カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第九章 黒の主、魔導王国に立つ

205:魔導王国への旅立ち

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■エメリー 多肢族リームズ(四腕二足) 女
■18歳 セイヤの奴隷(侍女長)


「よーし、準備はいいかー? 忘れもんないようになー、しばらく帰って来れないぞー」

『はいっ』


 四階層の再探索が終わって数日、私たちは全員で屋敷を発ちます。
 この数日は本当に忙しかったですね。色々と準備する事が多くて。


 まずパーティーホールを改造して作られた『総合神殿』ですが、一応の完成を見ました。
 内装と祭壇・神像の配置が終わり、侍女たちの手によりそれぞれの祭壇に飾り付けや供え物が置かれています。

 残るは窓の問題ですが、北東区のガラス屋さんにステンドグラスを発注しています。
 これは魔導王国から帰って来た時にどのように仕上がっているか確認ですね。楽しみです。

 神像や祭壇をやたら動かすのもどうかと言う事で、今回は<インベントリ>に入れず『総合神殿』に置きっぱなしのまま出掛けます。
 精巧に作り過ぎたので動かすと手の位置がずれたりと大変なのです。
 一応はジイナに耐震補強してもらっていますが少し心配ですね。


 ちなみにエントランスの展示や、娯楽室のビリヤード台、本棚などは全て<インベントリ>に収納済みです。
 鍛冶場や錬金工房の荷物も同じ。ガランとした屋敷になっています。


 鍛冶場と言えば、装備の件ですが、まずシャムの中盾をジイナが作成しました。
 風竜の牙を使った【風竜牙の中盾】という真っ白い盾です。非常に美しい。

 さすがは竜素材と言いますか【炎岩竜の中盾】に匹敵するほどの強度だそうです。まぁ細かく見るとやはり【炎岩竜】の方が防御力は高いそうなのですが、問題ないでしょう。


 ユアはポーションなどの錬金薬を作成する合間を縫って、自分用の杖を完成させました。
 黒曜樹とヘルハウンドの赤い魔石で作ったシンプルな杖。ご主人様の命名は【黒炎の杖】です。

 試作という事で作り自体はごくありふれた杖という事ですが、それでもかなりの性能のようです。作った本人が驚くほどには。
 帰ってきたら本格的に杖の製作を行うと言う事ですので、そうなればフロロたちの杖も更新されるかもしれません。


 マルの弓は南東区の弓職人に発注していますが、完成には時間が掛かる為、こちらも魔導王国から帰って来てからのお楽しみです。

 ご主人様が職人さんと色々と相談し、結局は二階層【領域主】のエルダートレント素材をベースに、風竜の骨・皮・腱も材料として提供しました。
 私は詳しくありませんが、ミーティアの弓のような単一素材で作られた弓ではなく、いくつもの素材を組み合わせた『複合弓』というものを作るのだそうです。

 職人さんは風竜素材に大変驚いていましたが、腕が鳴るとかなり気合いが入っていましたね。
 良い物が仕上がるといいのですが。期待しましょう。


 迷宮組合のスペッキオ本部長にも魔導王国へ行く旨を伝えました。
 我々への報奨や礼金が色々と溜まっているそうですが、その一部にと考えているスキルオーブなどについても、帰ってくるまでには用意するとの事です。
 こちらも帰ってからのお楽しみですね。


 長期間に渡り屋敷を空ける事になりますので、例によって屋敷の警備もお願いしています。
 もちろんズーゴさんたち【八戒】の皆さんなのですが、さすがに今回は期間が読めないので、傭兵組合に伝え、二~三組の傭兵団で回してもらうようお願いしました。


「訓練場が併設された任地なんて他ではありませんよ! なるべく自分たちで警備させてもらいます! お任せ下さい!」

も一応置いて行きますけど、盗まれないように固定させちゃいますので。使うのはご自由に。あとバルボッサたちが来たら好きに使わせちゃっていいですから」

「ありがとうございます! ……しかし、少し見ない間にすっかり『黒屋敷』になったんですね。見違えましたよ」

「ハハハ……不可抗力ですよ……ハハハ……」


 ズーゴさんはうちの地下訓練場の常連ですからね。
 そこの警備となれば一生懸命やってくれるでしょう。
 まぁ仕事どうこうよりただ訓練したいだけのような気もしますが……。


 それと、畑と庭園のお世話も南東区の方に頼んでいます。
 前回、ポルが商業組合を通じて依頼した方ですね。

 コゥムさんという草人族グレイスの女性ですが、なんとこの方はカオテッドの古株で、南東区の大通りの植樹などもデザインされた方のようです。計算して木々が配置された住みやすい都市計画の一端を担っていた方だと。


「アチシにまっかせなさいって! カオテッド住民として【黒屋敷】には恩があるからね! しっかり面倒みちゃうから!」

「またお願いするです! 期間が分からないので収穫時期になっちゃうかもしれないですけど」

「そしたら乾燥させておくよ! 豆とか香草だったら別にいいでしょ! んでまた植えとく! このお屋敷はお庭も綺麗だからね~! やりがいあるよ!」


 コゥムさんは専門家なので全面的にお任せです。
 むしろ専属契約してもいいくらいに思っています。私個人としては。


 そんなこんなで買い出しやCP稼ぎも含め、着々と準備を進めました。
 メルクリオ殿下との打ち合わせも行い、日程や行動予定などもお聞きしました。
 その中でラピスの事も紹介しておきました。


