カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第三章 黒の主、樹界国に立つ

69:【宵闇の森】は静かに闇へと消える

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■デゾット 樹人族エルブス 男
■388歳 【宵闇の森】幹部


「なにぃ!? 失敗しただと!?」

「ハアッ、ハアッ、く、組合じゃ今、大騒ぎだ! 連中を狙った十二人が全員捕まっちまった! バレるのも時間の問題だぜ!」

「くそがぁっ!」


 拳を叩きつけた机がバキッと割れる音がした。
 あれだけ話し合って、あれだけ油断するなと言っておいたのに最悪の結果だ。
 八つ当たりの一つもしたくなる。

 聞けば手練れの十二人がたった四人のメイドに捕らえられたそうだ。
 しかも多肢族リームズ狼人族ウェルフィン兎人族ラビが二人という女子供連中に。
 どんな失敗を重ねれば全員が捕らえられるなんて事態になるのか分からねえ。
 理解不能にもほどがある。

 しかし結論は変わらねえ。
 捕らえられた連中から俺たちの情報が洩れるのも間違いねえ。


「アジトを移すぞ。いつガサ入れが入るかも分からねえ。撤収準備だ」

『おう!』


 そう動き出そうとしていた矢先だった。


 ガチャリと扉が開く。
 まさかもうアジトの場所がバレたのか!?
 そう思い咄嗟に部屋に居る全員が剣を抜き、扉を睨む。


 そうして入ってきたのは二人。
 大柄な鬼人族サイアンの男と、細身の鳥人族ハルピュイの男。
 まるで実家にでも帰ってきたかのように、悠々と部屋に入る。


「だ、誰だてめえら!」

「あん? 誰だって……ああそうだ、一応聞くんだったわ。お前ら【宵闇の森】だよなぁ」

「!?」


 こいつら、俺たちを【宵闇の森】と知って……?
 襲撃者? 捕らえる? 殺す? 別組織?
 考える束の間の逡巡に、業を煮やした仲間が斬りかかる。


「死ねやおらああ!!!」

「黙れ雑魚が」


 鬼人族サイアンの男が振ったバカでかい大剣で、斬りかかった奴が一瞬でミンチになった。
 この狭い部屋で、あんな剣を振り回すのも異常。
 短剣より速く振るうのも異常。
 血肉が飛び散る部屋を、混乱が支配する。


「ったくよぉ。まぁかかって来たってことは【宵闇の森】ってことだよなぁ」

「て、てめえら……一体……」


 鬼人族サイアンの男は面倒くさそうにこっちを見て告げる。


「あん? 【天庸てんよう】だよ【天庸】」

「なっ……! 【天庸】……だと……」


 魔導王国の闇組織【天庸】!
 指名手配だらけの犯罪者集団!
 俺たちが姿を見せずに影に居続けるのに対して、【天庸】は表に出ていても誰にも捕らえられない凶悪な戦闘狂たちだと聞く。
 魔導王国内だけで動いていると聞いたが、なぜ俺たちを……!


「カオテッドで祭り・・があるらしくてなぁ、お前らみたいな羽虫が飛び交ってると邪魔なんだと」

「っ!?」

「で、噂に聞いた【宵闇の森】はどんなもんかって来てみれば……はぁ、期待外れもいいとこだ」


 その言葉に激高した仲間たちが次々に襲い掛かる。
 しかしそれはまさしく羽虫を払い落とすが如く。
 鬼人族サイアンに向かったやつは大剣で薙ぎ払われ肉塊に変わる。
 鳥人族ハルピュイは蹴りを放ったように見えたが、蹴られた仲間は四肢を切断されていた。

 そして残ったのは俺一人。
 震えと冷や汗が止まらない。
 逃げることも出来ず、剣をとる事も出来ない。


「はい、しゅーりょー」


 無造作に振り下ろされた大剣を見て、俺の意識は消えた。


■ジェルバストン 樹人族エルブス 男
■705歳 【宵闇の森】首領


「て、【天庸】だと!?」

「おう、そうともさ。あんたが【宵闇の森】のボスだろう? 全くこんな所に隠れやがって、探すの苦労したぜ」


 王都ユグドラシアの隠れ家、我ら【宵闇の森】の本拠地は、突然の襲撃に会っていた。
 派手な侵入をしたのは見上げるほど巨躯な岩人族ロックルスの男。
 入口となる隠し扉を壊され、本拠地を守っていた構成員を次々に殺し、ここまでやって来た。

 書類や資金を入れたマジックバッグを抱え、急ぎ避難経路から逃げようとしたが、それも遅かった。

 裏側から別ルートで侵入してきた女がいたのだ。
 灰色のローブを目深に被った、おそらく樹人族エルブスと思われる女。
 どうやって裏道を見つけたのか、どうやってここまで来れたのか、分からない。

 しかし結果的に、岩人族ロックルスの男と樹人族エルブスの女に挟まれる形で防がれている。


「貴様ら……何が目的だ」

「目的だ? そりゃお前らを潰すために決まってんだろうが」

「魔導王国の【天庸】がなぜ我らを狙うのかと聞いているっ!」

「ああ、そういう事かよ。まぁ……ついで・・・だな」


 ついで……だと?


「樹界国に来た目的は別にあるんだが、ついでに【宵闇の森】も潰そうってな」

「なっ……!?」

「まぁ金も溜めこんでるみたいだし、カオテッド的にも邪魔だし、俺もどんな強ぇヤツがいるのか気になってたし……期待外れもいいとこだったが」


 カオテッド……?

 確かにあの地の迷宮資源を狙って十年に及ぶ干渉を続けている。
 最近は特に第二王女ミーティアの件もあり慌ただしくなっていたところだ。
 樹界国内も政変から神樹の伐採へと目まぐるしく変容し、国の動きが活発になるのと同時に我々の動きも活発になっている。

 その慌ただしい動きを逆手にとられた?
 前々から【天庸】はこの期を狙っていたのか?
 こちらを潰す事でカオテッドの迷宮資源を、いや、カオテッドの裏側を全て牛耳るつもりか!?

 で、あるならば【宵闇の森】がカオテッドから手を引くことを明言すれば、この機を脱するやも―――


 ―――ザシュッ!


「!? ……っ! がっ……がはっ!」


 胸元に走る激痛。
 何事かと目をやれば、そこには胸から突き出た剣先が……。
 背中から……刺されたのか……。


「ボルボラ、お喋りが長い」

「ゲハハッ、悪いなリリーシュ。どいつもこいつも弱すぎて暇だったんだ。このボスも案の定だったしな」

「こいつらなんかオマケ・・・でしょ。さっさと行くわよ」

「おうよ」


 薄れゆく意識の外で、そんな声が聞こえた。


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