カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

文字の大きさ
257 / 421
第十章 黒の主、黒屋敷に立つ

248:グレートモス乱獲祭、開幕!

しおりを挟む


■セイヤ・シンマ 基人族ヒューム 男
■23歳 転生者


「じゃあウェルシア、さっそく頼む」

「はい。<風の遮幕ウィンドヴェール>」


 三階層に入る前の階段から、ウェルシアに<風の遮幕ウィンドヴェール>を使ってもらった。
 この魔法の効果は基本的には防音・防熱。【風声】の連中は四階層で主に使用していたらしい。
 風の幕で一定範囲を覆う魔法ではあるが、副次効果として匂いも遮断してくれると。

 デメリットとしては風の幕の影響で、<気配察知><嗅覚強化><聴覚強化>が非常に使いづらくなる。
 斥候系スキルにダメージを受けるというわけだが<魔力感知>は問題ないらしい。

 索敵に関しては<魔力感知>と視認、あとは俺たちは誰も持っていないが<千里眼>などの視覚強化スキルなどに頼ることになると。


 三階層は基本的に広い湿地帯で見晴らしもいいのだが、『巨大墓地』や『廃墟』など遮蔽物があるエリアも結構ある。
 それを考えるとやはり視認だけでは厳しい。サリュとアネモネの<魔力感知>に期待しよう。


 ウェルシアを中心として風の幕が周りを包む。
 ほぼ無色ながらそこに幕があると分かる。薄いシャボン玉のようだ。
 範囲は半径二〇メートルくらいか。


「結構広いな。固まれば全員入るじゃないか」

「<魔力凝縮>と【狂飄きょうひょうの杖】のおかげです。普通ですとこの半分程度かと」

「なるほど。ずっと使い続けるのは可能なのか?」

「余裕を持って掛け直すつもりですが、MPポーションも潤沢ですし問題ないかと。しかし戦闘で他の魔法を使えませんので、居ないものと扱って頂ければ」


 そりゃそうか。これを使ったまま他の魔法は使えないよな。
 寝る時はマジックテントだから匂いは気にならないし、夜警は焚火でお香を焚けば問題ないかな。


「よし、とりあえず『枯れ木の森』エリアに行くぞ。あそこならアンデッドはあまり出ないらしい。そこをキャンプ地とする」

『はいっ』


 ここからはもうパーティー分けとか関係なし。
 俺たちは風の幕に守られるように、一塊になって右斜め前に向かって走った。

 以前に走った三階層の最短ルートは、ひたすら真っすぐ。
 入ってすぐの『ぬかるみ湿地帯』から『巨大墓地』『廃墟』、終点が『不死城』こと『廃城エリア』。

 今回は右手方向へと進む。
 進んだ先にあるのは『枯れ木の森』エリア。雑魚敵として枯れ木に扮したトレントや石化攻撃をするコカトリスなんかが出現し、ここの【領域主】がお目当てのグレートモスだ。

 なので、『枯れ木の森』エリアの手前ギリギリの所にキャンプを張るつもりでいる。

 あまり森から遠くなるとアンデッドが湧くし、森に入り過ぎるとコカトリスの石化が怖い。
 マジックテントの魔物避け効果もあるが、万が一寝ている時に石化をされたらと思うと安心できない。
 念の為、夜警時の焚火には『魔物避けのお香』も使うつもりではいるが。


 さて、そんな事を考えながら走ってはいるが、半径二〇メートル以内に二〇人が集まって小走りするのは意外と窮屈だ。集まるだけなら余裕だったんだけどな。
 アンデッドが風の幕の中に入って来た時に匂いがどうなるのか気にはなるが検証する気はない。
 遠目で発見次第、魔法をブッパするよう指示をしている。


「サリュ、匂いは大丈夫か?」

「はいっ! ウェルシアさんのおかげです! 最高です!」

「<魔力感知>はどうだ? 索敵に問題はないか?」

「それも大丈夫です!」


 なるほど。ますます三階層がサリュ無双になりそうな気もする。
 ウェルシアが戦闘不参加という事で遠距離の火力に懸念があったが問題なさそうだ。

 考えてみれば前回は居なかったシャムシャエル、マルティエル、ラピス、ユア、パティが居るんだから以前より火力が上がって当然なのだが。

 特に天使組の調子は非常に良いらしい。
 三階層はサリュと天使組だけで全く問題ないように思える。匂い対策さえ出来ていれば。


 ラピスは新しい階層に来て嬉しそうに<水魔法>をぶっ放している。
 ユアはグロいゾンビ系の見た目に怖がりながらも弱点である<火魔法>を放つ。
 パティは<気配察知>の仕事も出来ないので、たまにスケルトンを斬る程度だ。


 周囲の情景と侍女たちの様子を見ながら進む事しばし、目的地である『枯れ木の森』エリアの付近に到着する。


「さて、この辺でいいかな。ウェルシア、<風の遮幕ウィンドヴェール>を解いてくれ」

「はい」

「……うん、この辺だとやはり大丈夫そうだ。サリュはどうだ?」

「多少匂いますけど大丈夫です。意識して<嗅覚強化>を使わなければ」


 <嗅覚強化>を使わなくても狼人族ウェルフィンの鼻はよく利く。
 同じ獣人系種族であるヒイノやティナ以上に嗅覚は鋭い。
 そのサリュがあまり匂わないと言うのだから、やはりここら辺にアンデッドは出ないのだろう。


