カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第七章 黒の主、【天庸】に向かい立つ

169:鎌首を擡げるは死神の如く

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■ドミオ 妖魔族ミスティオ 男
■???歳 【天庸十剣】第三席


「私の大事な侍女服を傷つけた代償は大きいですよ?」


 目の前の彼女はそう言いました。
 私の【魔剣グラシャラボラス】、その姿と特性を前にして、よくぞ前に出られたものだと感心します。
 尻尾を巻いて逃げ出したとしても、何もおかしくはありませんからね。


 【魔剣グラシャラボラス】は斧槍型の魔剣。
 魔剣である以上、アダマンタイトを超える強度・硬度は当然あります。
 そこへ持って来て、魔力を流せば穂先の刃には闇の魔力が纏わりつく。

 闇の魔力が引き起こすのは″腐蝕″の効果です。
 武器と打ち合えば、相手の武器を錆びさせ、腐らせ、ミスリルであってもボロボロと崩れます。
 盾や鎧でも同様。金属であれば″腐蝕″の対象ですし、魔物素材でも腐らせます。

 では服やローブならばどうか。それは彼女の御覧の通り。
 布の繊維も、魔物素材も、同様に腐れ落ちていく。


 つまりは防御不能。

 受けることも逸らすことも出来ない。
 触れれば……いえ、刃に触れなくとも闇に触れただけで″腐蝕″するのですから。

 ならば避けますか? 避けながら戦いますか? 私を相手に?
 残念ながらそれは無理です。


 私はヴェリオ様の改造に加えて『狂心薬』でさらに強化されています。
 ついでに言えばスキルの付与もありますし、『神樹の葉』により神聖属性耐性も得ています。
 これまでの動きを見るに、彼女が私の攻撃全てを避け、尚且つ私に勝つという事はありえません。


 私は彼女が多肢族リームズだから、非戦闘系種族だからと侮る事はしません。
 彼女の言った「侍女長」という肩書きだけで、あの【黒の主】が目にかけている事が窺えます。
 報告にあった【黒の主】の「仲間に対する強化」。それは彼女にも当然施されているのでしょう。

 侍女長という事を考慮すればミーティア王女や闇朧族ダルクネス竜人族ドラグォールといった報告を受けた面々よりも強くされている可能性すらある。

 私は本来、虚弱で臆病な妖魔族ミスティオですからね。
 それくらいの気持ちで挑みますとも、ええ。


「参ります」


 彼女は前傾姿勢で向かってきます。
 手には四本のハルバード。それは恐ろしい速度で、中距離から連撃を放ってくる彼女ならではの武器。

 うち二本は私の″腐蝕″を受けていましたが、未だ形を保っているところを見ると、なるほどかなりの業物なのでしょう。
 ミスリル以上なのは確実。魔物の素材で打たれたものかもしれません。

 とは言え、そう何度も打ち合えないはずです。
 数回私が受けるだけで、それは簡単に折れるでしょう。

 つまりこちらは防御に専念すれば―――




 !?




 目の前に迫った彼女が振り上げたのは二本・・のハルバード。

 そして左右、下の手に持っていたハルバードは消え―――いつの間にか二つの黒い小盾・・・・を装備していました。

 マジックバッグを使っての換装!? 速いッ!


 ―――ガィンッ!!!


 彼女は私の魔剣にわざと盾をぶつけて来ました。
 ″腐蝕″に当てられた小盾がかすかに・・・・煙を上げます。


「ふむ、これならば多少は持ちますね。しばらく・・・・は二つだけ・・で良いでしょう」


 魔剣の″腐蝕″がほとんど効かない!? 何ですかその盾は!

 咄嗟に盾を分析しますが、私の頭にあるどの鉱物にも当てはまりません。
 魔物素材? いや、こんな硬質な岩のような素材を持つ魔物など……私の知る限り存在しません。

 混乱している暇もなく、彼女の攻撃が苛烈になります。

 今までの速度が様子見だとでも!? 
 一体どれだけの強化をされていると―――


 ―――ギンッ! ギンッ! ギンッ!


「くっ……!」

「やはりミスリルソードでは数発が限界ですか。これ以上は折れますね。では変えましょう」


 振られたのはハルバードではなく、いつの間にかミスリルソードに変わっていました。
 何とか受けますが、間合いも速度も先ほどとは変わっています。

 さらにそのミスリルソードを仕舞ったかと思えば……今度はミスリルスピアですか!
 少し離れたと思ったその距離が、すでに適正距離。左右二つの矛先が向かってきます。


「ぐっ! 貴女はッ! 一体……ッ!」

「では次はミスリルの大剣を」

「があっ!!!」


 一体、どれだけの武器を持っているのか。

 どれだけ速く換装するのか。

 なぜどの武器も使いこなせるのか。

 混乱に拍車が掛かります。


 体勢を整えなければ、そう、私の有利は背中の翼にあります。
 上空からの攻撃に終始すれば、彼女がいくら戦闘技術が高かろうが、それは対空攻撃のみになる。
 隙を縫って距離をとり、私は空へと舞い上がr―――


「させませんよ」


 私の足首には鎖が巻き付いていました。
 いつ投げた!? いつ持ち替えた!?
 抗う私の足の腱が、ブチブチと嫌な音を上げます。


「ぎぎっ―――がああっっ!!!」


 さらに襲い掛かるのは何本もの投げナイフ、鎌、ハンドアクス。
 次々に襲い掛かる凶器に、たまらず私の力が抜けました。
 そして、その容姿からは想像できない力強さで、私は無理矢理地面へと叩きつけられたのです。


 ―――ズガァァン!!


「ぐあああっ!!!」


 吹き飛びそうな意識を何とか持ちこたえ、虚ろな目で彼女を見ます。

 コツコツと靴音をたて、彼女は倒れた私の元までやって来ていました。


「な……何者、ですか……貴女は……ッ!」

「言ったでしょう。私はセイヤ様にお仕えする侍女長、エメリーです」


 何とかしなければ……彼女はここで倒さないと……!
 その一心で身体を動かします。

 右手に持った魔剣を……ない……私の魔剣はどこに……?

 叩きつけられた時に手離したのか……!?













「さて、は″腐蝕″するのですかね?」


 見開く目に映る彼女。
 その手には私の―――


「侍女の服を破いたお客様には退席して頂きます」

「あ、なた、は―――、……か―――」








 ―――ザシュッ









 最期に見えたのは禍々しい、黒いハルバードを振り下ろす彼女死神の姿でした。


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