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第十章 黒の主、黒屋敷に立つ
244:コソ泥、初めて迷宮に入る
しおりを挟む■ポル 菌人族 女
■15歳 セイヤの奴隷
「ホ、ホントに大丈夫なのか師匠! あたいが迷宮とか!」
「ん。だいじょぶ。パティはスキルだけ使ってればいい」
「ホントか!? すっごい不安なんだけど!?」
今日はパティちゃんの初探索です。
今まで魔物と戦った事はないらしいので、やっぱり緊張してるみたいです。
私もご主人様に背負われて樹界国に行った時はそんなだったなーとしみじみ思ったり。
面子はパティちゃんと師匠のネネちゃん、それにイブキさん、シャムさん、ユアさんと私です。
ユアさんは錬金工房に籠り気味ですけど、ご主人様からご指名です。
パティちゃんが初めてだから先達としてアドバイスしてあげろって。
「わ、私が先輩!? む、無理ですよっ! もう絶対パティちゃんの方が強いですって!」
「いやいや、パティ、レベル1だぞ」
「すぐに抜かされますよぅ! スキルだってすっごいし!」
ユアさんはそう言って謙遜してますけど、ツェッペルンド迷宮での七日間を見ている限り、普通に戦えると思うんですけどね。
戦う事は怖くて、苦手でって言うのは分かりますけど、やろうと思えば出来るかと。
でも訓練場でのパティちゃんとネネちゃんを見ている限り、抜かされるは抜かされると思います。私も含め。
「とりあえず登録するぞ。パティ、こっち来い」
「は、はいっ!」
実は今まで組合員の登録もしてないんです。イブキさんに呼ばれてパティちゃんは受付に行きました。
メリーさんから「また増やしたんですか」的な小言を言われながらも登録を完了。
いよいよ迷宮へと入ります。
ちなみに私たちはパティちゃんの付き添いという事で安全性を考慮した六人ですが、魔物部屋マラソンに行ってる人たちも居ます。別行動ですね。
一階層で会えるかもしれないですが、そうなると私たちが魔物部屋に行ってもリポップ待ちになりそうで……何とも。
そんな事を思いながら迷宮の入口、下り階段へと行きます。
イブキさんがパティちゃんに説明しながら、ゆっくりと下ります。
「うわぁ……あたいが迷宮に……本当に入るのか……」
「だいじょぶ、だいじょぶ。ユアも何か言ってあげて」
「だだだだ大丈夫ですよ、パティちゃんっ! ぜぜ全然へっちゃらですよっ、迷宮なんてっ!」
「全然大丈夫じゃなさそうなんだが。ユアの方が心配になるぞ」
「ユアさんは一発魔法を撃てば落ち着くと思うでございます」
でもなぜかパティちゃん以上に緊張しているユアさんのおかげで、パティちゃんの緊張もほぐれたらしい。
迷宮に入ると隊列はネネちゃんとパティちゃんが一番先頭。次にイブキさんとシャムさん、最後尾に私とユアさんです。
私は今日は後衛で魔法担当なので、後ろからテクテクと付いて行くだけです。ユアさんのフォローをしましょう。
どうやら最前線でネネちゃんが教えながら進むようです。実戦訓練ですね。
「パティは<気配感知>と<危険感知>を続けて。曲がり角の先から急に魔物が出て来たりする」
「は、はいっ!」
「<魔法陣看破>は持ってないから罠の対処は私がやる。でも<危険察知>で何か分かるようならすぐに報告」
「はいっ!」
パティちゃんの察知系スキルは<気配察知><危険察知>。
どちらかと言うと迷宮では<気配察知>で魔物を見つけるのが仕事になりそうですが、罠魔法陣の対処は出来ません。それを<危険察知>でどこまで見つけられるか、という所でしょうか。
レベルが上がると″危険″と判断されないから<危険察知>はあまり使えないって聞きますけど、どうなんでしょう。
<気配察知>にしてもどのくらいの範囲をカバー出来るのか気になります。
さすがにネネちゃんみたいに広範囲というわけじゃないでしょうが、同じ<気配察知>持ちのイブキさんやツェンさんに比べてどうなのか、と。
種族特性的にはパティちゃんが有利ですが、さすがにレベルが低いですしね。
「あっ! ま、魔物! 右から!」
「ん。何体?」
「えっと……二体?」
「ん。よしよし」
「おいおい、私の<気配察知>と大差ないんだが……」
イブキさんがそうぼやきます。ほぇ~やっぱパティちゃんすごいんですね~。
ネネちゃんの特訓のせいもあるんでしょうか。
そうこう言っているうちにゴブリンが二匹やって来ました。
「し、師匠ぉ! ど、どうすればっ!?」
「何もしないでいい。みんなが倒すから」