「じゃあここをキャンプ地にしようか。で、どうしようか。予定通り、分けるのは二つでいいか?」


 三階層の予定は『枯れ木の森』の【領域主】グレートモスをひたすら狩るのと、三階層の【領域主】を倒してドロップ品を集める事の二つ。
 二〇人全員でグレートモスを狩り続けるのは非効率なので、人員を分けるつもりではある。

 しかし【領域主】を倒すのも何組かに分けた方が効率は良い。ユア用の錬金素材を採取しても良いし。

 かと言って分けるとなると、やはり″匂い″が問題になる。
 三階層でアンデッドの全く出ない場所なんてここ・・くらいしかないのだから。


「とりあえず二組でよろしいのではないでしょうか。もし初日が終わり、グレートモスのドロップが予想以上に良ければ今夜にでも再考すればよろしいかと」

「そうだな。じゃあエメリーの案を採用。グレートモス班と領域主班に振り分けるぞ。とりあえず確定はウェルシアが領域主班な」

「はい」


 一応皆に希望を聞くつもりではあるが、ウェルシアは動かせない。ウェルシアを『枯れ木の森』で使うのは宝の持ち腐れだ。
 そして班分けはこんな感じになった。

グレートモス班:セイヤ、イブキ、ミーティア、シャムシャエル、アネモネ、ポル
領域主班:その他全員

 グレートモスはパーティー上限の六人だけでいい。
 むしろ六人もいらないとは思うが念の為、風以外の各属性を揃えてみた。
 グレートモスは状態異常の鱗粉を放つらしいから、回復役ヒーラーは絶対に必要だ。


「エメリーに通信宝珠を渡しておく。こっちはミーティアだ。何かあれば連絡するように」

「はい」


 夕方にキャンプ地に集合という事で俺たちは分かれた。
 さて、と一息ついて六人で『枯れ木の森』へと侵入する。最前衛は索敵担当のアネモネとイブキだ。

 ここに出て来る雑魚敵のトレントは二階層のそれとは違い、葉がなく枯れ木のような見た目をしている。それでも分類的には同じトレントらしい。強さは変わらないな。

 コカトリスも一応図鑑では見たが、実際に見るとグロい。大型犬並みの鶏で尾羽が蛇になっている。
 それが長い舌を出しながらギャアギャアと迫ってくると思わず逃げたくなる。
 まぁ石化が怖いので近づく前に遠距離攻撃で仕留めるが。


 他には木の上の方に張り付くパラライズモスや、キラービーなどの虫系が細々といる感じ。
 森の中を視認だけで索敵するのは困難で、やはりアネモネの<魔力探知>頼みとなる。イブキの<気配察知>もだが。

 そうしてずんずんと進んで行くと、アネモネが反応を示す。


「いました……グレートモスだと思います……ふふふ」

「よし。リポップしていたか。最初は手加減なし。ミーティアで行こうか」

「はい」


 どうせ何回も倒す事になるのだから、最初は遠距離高火力で一発。
 イブキも倒したいだろうが次回に回そう。

 グレートモスの居る場所は森の中の開けた場所。情報通りだ。
 円形の広場の中心には大きな枯れ木が一本だけ立っており、そこにへばりついているのがグレートモスだ。
 その周りにはパラライズモスも何匹か舞っている。

 遠目で見ただけで「うわぁ」と思わず嫌悪感が出る。背筋がゾクっとする。

 全長四メートルほどの蛾だぞ? しかも翅の模様は間違った方向に才能を発揮させた現代アートの如く気持ち悪い。
 見るのが嫌になるが二度見、三度見してしまう謎の吸引力。そんな蛾だ。

 遠慮はいらぬ。ミーティアさん、やっておしまいなさい。


 バシュウンと【神樹の長弓】から放たれた魔力矢は当然命中。あんなデカくて動かない的を外さないわけがない。
 グレートモスに何もさせないまま、ただただ倒した。
 光となって消えるグレートモス。枯れ木の根元にはドロップ品が残る。俺たちはさっさと回収に近づいた。


「【大樹蛾の鱗粉】【大樹蛾の触覚】あと魔石か。残念」

「やはりレアドロップなのでしょうか、【繭】は」

「一番のレアは【複眼】らしいけどな。とにかく周囲の魔物をさっさと狩ってリポップさせよう」

『はい』


 幸先良しとはいかないか。まぁ仕方ない、こんなもんだ。
 さてどれくらいの確率で【繭】が出るものなのか。
 それによって俺の喪服用だけになるか、侍女たちの服の分も集める事になるか決めよう。

 単調な作業だが、なるべくみんなで楽しく行きたいものだな。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<これからは「週一投稿(できれば毎週土曜日9:00)」または「不定期投稿」となります> 「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。  死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。  レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。  絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、 「え?、何だ⋯⋯これ?」  これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ? ――――それ、オレなんだわ……。 昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。 そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。 妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処理中です...