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第四章 黒の主、オークション会場に立つ
82:ニューカマー・ファーストコンタクト
しおりを挟む■セイヤ・シンマ 基人族 男
■23歳 転生者
まさか二人も追加するはめになるとは誤算だった。
十四人だぞ、十四人。
確かに侍女ハーレムは望んだけどさ、多すぎだろ。キャパオーバーですわ。
いや確かにティサリーンさんが二人を連れてきた時は「また美人連れてきたなー」ってテンション上がったよ?
ジイナ・ポルと幼女っぽいのが続いたのは何だったのかと。
ティサリーンさんやるじゃんと。
二人とも額に特徴があって「ん?」ってなったけど、すぐに種族は分かった。
一人目は多眼族のアネモネ。十七歳。目を隠すような紫髪ロング。
エメリーと同じくらいだから160cmくらいか。
額にサードアイ! しかも魔眼だそうな。俺の中二心をくすぐる。
もうこの時点で俺的には買いなのだが。
なんでも『看破の魔眼』というらしくそれで苦労してきたらしい。
嘘発見器的な能力らしいが、これネネしか持ってない<魔法陣看破>もありえるんじゃねーかと。
是非とも奴隷にして<スキルカスタム>で確認したいところだ。
一応、本当に嘘が分かるもんなのか確かめてみた。
「今朝、オーク肉のステーキを食ってきた」
「嘘、です」
「俺、こう見えて実は基人族じゃない」
「嘘、です」
「俺は『女神の使徒』なんかじゃない」
「嘘……嘘ぉ!?」
本当って言えよ、おい! 俺は認めてねえぞ! 誰が何と言おうとあんなゴミ女神の使徒とか嫌だから!
ちょっと後ろの君たち、うんうん頷くのやめてくれるかな。
ティサリーンさん、貴女まで頷くことないでしょ。
……まぁともかくだ、不本意ながらアネモネは『女神の使徒』『女神の加護』に惹かれたらしく、奴隷となった。
言っておくけど加護なんて誰も貰ってないからね?
みんな口ではそう言うけど、何一つ貰ってないし、与えるような女神じゃないから。
そして二人目。導珠族のウェルシア。70歳。見た目は18歳くらい?
水色ロングの髪。身長は160ちょっとだと思う。貴族っぽい娘。
額にはエメラルドのような緑の菱形の宝石。
導珠族でこの色っていうのは確か風魔法使えるはず。
もうこの時点で俺的には買いなのだが。風魔法使える娘いないし。
彼女はなんと【天庸】に家を潰されたそうだ。物理的に。
確かに俺と戦ったボルボラレベルであれば、家を潰すなんて楽勝だと思う。
という事はあのレベルのヤツが【天庸】にはまだいるってことだ。
やっぱ皆のレベルアップしなきゃなー。
……と思ってたら、話を聞くうちに違和感を覚える。
ん? ウェルシアの家潰したの……もしかしてボルボラ本人?
「すまん、そいつ俺が殺したわ、多分」
「えっ」
自分の手で復讐したかっただろうに……なんか殺しちゃってすまん。
やっちまったなーと思いつつ、説明はミーティアに任せる。
これはもうあれだな、全部【天庸】が悪いってことで、ウェルシアの復讐の矛先は【天庸】にすべきだな。
やっぱこの娘も買おう。
そんでチャンスがあれば一緒に【天庸】を潰すことで復讐完了としてもらおう。
そうすれば俺がボルボラ殺しちゃったことも許されるだろう。協力したってことで。
「セイヤ様、相変わらずですのね」
帰り際、ティサリーンさんが慰めるようにそう言ってきた。
ヤメロ! 残念な子を見るような目で見るんじゃない!
色々と不可抗力なんだ!
