カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第十章 黒の主、黒屋敷に立つ

237:新しい布地と新しい弓

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■エメリー 多肢族リームズ(四腕二足) 女
■18歳 セイヤの奴隷(侍女長)


 ステータスなどの詳しい説明は後回しにし、パティへの説明を触りだけ終えた後、侍女たちは本日の仕事として方々に散っていきました。

 迷宮に潜る者、屋敷に残る者、それぞれに慌ただしく、それでいて楽し気な様子は魔導王国から帰って来た″日常″という感じがして、見ていて気持ち良いものです。


 私はご主人様とパティ、ミーティア、マルと共に南東区へと来ています。
 ミーティアは南東区にはあまり来たがらないのですが、何かと来る事が多いですね。園芸店だとか。

 区長様も緘口令を布き、ミーティアの存在を知るのは衛兵までとなっているようです。
 こういっては何ですが、思いの外ちゃんとした対応をして下さっているものだと感心しています。


 何はともあれ、来た目的は大通り沿いにある高級服飾店『ユニロック服飾店』です。
 いつも侍女服をお願いしている所ですね。
 今回もパティの侍女服をお願いします。


「おお、お待ちしておりました【黒の主】殿」

「遅くなって申し訳ない。これ魔導王国のお土産だ。皆さんで是非」

「なんとお気を使わせて申し訳ありません。ありがたく頂きます」


 お土産、余分に買っておいて良かったですね。
 ご主人様はご自分の喪服を頼んでいた事すら忘れていたそうですから。
 留守中に訪ねられなければ、こうして渡す機会もなかったでしょう。パティの加入もこのタイミングだとは思っていなかったでしょうし。

 まずはパティの侍女服をいつも通りに発注します。
 さすがに小人族ポックルの侍女服はティナの服を手直しして着させるのにも限界があります。
 普段の生活ならまだしも、迷宮に潜るとなると、ここでちゃんとしたものを作ってもらってからでしょうね。

 タイラントクイーンのドロップである【鉄蜘蛛の糸袋】もまだご主人様の<インベントリ>に在庫はあります。
 ひとまずは問題ありません。パティのサイズですとあまり糸も使わなそうですし。


 採寸などを係の女性にお願いしている横で、ユニロックさんがご主人様に布地を見せてきました。


「それで【黒の主】殿。言われておりました布地なのですが、色々と当たってみた結果、こちらならばどうかと……」

「おっ、どれどれ……むむむ……うん、悪くない。今まで見た布地の中で一番良い気がする。エメリー、どうだ?」

「失礼します」


 私も確かめさせて貰いました。ハンカチくらいのサイズの黒い布地です。
 光沢があり肌理細かな糸、これを縫製するのはさぞ大変でしょう。とても美しいです。
 ご主人様の喪服に比べるとハリがなく柔らかい印象がありますね。

 出来れば実際にご主人様が着て、その着心地を知りたい所ですが、このサイズでは手で触るくらいしか出来ません。
 それでも非常に良いものだと言うのは分かるのですが。


「こちら非常に高価で試供用のこのサイズしか手に入らなかったのです、申し訳ありません」

「そんな高価なのか。タイラントクイーンより?」

「ええ。高位のローブの裏布地に使われるか、見た目にも素晴らしいので酔狂な王族がドレスなどにも使いますが、服まるごと使用となりますと、それはもうとてつもなく高価になります。何せタイラントクイーン以上に素材が手に入りにくいので」


 タイラントクイーンも素材持ち込みで相当なお値段なんですけどね。それ以上ですか。


「ですので、もしこちらの布地で製作するとなりますと、お手数ですが素材を集めて来て頂いたほうが早いかと存じます。もちろん依頼を受ければわたくし共でも探しますが、はたしてどれほど時間が掛かるものか……」

「って事は、これも魔物素材なのか。何の魔物だ?」

「グレートモスのドロップ品、【大樹蛾の繭】です」

「「グレートモス……!」」


 なるほど、だから「素材を持ち込んでくれ」と言う事ですか。
 グレートモスはカオテッド大迷宮の三階層の【領域主】です。
 私たちが三階層を訪れた際は最短を真っすぐ進みましたが、横に逸れれば、グレートモスの居る森の領域になるはずです。

 確かに二階層で出るタイラントクイーンより素材入手は難しいでしょう。
 タイラントクイーンはイーリス迷宮や他でも出ると聞きますし。地上にもグレートモス以上に出るのかもしれません。