「ラ、ラピス・アクアマリン王女殿下ですか!?」

「初めまして、メルクリオ殿下。お目に掛かれて光栄です」

「なんと……知らぬとは言えご挨拶が遅れまして申し訳ありません……エクスマギア魔導王国第三王子のメルクリオ・エクスマギアと申します。……ちょっと、どういう事かな、セイヤ?」


 ラピスにきちんと礼をとった後、ひきつった笑みでご主人様に顔を向けました。
 さすがに驚いた様子ですが、共に魔導王国へと行くのに黙ったままというわけにもいきません。紹介しておいて正解でしょう。

 ラピスも相手が殿下という事で、猫かぶりモードですね。まぁすぐに化けの皮が剥がれると思いますが。

 ご主人様はラピスが樹界国で話を聞き、ミーティアを慕ってやって来た事を説明しました。
 メルクリオ殿下はずっと頭を抱えていらっしゃいます。体調不良でしょうか。


「はぁ……ミーティア様やウェルシア嬢は元から奴隷だったと聞いていたから諦めていた部分もある……しかしラピス様は……どうしてこうなった……」

「うん、俺もそう思う」

「そう思うんなら自重してくれないかな? なぜ国の要人を易々と奴隷にするんだい、君は」

「不可抗力だから」


 女神様のお導きと自然の成り行きだと思います。
 ついでに面識のなかったユアも顔見せしておきました。


「わわわ私なんかが、メルメルメルメメメメルクリオ殿下に」

「よーしよしよし、落ち着け。大丈夫だ。こいつは第三王子じゃない。ただの組合員のメルクリオだから」

「いやまぁそうだけどさ、セイヤが言うんじゃないよ。別にそれでいいけどさ」


 ユアは生まれが魔導王国ですから自国の王子様と直接話すのは勇気がいるようです。
 メルクリオ殿下の事については事前に何度も話してあったのですがね。

 しかしユア、いくらメルクリオ殿下が高貴な方とは言え、貴方のご主人様は『女神の使徒』であり『勇者』様なのですよ?
 ご主人様には普通に接せられるのにメルクリオ殿下相手に緊張するなどおかしいでしょう?
 どちらが上位存在なのかは明白なのですから。

 そう、耳元で伝えたらどうやら落ち着いてくれたようです。
「あ……そ、そうでしたね……」と。分かってくれて何よりです。


「エメリー、変な事吹き込むんじゃない」

「申し訳ございません」


 どうやらご主人様には聞こえていたようです。
 事実なのですが、ご主人様は嫌がられますからね。素直に謝罪します。


 さて、そういった事前の諸々が済み、いよいよ出発の日となりました。
 総勢十九名。我らクラン【黒屋敷】全員で魔導王国に向けて出発します。


「ズーゴさん、ではよろしくお願いします」

「お任せください。ご武運を」


 すでに朝一から警備に就いていたズーゴさんたちと挨拶を交わし、正門を出ます。
 メルクリオ殿下たち【魔導の宝珠】の皆様のホームは三軒隣りですから、ご一緒に向かっても良いのですが、北東区第二防壁傍の馬車乗り場での集合となっています。
 従ってそこまでは我々だけでぞろぞろと歩きます。

 メルクリオ殿下が魔導王国の王都に凱旋するのですから中央区から馬車で向かっても良さそうに思いますが、目立ち過ぎるからと殿下ご自身に却下されたそうです。

 我々と一緒に向かわないのも同様の理由ですね。
 自分で言うのも何ですが、我々が集団行動をとると非常に目立ちますので。


「げえっ! 【黒の主】!?」
「すっげぇ……あれ【黒屋敷】全員か?」
「とんでもねえクランだな。見慣れてるのに違和感がすごい」
「知ってるか? 北西区であのメイド服が売られてるんだってよ」
「あの活躍があったからな、そりゃ真似するやつも出て来るだろうさ」
「おまけにメイドがみんな可愛いし。反則だろあれ」
「爆発」


 騒めく大通りを歩き、北東区へと向かいます。
 最後尾にはネネ・サリュ・ティナ・マル・ポル・ジイナのちびっ子六人衆が手を繋いで楽しそうですが、ラピスが混じってますね。顔がデレデレです。
 一方でジイナは「なんで私が……」と困惑気味。デジャブでしょうか。

 第二防壁の検問も顔パスです。
 一応は組合員証を見せますが、ろくに見もしないで通されます。大丈夫ですか、この街は。

 そしてまた大通りを歩き、ユアの働いていた『ドーティ魔道具店』を横目に進みます。
 商業組合もすでに稼働しているようです。
 こうして直った建物を見ると安堵しますね。


 馬車の乗り場は第二防壁のすぐ傍。
 そこへ着くと、すでに【魔導の宝珠】の面々が揃っていました。あちらは二〇名ですね。
 総勢で三九名ですか。大所帯です。

 さて、どのような旅路になるか。
 このような旅は初めてなので、私も少し楽しみです。魔導王国も行ったことがありませんし。
 話に聞く王都はどのようなものなのか、少しは観光できれば良いのですが。


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