そう、これ『女神の加護』じゃなくて『女神の呪い』みたいなもんで、あ、もういいですか、そうですか。
そんなわけで八人の奴隷(うち六人侍女)を引き連れて、ぞろぞろと商館を出る。
「げえっ! 【黒の主】!」
「ティサリーン奴隷商館から出てきたぞ!」
「また増やしやがった!」
「また可愛いの増やしやがった!」
そんな声を無視しつつ、屋敷へと歩く。
道中、ずっと目を合わせないフロロに一応確認する。
「なんか差異はあるか?」
「ないのう」
そうか。
つまりフロロは二人とも奴隷にすると分かっていたと。
運命って何なのかね。
まぁボルボラ絡みのは運命感じますけども。
そして家に着き、みんなを集めて紹介する。
「買うとは思ったがまさか二人とは思わなかった」とはツェンの談。
俺は買うつもりもなかったんだけどね。
運命が悪いよ、運命が。
紹介の後にはこちら側の説明。そしてこれからの方針について話し合う。
「アネモネ、ウェルシア。家の事、仕事の事についてはエメリーやイブキから詳しく聞いて欲しい。いきなり詰め込んでも分からないだろうし」
「「はい」」
「ポルもな。お前は何も知らないまま連れ出しちゃったからドルチェ以上に分かってない部分があると思うし」
「はいです!」
「ドルチェはポルとは逆に、家の事は知ってても俺の能力や戦闘に関して分からないことがまだあるはず。一応一緒に教わってくれ」
「はいっ!」
昨日ドルチェには説明したばかりだが、とりあえずアネモネとウェルシアにざっくりとした説明を始める。
つまりは転生者であり、女神に<カスタム>スキルをもらっている事。
その<カスタム>により、ステータス・アイテム・スキルが強化出来るという事。
ステータスやレベルという概念については今度教えてもらってくれ。
「ふふふ……嘘じゃない……全部ホント……」
「頭が痛くなってきましたわぁ……」
これでもまだ最低限の情報なんだがなぁ。
しかし理解できないまでも、知っておいてもらわないと話にならん。
「まぁ俺のスキルで奴隷が強くなると、それだけ理解すれば良い。ただ強くする為にCPという『魔物を倒すことで得られる得点のようなもの』が必要なのだと」
「「はい……」」
「ポルは大丈夫だよな。ドルチェはここまで大丈夫か?」
「大丈夫なのですっ!」
「わ、私も何とかっ! 要は私たちが魔物を倒せば、ご主人様が<カスタム>スキルで強くなさってくれるって事ですよね!」
まぁ合ってる。ざっくりしてるけど最初はそんなもんか。
レベルやステータスの意味、CPの取得基準、スキルレベル、レベルキャップによるカスタム上限とか覚えることは多いんだけどな。徐々に覚えていってくれ。
なんとなく理論派より感覚派の方が取っ掛かりは早い気がするな。
理解するのに苦労するから理論派は最初で躓く。
フロロやジイナ、ミーティアが良い例だ。
ステータスとか未知の概念すぎて理解できず、でも一度理解さえ出来れば応用も早い。
エメリーも理論派だがあの娘は色々と規格外だから除外。
一方で感覚派のツェン、ポル、ティナ、ネネなど。
こちらはあまり考えずに「とりあえずご主人様が言うからそうなんだろ」と納得してしまう。
おかげで<カスタム>されたステータスでもスムーズに使いこなしたり、習熟が早い。
しかし応用は弱いし、自分でステータスの割り振りを考えるとか出来ない。
ウェルシアは前者、ドルチェは後者だな。
アネモネがよく分からん。「ふふふ……」と不気味に笑っている。
「俺たちは皆でもっと強くならなきゃいけない。これは共通意識にしたい。ただでさえ絡んでくる輩が多いのに【天庸】とかが来た場合、俺一人であのレベルのを九人相手になんて出来ないからな」
皆が頷く。特に対峙したミーティアと、ある意味仇であるウェルシアの顔は険しい。
「強くなるには迷宮に潜り、皆で多くの魔物を倒しレベルを上げる。またCPを確保し俺が皆を<カスタム>強化する必要がある」
先ほどの繰り返しだからか、新人たちもここは頷いた。
「戦うための装備品については明日、南東区と北東区に買いに行く。服と杖だな。あとは半月後のオークションにも臨むつもりだ。それまでに金も貯めておこう」
南東区の服屋でアネモネとウェルシアの侍女服を発注せねば。
あとは北東区の魔道具屋で杖も買う。
アネモネは闇魔法、ウェルシアは風・水魔法らしいからそれに見合った杖だな。
ちなみにドルチェには盾と槍を持たせようと思っている。これはジイナに発注済みだ。
「ただ、金はともかくCPが足らん。ドルチェ・アネモネ・ウェルシアはもちろん、ジイナやポルも不十分。皆のレベル上げも兼ねているから、上げたその分<カスタム>もしたいし」
もう何が言いたいかお分かりだろう。
俺は碇ゲン〇ウのように両手を口の前に組んで、こう言った。
つまり―――
「―――魔物部屋マラソンだ」
……ジイナとフロロがビクゥンッ! ってなったけど大丈夫だろうか。
……ティナがはしゃぎすぎなんだが大丈夫だろうか。
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