カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

文字の大きさ
76 / 421
第三章 黒の主、樹界国に立つ

74:王都ユグドラシア、出立

しおりを挟む


■セイヤ・シンマ 基人族ヒューム 男
■23歳 転生者


 正直失敗だったと言わざるを得ない。


「なんだ、あの基人族ヒュームとメイドは」
「お前、あれだよ、昨日ミーティア様と―――」
「ええっ、じゃああの方が女神の使徒様か!」
「ありがとうございます、使徒様!」


 ハハハと苦笑いしながら、軽く手を上げるのみだ。
 こら、ネネ、結婚指輪見せるポーズやめなさい。左手を下ろして。むふーじゃない。


 どうやら昨日の話は王都に広まったらしい。
 そりゃミーティアと王様・王妃様が王城に乗り込んだの見られたし、その後も王城と神殿で大騒ぎだったろうし、騎士団とか衛兵も動かしてたみたいだから噂になるのは分かる。
 俺だって自分が目立つ風貌だと自覚している。

 それを考慮せずに王都を呑気に歩いているのが間違いなのだ。
 やはりさっさと樹界国を脱出すべきだった。

 でもこんな状況でミーティアを国元から離すのも気が引けるし、宰相とか【天庸】の行方が気になるのも確か。
 王城でゴロゴロしててもいいんだけど、見回りくらいはしたいなーと思ったらこのザマなんだが。


「ともかく商業組合行くぞ。手紙だけは出そう」

「はい」


 普段なら「基人族ヒューム? ああん?」ってなりそうな組合も、すでに俺の情報を得ているらしく、伝書鳥の手続きはスムーズに済んだ。
 詳しい事は帰ってから話すとして、とりあえず樹界国は一段落したよと。
 帰りはさすがに走らず帰るよと手紙に書いた。


 その後はなるべく王都ユグドラシアを歩いて回る。
 改めて見るとカオテッドの南東区と同じように、街路樹と木造建築が多く、緑豊かな都だと感じた。
 中にはツリーハウスのように木と家が合体しているものもある。

 やはり樹界国に木々はありきのもので、これでよく森林伐採に踏み切れたものだとある意味感心した。
 反発が多そうなのに、よく抑え込んで強行したものだと。

 裏道も一応簡単にではあるが見て回った。いわゆるスラムだな。
 ネネの<危険察知>にも<気配察知>にも妙なのは反応しないらしく、やはりとっくに王都から出ているのかもと少し残念。

 逃げ足の速そうな【天庸】の女はともかく、宰相が気掛かりなんだが。
 俺らはかなりスピーディーに動いたつもりなのに、いつの間にか逃げられていた。

 陛下が言うように【天庸】と繋がっているとすれば、俺たちと出会った時の【天庸】の反応がおかしい。
 あれは俺たちの存在を知らない反応だったからな。

 じゃあ宰相は何者でどこに……と考えるだけ無駄なのかもしれない。
 居ないものは居ない。分からないものは分からない。
 答えの出ない推測をしても意味がない。


 そんなわけで収穫なしで王城に帰還した。
 陛下や王妃様は相変わらず忙しそうで、ミーティアもヘルプで忙しそう。
 ポルはヘルプのヘルプかな。

 なんかムードメーカー的なポジションと言うかマスコット的存在と言うか、意外と連れて来て正解だったかもしれない。
 特に王妃様に気に入られてる。


 そして翌朝、出立となった。


「使徒様、この度は本当にありがとうございました。ご迷惑をお掛けしました」

「頭を上げて下さい陛下。周りの目が気になりますんで」

「ミーティア、使徒様にしっかりお仕えするのよ」

「はい。お母様も、お父様も、国を頼みます」


 見送りは王城までとさせてもらい、逃げるように旅立つ。

 尚、兄王フューグリスから解放された奴隷が、俺と契約したがってたらしい。
 多分、世話したポルが俺の奴隷だったことと、その左手の奴隷紋を見たせいだと思う。

 だが勘弁してもらった。
 あの玉座の間にいたのは二〇人くらいだが、他の収容所にいたのも含めると数百人規模になる。
 一人と契約したら、我も我もと何人契約するはめになるか分からん。
 正直そこまで面倒は見きれない。キャパオーバー。


