カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

文字の大きさ
66 / 421
第三章 黒の主、樹界国に立つ

64:【指令】大司教を暗殺せよ!

しおりを挟む


■ディセリュート・ユグドラシア 樹人族エルブス 男
■502歳 ユグドル樹界国前王 ミーティアの父


 正直に言おう。
 まさか祈りが届くとは思わなかった。

 儂とて樹界国の樹人族エルブス。妻のロージアほどとは言わなくとも日常的に樹神様に祈りはする。
 しかしこんな絶望的な状況の中、藁をもすがる思いで込めた祈りが、まさか聞き届けられるとは。
 改めて【樹神ユグド】様、そして【創世の女神ウェヌサリーゼ】様に感謝の祈りを捧げるほかない。


 それはユーフィスが怨嗟の言葉まがいの言伝をしていった数日後だった。
 憔悴し項垂れる儂とロージアの部屋に、音もなく近づく数人の者がいた。
 扉の鉄格子から呼びかける声で、初めてその存在に気付いたほどだ。


「お父様、お母様!」

「っ! ミーティアか!?」

「ミーティア! ああっ! 生きていたのね!」

「今、扉を開けます、少々お待ち下さい」


 警備兵から奪ったのか、扉の鍵を開けて入ってきたのは確かにミーティア。
『日陰の樹人』となったせいで髪も肌も色が違う。
 おまけになぜかメイド服を着ている。
 しかしその顔を見間違えるはずもない。その声を聞き間違えるはずもない。
 紛れもなく我が娘ミーティアだった。

 ユーフィスの言伝からずっと心配ばかりしていた。
 祈ってばかりいた。
 それがこうして生きて、再び会えることがあろうとは。
 疑問点は多々あるものの、儂らはただ抱き合い、涙を流した。


 しかしあまり時間がないと、ミーティアは話を切りだす。


「お父様、お母様、詳しいお話の前にまずはご紹介させて下さい。こちらがセイヤ様、私のご主人様であり『女神の使徒』様です」

「っ……コホン、初めまして、セイヤ・シンマです。お助けするのが遅くなりました」

「えっ……ごしゅ……?」

「め、女神の……?」


 混乱していたのは確かだ。
 儂らはミーティアが何を言っているのか、全く理解できなかった。
 何も頭が働かない儂らを見て、彼はミーティアに告げる。


「ミーティア、時間がないから説明は任せる。予定通り俺とネネは神殿に忍び込む。ポルはミーティアとここで待機だ」

『はい』


 それだけ言うと彼は闇朧族ダルクネスと思われるメイド少女と部屋を出ていった。
 残ったのはミーティアと菌人族ファンガスのメイド少女だ。


「お、王様、王妃様! 初めましてですっ! 菌人族ファンガスのポルですっ!」

「あ、ああ……」

「ポル、緊張しなくても大丈夫ですよ。貴女も一緒にお父様とお母様にご説明しましょう。ご主人様とネネならば何の心配もありません」

「は、はいです!」


 そして儂らは聞いた。
 ミーティアが国を追われて以降の事、セイヤ殿……いや使徒様の事、そして樹界国の現状とこれから為す事。
 まるで夢物語。それも良夢と悪夢が混ざったようなとんでもない内容だ。
 混乱した頭で理解するには時間がかかった。


■ネネ 闇朧族ダルクネス 女
■15歳 セイヤの奴隷


 ミーティアの両親は王都ユグドラシアの外れに建っている『罪滅の塔』という所にいた。
 私たちは王都に入らず、外側を回り込んで、塔へと侵入。
 察知スキルを全開にして最小限の警備兵を気絶させながら塔を上った。
 たぶんしばらく起きないと思う。

 最上階に居たのは威厳のあるヒゲのお父さんと、ミーティアそっくりのお母さん。
 二人にはこれから王城に乗り込むにあたって説明、説得して一緒に行ってもらうつもりなんだけど、どうも頭が働いていないみたい。
 そりゃ「これから助けに行きますよー」とか伝えるわけにはいかないからしょうがないと思う。
 いきなりミーティアが来たから驚いたんだね。


 説明と説得はミーティアとポルに任せて、私とご主人様はもう一仕事。


 倒さなきゃいけない国のトップ連中は四人居て、そのうちミーティアの兄・姉と宰相は王城に居ると思われる。
 でも大司教は神殿にいるはず。
 どっちかを攻めてる時にどっちかに逃げられるわけにはいかない。

