70 / 421
第三章 黒の主、樹界国に立つ
68:悪逆の兄王
しおりを挟む■セイヤ・シンマ 基人族 男
■23歳 転生者
「フューグリス……貴様ぁぁぁっっ!!!」
「おやおや、これは父上ではないですか。母上に……そこの罪人はミーティアですかな? 随分と慌ててどうしたのです」
「貴様は国を! 民をなんだと思っておる!」
「ハハハ、これは異な事を。王が民をどう使おうが自由でしょう? それが樹人族ではないこのような劣等種族ならば尚更だ」
王城に乗り込んで来た俺たちは、とりあえず王城制圧しなければと現王フューグリスを探していた。
途中で絡んでくる者は全員なぎ倒し、敬礼してくる者からは居場所を聞き取る。
そうして辿り着いたのは玉座の間だった。
森を愛する樹人族の玉座にふさわしく、石畳と木材が調和し、優美な彫刻に暖かな光が差し込む厳粛な場所。
ところがその場は、現王の遊び場となっていた。
幾人もの奴隷が身ぐるみ剥がされ、四つん這いになり首輪から伸びたリードを握られている。
樹人族以外の樹界国の他種族、『日陰の樹人』となった樹人族、他国から取り寄せたのか獣人系種族や鉱人族までいる。
そういった者たちが鞭で打たれ、剣で傷つけられ、それでも奴隷契約により喋ることも動くことも出来ずに、ただ折檻されるのみ。
玉座の間に入った瞬間、思わず顔をしかめたのは言うまでもない。
ミーティア、お前のお兄さんいい趣味してんな。
親父さん、あんたどういう教育したんだよ。反抗期ってレベルじゃねーぞ。
親父さんと現王の舌戦は続き、お母さんは叱咤している。
そんな中、現王が控えていた近衛兵に指示を出した。
「何をしている、さっさとその罪人どもを捕らえよ」
『ハッ!』
息のかかった選民思想の連中だろうか、十人ほどの近衛兵たちは奴隷たちを見ても何とも思わない様子で、こちらに剣を向けて来た。
仮にも現王の肉親だぞ?
それに躊躇なく剣を向けるとは……これもう終わってんな。
「ミーティア、悪いがさっさと終わらせるぞ」
「っ……はい。もう何を言っても無駄でしょう」
「殺るのは俺だ。ミーティアは陛下たちを守れ。ネネ、兵士を頼む」
「分かりました」「はい」
言うや否や、俺とネネが走り出す。
ネネは風のごとく、次々に近衛兵たちを殺していく。
何が起きているのか分からないうちに、首に一閃されていく。
誰も防ぐことも逃げることもできない。
俺はそんな蹂躙を無視して、現王フューグリスに突貫。
「なっ……!?」
何も言わせない。
ただ斬るのみ。
戦いでもなければ、粛清でもない。
一瞬で首をはねる。
何をされたかも分からないまま、フューグリスは首から大量の血を噴き出し、そのまま動かなくなった。
すると、二つの事が起こった。
一つは周囲にいた奴隷たちの解放。
おそらくこの場以外にも大量にいるであろうフューグリスの契約奴隷が一斉に解放されたことになる。
ある者は泣き、ある者は失神し、ある者はフューグリスの遺体に怒りを向ける。
その混乱を鎮める余裕もなく、二つ目の事が起きる。
フューグリスの遺体から、白いモヤのようなものが立ち上がったのだ。
そのモヤは瞬く間に人の形になっていく。
男性に見えるそれはまるで幽霊か魂か、しかしフューグリスとは顔形が違う。
「幽魔族か!?」
後方から親父さんの声が聞こえた。
こいつが魔族……幽魔族か!
じゃあフューグリスはこいつに操られていた? 元凶はこいつ?
大司教のとこにいた淫魔族といい、魔族に暗躍されまくってんじゃねえかこの国!
『くそっ! こうも簡単に殺られるとは……!』
幽魔族の男はそう言うとふわりと浮き上がって、部屋の奥へと逃げようとする。
逃がすか馬鹿が!