 そんなわけで行きと同様、帰りも四人旅である。
 ポルを背負うこともなく徒歩で。


「ご主人様、帰りは走らないんですよね? 馬車とか使わないんです?」

「多少は走るぞ。馬車よりも早く着くつもりだし」

「おお、そうなのです? 私も帰りはがんばるです!」

「それに馬車だと森に入れないだろ? 森とか山とか突っ切って、ゆっくり魔物狩りながらショートカットって感じだな」

「えっ」

「あ、ついでに山賊退治していくか。ミーティアどこかいい山賊スポットあるか?」

「さ、山賊スポット?」

「住処は分かりませんが居そうな場所は分かります。ご案内します」

「頼む」


 行きは急ぎだったから、ろくに魔物も狩れず、山賊退治も出来なかったからな。
 ポルを鍛えるついでに治安を良くして、おまけに金策にもなる。一石三鳥。
 なんかポルが戸惑ってるけど、大丈夫、帰る頃にはちゃんと戦えるようになってるって。


「じゃあ早速、森に行こうか」

「「はいっ」」

「ええ~~~っ!?」



■エメリー 多肢族リームズ(四腕二足) 女
■18歳 セイヤの奴隷(侍女長)


 今朝、迷宮へと出掛けたイブキたちが、すぐに帰ってきました。
 何事かと思ったら組合で手紙を受け取ったらしいです。


『あ、【黒屋敷】の皆さーん、お手紙届いてますので受け取りお願いしまーす』

『手紙? もしや……こ、これはご主人様からっ!』


 待ちに待った連絡に、迷宮へも入らずそのまま帰ってきたと。
 英断ですね。
 私も心待ちにしていたので、すぐに読ませてもらいます。

 ……。


「エ、エメリーさん! ご主人様は何て!?」

「落ち着きなさいサリュ。四人とも大事ないようですよ」

「ほっ、良かったー」

「詳しくは帰ってからとの事ですが樹界国のゴタゴタはミーティアのお父様が王に復帰する事で落ち着いたようです。神殿組織も元々の大司教が復帰したと」

「ミ、ミーティアさんはどうなるんです?」

「こちらに帰ってくるそうです」

「良かったー」


 ミーティアが国に残るかもとは私も思いました。

 彼女の『神樹の巫女』としての矜持、愛国心の強さというものは出掛ける時によく出ていましたからね。
 いくら『日陰の樹人』となり国外追放された身であっても、根底にあるのは『巫女』なのでしょう。

 そしてミーティアが国に残ると言うならば、おそらくご主人様はそうさせたはず。
 ご主人様がミーティアの気持ちを考えずにカオテッドに連れて来るとは思えません。
 まだ混乱が残る国を差し置いて、ご主人様と共に戻るという決断をしたのでしょう。

 侍女ならば当然……とは一概には言えませんね。
 様々な思いをおしての決断なのでしょうから。
 私はミーティアのその決断を尊重するだけです。


 ちらりと、サリュの隣にいるに目を向けます。


「もうすぐ紹介できそうですね」

「は、はい! 緊張します!」

「きっと大丈夫ですよ、楽しみにお待ちしましょう。それまではお勉強です」

「は、はいっ!」


 さて、ご主人様が帰っていらっしゃった時の為にお出迎えの練習をしなければ。
 お料理はヒイノと相談しましょう。
 お風呂もおそらく望まれるでしょうから、以前お聞きした柚子湯というものも良いかもしれません。

 ああ、ポルとこの娘・・・の歓迎会もしなくては。
 ポルはろくに交流も出来ないまま樹界国へ行ってしまいましたからね。
 一緒にやるのが良いでしょう。


 ……ポルは帰ってくるのですよね?
 ……集落に返して来ることも……ありえますかね?


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<これからは「週一投稿(できれば毎週土曜日9:00)」または「不定期投稿」となります> 「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。  死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。  レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。  絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、 「え?、何だ⋯⋯これ?」  これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ? ――――それ、オレなんだわ……。 昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。 そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。 妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処理中です...