうし」

「おう、任せろ!」

「ご主人様の前でその返事はやめろよ? ツェン」

「わぁってるよ! さっさと行こうぜ!」

「ん……いっぱいミスリル掘って褒めてもらう」


 ストッパー……なれるかのう……自信がないわ。


■ツェン・スィ 竜人族ドラグォール 女
■305歳 セイヤの奴隷


 迷宮おもしれえっ!
 なんだ、こんなに魔物倒し放題だったら村出てからさっさと迷宮組合員になるべきだったな。
 地上の魔物を狩るより全然楽しいじゃねえか。狩り放題だし。

 しっかし改めて戦うところを見ると、侍女の先輩連中はハンパじゃねえな。
 全員あたしより強いんじゃねーかと思っちまう。

 力だけならイブキ以外には勝つんだが、速度だったり動き方だったり連携だったりスキルだったり、さすがはAランクだと言わざるを得ないな。
 エメリーだってあたしの攻撃受けた時、衝撃を吸収して威力を完全に殺してたからな。受け身も完璧だったし。
 あのまま続けてりゃ負けたのはあたしかもしれねえ。

 まだ幼いネネも尋常じゃなく速いし、フロロもさっきから土魔法を連発してる。
 なんであれで魔力が保つのか意味が分からねえ。常識外の魔力量だ。
 これがご主人様の<カスタム>の恩恵だってんなら、あたしも早く受けたいもんだ。


 そうそう、ご主人様って言えば、やっぱあの時は全然本気じゃなかったらしい。
 あたしのパンチや尻尾を平然と受け止めてたからそうじゃないかとは思ってたんだけどな。

 どうやら肉弾戦自体したことがないし、<体術>系のスキルも持ってないんだと。
 つまり<カスタム>したステータスの差だけであたしを圧倒したってことだ。
 聞いた時には怒るどころか笑ったね。とんでもないヤツの奴隷になったもんだってな。

 主武器の黒い剣……刀だったか、それが女神様から貰った神器らしくて、本来はそれで戦うと。
 とんでもない武器ととんでもないステータスが合わさって、とんでもなく強いそうだ。


「ご主人様のチームがタイラントクイーンに行ったのも、私やツェンの攻撃ではタイラントクイーンに大したダメージを与えられないからだ。時間をかければいけるのかもしれないが……まぁご主人様がやると一撃だろうからな。そっちの方が早い」


 とはイブキの談。
 なんだそれ、どんだけ強いんだご主人様は。
 是非とも、もう一度戦って欲しいもんだ。


「手が止まってますよ、ツェン。ここを掘り終えたらもう少し奥に行きますから」

「はい……」


 そう、ツルハシを振りながら返事をする。
 延々とコンコンやる。
 まるで犯罪奴隷だ。

 迷宮ってのも面白いだけじゃねえんだな、そう思った。


■ティナ 兎人族ラビ 女
■8歳 セイヤの奴隷 ヒイノの娘


「うーん、また【鉄蜘蛛の甲殻】か。あとは魔石と【猛毒袋】」

「残念ですね」

「効率的にはイーリスの方がいいんだな。ドロップ数が全然違う」

「あちらは迷宮主でしたから、領域主とは違うのでしょう」


 迷宮の魔物というのは、領域の中の数がある程度減ると、補充されるように時間をおいて現れるらしいです。
 領域の場所によっては時々【主】が現れる。
 だから【主】を連続で狩ろうとするなら、その領域の魔物を一掃して、現れるのを待ったほうが良いそうです。
 それで現れなかったらまた全滅させる。その繰り返し。

 迷宮で戦うっていうのは大変なんだなーと思います。
 組合員の人たちはいつもこうして戦っているのかと思うと、私もまだまだ強くならなきゃって思います。


「おーい、また間引くぞー」

「はーい!」


 タイラントクイーンと戦うのはご主人様の役目です。
 お母さんはクイーンの攻撃から守る為の盾役。ミーティアお姉ちゃんは蜘蛛糸の対処役。
 子蜘蛛の群れは私とサリュお姉ちゃんで対処しています。

 私も一回、クイーンに一撃入れてみましたけど全然ダメでした。
 カーンッって弾かれちゃいました。
 やっぱりまだまだ弱い。早くみんなみたいに強くならなきゃって思います。

 フンスと意気込んで子蜘蛛に向かおうと思いましたが、お母さんがこちらを見ています。
 なぜ困った表情をしているのでしょうか。
 大丈夫、私、強くなるからね! お母さん!


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