 一方でグレートモスは三階層というだけでも厄介なのに、状態異常攻撃がいやらしく、倒すのに苦労する魔物だと聞きます。
 これは屋敷の魔物百科にも載っていました。


「三階層か……どうしたものか……」


 ご主人様が顔を歪めていますね。お嫌いですからね、三階層。
 まぁ好きな人は誰も居ないと思いますが。


「高価なのは素材もそうですが、数も問題なのです。【鉄蜘蛛の糸袋】は一つあれば数着の服が作れますが、【大樹蛾の繭】は一つで一着作れるかどうか。【黒の主】殿の貴族服とコートを作るとなりますと、三つは確保しておいたほうがよろしいかと」

「そりゃ高価になるわけだな」


 もし集めようとするならば、それこそタイラントクイーンを狩った時のようにリポップ待ちで連戦するような形でしょうか。
 グレートモスを相手に……三階層で……それは大変ですね。

 とりあえず話は持ち帰る事にしました。
 もし行く機会があり素材を入手できたら、その時は製作依頼をすると。

 私としては補修したままの喪服より、新調して欲しい気持ちもありますが、おそらくグレートモス素材で作った喪服は今以上に<カスタム>は出来ないでしょう。やはりご主人様の元いらした世界の布地は特別ですから。

 強いけれど補修跡があるものか、弱くはなるが新しいものか。
 ここはご主人様にお任せするしかありません。
 私は三階層の探索となった場合に備え、念の為準備しておきましょう。



■マルティエル 天使族アンヘル 女
■1896歳 セイヤの奴隷 創世教助祭位


 服飾屋さんを出て、エメリーさんとパティちゃんはお屋敷へと戻りました。
 私はご主人様とミーティアさんと、まだお買い物です。
 次の目的地は『ロビン弓工房』。

 そう! 私の弓が完成したのでござる!

 ついつい楽しみで、ふわふわと飛んでしまいます。


「おおう、【黒の主】の旦那じゃねえか! 待ってたぜ!」


 工房に入るなり飛び出て来たのは端正な顔の樹人族エルブスなのに職人気質なおじさん、ロビンさん。
 どうやら私たちが来るのを今か今かと待っていたらしいです。すいません、遅れてしまって。


「まぁそんなことより早く見てくれよ! いやぁ~苦労したぜ! でもおかげで最高の弓が出来た!」


 そういってカウンターに乗せたのは薄い緑のまるで金属で作られたような弓。
 持ち手の中央部と弓の両端はゴツゴツして、とてもカッコイイです!
 思わず三人揃って「おおー!」と言ってしまいます!


「ベースはエルダートレントだが風竜素材で出来る限り補強した! しなりも十分だが強度が普通の弓の比じゃねえぞ!」

「予想以上にすごいな、これは。よく形にしたもんだ」

「おおよ! でもなぁ、強度がありすぎて俺じゃあまともに引けねえのよ。注文だから強度重視にしたが、本当にこんなの引けるのか?」

「マルティエル、ちょっと試してみろ」

「はいでござる!」


 大きさはショートボウですけど私が持つと結構大きいです。重さもやっぱりありますね。
 とりあえず構えて引いてみます。


「おおっ! すげえな、引けるじゃねえか! 小っこくてもさすが天使族アンヘルだな!」


 小っこいは余計ですけど天使族アンヘルだから引けるってわけじゃないです。
 私だってご主人様に【攻撃】を<カスタム>してもらってるので引けるだけです。
 でもこれ、今までと段違いに強力になりますよ、多分。ここで試射は出来ませんけど。


「マル、私も引かせてもらえますか?」

「はい、どうぞでござる!」

「ありがとう。……ほう、なるほど。これは良いものですね」

「おお、そっちの日陰の姉ちゃんも引けるのかよ! さすが【黒屋敷】だな!」


 ミーティアさんは私以上に【攻撃】が高いですし、弓の腕前も私以上にすごいです。
 ミーティアさんお墨付きなら絶対に間違いないでしょう!


「ミーティアが言うなら大丈夫か。よし買う―――」

「ミミミミーティア様っっ!?」


 あ……。

 私とミーティアさんの顔がご主人様に向けられます。
 ご主人様は「しまった」という表情。もう遅いですよ。

 この後、ロビンさんを宥め、内緒にして貰うのに苦労しました。
 お代も「ミーティア様から貰うなんてとんでもねえ!」と言い出し、受け取って貰うのに苦労しました。
 なんか今後調整とか頼みに来づらい感じですね……。

 ご主人様……うっかりがすぎるでござるよ。


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