 かと言って四人しか居ないし(ポルは戦力的に不安だから実質三人だけど)戦力分散もできない。
 だから先に神殿で大司教を暗殺してから、速攻で王城に攻め込むということにした。

 大司教の配下の神殿騎士は他種族を苦しめている徴税官でもあるらしい。
 本当なら大司教だけじゃなくて配下の騎士も皆殺しにしたいんだけど……ミーティアの手前、空気を読もう。
 私、顔色伺うの得意だから。何も言えないけど。
 それに暗殺だったら得意分野だから。
 これでも闇朧族ダルクネスの端くれだし。


「完璧な暗殺をするつもりはないぞ。適度に会敵するだろうし、絡んで来たら殺すか黙らせる。特に大司教の周りで警備しているような騎士は息がかかってるに決まってるから殺す」

「はい」

「一番危惧するのは大司教をとり逃がすこと。それと神殿の外部に漏れることだ。少なくとも王城を制圧するまでは騒ぎにしたくない」


 良かった。殺してもいいって。
 やっぱりご主人様もミーティアに遠慮して今まで殺さなかったんだと思う。
 塔に侵入するのとかも殺した方が速かったしね。
 これで少しはやり・・やすくなった。

 でも今、朝方なんだよね。
 出来れば夜にやり・・たかった。時間的に贅沢は言えないけれど。
 時間も場所も暗殺向きとは言えない。

 塔を出て、王都に入り、中心部にほど近い樹神教の本神殿へ行かなければいけない。
 で、そこの二階に大司教の部屋があるらしいと。


 王都に侵入するのと、神殿に近づくのは私の察知スキルを駆使して裏道とか使うけど、さすがに神殿に入るのに見つからないように行くのは無理だ。
 もうそこからは強行突破かな。
 ひたすら速く、目にした連中から殺していけば……あ、殺しちゃいけないのか。絡んでもらわないと。
 私たちの最高速に絡める人がいるのかな。
 もう皆殺しでいいんじゃないかな。


 そんな事を考えながら、すでに神殿の近く。
 朝からお祈りに来る人、普通に通りを歩いている人、大勢います。


「こりゃ正面からは無理だな。どっかから二階に上れないか?」


 ご主人様もそう言うけれど、やっぱりこの神殿が象徴的な建物だからか、隣の建物とかと繋がってないし高さも合わないんだよね。
 夜じゃないから裏側から壁とか昇ってもバレそう。


「しょうがないな。ネネ、俺の影に入れるか? 二階に上るまで全力でダッシュするわ」


 おお、ご主人様の全力ダッシュは私も付いて行けないくらい速いからね。
 多分普通の人なら通り過ぎたのも気付けないくらいだから。
 じゃあ遠慮なく<影潜り>させてもらいます。

 ―――ビュンッ!

 疾ッ! 恐ろしく速い移動速度。私でなければ見逃しちゃうね。
 そうしてどうにか神殿の二階へと侵入を果たす。
 ご主人様、ご苦労様です。

 二階の廊下にもちらほらと警備兵がいるけど、ここからはもう速攻で気絶か殺すかしていくのみ。
 音を立てず、声を出させず、次々に倒して行く。
 そして一際豪華な扉があった。
 室内の気配は二人。少し聞き耳を立ててみる。


「ははは! また税収が入ってきたぞ! こんなに金が溜まるとはなあ! お主の助言のおかげだ、ペイリーズ!」

「いえいえ、司教様の努力の成果でしょう。私は口を出したに過ぎませんわ」

「すべてが順調だ! 重税に次ぐ重税で金と奴隷が溜まる一方だ! 馬鹿王は奴隷を与えれば満足! 馬鹿巫女は神樹を伐れば満足! この金で国を牛耳るのも時間の問題よ! ははは!」


 ……うん。

 ご主人様と目を合わせる。

 うん。殺り・・ます。


 ご主人様はスパンと扉を斬り、即座に突貫。私も続く。


「んなっ! 何者d―――」

「だ、誰よアナt―――」


 ご主人様がズールとかいうハゲデブを一閃。
 私がそばに居た女の首をはねた。


 ……あ、この女淫魔族サキュリスだ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<これからは「週一投稿(できれば毎週土曜日9:00)」または「不定期投稿」となります> 「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。  死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。  レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。  絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、 「え?、何だ⋯⋯これ?」  これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ? ――――それ、オレなんだわ……。 昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。 そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。 妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処理中です...