最初は私とユアさんですね。後方から魔法で一体ずつ倒します。
あ、シャムさん、翼邪魔なんでどいて下さい。バサッってしないで。
ユアさんも撃つまでに少し時間が掛かりましたが、問題なく命中させました。
まぁ外してもシャムさんとイブキさんで倒してますけど。
「はぁ~す、すっご……」
「こんな感じでパティは敵を見つけて報告。それだけやればいい」
「わ、分かりました!」
「あとでちゃんとパティにも殺させるから安心して」
「えっ」
あー、やっぱり戦闘もやるんですね。斥候訓練だけじゃないと。
まぁ訓練場でネネちゃんと模擬戦してましたし、問題ないでしょう。
その後、一階層を歩き回り、察知の感覚をものにしていったパティちゃんはいくらか落ち着いたようです。
でも魔物部屋に入ったら案の定驚いてました。
それも最初のほうだけですけどね。三部屋目くらいからは何体か倒してたと思います。
「師匠……やっぱり迷宮って怖い所なんですね……」
「そう? いっぱい狩れて面白い」
「パティちゃん、私はその気持ちよ~く分かりますよっ! 私だって未だに怖いですから!」
「でもユアさん『アハハハハ』って笑いながら魔法連発してたでございますよ? あれはあれで怖いでございます」
「パティも最初だから緊張して疲れただけだろう。十分やれる実力はあるんだ。今夜の<カスタム>が楽しみだな」
今日だけでレベルアップしたでしょうからねー。パティちゃんは存分に<カスタム>される事でしょう。
初探索だから夕食も豪華になるかもしれないです。
私はそっちも楽しみです。って言ったらパティちゃんも「豪華な夕食!?」と復活しました。
帰り道、そんな事を言いながら階段を上がり、受付へ。
そうすると横から声をかけられました。
「よお、お前ら【黒屋敷】とかいう連中だな?」
そこにはボサボサの赤い髪をした大きな獅人族が居ました。
後ろには何人もの獣人系種族。あれ? この人たち、ひょっとして……。
と思っていたらイブキさんが前に出ます。
「だとしたら何だと言うのだ?」
「くくくっ、角折れの鬼人族に引き籠りの天使族、あとは蛇とチビばっかか。しかもメイド服で迷宮から出て来るとは……これで組合員だってんだから笑っちまうよ! ハーッハッハッハ!」
『ハハハハハ!』
おお、この笑ってる人たち全員同じクランなんですね。
なんか久しぶりにこんな風に面と向かって言われた気がします。
シャムさんがムッとしてますね。ユアさんは怯えてます。パティちゃんは「え? え?」とキョロキョロしてます。
「そういうお前らは【レッドなんとか】だろ? 随分と嗅ぎ回っているそうじゃないか。<嗅覚強化>の訓練でもしてるのか?」
「――ああん!?」
おお、イブキさんも結構言い返しますね。しかも珍しく上手い事言いました。
どうしましょうね、これ。ご主人様には絡まれたら投げていいって言われてますけど。
やるとするとイブキさんとネネちゃんと私でしょうか。
そう考えていると案の定、獅人族の人が「てめえっ!」とイブキさんの胸倉を掴もうと手を伸ばして来ました。
イブキさんは「かかった」とばかりにニヤリと笑い、その手を掴むのと同時に腹に一発。
その衝撃と掴んだ腕の振りでホールの入口へと投げ飛ばします。いつもの光景。
――ヒューン――ドシャアアアン
私たちは見慣れてますけど、周りの人には何が起こったのか分からないようです。
獅人族のクランメンバーの人たちもポカンとしています。
でも、ここからがいつもと違いました。
「いっつ……てめえっ!!!」
なんと獅人族の人が腹を抑えながらすぐに身体を起こしたのです。
これには周りで見ていた組合員の人たちも驚きます。
「おおおっ! 【黒屋敷】のメイドに投げられて気絶してねえ!」
「すげえ! こんなの初めてじゃねえか!?」
「さすが【赤き爪痕】だ!」
「Sランクは伊達じゃねえな! さすが獣帝国最強!」
拍手喝采。
私たちも投げ飛ばしたイブキさん含め「おおー」と拍手します。
ユアさんとパティちゃんは「え? え?」とやってますが。
そのホールの様子に怒りの矛先を失った獅人族の人たちは「お、覚えてろよ!」と捨て台詞を吐いてどっかに行きました。
いやぁ~私も気絶しない人は初めて見ました。
やっぱり世界は広い。強い人って居るもんなんですね~。
とりあえず帰ったらご主人様に報告しましょう。
それはそれとして夕食が豪華になるのか気になります。
早く清算して帰りましょう、イブキさん!
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