一度納めていた黒刀をそのままに、即座に接近して居合いの一閃。
―――ズバッ! ……手ごたえなし。
まじかよ! 物理無効!?
ならばと<飛刃>を食らわせるも、これもダメ。どうやら<飛刃>は物理扱いらしい。
「ミーティア!」
「はい! 炎の槍!」
その発動速度は<ステータスカスタム>と今までの戦闘経験によって、そこいらの魔法使いが尻尾を巻いて逃げ出すほどだ。
火魔法を使い始めたのは奴隷になってからだが、それ以降、スタンピードや迷宮での連戦を潜り抜けてきている。
そうして放たれた炎の槍は一瞬で生成され、一瞬で放たれ、一瞬で幽魔族を貫いた。
少しこちらを振り返り、ギョッとした表情をしたまま、何も言えず幽魔族は消える。
フューグリスの遺体に怒りを向けていた奴隷たちは再び声を失ったようにその様子を見ていた。
自分の兄が操られていただけかもしれない、ミーティアはそう思っていてもおかしくはない。
両親もそうだろう。そして『日陰の樹人』となり樹人族の禁忌とも言える火魔法を使った我が娘をどう思うのか。
混乱の残る玉座の間。
しかし呆けていてもらっては困る。
俺はフューグリスの遺体を収納しつつ告げる。
「陛下、彼らの保護を。他にも奴隷となった者が囚われているはずです、暴動や混乱を来たす前に保護してください」
「あ、ああ、分かった」
「まだフューグリスの配下のヤツが居るはずだ。そいつらが陛下を狙ってこないとも限らん。ネネとポルはここで警護に当たれ」
「はい」「はいです!」
「ミーティアは俺と来てもらうぞ。偽巫女と宰相を捕らえる」
「っ、はい!」
道中にまともそうな騎士もいたし、奴隷やら混乱の対処はそいつらを動かしてもらおう。
俺はとにかく主犯格のあとの二人を狙う。
王城に居るだろうって話だから、道案内にミーティアは必要だ。
そしてまた走り出す。
正直もう働き過ぎでお風呂に入りたい気分なんだが、あと少しの辛抱だ。
俺以上にミーティアは疲れているだろうが頑張ってくれ。
広い王城を走り回る。
宰相の自室、執務室、ユーフィスの自室、食堂、トイレ、どこを探しても居ない。
警備兵に無理矢理話を聞くと、宰相は今朝から姿が見えないとの事。
逃げた? 俺たちが動いてるのがバレたか?
そしてユーフィスは神殿に向かったとの事。
入れ違いか! いや、そうすると大司教が居ないのもバレてるはず。遺体は<インベントリ>の中だ。
異変に気付いたユーフィスはどうする?
王城に戻るか、逃げるか、それとも……。
ともかく一度玉座の間に戻って、それを親父さんたちに伝える。
「二人とも姿を消したと……?」
「ここに向かってきてくれれば捕らえるのは楽ですが、逃げられると面倒です。まずは王都の出入りを封鎖すべきです。同時に二人を見つけたら捕らえるようお触れを」
「うむ」
さて、俺とミーティアは神殿に向かってユーフィスの行方を―――
「ご主人様、姉は神樹へと向かったのかもしれません。姉の目的が神樹の伐採であれば、それを為そうとするのでは」
……確かにそうだな。
聖域の森の伐採が進んで神樹への道が出来ていても時間的におかしくはない。
異変に気付いたユーフィスがとにかく神樹を伐れば勝ちだと急ぎ向かう事も考えられる。
いずれにしても神樹は守らないといけないんだ。
早めに確保・守護しておいて損はないか。
「よし、じゃあ俺とミーティアは神樹へ向かう。ネネ、ポル、ここは頼んだぞ」
『はい』
6
あなたにおすすめの小説
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜
昼寝部
ファンタジー
2XXX年、X月。
俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。
そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。
その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。
俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。
これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。
スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました
東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!!
スティールスキル。
皆さん、どんなイメージを持ってますか?
使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。
でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。
スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。
楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。
それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。
2025/12/7
一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる